キャラの二つ名って素敵ですよね。
『堅実』のベータ
『緻密』のイプシロン
上記のような味方側の名も好きだし、
『老騎士』のルスラン・バーネット
『ドМ』のケツハット
『強欲』のジャック・ネルソン
みたいな二つ名も響きが良くて好きです。
『 ………… 』
唖然。
観客達がその光景を見て至った状況。
彼らの理解を置き去りにしたソレを呟きに表せばこう言っただろう。
…なんだよ…これ?
まさに圧巻。
まさに圧倒。
二人の魔剣士が見えない速度で正面から斬り合いをしている。
言葉で表せばそれだけだ。
だが二人が放つ剣戟の速度が尋常ではなかった。
速い。
速すぎる。
剣と剣がぶつかり合っている筈なのに、音が聞こえない。
否。
一合の音が聞こえるよりも速く次のぶつかり合いに移行している。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ
その結果、剣士の行動に遅れて音が重なり合って聞こえることで、剣の衝突で発生したとは思えないほどの連続音が会場に響き渡っているのだ。
「なんてスピードなのっ!?」
その光景を見てアレクシアも驚愕。
数多の技術を取り込んできた彼女であっても、二人が出すその速度には驚きを隠せない。
彼らがやっている事はシンプルだ。
魔力制御で常に最適な箇所に魔力を込めて動く。
相手の行動を予測しながら攻撃を置き、自分はそれを躱す又は防ぐ。
それだけだ。
だがあの速度で数多くある選択肢の中から正解だけを掴み取り続けることがどれだけ困難なことなのかはアレクシアも身に染みて理解していた。
まさに光速の世界に踏み入れた様な光景。
数えきれない戦闘経験がなければあそこまで到達する事は出来ないだろう。
それを理解すると同時にジミナがどれだけ強いのかもわかるもの。
(これがシャドウの実力っ!『シャドウガーデン』の層はどれだけ厚いのよ…!)
『シャドウガーデン』の総帥 シャドウ。
彼がジミナに扮しているのは彼女達には周知の事実であるが、その実力に舌を巻く。
当然彼女以外の者達も彼の強さを見てるだけで理解せざるを得ない。
使い古されている剣を使っているジミナとは違い、リヴィことオリヴィエが使用している剣は新調した特注品。
魔力の通り方も当然違うであろうに、ジミナは音を置き去りにする程の連撃を中古の剣で防ぎきっているのだ。
「主様ァ♡!!」
「流石ボスなのです!!」
「~~ッ!!」
彼らの戦いを見ている中には“七陰”の面々も混ざっている。
観客席に座るミツゴシ商会の会長であるガンマや戦闘最終兵器である第四席のデルタは試合を見て大興奮。
普段はクールに物事をこなす第六席のゼータですら尻尾をぶんぶん振りながら観戦に集中していた。
「シャドウ…お祖母様…」
『シャドウガーデン』の面々が様々な感情をその試合に抱きながら見ている中で、アルファだけは複雑な気持ちで試合を見つめていた。
シャドウは悪魔憑きであった自分を救ってくれた大恩人。
彼がいたからアルファは今日まで生きてこれたのであり、彼の期待に応えることを何よりの喜びとしている。
彼女の立場を考えてもシャドウを応援する事は至極当然であり、疑いの余地はない。
だがシャドウと戦っているのは自分の先祖であるオリヴィエだ。
対面であったのはここ最近の話であるものの、アルファを同じ立場から理解できる数少ない人物。
オリヴィエと共にミツゴシ商会内を行動する事も多く、彼女の安らぎの一つでもある。
そんな
そのためオリヴィエが見せる戦士としての
「二人とも…頑張って…」
他の仲間達には聞かれる訳にはいかない。
だけど応援はしたい。
その気持ちを表すように、アルファは小さく両者に声援を送るのだった。
(強い…!強すぎる…ッ)
試合を見る者は十人十色。
しかしジミナに対する考えは大多数の感想が一致している。
VIP席にて観戦をするアイリス・ミドガルもその一人。
二人の試合が始まってすぐ、居てもたってもいられずに椅子から立ち上がって食い入るように会場を観ていた。
ドウッ
剣戟を縫ってジミナの胴蹴りがリヴィへと直撃。
腕を間に挟むことでガードは間に合っているものの、その威力までは相殺できずに後ろへ飛ばされていく。
当然その隙を見逃すはずがないジミナは即座に追撃を敢行。
リヴィの左肩から切り裂こうとするものの、更に後ろへバックステップしたことで躱された。
状況を変えるべく果敢に攻撃を仕掛けるリヴィであるが、何合か衝突後は再度押し負けるという状況を繰り返している。
「ジミナ・セーネン…あそこまでの強者とは…っ!!」
「リヴィ選手もとても強いのに!!」
オリヴィエが動く速度はすでに
アイリスと共に見ていた者達もジミナが持つ実力を知って現実とは思えない程に驚いている。
(オリヴィエ…!!)
