王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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二十四 予選開始の宣言をしろ!磯野!!

 

 

 ブシン祭

 

 

 それは各国の名だたる猛者(もさ)が集い、剣士の頂点を決めるビッグイベント!!

 

 クラウス国王陛下が仰っていたように、世界各国から猛者が頂点を目指して鎬を削るこの大会は観光を含めて物流や小売、警備など様々な業界が活気づく催しだ。

 これに参加することで己の名声を高めるだけでなく、今後の就職活動にも少なくない影響を与える。

 そのため参加者全員が本気で挑み、記念に受けるような軽い者達は予選で基本全員叩き落されるのだ。

 

「で、私達に何かいうことはないかしら?」

 

「この度は誠にご迷惑をお掛けしました」

「…ガイアスは悪くないよアルファ。彼は、私の無理を受けてくれただけ」

 

「それが事実なのは分かってます。ただ『シャドウガーデン(私達)』も聖剣を探していたのよ。せめて一言は伝えてほしかったわ」

 

 年に一度のビッグイベントの予選の日。

 概要を語ろうにも、ガイアスの背後では圧をかけてくる美女が一人。アルファである。

 

 報連相をしっかり行えやオラァと威圧するのをオリヴィエが宥める姿はまさに家族の姿。

 色々と調整しているため、オリヴィエが大人しめのお姉さんエルフ。

 アルファは棘のある妹エルフに見えてくる。

 あれ?これどこかの王女達もそんな感じなのでは?

 

「いやまさかアイリス王女が貴女たちの目を通さずに持ってくるとは思っても見なかったので」

「それは確かにこちらの落ち度よ。私達の目を盗むなんて…彼女も相当な実力を持っているということね」

「それは否定しません。アイリス王女も、アレクシア王女も、“強い”ですよ」

「うん、強い。私も保証する」

 

「オリヴィエ…」

「………」

「うっ…。」

「……やっぱり、だめ?」

「…わかったわよ。オリヴィエお祖母様」

「…!!(パァッ)」

 

「てぇてぇ」

 

「ぶっ飛ばすわよ貴方」

 

 オリヴィエの悲しい瞳からは逃れることが出来なかったアルファは折れてオリヴィエが望んだ呼び方をするように決めた様子。

 それに対して素直な反応をしたらガチギレしてきた。

 カルシウムが足りていない女性である。

 

 ちなみに彼女がなぜガイアスと同行しているのか。

 それはオリヴィエの頼みであるからであった。

 

 

『…ブシン祭予選も含めて観戦しないかって?『シャドウガーデン』としての仕事は無いけど、まとめるために下準備が必要だから…』

『…だめ?』

『うっ…』

『………』

『うぅ…、…わかった。わかったわよ』

 

 

 そんな感じの会話であった。

 どうやらオリヴィエはいつの間にか泣き落としという技術を習得したようである(アレクシア&ベータ直伝)。

 自分のご先祖様の泣き落としはアルファにも効く様子。

 “七陰”の中でも完璧超人として通っているアルファ。彼女は立場もあって常に気を張り詰めざるを得ない。おそらくそれを心配に思った他七陰達によって生み出された戦略なのだ。

 実際アルファに対等の立場かつ甘やかせるのは関係者を含めてもオリヴィエかシャドウぐらいのものだろうから、見事にその狙いは的中していると言っても良い。

 

 秘密裏で行われた七陰ジャンケンに見事勝利した一人であるアルファにとっても羽を伸ばせる貴重な機会。

 オリヴィエと共に楽しんでほしいものである。

 

「でも意外でした。オリヴィエさんが俺についてくるとは。てっきりアイリス王女についていくものかと」

「…それもしたかった。けど、騎士団もいるから、邪魔になりそうだった」

「は?何それ、お祖母様が邪魔になるわけないでしょう」

「アルファさんステイ」

 

 どうやらオリヴィエはアイリス王女が『紅の騎士団』として出場するため、周囲の関係に気遣ってついていくのをやめたらしい。

 自分達と接する事で認識がおかしくなるが、アイリスもアレクシアもミドガル王国の王女であるため、本来は非常に繊細に扱っていかねばならないのだ。

 修行下でボコボコにして、プライベートでは気軽に接しているため、普通に忘れそうになるが。

 

「アイリス王女も『紅の騎士団』の団長として活動を行っているから仕方ない。部下として引き抜いた団員達も腕が立つ者達を集めているから、人数はまだ少数でも実力は随一だろうさ」

