王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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二十五 予選開始(おわり)ィィィィイイイ!!

 

 

 予選も無事に終了した。

 飛ばし過ぎ?

 とはいってもこちらの参加者はガイアス、オリヴィエ、ローズ王女である。

 ガイアスとオリヴィエの二人はディアボロス教団相手でも一人で対処が出来る程の実力がある。

 ローズ王女の実力は二人まではないものの、学園最強と呼ばれるぐらいには強い。

 それに加えてアレクシアからの指導も増えたことで技術の伸びも好調だ。力だけでやってきた相手に苦戦するのかと言われれば否であった。

 

『アイツ剣を使わずに戦ってやがる…!?』

『なんだあのエルフ!?速すぎてみえねぇ!!』

『オリアナの王女もすげぇぞ!あのイーチゲキの攻撃を全部受け流してやがる!!』

 

 大体そんな反応であった。

 その中でも異質な雰囲気を出していたのがジミナ・セーネンという男だったのだが…あれ絶対シド・カゲノーだろ。

 全員が頂目指して戦いに来ている中で明らかに弱そうな雰囲気。

 見た目も、行動も、その在り方も全てが弱そうと思わせるほどに完璧すぎて逆に目立つ。

 学園生活で実力を隠しているあの男と重なって見えていた。

 

 それもあるが何よりも観戦してた二人の七陰がキャーキャーと甘い声を挙げていたことで察した。

 

(意図して行ったものかはわからないが、くしゃみや首鳴らしと平行して攻撃を行う所作。それも大多数は分からない程の速度で動くか…。本戦で戦うとなったらどうやって攻略するべきか…)

 

 彼の異常な強さは非常に厄介。

 同じ転生者である以上、彼が地球(あちら)の武術体系を踏襲していてもおかしくない。

 というよりも自分も同じような立場である以上、彼の体捌きを考えればかなりの腕前であることは確実と見ていたほうが良いだろう。

 

(ジミナとして出場している以上、武装を新調することはないだろう。それで考えれば武装破壊から殴り合い(ステゴロ)に持っていくのが良さそうか…?だが自分よりも動けるとなればそれも悪手。まぁ情報も少ないし、実際に本戦時に確認するぐらいしか方法はないか)

 

 いくら考えても結局結論はそこに終着する。

 どれだけジミナとの戦いを予想しようにも情報が少なすぎるのだ。

 対戦相手もこの世界基準で腕が立つ者だったようだが、誰もが一撃でKO負けでジミナの実力を引き出させたとは到底言えなかった。

 

「どうみます?」

「…強い。今まで見た相手の中でも、一番」

「えぇ。本戦で当たった場合は、全力で挑まなければならないでしょう」

 

 ローズ、オリヴィエ、そしてアイリスと続く。

 彼女達もジミナ()の強さに感づいた様子。

 本戦に出場が決まっている面子であるため、彼と対戦を行う際は躊躇いもなく全力で挑むことを決めさせた。

 

 そんな現在、すでに最後の試合が行われ、ツギーデ・マッケンジーが勝ち上がったことで号泣しながら勝利を喜んでいる。

 そのため本戦までの対戦を決める流れであり、出場者たちはこれを目的としてやってきている側面も強かった。

 

『皆様お待たせいたしました。

 これより本戦対戦順を決めさせていただきます』

 

 本戦対戦相手を決める大事な場面。

 決め方は実にシンプルで、出場者たちに番号を割り振っていき、比較的大きめの抽選器をガラガラすることで出てきたボールの番号を読み上げるというもの。

 公衆の面前で行われるため、原始的でありながらも不正が比較的しづらい形になっている。

 前は本戦当日に公表などしていたらしいのだが、一度金で操作していたことが発覚してからこの形式に替わったらしい。

 

『3番!16番!』

 

 そんな呼びかけをするとともにトーナメント表に名前を記入していく。

 本戦に出場できる者は総勢32名。

 例え悪天候だろうとも実施される本戦はそれでも一目強者を見たいという者達によって埋め尽くされる。

 

