王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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二十九 王国最強②

 

 

『へぇーこの世界に龍が存在しているんだ』

 

 だいぶ前に聞かれたことがあった。

 1000年前に存在したとされる小王国。その王国が『霧の龍』と呼ばれる古龍に滅ぼされたというお話を。

 

『龍によって滅ぼされた国もあるらしいのだけれど、あくまで伝説の話よ?現れた話なんて聞いた事がないわ』

『私達もこの世界の全てを知っているわけではないです。蔵書として残されている記録は多少あるとは思いますが、気の遠くなる作業になるでしょう』

 

 だがそれは伝説的な話として伝わってきているもの。

 実際にその王国が存在していたのかを証明するものではなく、詳しく知る者など現代では全くと言っていいほどいないだろう。

 そんなおとぎ話を聞いてどうするのかと思っていた二人の王女の予想に反して、彼は笑った。

 

『俺はこの世界の事を全然知らない。今聞いた龍以外にも知られていないだけで数多く存在しているかもしれないし、自分達じゃあ想像もつかない事象もたくさん存在している可能性も多いにある!これは素晴らしい事だ!』

 

 知ることは武器だ。

 その後に続けて彼はこう言った。

 

 知らないものを探求し、それを手中に収める欲求こそが、人類種が発展して成長を続けていく原点なのだと。

 色々知識をつけてきた私でも、彼が語る中に含まれた意味は分かっていなかった。

 勉学が得意とは言えなかった姉さまも分かっていないことだろう。

 

『では二人とも。自分達が成人して王国の未来を担っている時を想像してくれ。

 もしその時に龍が王国を襲撃してきた場合はどうする?』

 

 その問いかけは考えもしなかったこと。

 伝説上の生物が国を襲う。もしそれが起こってしまった場合、私達は国を代表する者として相応の対応を取らねばならない。

 

『その時は、戦います』

 

 姉さまは即答した。

 それが上に立つ者としての責務であり、民を護ることが魔剣士としての役割だからと。

 

『私は…民を安全な場所へ逃がすことを優先します』

 

 私も考えた。

 けど正解とは言い難い答えしか出せなかった。

 

 民が居なければ国として成り立たない。

 戦っても勝てないとわかっているのなら、民を逃がすことは正しい行いだろう。

 

『二人の考えはどちらも間違っていない』 

 

 だが国を滅ぼせる存在相手にどちらも成功させることは難しいだろう。それが出来ているならもっとこの話も広まっていてもおかしくないのだ。

 一夜も待たずに滅ぼされ、歴史から姿を消したことを考えれば時間を稼げるぐらいには強くならないといけないことになる。

 

『だから二人には仮想敵を“龍”としてしばらく修行をしてもらうよ』

 

『…?』

『…まさかここに龍を連れてくるということですか?』

 

 突拍子もない事を言い出した彼の発言に唖然としてしまった。

 いくら首都から多少離れているとしても、もし本当に龍がやってきてしまえば国は大混乱だ。そんな事をしてしまえばどんな被害が出るか想像もつかない。

 

『いやいや流石にそれはしない。でも龍に関しては俺も物語上覚えていることがあるんだ。

 なのでスライムでその骨格を模したモノを作るから、それを倒せるぐらいになってみようか』

 

 散歩をするぐらいの軽さでそう言い放つ彼は実際に私たちの目の前で作ってみせた。彼が知っている物語に出てくる“龍”達とやらを。

 

 獅子を模した姿の獣の如き俊敏さとその威力。

 鋼鉄を身に纏っている姿の圧倒的な硬度。

 宙に浮かぶ姿の空気抵抗を一切感じさせない変則的な速度。

 

 あと数種経験したが、もしこれらが現実に居れば自然現象を操ることでより強力な存在なんだよーと軽く話していた彼。

 動きぐらいしかほぼ模倣出来ていなかったとしても、当時の私達ではその巨躯と慣れない動きに翻弄されて圧倒されていた。

 

 考えれば当然だ。

 今まで対人戦を想定して修行を積んでいたというのに、突然人ではない巨体と戦って今までの対人技術が通じる訳がない。

 獣として戦わせているからこちらのフェイントなど意に介さない。そして“龍”を模していることで外皮はかなり強靭。そのせいで此方の刃が弾かれる始末。

 弾かれた隙を突かれては何度地面と口づけを交わす羽目になったことか。

 

『これまでの戦いとはまた違った経験が出来たんじゃないかな?』

 

