王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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十二 確信で賭けたらそれは賭け事と言えるのか

 

 

 本日はミドガル王国魔剣士学園で開催される剣術大会開催日。

 魔剣士学園と名乗っているため当然であるが、学生達の大半は魔剣士として王国で活躍できることを夢見て日々勉学に励んでいる。

 そんな彼らの努力が実を結ぶ一大イベントの一つが今回の剣術大会だ。

 自分の実力を示すべく、剣をブンブン振るっている生徒達が多い中で、ガイアスは本日も変わらずアレクシアと共に学園生活を謳歌していた。

 

 彼女が当初の約束をトイレのちり紙の如く破り捨ててきてから早数か月。

 始めは奇怪な視線を送られたものだが、時間が経てばそれが当たり前の日常になっていく。

 ガイアスも普段からアレクシアと共に講義や実技を行っているため、今日まで考えもしていなかったのだがふと思う。

 

(…俺、学園生活始めてから…王族関係者以外と関わって無くね…?)

 

 そうなのである。

 アレクシアは大会に向けて調整するとのことで今はいない。

 そうなると常にガイアスの傍に居た存在がいない訳で、多少なりの寂しさを感じるのだ。

 

 ここで男友達がいればそこに混ざって馬鹿な事を一つや二つ出来るのだろうが悲しきかな。

 王族と懇意の男子生徒に喜々として関わってくる勇者なぞ早々いなかった。

 故に彼はアレクシアとの関わりが無くなればただのボッチ民であり、一人で学び、食し、帰る生活を送ることしかできないのだ。

 

(まぁ教団の事考えると下手に関わると迷惑かけるしな…)

 

 転生者(異物)として前世の記憶も有している彼にとって、生徒達の精神的年齢層は若い。

 世代格差(ジェネレーションギャップ)がどうしても存在してしまう関係で、周囲からは大人びて見えている事もあって陽の気を解き放つ者達と繋がりが持てないのである。

 それにディアボロス教団の事を考えると率先して生徒達と関わる気にもなれないのも事実だ。

 彼らは身内を人質にすることなど息を吸う様に実行するだろう。

 そうなれば選ぶべき選択肢が限られてしまい、判断を鈍らせる要因になりかねない。

 だからこそ、ガイアスは他の生徒達と距離を置いているのだ(自己防衛完了)。

 

「…ん?」

 

 時刻はすでに大会が始まる時間に差し掛かっていた。

 アレクシアにはすでに連絡を入れているため、後は観客席で彼女のご尊顔を拝見するだけなのだが、その道中である集団がふと目に入った。

 

 

「さァさァ!!ここで張らなきゃ、男が廃るってモンだァ!!」

 

『 おぉおおおお!! 』

 

 

 その集団は会場の裏手にて壁にトーナメント票を貼っており、それを背にした男が集団達を言葉巧みに煽っていた。

 

 

「ここまで本命大穴なんでもござれ!一発夢をつかみ取れ!!」

 

 

 賭博である。

 学生の身でそれをやっていいのかと思うこともないが、賭博も立派な娯楽の一つ。

 特に中世の時代に近いこの世界では興行としても盛んなのだ。

 

 そこに参加するのは数多の学生達の中でも夢を追い求める者達。

 己が信じた一点に賭けて、勝者には希望を、敗者には絶望をその人生に刻み付けるのである。

 すでに誰が優勝するかで彼らのボルテージが上がっており、金銭片手に各々の選択を行っていた。

 

(金銭面は今月余裕あるし、折角なら入れておくか)

 

「おっ!あんちゃんいいねぇ!!一体だれに賭けるんだい?」

 

 デカい丸眼鏡に鉢巻きを巻いた男がガイアスに語りかけた。

 この空間では見慣れない人間を巻き込んで同胞としていきたいのだろう。

 だがガイアスはすでに対象を決めている。

 

「アレクシア・ミドガル一点張り。掛け金は…そうだな。金貨だ」

 

『 !!! 』

 

 アレクシア・ミドガル一点賭け。

 各試合の結果すら視野に入れない大博打。

 アレクシアは確かに生徒達からも優勝候補として見られているが、それはローズ・オリアナ生徒会長やクレア・カゲノーも同じこと。

 そんな中で躊躇いもなくアレクシアを選択したその姿に、賭博管理人は後退った。だがそれもすぐに立て直す。

 それこそが賭博だ。それこそがロマンだ。と声高々に本質を叫んだ。

 

「いいねぇ!!その気概気に入ったァ!!他の奴らはどうしたどうしたァ!そこのあんちゃんは大博打で一点賭けだァ!!乗ってくる奴はいねぇのかァ!?」

 

 アレクシアが仮に試合で負けたとしても、相手を褒め讃える気概であった。

 彼女の努力と実力は、この世界の誰よりも認めて理解している。

 それゆえにガイアスは選択に迷わない。

 

 その堂々とした立ち振る舞いに感化された一部の生徒が更に熱気をあげてのめり込む。

 結果が楽しみだと渡されたのは、賭けたことを証明する一枚の用紙。

 誰もが試合そのものも楽しみにしているからこそ、馬券のような形で配っているのだろう。

 渡してきた生徒に感謝を伝えると、ガイアスは席へ足を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

『本日は我がミドガル王国魔剣士学園でも年に一度のビックイベント!この大会で優勝出来た暁にはあの武神祭に参加できる権利を得ることが出来ます!

 魔剣士であれば誰もが一度は憧れるあの高みへ挑む猛者を、今この場で決定づけようというのです!ついに始まります!

 頂への切符は、己の実力で掴め!!