そしてそれはアイリスも同じ。
オリヴィエが現代に蘇ってから、短い時間ながらも戦闘修行を共に行ってきた回数はアイリスが一番多い。
それはアイリスが身体を動かすことが得意だったというのもあるが、オリヴィエも考えるよりは動く方を好むのも理由だった。
ブシン祭に出場すると分かったときも、ガイアスが調整を行うためによく合流する事もあったが、刃を潰した剣で何度も戦った。
故に彼女の強さを一番把握している人物がアイリスであり、その強さは彼女も認めている程なのだ。
しかし追いつかない―――。
攻撃が届いていないのではない。
信じられないことに、ジミナの動きにオリヴィエが少しずつ追いつけなくなっている様にアイリスは見えた。
「フゥゥゥウウウ!!」
「!??」
ゴッッ
ジミナの上段廻し蹴りに反応できなかったリヴィは被弾。
蹴り飛ばされ地面へ転がっていくが即座に身を切り返して反撃に転じていく。
「――なるほど。スライムで構成されている以上、急所を狙おうと無意味ということか」
顎を狙ったあの上段蹴りは直撃すればその重さが首に多大な負担を掛け、そして脳を揺らして軽い脳震盪を発生させていただろう。
だがオリヴィエは全身がスライム。
エルフと同じ見た目をしていても中身は全くの別物。
揺れる脳もなければ、首が折れようとも魔力さえあればすぐに回復できる。
そのためこの戦いは本当であればオリヴィエ側が圧倒的優位なのだ。
人体の急所を持たない彼女にとって、対人戦で活用される技術など意味を持たない。
コアさえあれば生きていられるからだ。
しかし相手はジミナに扮しているシャドウ。
地球で培い、高め続けてきた戦闘技術はこの世界でも随一だ。
いくら速度を挙げようとも相手の行動の起こりを読み取れる域にいる彼にとって、相手がしやすい部類だった。
「ッッ!!?」
「“目”に頼りすぎだな」
駆ける速度は間違いなく大会最速。
しかし、当てられる、
誰の目にも留まらない程に速かったとしても、シャドウの感知からは逃れられない。
「まだ――ッ!!」
どれだけ速かろうとも、シャドウにはもう通じない。
その動きを誰一人捉えられなくても。
シャドウですら、彼女を見ることが出来なくても。
「~~ッッ?!」
斬撃が当たる。
蹴りが当たる。
体当たりが当たる。
(これが…!)
見えていないはずだ。
魔力制御を用いて最適解と最高速を以て動くオリヴィエは、この世界を探しても頂点に近い速さだろう。
だが反撃を許してしまう。
その訳を、彼女は朧気ながらも理解する。
(これが、見切り…ッ!!)
第一回戦で行われた王国最強同士の戦い。
アイリス・ミドガルとアレクシア・ミドガルが戦いの序盤で行った内容。
それは攻撃がすり抜けたと錯覚してしまうほどに、最小限の動きで躱していくもの。
オリヴィエの動きを捉えきれないシャドウが、彼女を対処しきれている要因である。
放たれてからでは防ぐことが出来ない攻撃への対処。その解答。
相手が攻撃をする瞬間を見極めて、その“直前”に動く。
それが王女達が見せた『見切り合い』の本質だった。
「お前の速度は素晴らしいものだ。賞賛に値する」
段々と攻撃を正確に当てるようになってきているジミナが賞賛する。
それは彼にとっての本音。
ここまで速度を極め、そしてここまで食い下がった者は初めての経験だった。
「だが惜しいな」
それゆえに感じる。
彼女が武術というモノに出会っていれば、この結果も変わっていたかもしれないのだ。
(本当に勿体ない。少しでも武術を齧っていたら、もっと素晴らしい戦いが出来たのに…)
シドとしてもこの戦いは有意義なものだった。
最初から警戒されていたのはシド的には予想外なものであったが、戦いの内容としては高得点。
速度が自慢の実力者に対して、速度で良い勝負を行いつつ技術で上回って圧倒する。
あいつは一体何者なんだ!?という観客達の発言も彼の耳に入っており、陰の実力者を目指す動きとしては大満足だ。
『気の起こり』は一朝一夕で身につくものではない。
『先読み』の技術も同じだ。
二人の王女は長年の鍛錬からその域に足を踏み入れていることが分かったが、リヴィは体術は優れていても武術ではない。
シドは知らないことだが、直感的に戦いを乗り越えてきた彼女ではその領域には至れない。
(私じゃ、無理…。なら、動くしか、ないッ!!)
