王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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二十三 出会い

 

 

「ここがミツゴシ商会…初めて来ましたわ」

「ここはすごいのよ。流行の最先端と言っても過言じゃない程に画期的な品が多く揃っているんだから」

「…人、多い」

 

 クラウス国王と話し合いを行った翌日。

 ガイアスはアレクシア王女とローズ王女、そしてオリヴィエと共にミツゴシ商会へとやってきていた。

 

 ローズ王女の感想に対してアレクシアが語ったことは紛れもない事実。それを示すように連日、商会の前には行列が形成されている。

 その想定よりも安い(リーズナブルな)品々は品質も非常に良い事はすでに周知の為、一般国民だけでなく貴族達の中でも非常に好評を博している。

 

 『良い品をより安く提供する』や『社会のインフラになる』を徹底した企業が市場で生き残れるのはどの世界でも同じこと。地球で某ユニク○やセブ○が社会のインフラとして強固な勢力圏を築いたのもその組織力あってのモノだろう。 

 それを踏まえてミツゴシ商会を見れば彼女達はすでに国家内でもインフラ企業に躍り出ているのがわかるというもの。

 物流・配送・紙幣通貨・娯楽施設(アミューズメント)・外食産業・etc…。

 ミドガル王国内の市場シェアだけで見ればすでにミツゴシ商会一強であり、その影響力は場合によっては国家よりも強いとまで言われるほど。

 これは確実に『シャドウガーデン』としての側面も有している事で、組織が一枚岩で行動出来ることが大きいのは言うまでもないだろう。

 

「お待ちしておりましたアレクシア様、ローズ様、リヴィ様、ガイアス様。ルーナ様がお待ちです。こちらへどうぞ」

 

 店員全員が『シャドウガーデン』の構成員ということは情報共有も隅々まで行われているということ。

 今回はブシン祭とオリヴィエの事で“七陰”と接触する必要があったためやってきたが、すぐさま店員に誘導された。

 ちなみにリヴィと呼ばれてたのはオリヴィエの事である。

 オリヴィエで通すには流石に有名すぎる名前であるため、余計な混乱を防ぐために考えたものだ。オリヴィエの両端を取っただけの簡単なものだが、あだ名みたいでわかりやすいだろう。

 

 本当は某ゲームの伝説から名前を拝借しようかとも考えたが、それ以上は怒られそうだったのでやめた。

 でも仕方ないじゃん。金髪で長い耳で知名度もあるじゃん…。ゼ○ダ姫とか好きなんだもの。特に64版とスマブラSP版と初期無双の姿。

 

「ほえー…」

 

 自分が生きてきた時代とは様変わりした商品達に囲まれたことで興味が持っていかれているオリヴィエは素直についてきているものの、目は目まぐるしく動き回っている。

 その目の輝き様が彼女の知的好奇心を満たしている事は確実だろう。

 

「どうぞお入り下さいお客様」

 

 進んでいく先には関係者しか入ることが許されない大きな扉。

 常に待機しているのか、左右に待機している店員がそれぞれ扉を開いたことで内部の様子が見えるようになった。

 誘導され、席につくと共にお茶セットが提供。流れるようにルーナ様が来ることを報告された。

 

「美味しい」

 

「そんなに急いで食べなくても大丈夫ですよリヴィ様」

 

「そういえばこれが彼女初めての食事、になるのかしら」

「…確かに」

 

 そう言われて気づく。

 オリヴィエがゴーレムとして復活してから初めての食事であった。

 ミツゴシ商会で提供される飲食物はこの王都内でもかなりの好評を博しており、売り上げも右肩上がりで伸びている。

 それも他の飲食業界をさりげなく傘下に収めつつ、技術提供までしている所からも抜かりはないということか。

 

 パクパクと食べるオリヴィエのお皿からは目に見えて減っていくのだが、そこは気配り完璧な店員さん。どんどんと追加を持ってきてくれたことで事なきを得る。

 