 商魂逞しいミツゴシ商会がその流れに目をつけないはずがなく、会場で表を確認したスタッフが即座に連絡を入れていた。

 おそらくグッズなどを作って応援するように誘導していくのだろう。

 陰の叡智を経済に活用して利益を得ていることから、今回は特に稼ぎ時になるだろう。

 

「…決まったわね」

 

 対戦相手が決まり、大きくトーナメント表が張り出される。

 

「なるほど…」

「これは、挑みがいがありますね…!」

 

 それを各々確認し、対戦相手を確認。

 そしてその内容はこうである。

 

ローズ・オリアナVSツギーデ・マッケンジー

 

ガイアス・クエストVSボンコ・ツーマン

 

 順当に勝ち抜いていけば次戦でローズとガイアスが対戦する組み合わせになるだろう。

 ローズもアレクシアから教えを受けているため、ガイアスがアレクシアの師であることも理解している。それを知ったうえで、彼女はガイアスに勝つために全力で挑んでくることだろう。

 

「…ん」

 

リヴィ・ハイリアVSロマンス・アミーゴ

 

ジミナ・セーネンVSアンネローゼ・フシアナス

 

 オリヴィエは次戦で当たる相手を把握した。

 今の自分がどこまで戦えるのかも考慮しつつ、得物である愛剣を強く握りしめる。

 そして…

 

「…これは一層…当日が楽しみですね姉さま」

「そうねアレクシア」

 

 

アレクシア・ミドガルVSアイリス・ミドガル

 

 

 ミドガルの未来を担う二人の王女が、初戦にてぶつかり合う。

 互いの拳を合わせた女傑達は戦意を高ぶらせながら会場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「首尾はどうなっている?」

 

「オリアナ王国内の情報操作は滞りなく行われております。…しかしミドガル王国内の警備が想定を遥かに上回っており、上手く入り込めていない状況です」

 

「っ…!何をやっているのだ貴様らは!もう時間が無いのだぞ!」

 

「申し訳ありません!」

 

 オリアナ王国内。

 ブシン祭まで後僅かしか時間が残されていないのにも関わらず、思い通りに事が運ばないことに男――ドエム・ケツハットは憤りを隠しきれなかった。

 元々今回のブシン祭を利用してミドガル王国の国王 クラウス・ミドガルを暗殺する事を計画していたのだ。

 しかしここ最近になって急速に王国内の勢力図が一変。

 内部に入り込んでいた工作員は全員が始末され、深層へと入っていた者達は警戒されて上手く動くことが出来なくなっていた。

 何度も人員を派遣しても結果は同じ。

 わかることはミドガル王国が本気になって『ディアボロス教団(我々)』と事を構える気でいるということだ。

  故に今回のブシン祭でオリアナ王国国王であるラファエロ・オリアナを利用し、暗殺を行うことを企てていたのだが、それすら上手くいっているとは言い難い状況になっていた。

 

「チッ…厄介な奴らだ…。まさかこちらに噛みついてくるとはな…」

 

 歯噛みする。

 元々ローズ・オリアナも手中に取り込む予定だったのだ。

 ブシン祭の予選が行われる前に一度王国へ帰ってくるローズに合わせてこちらの部下たちも動かす。

 そして己を婚約者とすることで余計な動きを行うことをけん制しながら今回の作戦を実行する…その予定だった。

 

「あの女は頭が弱かったというのに、奴らはそうではない…。だが今、こちらから動くことも難しい」

 

 年に一度の大きなイベントだ。

 そこに傀儡にしているラファエロ国王と宰相として自分――ドエム・ケツハットが出席する事は必須条件である今回において、内部で血を流して国内に混乱を齎してはならない。

 

 国の現状を理解してローズ・オリアナが衝動的にこちらへ危害を加えてくれれば動きも取りやすくはあった。

 国王へ反逆の意志があると情報を流すことでオリアナ関係者を捕えて牢へ入れることも可能だったのだ。

 

