王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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大雑把感想返信

・アイリスが当て馬的な役割を充てられる件
 最初はアイリスが耐えきって勝利させようかと考えていました。
 だけどアニメにてアイリス王女が泣いている描写を見て、自分の中にいる吉良吉影がそそり立ってきたため泣かせたかった。
 結果として彼女が更に成長できる機会を得られたので良かったのではないかと思っています。

・教団ハードモード
 アルファとアイリスの対面が無く、『シャドウガーデン』の名がそこまで教団内に浸透していない。
 そのため彼方は一方的に良い様にやられている状態。
 まぁ今まで裏工作諸々やってきたわけだし、因果応報である。

・王国内でアレクシアが裏で行動している色々
 『ガイアス君、もう君は逃げられないねぇ↑!!』(某西瓜実況者並の感想)
 
・誤字報告などなど
 あらすじの誤字報告などしてくださる方もいて非常に感謝しております。
 今後もご指摘よろしくお願いします。

 
 それでは本編どうぞ。

 
 
 


三十二 戦いの後で・・・

 

 

 『ブシン祭』の第一回戦。

 そこでぶつかり合ったアイリス・ミドガルとアレクシア・ミドガル。

 二人の王女が全てを賭して挑んだ試合はアレクシア・ミドガルが勝利を掴み取る結果となった。

 

 誰が見ても互いに死力を尽くした戦いだと評しても何ら違和感はないほどにぶつかり合った。

 ミドガル王国の未来を担っていく王女達の力量を知れた国民達は大満足でそれぞれが住む場所へ足を運んでいくことだろう。

 悪意を抱く者であれば、彼女達の脅威に怯えて身を縮こまらせるだろう。

 

 しかしそれは第三者が抱いたものだ。

 当事者の想いではない。

 

「―――………」

 

 戦いの余波で悲惨な現状になっている会場を眺め続ける女性がいた。

 先ほどまで大勢居た観客達はいない。

 一旦ブシン祭の進行を止めることで会場の修繕を行う為であった。

 

 鮮やかな紅の髪が時折運ばれてくる風に靡かせながらも、彼女は目を離さない。

 まるで反芻しているかの如く、じっとそこを見つめていた。

 

「負け、…これが敗北ですか…」

 

 試合で魅せていた気迫はどこへやら。

 第一王女アイリス・ミドガルは呟く。現実を受け入れるべく、噛みしめるように己に言い聞かせる。

 

 初めての経験だった。

 アレクシア()との競争染みたことは数えきれない程してきた。

 だが肉体を用いて行われることに関してはそのどれもを勝ちを譲ることはなかった。

 頭を使うことに関してはアレクシアの方が圧倒的に分があったために負ける場面は多かったものの、試合では負けたことがない。

 だが今回、アイリスは敗北した。

 

 試合結果に不満があるわけではない。

 むしろ逆ですごく納得している。

 自分があの試合で出来ることを出し切ったのだ。アレクシアが自分よりも更に上にいただけなのだ。納得するより他ない。

 

「――…ッ」

 

 しかし納得できるのと、受け入れきれるのはまた別の話だ。

 現にアイリスは包帯で巻かれた箇所など気にも留めずに強く手を握りしめると共に声を嚙み殺していた。

 

「アイリス」

「っっ…」

 

 背後から聞きなれた声。

 そして今は可能ならば聞きたくない声だった。

 

「…ガイアス」

「隣失礼」

 

 振り向かずに名を告げると彼はこちらの反応を見ずに隣に座り、そのまま十数秒無言が続く。

 その沈黙を破ったのはガイアスだ。

 

「見事な試合だった」

「っ!止めてください。それはアレクシアに言うべき言葉です」

 

 ガイアスの言葉を否定するアイリス。

 今の彼女は慰めの言葉を求めていなかった。

 握りしめた拳はそのままに、その場から立ち去ろうとする。

 

「なぜ負けたかわかるか?」

 

 しかし彼の言葉に遮られた。

 アレクシアとの手合わせを行う中で、勝敗が決した後によく彼が問いかけた言葉。

 理由のない敗北は無い。

 どんな行動が悪かったのか、どういう行動を取れば正解だったのか。その問いかけに対してアイリスは口を噤む。

 