「そういえば今回アレクシアの伝手から来たけど、イータさんはどうするって?」

「イータさんの返答はオッケーって言ってたわ。でも詳しくは実際に会ってからって言ってたから一緒に来るんじゃないかしら」

「そうなれば話もまとめやすいから助かるな」

 

 イータ・ロード・ライト。

 “七陰”の一柱でありイータとして『シャドウガーデン』で活動を行うエルフの女性。

 よく建築・研究に没頭しているため、連絡を取ろうにも彼女が寝ている事も多くあるために都合が合わないことも多いらしいのだが、アレクシアの話を聞いて必ず来ると心強い返答を行ったらしい。

 

 実際今回の話もイータと話が出来なければ目的の半分が達成できなくなってしまう為、懸念点が解消されるのは非常にありがたい。

 

「お待たせしましたお客様。ルーナ様、イータ様。そして、アルファ様が到着なされました」

 

 普段彼女達が使用する応接室よりも広く作られた個室。

 その豪勢な扉が開いて3人のエルフが入室する。

 

 茶髪ロングで少し眠たそうにしているイータ。

 藍色ロングで、こけそうになりながらも補助で耐えた(・・・・・・)ルーナ会長ことガンマ。

 そして金髪ロングの『シャドウガーデン』統括者 アルファ。

 

 今後に関しても非常に心強い仲間として活動を行ってくれている者達である。

 

「お待たせしましたアレクシア王女、ローズ王女、リヴィ様、ガイアス様。今回はこれから行われるブシン祭に関して、そしてイータとの話合いということで参られたとお聞きしております。

 『シャドウガーデン』としてアルファ様にも……!??えっ?英雄オリヴィエ?」

「おぉ…、これが今回の件の話ですか」

 

 笑みを浮かべて話しかけてきてくれたガンマであるが、こちら…オリヴィエを視認したことで驚愕。

 彼女はすでに死亡している事が記録に残っており、彼女達も聖域にある記憶の墓場によって彼女の人生を知り得ているが故の反応であった。

 

 なおイータはオリヴィエの話をアレクシア経由で聞いていたためか驚きこそなかったものの、その現物を見て興味がそそられたらしい。

 

 そして統括者アルファの反応は…

 

「…え?」

「ん…。貴方、私の子孫…わかる。いい子いい子」

 

 オリヴィエから抱き寄せられて頭を撫でられている事で状況が理解できていなかった。

 面影があるため、共に確認すれば彼女達は親族であることがわかるほどに似通っている。

 

 オリヴィエはゴーレムで復活しているため生き死にの正確な事は分からないが、教団の元で生きてきたことと子孫を残している事からもアルファよりは長く生きてきている。

 対するアルファは長寿のエルフ族ではあるが、15歳程度。

 完全に祖母と孫の関係性であったのだ。

 

 傍目で見ても孫をかわいがるお祖母(ばあ)ちゃんの組み合わせであり、オリヴィエが自分の孫を見て、最初に可愛がることは決して可笑しなことではなかった。

 

「英雄オリヴィエ…」

「違う。今の私はただのオリヴィエ。貴女の名前は?」

「アルファ、…です」

「そう、アルファ…いい名ね」

「あ…」

 

 アルファも“悪魔憑き”として排斥された経験があるエルフだ。

 その前まではごく普通の生活を送っていたとしても、幼い時期に周囲から排除という名の悪意を得てしまえば彼女の感性に多大な影響を与えることは容易に想像できるだろう。

 しかしオリヴィエ自身、魔人の血による研究に巻き込まれた存在だ。

 “悪魔憑き”という症状が身体に引き起こす影響を知り得た今、彼女にとってアルファは懺悔すべき存在であり、他のエルフ達に代わって愛情を注ぐべき存在であった。

 

「ごめんなさい。私のせいで、アルファに迷惑をかけた」

 

「…ッ!!」

 