『人と、比べれば、それは、当然じゃない』

『師は、…これほどの相手を、一体どこで、知ったのでしょうか』

 

『あー、まぁ訳あってね。詳しくは言えないからそういうものとして理解してくれれば助かる』

 

 結局彼が持っている知識の源泉を聞くことはできなかった。

 でも私たちに伝えようとしてくれている事は全てではないが伝わった。

 戦場では何が起きるかわからない。

 国を攻めてきた相手が人ではない可能性もあるのだと、彼は教えたかったのかもしれない。

 

『自分の持つ力では龍の外皮を貫けない。巨体相手では人が持つ剣程度の大きさでは決定打になり得ない。そんな時、君達はどう対策する?』

 

 具体性に欠けるが、私は魔力で如何にかする事しか思いつかなかった。

 人には魔力が通っている。そしてそれは個人差はあれど、伸ばすことが出来るのだ。

 彼の様に魔力制御を遥か高みへ持っていくことが出来れば、龍が相手であっても対応できる可能性があると。

 

『俺も龍の話を聞いて思ったんだ。圧倒的硬度、俊敏性、火力、自然環境に影響を与える特異性。それらを人が相手にするのは骨が折れるし、茨の道だ。でももし衝突するしかない場合、どうやって対抗すればいいのかってね』

 

『…貴方はどうするつもりなんですか?』

 

 姉さまの疑問。

 彼ならば龍と相対しても戦える可能性が非常に高い。しかし人の武装では巨体を相手取るのは難しい。

 そう思っていると彼はこう告げたのだ。

 

『自分自身が“龍”に成ればいい』

 

『は?』

『はい?』

 

『勿論人が肉体的に龍になるわけじゃない。でも俺もだけど二人には極めて高い魔力制御能力がある。体外に出た魔力が霧散してしまう性質ならば、それを維持できる魔力総量と制御力で無理矢理活用できることは経験済みだろう?

 そして“魔力の可視化”が出来たのなら、可能なはずだ。“魔力の具現化”を、ね』

 

 それはもう。彼は目を輝かせてそう私達に熱く語ったのだ―――。

 

 

 

 

 

 自分の魔力を練り上げることで一つの事象を作り出す技術。

 自分の想像力が大切なのだと説かれたその時から、私達は自分の魔力と更に向き合ってきた。

 そうして出来たのが魔力の具現化だ。

 言霊の力を借り、祝詞でイメージと魔力を紐づける。経験してきたものを混ぜ合わせて具現化させる。

 

 “龍”とはなにか。

 この世界とは別の星では“龍”は畏怖であり、神であり、力の象徴。

 山や川、雷や風などの自然現象を龍として崇めていた存在だと言われることもある。

 この世界で龍が現実に存在しているとしても見たことがない以上、彼らを自然現象を司る存在であると仮定しても問題ない。

 

 では彼が語った“龍”になるとはどういうことか。

 それは――自然現象を司ることである。

 

 

「「ッ!!!」」

 

 

 劫火と颶風(ぐふう)がぶつかり合い、そして相殺されていく。

 太陽が出現したと思わせる光量が、嵐が槍を(かたど)ったと思わせる見て判るほどの風量が、観客達の理解を遥か彼方に放置したまま衝突を繰り返している。

 このまま衝突が繰り返されることになれば、観客の安全も保障できない程のぶつかり合いを誰もが固唾を呑んで見守っていた。

 

 すでに解説するなんて話ではない。

 一度大地を踏みしめれば地面に罅が入り、瞬きの速さで大気が鳴き、刃がぶつかれば衝撃が起きて客席の頬を叩く。

 人知を超えた存在を想わせてしまうほどであるが、誰一人恐怖から逃げ出すようなことはしていない。

 瞬きすらも忘れて彼女達を見てしまうのは、この結末を見届けたいからだろう。

 

「ガァァァアアアアアアアッッ!!!」

「―――ッッッ!!?」

 

 互いに牽制をしながらスライムで構築した刃がぶつかり合う。

 これまで使用していた剣であれば通した魔力に耐え切れずに自壊していただろうが、スライムソードであればその問題は解決する。

 十全に練られた魔力を存分に生かして戦う二人だったが、その最中にアイリスが吼えた。

 

 高度に練り込んだ魔力を声量に任せて解き放つことで、対峙していたアレクシアを吹き飛ばす轟咆と化す。

 その行動に不意をつかれ、壁へと叩きつけられるアレクシアだがお返しとばかりに嵐を凝縮。砲弾としてアイリスへ放つ。

 