 しかし今回ローズが帰ってた時に見せた反応はまさかの無し。

 彼女からすれば明らかに父親である国王が正常ではない状態であることがわかるというにも関わらずだ。

 馬鹿な女だから、ではない。

 あれは明らかに事前に国内の、それも中枢の情報を掴んでいた上での対応だった。

 

 ブシン祭に出場して己の功績を作ることを前提に、ローズはミドガル王国へ留学していることになっている。で、あれば剣術大会で良い成績を残せなかったとしても、ブシン祭に出場する事が決まっていればオリアナ王国(こちら側)からは彼女を自国に押しとどめることは困難だ。

 勿論政治的観点から国王命令として軟禁することも可能だったのだが、そうなれば一方的にこちらが約束事を破棄することへ繋がり、相手からこちらへの不信感へと移動していく。

 それは計画に支障が出てしまう為憚られたのである。

 

「クララ・オリアナに関してはどうなっている?」

 

「魔剣士達を取りこんで抵抗を続けております。現状に不満を持っている者達を取りこむことで教団(我々)に対抗しつつ、支持を集めているものと思われます。」

 

「裏にいる奴らは特定できたか?」

 

「特定…までは達していません。しかしミドガル王国側から支援を受けている事は間違いないようです」

 

「わかり次第すぐに報告しろ」

 

「ハッ!!」

 

 退室した部下の背を見送りつつ、ドエムは眼前の問題にため息をつく。

 

 オリアナ王国には今、二つの勢力に別れている。

 一つは己が動かしている勢力。ディアボロス教団の息がかかった勢力。非武力派だ。

 二つ目はオリアナ王族の一人、クララ・オリアナが独自に動いて魔剣士達を取りこんで抵抗を続けている勢力である。これを武力派としておく。

 

 勿論物理的にやりあっているわけではない。

 だが水面下で確実にクララ・オリアナの勢力が力をつけてきており、魔剣士達を味方につけている以上、教団の力を使わなければすでに武力派の方が戦闘面においては強固だろう。

 

「一体どこの誰だ…こちらの情報を流している奴は…」

 

 非武力派に位置する者達は豪勢な生活を送り、芸術に傾倒して私腹を肥やすことしか考えていない愚か者どもだ。

 金で動く程度の忠誠心しかもっていない奴らであるが、こちらから率先して金を投げうっていい様に利用している。

 こちらの支援が無くなれば困る貴族どもが武力派へ情報を率先して流すとは考えられない。

 そうなれば考え得るのは武力派(あちら)のスパイ疑惑なのだが、貴族のほぼ全員が幼少期から教団の教えを刷り込まれている以上その可能性が薄いのだ。

 

「何度偽報を流しても聞いた様子はない。それどころか的確にこちらの弱い所を突いてくる。情報操作に長けた存在が裏にいるのは必然だ…」

 

 ローズが何食わぬ顔でミドガル王国へ再度向かっていったのが憎たらしい。

 こちらの気も知らずにのうのうと本戦にむけてウォーミングアップでもしているのだろう。

 それを考えれば沸々と怒りが出てくるのだが、ここで我を忘れる訳にはいかない。

 計画の要である“契約の指輪”を完全に手中に収めるために、ドエムは何が何でも今回の計画を進めていかねばならないからだ。

 オリアナ王国に伝わる『黒キ薔薇』の伝説を手に入れるべく、ドエム宰相は暗躍を続ける。

 その状況すら『シャドウガーデン』に把握されているとも知らずに…。

 

 

 




 
 
 
・予選設定
 探しても結構曖昧にしかなかったのでこんな感じに。
 本戦でも独自になってます。
 最近漫画を集めたが、結構アニメと描写が異なっていて面白い。

・ドエム・ケツハット
 名前がとにかく可哀想な人。
 彼がラウンズになることはない(断言)

 子安さんのドエム呼びがやけに生々しい。

・クララ・オリエナ
 アニメには登場していないローズ・オリアナの妹。
 裏で情報を流してくれている協力者の助けを借りて王国内の魔剣士達を束ね始めている。
 一体どこの陰庭が手伝ってくれているんだ…
 
 

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