王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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十六 自覚してないかもって法螺書いたの誰よ

 

 

「随分盛況なのね」

「王都では話題になっていますから。なんでも揃っていて、更にはどれも質が良いんです」

 

 王都で今話題のトレンドになっている存在 ミツゴシ商会へ足を運んでいる二人の女性。周囲の商品を視認しつつ、今まで見たことが無い品であることを理解した赤髪の女性が呟く。

 

 あまりそういった流行に疎いのだろう。

 彼女が着ている衣服も軍服であった。普段から己を律して行動している事が理解できる程に真面目な雰囲気を醸し出している。

 

「あまりこのような場所には来ませんが、確かに良いものが多い」

「でしょう?姉さまも王都の流行(はやり)は知っておかないと」

「アレクシア?流行(はやり)は結構ですが、あまり浮ついた衣装は選びませんよ。私は観光ではなく、『女神の試練』の来賓として聖地に赴くのですから」

 

 その赤髪の女性の呟きを肯定する女性――アレクシア・ミドガルは姉であるアイリス・ミドガルの言葉に当然わかっていますと返した。

 目的は観光ではなく、一国の姫として来賓する重要な立場なのだ。

 故にミドガル王国第一王女であるアイリスは、今回の一件を重要な任務として見ている。だがアレクシアは折角来賓として出るのに軍服だけでは見栄えしないという理由をつけて姉をミツゴシ商会へ引っ張ってきたのである。

 

「しかし意外でした。監査の話をしたのは私だけど、貴女の事だからてっきり自分が代わりに行きたいと言い出すと思っていたのですけれど」

「それも最初考えました。ですけど大司教との懇談は姉さまが正式な場で行ったほうが良いかと思い改めまして」

「…貴女の物事に首を入れたがる性格が落ち着いたことを喜ぶべきか、それとも別の事でどんな動きをしているのか心配したほうが良いのか…悩むところです」

「酷いですわ姉さま。私だって学ぶべきことは学びます」

 

 アイリス・ミドガルが正式な立場として『女神の試練』の来賓として赴くが、彼女は『紅の騎士団』を率いる団長だ。

 故に本来は軍服でも構わないのだが、アレクシアは折角の機会ということもあって姉を着せ替え人形にしたい気持ちを半分程隠していた。

 

 アイリス・ミドガルを一言で表すなら真面目な堅物。

 前にあずきバーのように硬い思考回路的な表現したこともあるが文字通りで、アレクシアの提案も渋々と言った発言である。

 私は軍人だから着飾っても仕方ないとでも考えているのかもしれないが、彼女は王女だ。王女(・・)だ。

 

 着飾らないのは勿体ないのである(頑なな意志)

 

 アイリスは国民からも人気が高い魔剣士であり、ミドガル王国最強と言われる程に強い。

 腰まで伸ばした手入れが行き届いた赤髪に、抜群のスタイル。そして魔剣士として鍛え抜かれたプロポーションはかの有名なミケランジェロが見ても「美しい…」と言葉を零すことだろう。

 

 そんな王女スキーの電波を受けたアレクシアも例外ではなく、姉のルックスで堅い軍服統一をさせるなど非常に勿体ない。

 折角ならドレスでも着て多少恥ずかしがりながら大衆の前にお姿を見せなさいコルルァ。と言わんばかりにアイリスを衣装ブースへと連れてきた。

 

 王族の娘二人がわざわざ買い物に来ることは、商売を行う者からすればそれだけで莫大な宣伝効果を生み出す。

 そのためすぐにVIP待遇を受けつつ、ミツゴシ商会の責任者であるルーナことガンマが商品提案などを受け持っているのだ。

 

「ご旅行ですか?」

「聖地へね」

「なるほど、それではこちらで必要なものを見繕わせます」

「お願いします」

 

 ルーナことガンマも立派な女性だ。

 王女達が旅支度で必要な物は当然理解できるため、スタッフたちに素早く指示を飛ばしつつ王女達の対応を行っていく。

 

(聖地…つまりアイリス王女が『女神の試練』の来賓として来られるということ。アレクシア王女は不参加…というよりは裏で行動するため、ということでしょうね)

(流石ルーナ…ガンマさんね。私の意図をすぐに理解してくれている。ガイアスからの紹介ではあるけど、表でも裏でも活動してくれている仲間がいることは非常に助かるわ)

 

 アレクシアの視線の意味を即座に見抜いたガンマは軽く頷いて理解の意を示す。それは彼女達は互いの立場を理解している事を意味している。

 

 アレクシアは教団の一員であったゼノン・グリフィを捕えて『シャドウガーデン』へとその身柄を引き渡した。その後1・2週間程は剣術大会の事もあって話をされていなかったのだが、ガイアスより『シャドウガーデン』で活動する者達を知っておいた方が良いとの判断で“七陰(しちかげ)”達との邂逅も終わらせていた。

 その場が今王都で話題沸騰中のミツゴシ商会であったものだから、アレクシアの驚きはすごいものであった。

 元々何度も利用させてもらっていたが今回の出会いもあり、一層利用頻度が上がるのは必然だと言えるだろう。

 王都で流行を生み出しているこの商会であれば、王女が何度も通っていてもおかしくはない。

 メディア達に余計な気づきを与えずに協力者と話を合わせる事も出来るこの場所は、ディアボロス教団が一切関わっていない事もあって非常に安心できる空間であった。

 

 なお父親のクラウス・ミドガルも娘に連れられて一度来店してからというもの、時間を見つけてはフードコートで安らぎの一服を取っている姿を見かけることもある。その時は声を掛けずに優しく見守ってあげていて欲しい。

 国王と父親の立場を両立させることは、周囲ではわからない重責なのである。

 

「あと、旅行とは関係ないんだけど…オススメの服を二、三着見せてもらえないかしら」

「?パーティ用のドレスならすでに発注したばかりでしょ?」

「そういうのじゃないというか、普段使い用でカジュアルな物が欲しいというか…」

「お友達にあげるものですか?」

「プレゼント…とは違うような…、私の為というよりは…まぁ…」

 

(!) 