「ハァア!!」

 

 だが今のアイリスは溢れんばかりの魔力で強化された肉体を武器に、そのまま剣で砲弾を上空へ飛ばしたことで、嵐の砲弾は天へと向かって飛んでいくことになる。

 驚く間もないアレクシアは即座に左へ跳躍。アイリスから放たれる一閃が先ほどまでいた場所を焼きつくす。

 

「~~~ッ!(ほんっとうに!滅茶苦茶よ姉さまは!!)」

 

 魔力総量は圧倒的にアイリスの方が多いのだ。

 故に彼女はその魔力強化だけで王国最強を名乗れるほどに強いのであり、そこにガイアスから受けた技術が乗っているのだから堪ったものではない。

 

「でも、だからこそ!超えていかないといけないのよ!!」

 

 周囲に生み出した嵐を束ね、放つ。

 それを真正面から受けるのは危険だと本能的に察したアイリスは迎撃を止め、即座に嵐の槍を躱しながら距離を詰めてくる。

 遠距離で撃ち合うのは魔力制御が劣っている自分が不利であるのだとアイリスは理解していた。

 対して接近戦になれば魔力量が多く、多少のゴリ押しが利く自分の方が有利。多少の傷も回復しながら突っ込めば距離も潰せて有利に傾くのだ。

 

(アレクシアと魔力制御で差がある以上、長引かせるのは良くない。強引に詰め切る!!)

 

 アイリスもアレクシアの技量の高さには舌を巻いている。

 実質的に一国を警護しているガイアスとまではいかないが、彼が認めるほどにアレクシアの魔力制御は際立っている。

 アイリスが炎を放とうとも周囲への被害が少ないのは、アレクシアが緻密な魔力操作でアイリスが放つ攻撃の悉くを空へと巻き上げているからだ。

 最もそれをしなければ地上はアイリスの炎が覆いつくすことになり、アレクシアは立っているだけでダメージを受けるフィールドが形成されていただろう。

 始めに起こしたアイリスの行動を即座に看破して対策をしているのは流石と言わざるを得まい。

 

「(しかしそれも接近戦であればそんな時間は与えない!!)まだまだ詰めますよアレクシア!!」

 

 放たれる砲弾を避けながら飛び上がり、回転を加えた大振りの一太刀。

 回避されるが伝播する衝撃は無視する事は出来ない。

 振動で僅かだが、アレクシアの反応から行動までの動作が遅れている。

 

 試合開始とは異なり、アイリスがアレクシアを押していた。

 炎を放つ大剣で果敢に斬りかかるアイリスをカウンター狙いで立ち向かうアレクシアの図であるが、アイリスの防御力に苦戦している様子だ。

 

「これなら…どうッ!?」

 

 しかしアレクシアも馬鹿正直に付き合わない。

 嵐を槍に変化させて飛び道具として利用していたがここで用途を変える。

 足元に風を生み出し、大地を駆けるアイリスを上空へと巻き上げたのだ。

 

「上空にっ!?」

嵐よ!!

 

 急な浮遊感に反応が遅れたが即座に身を翻そうとするアイリスに対してアレクシアはアイリスの四方に竜巻を作り出して互いにぶつけ合わせた。

 

「ァァァアアァア゛ア゛ッ!?」

 

 一つ一つは大きくない嵐も、重なり合えば相応の威力になる。

 それも反する向きへと流れる暴風によって身が千切られてもおかしくない。

 

「このまま…!」

「まだだァ!!喝ッ!!

 

 嵐の檻が内側から爆発を起こして霧散した。

 内部で千切られる程の圧力を受けながら、アイリスは耐えぬいたのだ。

 嵐の檻を上空から地面へ叩きつけようとしたアレクシアよりも早く、アイリスは体内で練り上げていた魔力を全方位へ爆発させたことでこれ以上の被害を抑えることに成功。

 しかし流石にダメージはあるのか、傷の修復は先ほどよりも遅い。

 

「こんっの、脳筋ッ!!」

「今回に限っては、否定しません!!!」

 

 身体強化で無理矢理耐えきり、自前の火力でこちらの拘束を強引に破壊したのだ。

 アレクシアとしても彼女を押し切って倒せる可能性があっただけに悪態をつきたくなるというもの。

 アイリスが発揮する戦闘時の直感は馬鹿にできない。

 先ほどは不意を突いて空中へ巻き上げることに成功したが、二度は成功することはないとアレクシアも確信していた。

 だからと言って諦める訳にはいかない。まだ時間がいる。

 

(もう打ち上げは通じない。姉さまの事だから強引に押し切ってくる…)

 

 何とか距離を取ろうとしても下手な行動は詰められる可能性を高めるだけ。

 しかしアイリスの身体強化が強力すぎて中・遠距離で嵐槍は直撃しづらい。

 で、あるならば――

 

(姉さまの防御を抜くためには…超至近距離で直撃させるしかない!)

