王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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三 王女の不貞腐れた姿っていいよね

 

 

 ミドガル王国魔剣士学園。

 

 首都は人口100万人を超える大都市であり、国内外から優秀なものが集まる超名門校のようなものだ。

 ミドガル王国の貴族子弟は15歳になれば剣術の才は関係なく魔剣士学園に入学する義務が存在する。

 入学試験にて剣術の才や魔力の才を調べて個人のレベルにあったクラスへ配属され、そこから己の見聞を広め、魔剣士として腕を磨くも良し、研究に勤しんで研究者の扉を開くも良しと魔剣士学園と銘打っているが以外にも就職先は融通が利くようである。

 

 ちなみに自分には剣の才が一切ない。

 自慢じゃないが眼前の案山子相手にもなぜが剣が当たらないのだ。ゆっくりと当てるようにすれば行けるのであるが、勢いをつけると呪いのように当たらないのである。

 なお運動音痴ではない。普通に武術による徒手空拳は問題なく……逆に動けすぎて別の意味で問題になりそうなレベルなのだが、案山子を手刀で斬りおとせるのだ。

 両親は剣の才だけが無い事は嘆きこそすれど、他が問題なく優秀なため色々言ってくることはない。むしろ家庭の者達から見れば王女との縁を何故か持っていることに非常に驚きつつも喜んでいる節が見られた。

 

 魔剣士学園の資料を何故かアレクシア第二王女が自分のために持ってきたのだからそりゃあもう大騒ぎになったことは記憶に新しい。

 だいぶ好感度が高くなっているようで私はうれしいよ(ゲス顔)

 だけど王女の立場として色々危ないから気をつけようね?

 迷惑じゃないからそんな顔をするんじゃあない。

 美人さんは何をやっても栄えるのはずるいと思うのである。

 

 そんなこともあったあった。

 こっぱずかしい過去であり、ちょっと嬉しくも思う思い出だ。

 だが…

 

「ア…アレクシア王女?どうしてわたくしめの隣に座っていらっしゃるので?」

「あら?私と貴方の仲じゃないの。そんな突き放されたことを言われるなんて私…悲しいわ」

 

 だがしかし!わざわざ注目されるように自分の隣に座ってくる必要性はないと思うのだ。思うだけだ。

 ご丁寧にヨヨヨ…と口ずさみながら噓泣きの動作までしてしまったからにはもう逆転の目はない。さり気なく自分に寄りかかってくるのも合わさって、周囲の目線がどんどん険しくなっていく。

 まだ入学して一か月も経っていないというのに…ドウシテ…。

 

「やめてくだされアレクシア王女。そのようなことを為されては(それがし)の首が飛んでしまいまする」

「あらよろしいのではございませんこと?こんなにも麗しい嬢を蔑ろにするからには相応の覚悟をお持ちなのではなくて?ガイアス・クエスト君?」

 

 ザワ…

 

  ザワ…

 

 おいやめろと内心思う。

 胸を押し付けるように近づいて自分の顎に指を添えてくる整った顔立ちを持つ彼女は、してやったりといった表情だ。クッソ顔が良いなぁ!はしたないですぞありがとうございます。

 

 入学してすぐにこのように親密ですよアピールをしてくる彼女はアレクシア・ミドガル。

 ミドガル王国の第二王女であり、ガイアスが王女見たさに城へ侵入した際に見つけた少女である(CV:花澤香菜)。間違っても本来なら気安く話しかけて良い相手では無い。それは貴族であってもだ。

 彼女は世間から人柄が良いお姫様と思われているものの、親しい相手には砕けた口調になることもあり、少しひねくれた性格なのもあってか先ほどのネタじみたやり取りにも乗っかってくれる気前の良い方だ。

 なお自分の名前の由来はガイアとアースという大地や地球といった意味合いを合わせたのではないかなと思っている。実家の仕事が土地の開拓とか担ってるって聞いたし。父はアースで母はガイアて名前だし。安直か。

 

 入学前は自分の実家であるクエスト家に乗り込んできて入学をお知らせしに来たが、余計な混乱を招くからと学園内ではそこまで関わらないようにしようと話し合った記憶は一体どこにやってしまったのやら。

 まぁ行動に移した目的は大体理解している(・・・・・・・・)のだが。

 

「だからと言ってこんなに早く行動に移すとは思わなかったぞ…」

「仕方ないじゃない。正直周囲の男たちからの目線が鬱陶しいから貴方の存在は牽制になるし、この学園内で貴方に勝てる人なんていないでしょう?」

「なんでもありならをつけないと語弊を生むだろう。流石に剣術を持ってこられたら全敗する自信がある」

「事実なのは知っているけれど、嫌な自信ね」

 

 流石にあのまま食堂で王女と二人仲良くなんてしてれば混乱を招くため、場所を変えさせてもらったのでもう安心だ(致命傷)。

 次にクラスに合流すれば色々問いただされることは間違いないだろう。

 だがそれはアレクシアの負担を考えれば些細な問題である。入学して一月であるがすでに上級生からも告白されていることは知っているし、同級生からももしかしたらという目線を送られていることも知っている。

 政治家たちよりも素直で相対しやすい相手とは言えど、思春期の女性にとって注目を浴び続けるのは気が滅入ることもあるだろう。そこで幼少期から知っているガイアス・クエスト君の登場だ。

 

