王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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十 剣術大会なので拳での抵抗は禁止です

 

 

『シャドウガーデン』との初邂逅は恙無(つつがな)く終了した。

 どことなく統括者であるアルファは疲れたような様子であったため、魔力補給が瞬時にできる栄養ドリンク(自作)を渡したが、冷静になって考えると市販品でもない自作品を渡すなんて逆に迷惑をかける行為だった。反省点である。

 

 協力関係を担う事には同意してくれたため、当初の目的は完了した。

 あとは待ち合わせ場所も伝えたため、分身ゴーレムとアレクシア王女は指定位置で待機し、教団の幹部候補であったゼノン・グリフィを渡す事ができる。

 これによってディアボロス教団にもある程度ダメージを与えることが出来るだろう。

 

 だが教団はまだまだ根深く存在している。

 教団内でも派閥が分かれている事も把握は出来ているのだが、最近の襲撃で更に闇の中に潜み始めたことでゴーレム情報網を以てしても情報が集めきれていない。

 とりあえず『紅の騎士団』に紛れ込んでいた鼠駆除は完遂したため、鬱陶しいちょっかいをかけられることも今後は少なくなるだろう。

 

 ガイアスはディアボロス教団を潰す方針で動いてはいるが、他国で活動を続けている奴らのことまでは対象外だと割り切っている。それも今のところは、であるが。

 ゴーレムを配備するにしても、配置場所に漏れがあれば意味がない。王国内でも予定通り範囲を拡大で来ているとはいえど全域ではない。そのため他国にまで監視の目を向けるのはまだ実現不可能だという判断でもあった。

 

 ビジネスは割り切りと言われるが、これに関しても同じこと。

 風呂敷を広げ過ぎて、畳みきれないのであれば無意味どころかマイナスなのである。

 

 あの出来事から少し時間が経過した。

 

 『シャドウガーデン』もあの時に教団の襲撃作戦を実施していたのだが、とある団員による攻撃範囲によっていくつかの建物が崩壊するなど、少なくない被害が発生していた。

 一般人に被害は出ていないとは言えども、周囲に暮らす者達からすればたまったものではない。

 関係者が全員死んでいる事から、調査に当たった騎士団は当然別にテロ行為を行った組織があると考えており、より警備を厳重にしている。

 

 申し訳ないが彼ら騎士団一兵卒がシャドウガーデンの者達に敵うなど一切思わないのだが、それは彼らを馬鹿にしているのではない。“七陰”と“ナンバーズ”率いる構成員たちが強すぎるのだ。

 陰の叡智というシャドウが与えた知識を元に訓練を積んでいるらしいのだが、それでここまで強くなれるのはアルファを筆頭とした幹部たちが非常に優秀だからであろう。

 

「剣術大会…ねぇ」

 

 だがそんな考えとは裏腹に、当然ながら時間は刻々と過ぎていく。

 ガイアスが手にして眺めるは王国魔剣士学園で開催される剣術大会。

 この結果で次第では年に一度の大規模大会である武神祭の出場も夢じゃない。

 故に本気で勝ち抜きにくる生徒や自分の実力を知るために挑戦しに来る生徒。勝ち馬に乗るべく裏で賭け事に励む生徒など、学園内でも一大行事の一つである。

 

「興味あるの?」

「そこまで。剣術なんて俺には縁がないことだしなぁ」

「ほんと勿体ないわね。出たら優勝待ったなしでしょうに」

「剣術大会なのに素手で殴り勝ったら色々あかんでしょう」

 

 その姿を見たアレクシアはガイアスに問いかけながら、当然のように横に座った。

 普段から見慣れているものの、やはり美人だなぁとガイアスは思う。

 そんなガイアスは実力に関して言えば遥か上に位置する。

 そのため彼が出場できれば優勝待ったなしなのだが、当の本人はそんなつもりもない様子。武神祭に出場することは魔剣士達にとっても名誉なことであり、就職関係でも己の力を示せるとあって熱心に取り組む者が多い事で有名だ。

 