「…騎士団随一、ね」

「『最強の組織(シャドウガーデン)』と比べるのは可哀想だからやめて差し上げて」

 

 アルファに鼻で笑われているが、実際は彼女達の練度がおかしいぐらいに高いだけである。

 彼女達の戦いをゴーレム越しに見たこともあるが、自分が鍛え上げた王女達と近しい実力を持っているためにまともに戦えるのは王女二人ぐらいだろう。

 

 だが敵わないなりに『紅の騎士団』にも粒が揃っている。

 『獅子髪』のグレンやマルコ・グレンジャーはその中でも腕が立つ。

 “あの”アイリス王女の御眼鏡に適い、引き抜かれた経歴を持つ者達だ。

 日常訓練でアイリスの扱きを受けていないはずがない、と考えれば実力も王国内ではかなり上位層になるのではないだろうか。

 

「アレクシアとローズも同じ。騎士団が護衛についてた」

「…普通に考えれば王女に護衛がつくのは当たり前だな」

「だからガイアスについてきた」

「なら仕方ないな」

 

 まさか予選にまでついてくるとは思っても見なかったが、オリヴィエがそうしたいと思っているならガイアスとしても否定することじゃない。

 巻き込まれたアルファであるが、それもまた良しと考えて貰えばよい。

 

 そうしてやってきたのは予選会場の受付。

 腕だけ以上に発達したひょろひょろの男やたぷたぷの腹を見せびらかすモヒカンなど様々な色物も映ったものの、他はしっかりと武装した戦士が我こそはと空間を昂らせている。

 何人かガラの悪い者もいたが受付では誘導の元、全員律儀に並んで待っていたのは意外であった。

 

「こちらに名前を記入してください」

 

「了解。ガイアス・クエスト…と」

「ん。リヴィ・ハイリア」

 

「――確認完了。受付完了しました。それでは予選開始までごゆっくりお待ちくださいませ」

 

「ありがとうございました」

「…ありがとう」

 

「―――いやいやいや!?なぜお祖母様まで出場を!?」

 

 二人で受付を終えれば慌てて問い詰めるアルファ。

 どうやらオリヴィエのあまりにも自然に受付を済ませたものだから、止めることを忘れてしまっていたようだ。

 

「確かに。特に参加する予定はなかったのでは?」

「ん。私も強さ比べ、したい」

「なら仕方ないな」

 

「仕方なくないわよ!」

 

「でも本人の意志があるなら止める理由もないし…」

 

「貴方いい加減すぎないかしら?!」

 

「アルファ…だめ?」

 

「~~~ッッ!?」

 

「私は、強い相手と戦いたい。でもそれ以上に、アルファ。貴女にもブシン祭を楽しんでほしい。だから…応援して、ほしいな」

 

「っっ。…――絶対に無茶してはダメよ」

 

「ありがとう。アルファ」

 

 オリヴィエの意志と頼みにアルファが折れた。

 とんでもない事が無い限りは彼女はオリヴィエの頼みを断ることが出来ないようである。

 オリヴィエ側もソレを悪用する事はないだろうから、いい関係をこれからも築けていけることだろう。

 

「貴方もお祖母様から目を離さないでよ」

「試合では常に気を配るさ。俺だって気に掛けているんだから」

「まさか急に参加することになるなんて…イータになんていえばいいのかしら」

「映像を見せれば喜々として楽しんでくれるんじゃないか?」

「イータはそんな戦闘狂じゃないわよ」

 

 頭を抱えるアルファに鎮痛薬を渡したら貴方のせいだとジト目で見られた。誠に遺憾である。

 

 

『これより予選一回戦、第3試合を行います。

 これからお呼びした方は会場までお願いします』

 

 

「おっ」

「出番…」

 

 予選とは言えども大規模な祭典。

 会場の多くに選手の待機場所が用意されているだけでなく、飲食を行えるように店も多く開いていた。

 予選の段階でも一般観戦が可能であり、マニアな者達や敵情視察を行う者達など、多くはないが、少なくない観客が席を埋めて試合を今か今かと待っていた。

 

 予選は数日かけて行われるがこの会場一つで行われる。

 そのため受付を済ませた選手たちも観客席を利用して観戦する事が多い。

 

 この会場の一部ではとある団体が周辺の席を独占しており、異様な雰囲気に包まれていた。

 まぁガイアス達関係者一同なのだが。

 