 彼女から率先して距離を詰めることで私には親しい人がいますアピールを行い他の男共を牽制。余計な告白を受けることを防ぎつつ、婚約者候補の一人となっているディアボロス教団(・・・・・・・・)のゼノン・グリフィと完全に決別できるように仕向けているのだろう。

 実技ではブシン流の指南役としてアレクシア達を教える立場であるが、私は貴女の婚約者ですみたいな雰囲気を出しているのが鬱陶しいのだとアレクシア本人から聞いていた。

 

 ちなみにディアボロス教団とは約1000年前に世界を壊そうとした魔人ディアボロスの復活と力の私物化を目的とするカルト集団のことである。

 表舞台に出ずに裏側で暗躍を続けているため、一部を潰しても問題なく動き回るゴキブリのような存在だ。情報集めに下水道や裏路地などに分散させているゴーレム情報網から送られてくる情報をリアルタイムで処理して脳内へ取り込んでいるのだ。

 王国外はおろか今は大都市とその周辺にしか配備出来てはいないものの、それでも他の者達と比べて莫大な情報が己の頭の中に入っている。

 戦いとは情報戦。事前に把握しておけば対処は容易いもの。だがゼノンが関わっているディアボロス教団はミドガル王国だけでなく、周辺の国々の裏側に潜んで暗躍を続けているようだった。事前に小型ゴーレム達の情報収集によって把握してもすぐに潰していないのは、まだ王国全域に配備しきれていないため、ここで情報源や拠点情報を潰してしまえば再び探し当てるのが面倒になると判断したためであった。

 

 ただ教団は王族や貴族の血を求めて人を攫って実験を行っていることもあるらしい。

 なのでアレクシア王女や彼女の姉であるアイリス王女に手を出した瞬間、即座に防衛と殲滅できるようにゴーレムも改良中なのだ。

 最近教団が慌ただしく動いているのは『シャドウガーデン』が教団のアジトを襲撃しているらしいので、こっちに手を伸ばさないでほしいのだが警戒して置いて損はないだろう。

それも彼女達が負けなければ問題ないのだが。

 

「本当に面倒なのよ…剣の腕も良い、頭も良い、立場も侯爵。悪い所が見当たらなすぎて怪しすぎるわ」

「それだけ良い面だと思っているのに警戒できるのはある種の才能だと思う」

「こうでもしないと政界では生き残れないのよ。それに貴方なら、私が漠然と警戒している要因を知っているんじゃないかしら?」

「さぁどうだろうか」

 

彼女の追求を適当にいなす。

いずれ話すことにはなるが、彼女は好奇心旺盛だ。下手に教えて突っ込んだ挙句捕まりましたとなっては目も当てられない。例え彼女が教団相手でも互角以上に戦えるようになっていてもだ。

 彼女は実戦を、死地の戦場を知らないのだ。

 無関係の市民と思っていたら腹に爆弾を抱え込んで自爆テロなんてことをしてくる可能性が高いのがディアボロス教団なのである。

 

「…話してはくれないのね」

 

 付き人もこの場から離れるように指示をしているこの場所ではガイアスとアレクシアしか人がいない。故に彼女は遠慮せずにガイアスの首に両腕を回して引き寄せた。

 彼女の表情は至って真剣だ。

 適当なことを言ってこの場から離れることは許さない。そんな意志をガイアスは感じ取って軽くため息を零す。

 

「話したらアイリスにも話すだろう?」

「それは当然よ。姉さまにだって知る権利はあるわ。貴方が動くということは、王国にとって不利益が起きる証拠でしょう?」

「それがわかってるのなら、なおさら後方でどっしり構えていて欲しいものだね」

「お生憎私は置いていかれるのが嫌なタイプなの。貴方が話してくれないのって、私達が勝手に行動すると思っているのが原因でしょ」

「自己分析がしっかりできているようで何よりだ」

 

 ゴスッと後頭部をド突かれる。

 こういう所ですぐに手が出るところが話せない要因の一つなのだが、アレクシアが気づく様子はない。今指摘してもいいが、それだと解放されるのがだいぶ先になるだろう。

 

「悪かったって。機嫌直してくれ」

「フンッ」

 

 こうしてガイアスは眼前のお姫様の機嫌を直すべく、役に立たない前世の知識をフル活用して事の対応に当たるのであった。

 

 




 
 
 
・主人公
 この世界での名はガイアス・クエスト。
 ガイアとアースをくっ付けて、某ゲームのタイトルをつけた。
 王女たちと仲が良いため、学園内の男たちから睨まれている。
 剣術のスキルはゼロを過ぎてマイナス。包丁捌きなどは良いのになぜか剣だけ悲惨な結果になる。

・アレクシア・ミドガル
 ミドガル王国の第二王女。お尻に自信がある。
 幼少期にガイアスと出会ってしまったことで色々と成長した。
 王族であるが故に身近にいる親しい異性がガイアスだけの為、彼との距離感がかなり近い。
 入学してすぐにガイアスとの距離を近づけたために、アレクシアの某告白イベントは発生しなかった。

・ゼノン・グリフィ
 騎士団所属でありながらディアボロス教団所属の人。
 関係者以外には誰にも情報を漏らしていないはずなのに色々バレてしまっている人。
 裏でアレクシアを攫おうと画策していたのにアレクシアを寮まで送るガイアスのせいで上手く事が運ばないし、今後も運べない。ドウシテ…

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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