「貴方は表立って目立つってこと嫌いそうだものねぇ」

「目立ったっていい事はない。教団と戦っている以上、情報をあえて見せるってこともいいけど、それ以上に巻き込まれる人が増えすぎるからな」

「ディアボロス教団…。あの後『シャドウガーデン』の人達と会ってきたけど、相当強いわよね彼女達…。姉さまは兎も角、他の騎士団では手も足もでないんじゃないかしら」

 

 アレクシアは先の一件でディアボロス教団とシャドウガーデン二つに関わりを持った。

 彼女自身が狙われる立場であったというのもある。だがシャドウガーデンとの関わりを持つことになったのは、ゼノン・グリフィを引き渡した時。ガーデン内でもゼノンの情報は渡っており、一般団員では苦戦するだろうと考えられていた様子。

 その男を倒したアレクシアに対してシャドウガーデンの教官が興味を持ったのである。

 

 その時は時間も時間であったため、ゼノンを受け渡してすぐに解散となったのだが、いつか手合わせをすることを約束していたので剣呑な仲というわけではないので一安心であった。

 

「彼女達は本気で教団と戦うために鍛えあげてきているからな。負けてられないなアレクシアも」

「当然!むしろ今まで知らなかった強者を知れて嬉しいまであるわ。私の全力が、どこまで通じるのか考えただけでワクワクするもの」

「…程々にな?」

 

 両手を軽く握って気合を入れるアレクシア。

 周囲に実力が拮抗している者が極めて少ない彼女にとって、互いに高めあえる仲間を知れて嬉しいのだろう。

 アイリス王女もその一人に入れるのだが、立場が立場なだけに手合わせの時間を作れるわけでもない。騎士団を率いているため、今回の一件での調査に忙しいだろう。

 

「この剣術大会、アレクシアはどうするんだ?武神祭はアイリス王女も騎士団側から出場することはほぼ確定しているんだろ?参加するのか?」

「するつもりよ」

 

 ガイアスの疑問に良い表情で断言したアレクシア。

 彼女と姉であるアイリスは公の場で戦った事は一度もない。

 互いに立場というものがあるが、武神祭という大きな行事ではその立場は反映されない。学生と騎士団の枠を活用して出場することが出来れば、王女達二人の魔剣士が戦いあうこともできるだろう。

 映像技術がなく、紙媒体と伝聞による娯楽が一般的なこの時代において、そんなビックイベントがあれば一目見ようと観戦者も多く訪れて地域活性化にもつながることだろう。

 地域が活性化すれば周囲が潤い、その結果国の負担も減る。

 真正面から否定する者達は出ないと見た。

 

「ちなみに本気で戦うのか?」

「流石にある程度は抑えるわよ。生徒会長や姉さまが一目置くクレアさんあたりはどうなるかはわからないけどね」

「まぁそりゃそうか」

 

 彼女の言葉に納得するガイアス。

 彼女が言う生徒会長とクレアさん以外に、アレクシアと切り結べる相手はパッと見た感じいなかった。学園にいるシド・カゲノー(シャドウ)であれば余裕で相手できるのだが、調べてみれば彼は“陰の実力者”になるべく普段からモブ的――極力目立たずに生活を過ごす――行動を取っている。

 そんな彼がこの学園大会で実力を曝け出すことをするかと問われれば、ガイアスはそうは思わなかった。

 

 例え勝ったとしても優勝まではせずに二回戦や三回戦で接戦した後に敗退するように行動するだろう。

 そうでなければモブっぽくない。そんな理屈などない理由なのだが。

 

「クレアさんとローズ会長もいい腕をしているからな。気を抜きすぎるなよ?」

「そんなことしたら貴方の顔に泥を塗っちゃうじゃない。でも心配してくれてありがとう。折角なら見に来てくれると嬉しいわ」

「見に行くしかねぇよなぁ?」

 

 暇してる際、美人さんに誘われて断る奴いるぅ?

 いねぇよなぁ!!

