王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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二十一 なかまとこれから

 

 

「出来た…出来た出来た出来た…ッ!出来たぞぉおおおおおッッ!!」

 

「うっさいわ!!」

 

「ゴブェ!?」

 

 歓喜の雄叫びを上げた直後に王女の右ストレートでぶっ飛ばされ、グチャッと情けない音をたてながら地面へ吸い込まれていく男の名はガイアス・クエスト。

 まるで長年の悲願を達成した挑戦者のように歓声を上げていたところに思いっきり顔面パンチを喰らったことであえなく撃沈した。

 確かに個室に5人いるが、ある程度の広さは確保している空間だ。

 な…何故…。

 あまり迷惑にならない様に両手を上に掲げただけだというのに…。

 

「行動じゃなくて発言がうるさいって言ってるのよ!」

「ま、まぁ良いではありませんかアレクシア。細かい調整を行ったのはガイアスなのですから」

 

 フンスと鼻をならすアレクシアにどうどうと諫めるアイリスだが、そこまで効果はない様子。

 

「そ、そうですよ。オリヴィエさんをここまで完璧に再現できる人がこの世界に果たしてどれだけいるのかを考えると、大偉業と言ってもいいと思います!滑らかなラインから生み出される素晴らしい造形美!さらには無表情をある程度維持しながらも感情をほのかに感じさせるいじらしさ!!あぁ素晴らしいですわ!!」

 

「え、ローズ王女ってこんな性格だったかしら…」

「…こわい」

 

 同じく止めようと話している内に感極まったのか、オリヴィエを見ながら突然語りだすローズ・オリアナ王女に対してアレクシアはあまりにも失礼な反応だ。

 ローズの目先にいるオリヴィエもローズの変化に素で返しており、アレクシアの後ろに隠れているのだから多分恐怖も感じている可能性あり。

 いつもの御淑やかで麗しいローズ先輩はどこにいってしまったんだ…

 

「まぁローズさんの反応はわからなくもない。我ながら素晴らしい仕事をしてしまった…」

 

 だが気持ちは分かるのである。

 なぜなら目の前にはあの三英雄が一人 オリヴィエがいるのだから!

 

 髪型や顔を変えてしまえば別人になってしまうためにそのまま再現しているが、筋肉…いやスライム量か。こちらを色々と試行錯誤したお陰で無理に盛らずとも美しいボディバランスを再現出来たのである。

 その間アレクシア王女から養豚場の豚を見るかのような目を何度かされたが些細な事である(大ダメージ)。

 

「動作に支障はないかな?」

「うん、以前よりも動きやすい。背もちょっと伸ばしてくれたおかげでリーチも伸びていい感じ」

 

 作成したスライムソードを片手に軽くステップを踏むオリヴィエはまるで神事で舞う巫女の如き神聖さを兼ね備えている。

 普通は身体が変化すれば緻密な動作をするには慣れが必要になるのだが、即座に適応しているのは流石と言わざるを得ない。

 

「ほんとガイアスのゴーレムって色々出来るわね…。スライムも驚いたけど、ここまでくると人を作り出してるようにしか見えないわ」

「まぁ流石に自我で動くなんてのは今回限りだと思うけどな。俺が作るのはあくまでも自動人形(ゴーレム)であって生命()じゃない」

 

 人やエルフと遜色ない見た目を作り出せるだけでもすごいことは確かだろう。だがディアボロス教団がクローン技術でオリヴィエのコピーを作っていたとも聞いたし、表に出ないだけでこの世界の技術力は極めて高度な可能性もある。

 そう考えると聖域を壊せたのは僥倖だったのかもしれない。

 クローンであることを悪用した自爆テロなどされたら対処は困難だ。

 

「魔力制御は問題無さそうだな。あとは…魔力電池がどれだけ持つか、かな」

「それはそこまで問題になるのですか?」

「見た感じでは普通に動けていますが…」

 

 久々に動けることが嬉しいのか、剣を置いて舞踊を披露しつつ、見ていたアレクシアの手を取ってワルツを踊っていた。

 そんなオリヴィエを見たガイアスの問題点指摘に対し、問題があるのかと問うローズとアイリス。それに当然とガイアスは返した。

 