 

 試合開始ィ!!!』

 

 

 そんな感じで司会が語っていた。

 一大イベントというだけあって参加する人数は最大規模だ。

 こちらは数日かけて予選から行われており、その間は授業自体が任意受講となる。

 そのおかげで学園に登校する者達はいるが、その大半は剣術大会を見に来るためであり、教室内では剣術とは無縁の研究者たちや生真面目な者達しか残っていない。

 ガイアスはどちらかと言えば前者であり、アレクシアの活躍を見届けたらそのまま帰宅する予定である。

 

 アレクシアは当然として、クレア・カゲノーやローズ・オリアナ生徒会長は順調に勝ち進んでおり、追随を許さない勢いで勝ち上がってきているところから賭博側は更に熱気を孕んでいた。

 

 

『それではただいまよりローズ・オリアナVSチャヤム・カマセの試合を開始いたします!!』

 

 

 ローズ会長は順調に勝ち上がってきている。

 第一試合ではまさかまさかの『シャドウガーデン』の首領シャドウことシド・カゲノーが参戦しており、本気で戦うのかと一瞬身構えはしたものの、結果を見ればローズ会長の圧勝で終わった。

 それはほぼ全生徒が考えていた結果の為、誰もそこに疑問を持つ者はいない。

 

「……」

 

 だがローズ会長の勝利は表向きの結果だ。

 

 確かにシド・カゲノーはローズ会長に一太刀も与えられはしなかった。何度も吹き飛ばされても、幾度となく立ち上がるその姿に心を燃やされた者もいるだろう。だがシドは攻撃をワザと受けることで派手に吹き飛ばされていることが分かった。

 ご丁寧に血糊で血を出したように見せる演出っぷり。

 それを何度も繰り返す熱意に軽く引いたのだが、審判に止められてそのまま試合終了の運びになった。

 もし彼がローズ会長を倒すつもりで参加をしていたら結果は真逆になり、今大会は超大波乱だっただろう。

 

「ねぇガイアス。シド・カゲノー君ってもしかして…」

「見えたか」

「えぇ。クレアさんの弟さん、ワザと負けたわよね…。わざわざ参加して負ける真似をするかしら?一体何を考えているというの…?」

 

 自分が行う試合を一通り終えてきたアレクシアと共に観戦していたことで、アレクシアがふと呟き、ガイアスはそれに同意した。

 相手に気づかれないように見せた動きを取ったシド・カゲノー。知り合いの弟が有する実力に彼女がいち早く気づいたのである。

 

「クレアさん…このことを知っているのかしら」

「知らないだろうな。この前弟の実力が伸びてなくて心配だーみたいなこと言ってたからな」

「自分の実力を知られたくないっていうこと?それってまるで私みたいな…」

「まぁそこは家庭内での問題もあるんだろう。おいそれと首を突っ込んじゃいけない話題なんじゃないかな」

「…貴方がそれを言っちゃう?」

 

 姉であるクレア・カゲノーはこのことを理解していたのかを考えたが、ガイアスはそれを否定した。

 事実、クレアはシドの事を出来の悪い弟という認識であり、本能でシドの動きや魔力操作を模倣しているがそれで気づく理由にもならない。

 シャドウであるシド自身も姉に知られたいとも思っていないし、そこまで興味自体も持っていないだろう。あくまでも自分の進む道に必要であるから話を合わせている様に感じ取れた。

 

 アレクシアに余計な行動は宜しくない事を暗に伝えたのだが、彼女はガイアスを見てお前が言うなと言わんばかりの表情だ。というか実際に言葉に出している。

 自分の過去を持ちだすのは反則ですぞアレクシア王女。

 

「まぁその話は一旦置いておこう。必要になったら追及すればいいさ。それよりも次の対戦相手だぞ?準備はしなくて大丈夫か?」

「ご心配なく、常在戦場の心構えは忘れていないわ。貴方との触れ合いが私にとって重要だから」

「ん゛ん゛っ~~~!」

 

 話を逸らそうとローズ会長が次の対戦相手であることを伝えると、彼女の回答は無問題。どうやら負ける気は更々無い様子。

 昔に教えた魔力制御は常日頃から維持し続けてきており、魔力隠蔽技術も高レベルに収まっていた。

 薄く微弱な魔力膜を全身に纏う様に包む事で内部状況を誤認させるやり方は、実際にディアボロス教団の1stチルドレンレベルであれば騙し抜くことも容易である。これなら並の相手が彼女を見ても体内で高出力の魔力を常時体内循環させているとは考えもしないだろう。

 故に彼女は常に最高の状態(マイペース)

 ローズ会長には悪いが、彼女が勝ち上がることをガイアスは確信している。

 

 それよりも不意打ちで脳を溶かすのはやめてくれませんかね?

 

 ガイアスはこれからの試合よりも、現在進行形では生み出される己の煩悩を抑え込むことが最大の難関になっていたのであった。

 

 

 




 
 
 
・ガイアス・クエスト
 会場へ向かっていたら賭博してたので王女一点張り全突っ張。
 確信しかないからね。仕方ないね。

 シドが登場したときは内心で驚愕し、アレクシアの不意打ちに脳がとろけた。

・アレクシア・ミドガル
 大した消耗もなく易々と勝ち進んでいる第二王女。
 ガイアスが見てる事で弱火から強火ぐらいに魔力を無意識に活用していたが誰も気づかなかった。
 まだ自覚までしていないかもしれない。

・ローズ・オリアナ
 可愛い生徒会長。
 金髪縦ロール清楚会長良いよね。

・チャヤム・カマセ
 「きえろ ぶっとばされんうちにな」

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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