それはオリヴィエだって理解している。
僅かな時間の中で、彼女達の鍛錬も見てきた。
理解できる程、武に精通していない彼女でもわかる技術の高み。
そこに至るには文字通りの血も滲む鍛錬が必要不可欠だ。
復活して間もない彼女ではどうあがいても届かない。
であれば、動くしかない。
より深く、より速く―――。
例えそれで、
(無茶を通して、乗り越える――ッ!)
目の前に立つ強敵を超える。
その一点のみを思考に残し、それ以外を忘れ去る。
オリヴィエはすでに確信していた。
このまま戦い続けても、確実に自分が負けることになると。
自身が得意とする
それ以外では大敗だ。
おそらく耐久も、魔力量も、己よりも大きく上回る。
そして自分の
やったことはない。
しかしスライムは『シャドウガーデン』が武装に活用している様に、剣にしても鎧にしても魔力と制御力があれば超一品。
ならば為せるはずだ。
「(いいねっ!)…面白い」
彼女の意図を、即座に把握。
その間にも数多の攻撃を往なしているのだから、流石と言わざるを得ないだろう。
乱打の如き剣戟で、どちらが行動したのか。
もしかしたら同時に同じ考えに至ったのかもしれない。
両者の剣が最後のゴングを鳴らすように大きくぶつかり合い、そのまま後方へ大きく跳躍。
シドはあくまでもジミナという男として、しかし内心では歓喜に湧き立ちながら得物を構える。
オリヴィエは最後の攻撃と言わんばかりの前傾姿勢。
まるで獣の構えの如き姿勢を取り、一呼吸した。
変わる。
周囲の者達の大半は気づいていないが、魔力操作に長けた者達は即座に理解。
彼女の姿がわずかに、だが着実に変化している。
誰もが羨む柔肌が渦を巻くように形を変える。
頭部の髪が揺らめくように纏まり始める。
一点突破の意思を隠さないその姿は、まるで等身大のライフル弾。
姿を変化させていく異様な光景。
豪快に剣戟の音が鳴り響いていた先ほどとは打って変わっての沈黙。
観衆は今大会二度目の固唾を呑んで試合を見守るようになっていた。
明らかにリヴィ・ハイリアがこの状況を打破するために時間をかけて準備をしている。
王女達が見せた“魔力の具現化”も前人未到の領域だ。
だがリヴィが行っている身体の変化も同じこと。
スライムの有用性を把握していない民衆たちにとって、魔力制御で肉体そのものを変化させている様にも見えるだろう。
しかし対するジミナ・セーネンはその場から動く様子を一切見せない。
むしろ望むところだと言わんばかりに構えているまま。
それは勝者の余裕か、
そしてその気持ちを考える余計なモノは不要。
わかることは、次に両者が動いたら試合が終了するという確信だ。
「来い」
ジミナは哂う。
魔力は充分。
準備も完了。
であれば、やるしかないだろう?
「貫け」
リヴィが消える。
瞬間移動でもしたのかと勘違いする程。
音を完全に置き去りにするその速度はまさに『閃光』の名に相応しい。
移動で発生した衝撃すら置き去って、彼女は駆ける。
対するジミナは迷いなくその行動を選択した。
相手の行動は攪乱しようと動いても分かる。
直線突破。
狙いは一点。
そこさえわかれば問題ない。
魔力を強化と硬化に回し、相手が来る場所へ攻撃を「置く」
意図せず科学を再現したリヴィ。
意図して非科学的に先を読むジミナ。
奔る弾丸。
不動の剣。
真逆を選んだ両者が進んだ先にあるものは――――。
「楽しかったぞ」
素性不明の男が浮かべる笑みが、その結果を語っていた。
・リヴィ・ハイリア
英雄オリヴィエ。
速度だけなら世界最速。
ちなみに一般ライフルの弾速ってマッハ2(秒速600~1000m,時速3600km)なんですって。
・ジミナ・セーネン
シド・カゲノーの擬態した姿。
最速相手に互角に渡り合い『先読み』も扱う。
強化しようと思っても最初からあらゆるスキルが限界突破しているような男。
弾丸を素手で掴み取る訓練をしていなかったらちょっと危なかったかもとか考えている。
書いてて漫画を見返すと、シドって時速1200kmで走ることが出来るんだってね。もう人ではないね。
戦闘における状況描写について
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理解しやすい
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まぁ解る
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普通
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ちょっと難しい
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難解