「自分が王都中に配置させてるゴーレム達は確かに一週間程度であれば補充無しで動き回れるけど、それは使用する機能を限定しているからだ。

 動いて、撮って、伝達し共有する。全部ではないけど基本的にはこの3つの機能重視だからこそ成り立つ電池の長持ちってことだな」

 

 手元に普段から活用するヤモリタイプのゴーレムを作る。

 このぐらいなら常時情報共有せずとも指定したポイントを一定周期で動いて映像を送ってこれる。簡単な話、動く監視カメラだ。

 エネルギーが一定以下になれば特定の位置で待機するようにもしているため、自分はそこに向かって魔力補給をしてあげればよい。

 

「だがオリヴィエさんのは全く異なる特注品(オーダーメイド)。食事も摂れるし、戦闘もできる万能型。睡眠をとることで自然に魔力を回復させたり食事のエネルギーから確保することも可能だろうけど、全力戦闘をする場合は話は別になるかな」

 

 これに関しては普段から複数の魔力電池を持たせることで対策する事は可能だろう。だが不意をつかれて破損した場合などはかなり厳しい。

 ゴーレム技術を用いている以上、魔力が切れれば今の姿を維持することもできなくなり、プルプルとした触感のスライムに戻ってしまうだろう。

 

 そうなれば彼女が出来る手立ては少ない。

 身内に魔力を補充してもらうか、頑張って周辺の生物を消化して魔力を得るかしなければ復活も困難だろう。

 

「まぁ今回は初回だからな。改良点を見つけたら少しずつ手を加えていけばいい。実際戦闘をしてみないと魔力消費量がどれくらいなのかとかわからないからなぁ」

 

「…では早速やってみますかオリヴィエ!」

「!…わかった。お願いします」

 

「待て待て待て、流石に時間が時間。今日は剣じゃなくて組手ぐらいで終わらせてくれ。明日から本格的に作成していくから」

 

 アイリスの提案に即座に応じるオリヴィエは気の合う友人に近しい関係になっている。

 立場が立場なだけに、気を許せる相手も少ないであろうアイリス(彼女)がオリヴィエと仲良くなってくれるのは精神衛生上でも良い事だ。

 

 現在の時間を加味せずに派手にやり合おうとする二人を止めながら今後の予定を考える。

 『女神の試練』が終了したことで本格的にミドガル王国では『ブシン祭』に向けての準備が行われている。

 今回は王女二人の参戦とあって非常に注目度が高いものだ。

 今まで以上に丁寧な教団の駆除作業を行っていくことで当日を万全の状態で送り出してあげたい気持ちが勝っていた。

 

「ガイアスはいつも通り裏方に徹するつもり?」

「そのつもり」

「ふーん…」

 

 名声が欲しいわけでもない為、ガイアスはブシン祭に出る気は正直あまりない。

 だがアレクシアは不満な様子だ。

 

「折角なら出場すればいいのに…」

「自惚れてるわけじゃないが王国関係者で一番裏を警戒出来るのは俺だろう。他に気づける人材がいるなら考えてもみるけど」

「…それならイータさんにも声をかけてみたらどうかしら?」

「イータさんに?」

 

 アレクシアから意外な人物の名前が出てきた。

 イータとは“七陰”の一柱 イータであり、表の顔はイータ・ロイド・ライトと名乗る茶髪ロングの女性エルフだ。

 このミドガル王国に「科学」という分野を持ち込んで発展させている主要人物であり、彼女の発明によって蒸気機関や数々のミツゴシ商品が生み出されている。

 ちなみにこれは『シャドウガーデン』と協力関係を結ぶ前に調べたものであって、イータとのプライベートでの関わりは言うほどなかった。

 

 ただクラウス国王陛下に渡した魔導具(アーティファクト)をアルファに渡した結果、彼女に見つかってしまったことで自室に突撃をかましてきたことがある。

 あれはびっくりしたが、話をしている内に魔力を貯める装置が量産体制に入ることが出来た様子だった。

 結構な頻度で仲間の“七陰”やシャドウ相手に人体実験を行っているマッドなサイエンティストである。なお腕は超一流。

 

『シャドウガーデン』(彼女達)との連絡も取りやすくなるし、相手の動きも把握しているでしょう?事前に確認しておけば手を貸してくれる可能性もあるし、オリヴィエさんの調整も加味すればイータさんは助けになるんじゃない?」

「あーなるほど。それもありか…ただ不安なのは没頭しすぎてオリヴィエさんを解剖しようとしないかだけ心配だな」

「あー…」

 