 

 その時、ガンマに電流走る――!

 アレクシアが何を望んでいるのかを瞬時に察したのである――!!

 

「では、こういったものはどうでしょうか?」

 

 手を叩けば即座に並べられるは女性にとっては最大の武器の一つ。

 肌を隠す面積を最小限に抑えつつも、質感とデザインを両立させつつ機能美まで追求した珠玉の一品。

 

 それは、下着である

 

「こ、こここ」

「これは―――っ!!」

 

 今まで彼女達が見たこともない下着(ウェポン)に衝撃を受ける二人の王女。

 ガンマはにこやかに商品の説明を行うが、アイリスはその布面積の少なさに商品名を復唱した後に問い詰めることしかできない。

 

あのー…布面積が小さすぎますし、所々透けているような

「男性の方はとてもお喜びになるとか」

「男性っ!??」

 

 金槌で頭を思いっきり叩かれる程の衝撃をアイリスは受けた――ッ!!

 王国の王女ともあろう立場にいながら、男に(うつつ)を抜かしているのかと。

 

「ア、アレクシア!?貴女まさか!」

「お姉さま」

「へっ」

「私、お尻の形には自信があるのです!!」

「そういう問題ではありません!」

 

 その解答は是。

 否定せず、あろうことか下着を握りしめて離さないアレクシアをアイリスは咎めるが、その程度で止まるようなら彼女はここまで成長していない。

 これまでに見たことがない程に真剣な眼差しでアイリスに語り掛けるものの、その右手には色鮮やかな朱色の下着が握られている。そのためシリアス度が非常に下がってしまっていた。

 

 ちなみに赤色は人間の本能を刺激する色と言われている。

 更には赤色でレースが沢山ある下着は「特別」な感じが出るので、着ている自分自信も気持ちが高ぶる効果を有していると言われているのである。

 勝負下着と検索をかけると赤色の下着が多く検索候補に挙がってきたりするのはこういった意味合いもあるのだ。

 そんな勝負下着を躊躇いもなく選び取った意味はここでは語るまい。

 スピードワゴンはクールに去るぜ…。

 

「だ、だだだ男性相手とは一体どこのだれ…ま、まさかガi「お姉サマ?」ッ!?」

 

「時には言葉にしないほうがいいこともある。そうは思いますよね。えぇ、だってそうでしょう?まだ本人にお伝えしていない想いを先んじて他の者から話されるなんて非常に情けない事だと思いませんか?

 幾らそんな(・・・)関係だと周囲へ思われていようとも、まだどちらからもアプローチなんて行っていないのですよ?相手もそういう風に情報操作されることを把握して納得していただいている今だからこそ、余計な警戒心を持たれずに動くことが出来るのです。

 (ワタクシ)はミドガル王国の王女として、絶対に手放さないように行動を続けるつもりです。ですのでお姉サマ?お姉サマであったとしても、その余計な発言を聞かれていないと断言できるでしょうか?(ワタクシ)はそうは思いません。なぜなら彼はいつも私達(ワタクシタチ)を見守ってくださっているのですから。

 すでに数えきれないモノを戴いた。ならばそれに酬いようとも返せるモノは極少数。その中でも最も喜んでいただける事があるのなら、(ワタクシ)は喜んで差し出しましょう。でもそのためにはたとえ一欠けらであっても、準備している情報を耳に入れさせてはならないと考えておりますわ。オ姉サマ?今回もそのための下準備なのです。オ姉サマにもご協力してくださればより盤石に事を運ぶ事が出来ます。なので…宜しくお願いしますね、オネエサマ?

 

「は…はい」

 

「じゃあこれ買います!色違いをあと二着と、そこの穴の――」

 

 思いがけない口撃に腰が抜けたアイリスを他所に、アレクシアはあれもこれもと今後に必要になるであろうモノを買い漁っていく。

 先ほどの事は何だったのかと思ったが、これ以上余計な口を開けば本当に縫い付けられてしまうのではないかと思うほどの圧を感じたので口に出すことはなかった。偉い。

 

「…まぁ、いいかぁ」

 

 彼は強いんだけど、強く生きてほしい。

 呆然と天井の光を眺めながら、アイリスはそんな事を思ったのであった。

 

 




 
 
 
・アレクシア・ミドガル
 ミドガル王国第二王女。お尻に自信がある。
 ミツゴシ商会が『シャドウガーデン』の拠点であり、全員が関係者ということに驚くものの、扱っている商品が非常に便利なため一層利用している。
 なんか色々な感情を出した気がするけど、軽めの感情だからヘーキヘーキ。
 父親には相談(決定事項)済み。

・アイリス・ミドガル
 初登場の頭あずきバー。
 『女神の試練』の来賓として向かう第一王女。
 しばらくの間妹の着せ替え人形になった後に、余計な事を言いかけたので軽く窘められた。
 来賓として頑張るぞい。
 なお彼女だけ『シャドウガーデン』とミドガル王国の関係を知らない。

・ガンマ(ルーナ)
 ミツゴシ商会のトップ。
 追随を許さない品質の良さで王都の流行を総なめする経済能力最強。
 アレクシアの思い人であるガi…彼に対してちょっと同情した。
 なお自分達“七陰”がシャドウへ抱く感情の重さは棚に上げている。

・クラウス・ミドガル
 王女達のパパ。
 きょうもおちゃがうまいなー。

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