 オリヴィエの謝罪に、アルファは歯を食いしばってオリヴィエの抱擁から抜け出した。

 思い出したのだろう。“悪魔憑き”時代の記憶を。

 

「~~っ…。それは違う…。オリヴィエ、貴女も被害者であることは私も知っている。ディアボロス教団に利用されていたことを」

 

「利用されていると理解していても、長い間私は彼らから逃げ出すことをしなかった。その期間が無ければ、私達が後世に残さなければ、被害を受ける人を減らせたかもしれない」

 

「ッ!それで貴女が教団の代わりに謝罪をすると?ふざけないで!」

 

 申し訳なさそうに語るオリヴィエを見て、アルファの胸中には怒りの感情が沸き上がってくる。

 英雄オリヴィエの人生を知っているアルファからすれば、利用されていると理解していても、平和に繋がると信じて彼らの元にいたオリヴィエを責めることなんてできない。

 諸悪の原因はディアボロス教団なのだ。

 これはアルファを救ってくれたシャドウからも語られている真実。

 教団(奴ら)さえいなければ、被害者が日に日に増えていくことなんてなかったのだ。

 

「私は『シャドウガーデン』“七陰”の一人、アルファ。貴女がどんなことを考えているかは関係ない。私達はディアボロス教団をこの世界から消し去るまで戦い続ける。

 決して貴女の謝罪を受けるために、今日(こんにち)まで戦い続けてきたわけではない。安易な謝罪は私達の怒りを買う行為だと理解しなさい」

 

「…アルファは、強いのね」

 

 考え方を変えればオリヴィエ達三英雄が教団に利用されたことが原因でディアボロス細胞に適合し、悪魔憑きの症状を全世界にばら撒いた。そう捉えることも可能なのだ。

 なので悪魔憑きの症状は自分達が細胞の適応後に子孫を遺してきたために起こってしまった事例ということでもある。

 

 それにオリヴィエは謝罪の意を見せたのだが、それはこれまで生き続けてきた同胞たちに対する侮辱になる。

 エルフの里とは縁を完全に切っているアルファであるが、命を繋いでいく尊さを自分の先祖たるオリヴィエが否定することを受け入れることが出来なかったのである。

 

 自分の先祖が悪いのではない。

 諸悪の根源は細胞の暴走を“悪魔憑き”として世界に広め、それを処分するものであると方針を決めて行動を続けているディアボロス教団なのだと。

 オリヴィエはアルファのその意志を汲み取った。

 自分に怒り、身体的被害を受けようとも、彼女は受け入れるつもりであったのだが、アルファの言葉に喜びの感情を秘めつつ返すのだ。

 

 オリヴィエがアルファに近づき、アルファの手を取った。

 そして一言。 

 

「ありがとう」

 

 静かにそう伝えるオリヴィエの頬には涙が伝うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良きかな」

 

「貴方には、詳しい話を聞かせてもらう。拒否権はないわ…いいわね?」

 

「ウィッス」

 

 

 




 
 
 
・オリヴィエ
 現代において発展している食文化に喜々累々。
 自分の子孫と出会い、謝罪するが逆に諭された。
 孫とは初対面であるが、立派に成長していてお祖母ちゃん嬉しい。
 これから定期的にミツゴシ商会に出没するようになり、その都度アルファが対応する姿が見受けられるようになる。
 まぐろなるどを頬張る姿を見るたびに癒される者が多数発生する。

・アルファ
 ブシン祭の警備に関してガンマについて来たら先祖が居てびっくり。
 でも今を生きているのはシャドウのお陰と自分の意思なので余計な謝罪はいらない。
 美味しいものを求めてミツゴシ商会を徘徊するお祖母ちゃんに世話を焼きつつも、時折甘えることもある。
 これは本人は気づかれてないと思っているが、ミツゴシ店員全員知っている。

・イータ&ガンマ
 やってきたけどオリヴィエとアルファの絡みを書きたかったので出番が少なかった。
 話を練り上げてシャドウ様にも報告する。

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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