「…アレクシアの実力が、私を上回った。それだけです」

「アイリスらしくない解答だな」

「ッ!」

 

 衝動的に口に出しそうになった言葉を(すんで)の所で飲み込んだ。

 言いそうになった言葉は何の意味を持たないことを理解している。

 長い間、彼は私とアレクシア(自分達)と一緒になって修練に励んできたのだ。

 ここまで私達を鍛えあげる実力を持ち、優れた観察眼を有する彼が、今私が抱いているモノをわかっていないはずがない。

 

 気持ちが落ち込んでいる時、ガイアスを前にしてしまうと、どうしても気丈に振る舞えない。

 

「どうしても、今じゃなければ駄目なんですか…?」

 

 普段の毅然としたアイリスからは発せられることのない弱弱しい言葉。

 衝動で沸き上がっていた怒りの感情はすでに鎮火し、現実に打ちのめされた一人の女性がその場にいた。

 

「別に言わなくてもいい。自分の中にある答えがわかっているならな」

「それは…」

「いつも気負い過ぎてるんだよ」

 

 とりあえず座りな。そう言われてアイリスは隣に座る。

 座ってガイアスを見れば、彼は崩壊した会場を眺めたままだ。

 アイリスもそれに倣ってしばらく会場を眺める。

 だが見えるのは自分達の戦いで壊した会場。聞こえてくるのはそよ風の音だ。

 日が落ち始めているのか、周辺から伸びる影が少しずつアイリス達の方へと迫ってきていた。

 

「私は、ブシン祭で優勝する。その気概で挑んできました」

 

 ガイアスは何も言わない。

 気持ちを落ち着けたアイリスから吐露するのを待っているのだろう。

 ポツリポツリと語っていく。

 

「今回のブシン祭で優勝する事で、王国に最強在り…そう国民達へ示す。そのためにはアレクシアとの戦いを勝つ必要がある。それゆえの、全力で挑んだ戦いです」

 

 アレクシアとの戦いはアイリスにとってもこの十年余りの集大成だった。

 体捌き、魔力制御、戦略、具現化、そして想い。

 学んだあらゆるモノを動員して好敵手に勝ち、勝利を手にすることが『ブシン祭』で優勝する。

 前回、前々回とは比べ物にならない程の猛者が集った今大会で優勝してみせれば、自他共に認める最強を名乗れるのだ。

 これはガイアスが相手であったとしても、アイリスは勝つつもりで挑んでいたことだろう。

 

 今回はアレクシアとの戦いで使用した大爆発であるが、本当はガイアス相手に使用する予定だった大技だ。

 いくら彼であっても、至近距離での大爆発を無傷で往なすことは出来ない。であるならば彼に対する有効打として準備していたのだ。

 しかしアレクシアの魔力制御が己よりも遥か上にいることを確信し、下手に長引かせればこちらが段々不利になっていくと把握したことで解禁したのである。

 確実に勝つために。

 そして頂を手にするために。

 

「目の前に意識を取られすぎたな」

「…はい」

 

 ガイアスに吐露するのを躊躇ったが、アイリスもアレクシアに負けた理由(わけ)を分かっていた。

 アレクシアは自分よりもずっと先を見据えてきたのだ。

 アイリスの様にアレクシア(彼女)は『ブシン祭』の頂を目指していた訳ではない。

 私達が知る“世界最強”。その最強の頂に挑むためにアレクシアはこの『ブシン祭』に挑んでいたのだ。

 

「アレクシアとの戦いは、事実上の決勝戦だと考えていました。奥の手を切ってでも挑むべき相手だと考え、全力を尽くしました」

「だがアレクシアは先を見据えていた。最初から、アイリスと戦い勝つために、手札を切るタイミングを伺っていた」

「その通りです。私の爆発を至近距離で受けても、アレクシアが防御に魔力をもっと回していればあそこまで怪我を負うことはなかったでしょう」

 

 アレクシアが戦略型の魔剣士とすれば、アイリスは直感型の魔剣士だ。

 緻密に戦略を練るよりも早く、己の直感を武器に得物を振るう。

 