「漸くガイアスの出番ね。ローズさんやリヴィさんの試合はまだまだ先でしょうし、待ち時間どうしようかしら」

「良いではないですかアレクシア。たまにはゆっくりと他の試合を観戦するのも勉強になりますよ」

「そのレベルにいる人が果たしてどれだけいるのやら…」

 

 アイリス王女とアレクシア王女は二人とも予選に出場する必要はない。

 アレクシアは魔剣士学園の剣術大会で優勝しているため予選は不要になっているし、アイリスに関しても王国の騎士団内での規定により、騎士団の代表として本戦に出場することが決まっている。

 今回彼女達が騎士団を連れてきているのは警備の仕事があるためでもあり、ガイアスとローズ、そしてリヴィの予選を勝ち抜くのを見に来たためであった。

 

「しかしリヴィさんも電撃参戦するとは思っても見ませんでした」

「それはこちらのセリフよ。まさかお婆様がブシン祭に出場するなんて…心配だわ」

「初めてのお使いに行かせる子供を心配する母親みたいな反応ね…」

 

 実力は知っているはずなのだが、それでも心配なのかそわそわしているアルファを見たアレクシアは彼女ってこんな人だったかしら…とふと思う。

 初めて会った時はもっとこう、クールで完璧な女性だとアレクシアでも思ったものだが、今の反応は新鮮である。

 

(…ん?)

 

 他の者達は気づいていないのか、アレクシアはふと自分達の奥に座っている女性陣が気になった。

 明らかに数名がこちらを見ていい笑顔を浮かべている。

 

(いやあれってベータさんやイプシロンさん達じゃないの。スライムで変装してまでなにやってるのよ)

 

 どうやら自分の上司の反応が気になってやってきた様子。

 普段との違いに終始楽しそうにしているが、彼女達はアレクシアが気づいたことも察している。

 対する此方は試合をワクワクしてみている戦闘脳筋(アイリス姉さま)にお祖母ちゃんを心配する過保護エルフ(アルファさん)。どちらも試合に意識が持っていかれているのか彼方に気づく様子はなかった。

 

 

 

 

 

 

「ハァア…!!アルファ様があんな表情を浮かべるなんて…!これはしっかりと記録に残しておかなければ…!!」

「アルファ様がまさかここまで変わられるとは…!オリ…リヴィ様には是非とも本戦に出場して頂いてもらわねば」

「ええ。そして予選を勝ち抜くシャドウ様…またの名をジミナ・セーネン!覇気を感じさせないその身なりと動作からは予測できない活躍を―――」

 

 “七陰”のベータとイプシロンは予選の観戦として変装したまま観客席へやってきていた。

 実は彼女達はジャンケンで負けた敗北者であり、彼女達が慕い敬うシャドウことシド・カゲノーが変装した姿であるジミナ・セーネンの試合を観戦し続けることが出来ない悲しい存在であった。

 そのため予選の姿だけでもこの目に焼き付けようとやってきており(仕事は部下に任せた)、アルファに見つかりでもすれば普通に叱られることをやってのけている。

 だが肝心のアルファはお祖母様(オリヴィエ)に意識を割いており、こちらに気づくことはない。アレクシア王女にはちょっとした違和感によって気づかれてしまったが、彼女は聡明である。わざわざバラしたりしないだろう。

 

 自分達が愛して(慕って)やまないその御姿を記録に遺し、シャドウ様戦記として後世にまで語り継いでいくためにベータは紡ぐ。

 イプシロンもこの感情と抱いた想いを音楽にのせることで、演奏の腕に更に磨きをかけていくことだろう。

 確かにジャンケンで負けた。

 しかし転んでもただでは起きない。

 それが“七陰”の彼女達なのである。

 

 

「「絶対に、シャドウ様の御雄姿を、見届けてみせます!!」」

 

 

 







・ガイアス・クエスト
 無事に予選受付を完了した主人公。
 オリヴィエとアルファと共に会場に向かう珍しい光景である。
 
・オリヴィエ
 リヴィ・ハイリアとしてブシン祭にいざ出陣。
 アルファにお節介をやかれるようになる。
 腹黒コンビに必殺技を教わっていた。

・アルファ
 『シャドウガーデン』の統括者。
 完璧超人なのだがオリヴィエの行動に振り回されることになる。
 お祖母ちゃん大好きっ子。

・ベータ&イプシロン
 七陰ジャンケンに負けた敗北者。
 おそらく本戦で喜々として語られた内容に対して血涙で返すことになる。でもしっかり仕事はこなすプロ。

『ハァ…ハァ…敗北者?』

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