 

 竜巻での拘束ですら時間を与えれば魔力で強行突破してくる以上、下手な牽制はもう無意味。

 であればガイアスとの修行で培ってきた技術で、状況に合わせて対処する!

 

「そちらから来ますか!」

「ハァァアッ!!」

 

 スライムソードから放出される竜巻は直撃すればアイリスでも大打撃を受けてしまうことがこれまでの経験と直感で理解した。

 アレクシアもそれがわかっているからこその接近戦。アイリスよりも技量に優れる彼女だから選ぶことが出来る選択肢。

 

「ですが、これならどうしますか!破ッ!

「ッ~!やりたい放題じゃないの!?」

 

 しかしアイリスもアレクシアをただでは近づかせない。

 魔力で具現化した炎を身に纏うことで炎の鎧へと変えていく。

 形成されたその鎧は皇帝が身に着けるに相応しい甲冑。その熱量は見ていても感じ取れる程だ。

 更にアイリスは炎に隠れて鎧の下にスライムを重ねることで更に防御力を増していた。

 

 アレクシアはアイリスの取った選択肢で選択を迫られることになる。

 アイリスの大剣の間合いを潰しつつ攻撃を捻じ込む予定だったというのに、アイリスに近づけばこちらは炎でダメージを受けるのだ。

 あの状態ならば体当たりでも大怪我を負うだろう。

 

(でも、姉さまも疲弊している。そこを突く!)

 

 アレクシアよりも魔力総量が多いとは言ってもアイリスも人だ。当然疲弊する。

 魔力の具現化は非常に強力であるが、それに比例して莫大な魔力と制御するための精神力を用いなければ維持が出来ない。そこに魔力操作で傷の回復していれば猶更だ。

 

 ならば貫ける。

 それが出来るだけの努力を、これまで積み上げてきたのだ!

 

(まと)え!

 

 相手が炎ならこちらは嵐。

 スライムソードに纏わせて槍を作っていたのを拡張し、そのまま自身の鎧にする。

 風の甲冑はまるで羽衣の様。

 近づく攻撃は風の流れで自動的に受け流すこの鎧は見た目以上の防御力を有する。

 それでもアイリスの攻撃を受け流しきれる訳ではないのだが、少なくともこれで直に肌が焼かれることは無くなったと言っていい。

 

「疾ッ!」

 

 熱を一時的に無視して攻撃を繰り出していくアレクシアに対し、アイリスも真正面から受けて立つ。

 だがそれだけでは負けずとも勝てないことは分かっている。

 愚直に攻めるだけでは受け流されて被害は最小限に抑え込まれることは見ずとも理解できる。

 

(この攻撃で、終わらせる!)

 

 だからアイリスはこの攻撃で全てを終わらせる決断をした。

 会場を覆う結界が壊れたとしても、観戦しているガイアスが何とかしてくれるとの判断。

 このまま泥沼状態に持ち込むのは好まない考えから。

 時間切れではなく、全力で倒したい気持ちから。

 アイリスは迷いなく動く。

 

 ヒュッ

 

「!」

 

 アイリスがここで初めて接近して攻撃以外の動きを見せた。

 左手を指揮棒を持つように動かしたのだ。

 

(何を…)

 

 アレクシアは警戒する。

 初めてアイリスが見せた動きに下手に近づくのは危険なのではないか、そう考えてしまったからだ。

 事実、戦闘中であるというのにアイリスは可笑しな行動を取った。

 その場で思いっきり歯を嚙み鳴らしたのだ。

 それによってアレクシアは自分の足元が輝いていたことに気づくのが遅れてしまったのだ。

 

 ガキンッ!!