 これはどちらが良い悪いの話ではない。

 戦略で相手を絡めとることもあれば、その逆で練り込まれた戦略を直感で打ち破ることもあるだろう。

 

 今回はアレクシアの戦略と、その覚悟がアイリスを上回っただけの話。

 アイリスが戦いの最中、嫌な感覚に陥ったのはアレクシアが上空で決着をつける準備を整えた時だ。

 これはアレクシアが直前まで、例え自分の被害が大きくなってでも、アイリスを確実に倒すために見せた覚悟と言ってもよいだろう。

 

「ですがその時の私はアレクシアが直撃したことに何ら違和感を抱いていなかった。そこまでアレクシアの手の内だったのでしょう。疲弊した私の防御を貫く手段をそこで初めて見せてきました。

 本当に見事…そういう感想を抱かざるを得ません」

 

 魔力制御に長けているということは魔力消費を軽減でき、長期戦で有利を取れるということ。

 もしアイリスが自爆しなくとも疲弊するまで長期戦に持ち込み、アレクシアは嵐槍を隠し通しただろう。

 アイリスが持つ防御の要である魔力総量が減少した所を一点集中で打ち破る。

 そうでもしないければアイリスに勝つことは出来ないのだと、アレクシアは分かっていたのである。

 

「私は戦っていくにつれて、とにかく勝つことしか考えていませんでした。相手がどう動いたとしても魔力総量で勝る以上、押し切れる・・・冷静に考えれば馬鹿な話です。それが通用するのなら、アレクシアはあの場に立っていなかったというのに」

 

 アレクシアは幼い頃から周囲との魔力差に悩んでいた。

 アイリスと同じような天賦(てんぷ)の才能を持っている訳でもない彼女は、基礎を忠実に鍛えあげる“凡人”でしかなかった。

 事実、ガイアスと出会う前に彼女は自らの才の無さに膝をついていたのだ。

 

 そんな彼女が自分と同じ位置まで登ってきた。

 それを意味するのは魔力制御を含めた技術を培い、それを追いつき、追い抜かすまでに鍛えあげてきたということ。

 

「私よりもアレクシアの方がずっと相手()を見ていたのです。それに気づくことが出来なかった以上、負けて当然だったのでしょう」

 

 握った拳を緩め、両手を合わせた。

 勝つことに傾倒しすぎて対戦相手を見れていなかったのだとアイリスは考察していた。

 それに満足したようにガイアスは表情を浮かべ、

 

「うん。80点」

「ゑ…」

「惜しい所まで行ったんだけどな」

 

 彼女の反省を評価した。

 呆気にとられるアイリスに、ガイアスはズバッっと切り込む。

 

「アイリス。魔力制御の修行…ちょっとサボってただろ」

「うっ…」

「激しく動いた時に魔力制御が少し粗くなってた。日頃から意識してりゃもうちょっと防御に回せる魔力が残せて意識を失うこともなかっただろう」

「うぅ…」

 

 思い当たる節があるのか、アイリスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 指摘は図星のようであった。

 

「申し訳ありません…」

「その失敗もまた経験だよ。次に同じミスをしなければ成長だ。今すぐに死ぬわけでもないんだから、今回の反省を次回に生かせばいい」

「うわっ!?」

 

 スライムを起動する。

 アイリスは完全に意識を緩めていたためか、スライムの動きに反応することが出来ずにガイアスの胸元へ倒れ込んだ。

 

「そして甘え下手なのは相変わらずだな」

「が、ガイアス!?やめてください!」

 

 一瞬で視界が暗くなったことに一瞬理解が追いつかなかったアイリスだが、頭に感じるぬくもりを理解した。

 頭を撫でられているのだ。

 そんな事は幼少期に両親以外にされた経験はなく、撫でられている相手が自分よりも年下ということもあってアイリスは恥ずかしさから慌てて離れようとする。

 

「アイリスの欠点は責任感が強すぎることと弱音を吐けないことだ。前から言ってただろ、溜め込みすぎは毒だってな」

 