 興味を持ったことには文字通り寝る間も惜しんで研究を行う彼女にはゴーレムの事は話していない。おそらくガイアスがゴーレムを用いる事も広がっていないと考えている。

 知られればガイアスも研究対象になりそうなのであまりこちらの手の内を見せたくないのだが、協力してくれるのならば非常に心強い存在になるだろう。

 デメリットを考えてアレクシアも何か思い当たる節があるのか、なんとも言えない表情だ。

 

「ホッ!ハッ!!」

「――ッ!フゥッ!!」

 

 ピシガシグッグッ

 

 そんなそんな効果音が聞こえてきそうであるが置いておく。

 普段であれば魔力供給と共に遠隔操作をするが、今の彼女はなんの支援もない状態。完全に自分の意思で行動しており、段々と互いの動作が早くなりながら少しずつ魔力で身体強化して組手に取り組んでいる。

 当然本気で戦うわけではない為、彼女達にとっては運動前の柔軟体操の感覚だろう。

 

「――このぐらいでどうでしょうか」

「うん。いい運動になった」

 

「はい、では確認するのでちょっと触りますよー」

 

 魔力を練り上げてから少し経って組手を終了させたオリヴィエの背中に触れる。

 意識を移せば減少している魔力が地道にではあるが元に戻り始めている事が確認できた。

 

「エルフだからなのか魔力操作が元々得意だからなのか、自然回復の速度は悪くない。緊張とリラックスの切り替えを巧く使い分けてるから身体的負担を最小限に抑えられている事もあるかな」

「流石。そこまでわかるの」

「これでも二人の弟子がいるもので」

「なるほど。アイリスの師というのは間違いないのね」

 

 オリヴィエが持つ技量と魔力制御が高度なこともあり、軽度の戦闘ぐらいならば連戦も問題ないだろう。彼女もアイリスと戦える実力を持っているため心配しすぎるのも失礼だと判断した。

 

「ではこれを3つほど渡しておくので、魔力が枯渇しそうな状況などで飲み込んでください」

「これがマリョクデンチ?」

「はい。内ポケットやホルダーに収めやすい形にしてるので常に持っててくださいね」

「うん、わかった」

「オリヴィエさん。貴女の調整を知り合いにも協力してもらえるか聞いてみようと思うんですが、問題ありませんか?」

 

 素直に頷くオリヴィエに確認する。

 イータ側が了承するかはまだ分からないが、本人の意志を無視してやろうとはガイアスは思わない。

 

「貴方達の知り合いなら、問題ない。信じる」

「わかりました。連絡が取れ次第伝えますね」

 

 あっさりと了承したオリヴィエだが、それは彼女が何も考えていないわけではない。

 むしろ教団に利用されていた経験がある彼女は、自分達を信頼してくれた上で発言している。

 彼女と深く関わっているのはアイリス王女だけであるが、彼女達の仲間ならば問題ないという判断か。どちらにせよこちらも応えなければ失礼に値するだろう。

 

「事前にお父様に頼んで…手を回さないと…」

 

 これからの調整に意識を向けていたガイアスはアレクシアの呟きを耳にいれることはなかったのであった。

 

 




 
 
 
・ガイアス・クエスト
 王女三人の知識を借りつつオリヴィエを完成させた男。
 ブシン祭に参加するつもりは今のところない様子だが…

・アレクシア・ミドガル
 ガイアスの奇行に対して拳で対抗できる王女。
 イータと個人的関わりもあるために誘導を始める。
 
・アイリス・ミドガル
 オリヴィエと気軽に戦えるようになって嬉しい王女様。
 アレクシアの事を心配しているが政治的には貴女の方が心配される側である。

・ローズ・オリアナ
 オリアナ王国王女。
 オリヴィエの美に対してオタクになる。
 ガイアスの付き添いでイータに会いに行くことになるが…

・オリヴィエ
 ゴーレムとして復活を果たした英雄。 
 まだまだ調整が必要だが現時点でも一般騎士なら束になっても敵わない程度の強さ。
 ゴーレムだが浪漫を求めた馬鹿の活躍により、食事も摂れるし睡眠も出来る。最悪平凡な日常生活を送っていれば外部からの魔力供給は不要になっている。
 まぐろなるどのバーガーをお腹いっぱい食べたいタイプ。

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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