 

(っ!?まずッ)

 

 アイリスは魔力の具現化で炎を操れるようになった。

 それは炎や熱の操作が主であるが、これを操作すれば爆発を起こすことも可能な攻撃的な力だ。

 

 大気中には目に見えない小さな粉塵が混じっている。

 これに十分な酸素が存在すれば粉塵は体積に対する表面積の割合から、燃焼反応が過剰に反応しやすくなる。

 粉塵爆発とはそんな一定濃度を持つ可燃性の粉塵が火気によって引火して起こる現象である。

 

 これはアレクシアは予期する事はできない。

 大気中の塵で引火する事があると知っていても、それを魔力で再現できるとは考えない。

 だからこそアイリスは迷いなく実行した。

 噛み鳴らせることで口元と繋げていた魔力の糸を発火させることで、アレクシアの周囲に満ちる粉塵を勢いよく爆破させたのである。

 

「ガハッ!?」

 

 鎧を纏っていたとしても関係ないと言わんばかりの衝撃にアレクシアは一瞬意識が飛びかけた。

 予想外の攻撃によって防御が間に合わなかったのだ。

 咄嗟に顔を左腕で庇ったからよかったものの、まともに受けていれば防御を抜いて視力が失われていたことだろう。

 

(ほんっとうに、強い…!!)

 

 回復している暇はない。

 意識が一瞬途切れてしまったことで魔力操作が乱れてしまったのだ。

 それでも瞬時に立て直せるのは日頃行っていた修行の賜物であった。

 

「でも、まだッ!!?」

「これで終わらせます!」

 

 しかし瞬き一つで幾多の攻撃を繰り出せるこの戦いで、その一瞬はまさに致命的。

 アレクシアが周囲の状況を把握する前にアイリスが一気に距離を詰め、アレクシアを抱きしめたのだ。

 互いに鎧を纏っていても、ここまで密着状況を作られてしまえば抜け出すことは非常に困難。

 アレクシアは左腕が使い物にならなくなっており、アイリスは全力の身体強化で後押しをしているとあっては猶更だ。

 

「はな…し、なさいッ!!」

 

 いくら身悶えても抜け出せない。

 何度頭上に槍を形成してぶつけても、アイリスは怪我した傍から回復をすることで決して離さない。

 そして勢いよく溜まっていく魔力の密度に、アレクシアはこのまま食らえば肉体が消し飛ぶ可能性を即座に理解した。

 

 自分の姉は文字通り、ここで全てを決めるつもりなのだ。

 これで自分が死んでしまったとしても、ブシン祭に出場している以上自己責任。

 勝つためには、生死は度外視してでも全力を尽くす。

 まさにアイリスだからこそ出来る即断即決であった。

 

(あさひ)

 

「間に合…」

 

 アイリスを中心に魔力が集まる。

 アレクシアの言葉に耳を傾けずに、躊躇いもなく起動する。

 それに伴って周りの光量が際限なく増加していき――

 

 

()ぜよ!!

 

 

 姿が見えなくなるほどの光量が辺り一面を輝かせ、音すら置き去って掻き消してしまうほどの衝撃が結界内を隙間なく満たした。

 

 それこそがアイリス・ミドガルが持つ最終手段。

 それは超新星爆発(スーパーノヴァ)と銘打てる程の、自爆覚悟の大爆発。

 それはかつて核に打ち勝つために、弛まぬ歩みを続けた男が目指した領域。

 

「良いね。実に良い」

 

 彼女の覚悟は奇しくもすでにその域に到達している男に届く。

 その後、試合を終わらせんとする轟音が、会場を飛び越えて王都中に響き渡るのだった。

 

 




 
 
 
・龍
 アレクサンドリア、また一般では「幻の都」と称される都にて『霧の龍』が棲家として使っていた所から設定をコネコネして作ったもの。
 伝説の話なのかはよく分からなかったのでそういうものとして扱っているため、もし違ってても許して。
 ガイアスによっていろんな形態の龍が王女の記憶に刻まれた。

??『俺自身が龍になることだ』

超新星爆発(スーパーノヴァ)
 アイリスが最後の一手として用いた自滅覚悟の大爆発。
 ドラ○エで言えばメガンテ。ポ○モンで言えばだいばくはつ。
 並どころか強ぐらいの強さでは食らった時点で蒸発する威力なのだが、自身にも多大なダメージを負う為に多用は不可。
 この世界視点で見れば最上位クラスの威力を誇るかもしれない。
 ただしシャドウの『I(アイ)am(アム)Atomic(アトミック)』の完全下位互換技である。

・I am Atomic
 アイ・アム・アトミック。
 核で蒸発しない為には、自分が核になればいいという発想で生み出した陰の実力者の奥義。
 加害範囲を調整することも出来、応用力は結構ある。
 アニメ版の言い方が完全にASMRなので聞いたことない方は一度アニメ視聴をオススメする。

戦闘における状況描写について

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