 …いや普通に断る人もいるかもだが、今はそれは置いておく。

 アレクシアはすでに独り立ちした身とは言えども教え子だ。

 その事実は当然知られていないが、師匠であった者として観戦の誘いを断るなど出来やしまいて。

 

「ほんとっ!?絶対よ!ちゃんと会場についたら教えてよね!」

 

 返答がそんなに嬉しかったのか、アレクシアはいつもよりも声のトーンが高い。

 これから用事があるのか、その後すぐに席を立ってしまったことで再び一人に戻る。

 

 ふっ…。普段気構える王女が心を許す相手にしか行わない言動。

 …実に素晴らしい。

 アレクシア王女の素晴らしいムーブに満足感を得つつ、再度考えに耽る。

 

 先ほど話に出ていた実力を認められている生徒は二人。

 ローズ・オリアナとクレア・カゲノーだ。

 

 

 ローズ・オリアナ。

 『芸術の国』と称される程に芸術関係が盛んな王国であり、ミドガル王国と同盟を結んでいるオリアナ王国の王女(・・)だ。

 ミドガル王国へ留学に来ており、この学園でも生徒会長を務めるほどに勤勉で秀才なだけでなく今現在の学園最強の魔剣士とまで言われている実力者だ。

 金髪ロールでありながら、どこぞのお嬢様キャラのような「オーッホッホッホ!」などの言動は一切なく、誰にでも丁寧に接しているのは非常に好感度が高い。

 

 王女繋がりなこともあってアレクシアとも仲が良くなっており、今回の剣術大会においても意気投合しているとか。

 学園最強とまで言われている故に今回の大会でも優勝候補筆頭だ。

 戦うのは野蛮だみたいな風潮がオリアナ王国にはあるらしいが、独学で鍛え上げただけでミドガル学園の最強に至れるその才は本物だろう。

 うーん、実に素晴らしい逸材だ。関わりがあれば彼女のレベルも上げたかった。機会に恵まれないので今はできないのだが。

 

 

 クレア・カゲノー

 シド・カゲノー(シャドウ)の実姉であり、ブラコンバーサーカー。

 シドの事を完全に庇護対象として見ているのか、彼に対する言動が強烈な印象だ。

 確か「貴方を想って言っているのよ」みたいな事を相手の首を絞めながら話していたところを確認したときは、流石にヤベー奴認定せざるを得なかった。重たい女である。

 だが実力は確かで、魔力制御や剣術の向上に余念がない。体捌きもシドの動きを見様見真似だとしても学んでいる節がある。

 

 アイリス王女が彼女に対して一目置いていることもあって、すでに《紅の騎士団》へのスカウトも行っている事も聞いていた。

 他の剣士と同じものだと考えていると、不意に不意を突いて一撃必殺を狙ってくるような圧を感じた。

 アレクシア程の使い手であっても、気を抜いて勝てる程甘い相手ではないだろう。

 

 

 どちらも今後の世代を担う貴重な人材。

 今後も切磋琢磨して良き成長へ向かってほしいものである。

 

(…。センサーに反応か)

 

 そこでゴーレム包囲網に鼠の反応。

 それも人数をある程度導入している様子だ。何やら運び込もうとしているので、それを用いてよからぬことでもやらかそうとしているのだろう。

 

「ささっと潰して悪化する前に対処するか」

 

 机に両腕をついて目を閉じる。

 厄介事を起こす前に要因を排除すべく、そのままゴーレム操作に集中するのであった。

 

 




 
 
 
・ガイアス・クエスト
 シャドウガーデンとの邂逅は無事に完了。
 部屋に案内されている間に何回もコケて鼻血を出すガンマに対してお節介を焼くか悩んでいる。
 剣術大会は興味なしだが、アレクシアの姿は見たい。
 クレアに対しては思う所はないが、ローズ王女に対してとても好感度が高い。
 
 「拳は剣より強し」
 ンッン~ 名言だな これは。

・アレクシア・ミドガル
 シャドウガーデンとの初邂逅は無事に成功した。
 近しいレベルに位置する者達がこれほどまでいたことに喜びを感じている。
 剣術大会にガイアスが見に来てくれる事でテンションアップ。
 ローズとも積極的に関わりを持っており、王女同士の仲も非常に良い。てぇてぇ。
 ただガイアスがローズ王女に対して好感度が高い事を密かに警戒している。
 
??「よし、楽しく話せたな」

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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