 アイリス・ミドガルは20歳という若さで王国の未来を担うべく活動を続けている王女だ。

 そんな彼女が己の胸中を吐露出来るほどに信頼している相手は、長い間関わりを持っているアレクシアとガイアスだけだった。

 最近になってオリヴィエという親友を得ることが出来たが、まだ胸中を曝け出せるまでは行っていない。

 そして今彼女が想っている事がアレクシアに関係する以上、アイリスが話せる相手は必然的にガイアスだけになるのである。

 

 それを理解しているガイアスは今のアイリスを放すつもりはなかった。

 こうでもしないと彼女はずっと今抱いている感情を溜め込むことになるだろうから。

 

「――~っ…放してください…」

「駄目だ。年長者のお節介は諦めろ」

「貴方の方が…年下じゃないですか…」

 

 完全回復していないアイリスでは力ずくで抜け出すことは出来ない。

 ガイアスに反論しつつも、観念するようにアイリスの抵抗は収まっていき、少しずつアイリスの震えが増えていく。

 

「~~ッ」

「この会場には俺達以外誰もいない。思う存分吐き出せ」

「ぁ…~~~っ!あぁぁあああっっ!!」

 

 彼女は泣き叫ぶ。

 試合に敗れた悔しさとそれを招いた己の未熟さを。

 今まで我慢していた感情が(せき)が切れるように流れ出ていく。

 それに比例してガイアスは自分の服が濡れることを厭わず、アイリスが胸中を出し切るまで頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…~~~っ/////」

「いやいつまで恥ずかしがっているんだ…」

「私の方が年上なのに…」

「俺から見ればまだまだ甘やかしがいのある女性だよ」

 

 あれからしばらくして、アイリスが持つ感情の濁流が収まった。

 自分よりも年下の異性に失態を見せてしまったとでも考えているのだろう。

 顔を見られないように胸に顔を(うず)めたままでいるが、耳まで真っ赤である。

 それを指摘しても夕日のせいですと言われることが目に見えていたため、ガイアスは何も言わなかった。

 

「~~~っっ」

「分かってるよ」

 

 未だに離れる様子を見せないアイリスの頭を撫で続ける。

 背中に腕を回して来るアイリスをあやしながら、まだ治っていない傷を修復していく。

 

(暖かい…)

 

 ガイアスの魔力が自分の身体を巡っていく感覚に身を任せる。

 出会った時は自分よりも背が小さかったというのに、いつの間にか抜かされて逞しさを感じるようになっていた。

 年上であるはずの自分が良い様にされている。

 恥じることであるはずなのに、彼にされると理解すれば恥ずかしながらも嬉しく感じてしまう自分がいた。

 

 アレクシアはすでにガイアスを射止めるべく行動を起こしていることは知っている。

 本当ならこんなことはしないほうが良いのだ。

 アレクシアにバレてしまえばそれこそどんな事が起こるか分かったものではない。

 

(ですが…いつか私も、貴方を守れるように…)

 

 だがこの場にアレクシアはいない。

 そして彼は自分の為にここにやってきてくれたのだ。

 それならばもう少し、この心地よさを感じていよう。

 

 夕日がゆっくりと地平線に沈んでいくのを背で感じながら、アイリスは瞳を閉じるのだった。

 

 

 

 




 
 
 
・ガイアス・クエスト
 色々と溜め込む性格のアイリスのメンタルケアを行うべく行動。
 人生経験が違うのだ。ハハハ!
 
 そんな事やってるからアレクシアが色々と逞しくなるのである。

・アイリス・ミドガル
 色々と溜め込む責任感の強い王女。
 可愛い物が好きな側面を持ち、ぬいぐるみが自室に沢山置かれている。
 そしてガイアスが強引に抱き留めて吐き出さなければ、責任を際限なく溜め込んで自壊する性質を持つ。
 彼と共にいると心地よさを感じるのだが、彼にはアレクシアがいるので適度に距離を取っている。

・アレクシア・ミドガル
 アイリスに勝った第二王女。
 ガイアスの治療を受けた後、肉体疲労からベッドにてスヤァ…。
 後日アイリスが見舞いに来たのだが、女の勘が働く。

「あっ…ふーん…」

・ブシン祭スタッフ一同
 壊れた会場の修復…どうしよ…
 
 

戦闘における状況描写について

  • 理解しやすい
  • まぁ解る
  • 普通
  • ちょっと難しい
  • 難解
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