王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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四 鼠駆除、始めます

 

 

 前回、ディアボロス教団がどんな組織なのかを語ったと思う。

 魔人を復活させるために精力的に活動を行うカルトであり、平然と犯罪に手を染め、己の利益のために他人を蹴落とすどころか悪用して利を根こそぎ分捕っていく者達だ。

 

 貴族の血を求めて拉致じみたことを実行していることは事前知識として頭に叩き入れていた。

 あの後アレクシア第二王女を何とか宥めて退室して以降は気取られないように修行に勤しみながら、監視範囲を少しずつではあるが広げていった。

 他国から攻めてくるのならともかく、内部から食い破ってこられた時の混乱による騒動は多大な被害を招くために特に警戒をしていた…していたのだが、ついに連中が行動を始めやがったのである。

 

「で、だ。詳しいお話をお聞きしたいのだが、懇切丁寧にしゃべってもらえるかな?先輩方?」

 

「し、知らない!俺は何も!」

「あ、あぁ!何も知らないんだよ!お前こそ何のつもりだ!騎士団の俺達に対してこんなことをしてただで済むt」

 

 ガイアスの眼前には二人の男。

 どちらも騎士団所属になっているのだが、ディアボロス教団に所属する捨て駒である二人だった。

 

 二人が何をしでかしたのか?

 

 それは貴族の娘を拉致しようとしたのである。

 王国の中心部ということもあり、裏路地などに行かなければ治安は良い方だ。騎士団員が定期的に警備していることもあり、女性だけで動いてもある程度の安全が確保されているのであるが、こいつらは自分たちが騎士団所属であることを良いことに警戒態勢であると嘘を教えて人気(ひとけ)の少ない方へと誘導することでリスクを減らしつつ、拉致を完遂しようとしていたのだ。

 

 当然把握していたガイアスによって下手人は確保。紅の騎士団へ突き出している。ただしそれはあくまでも目を向けさせるためのブラフだ。

 『紅の騎士団』はミドガル王国の第一王女アイリス・ミドガルが設立した騎士団であり、表向き(・・・)は王国最強の魔剣士であるアイリスが率いていることから注目度が高い。

 それゆえにすでにディアボロス教団が数名紛れ込んでいるのだ。

 突き出した下手人はそいつらによって秘密裏に処分されて闇に葬られるだろう。

 だがそんなことは百も承知。

 アイリスには鼠が紛れ込んでいることも伝えており、これを機会に駆除することも承認済みだ。

 

 自分の騎士団にそんな奴らがいることにかなりのショックを受けている様子であったが、その程度で衝撃を受けるようであれば教団に太刀打ちすることなど夢のまた夢である。

 修行にて多少矯正は出来ているのだが、アレクシア王女と異なりアイリス王女は真面目が過ぎるのだ。裏工作が十八番(おはこ)の相手にあの生真面目が突っ込んでいったら言いくるめ判定でファンブルしてこちらの敵として立ちはだかりました。なんてことが起きてもおかしくないぐらい真面目だ。

 王族で多感な時期まっしぐらだというのに、性に関する知識に対して白のパレットのような知識しかないのはこの国の教育方針がやばいせいだと思っている。

 

 そんな小豆バーのような強固さを有したお硬い頭も表面が熱でぬめるぐらいには柔らかくなったもののまだまだ足りない。大福ぐらいのモチモチ具合になってくれれば教団に関する情報も簡単に共有できるのだが…

 まぁそんなアイリス王女も柔軟に判断できるアレクシア王女と共に叩き上げてきた。王女タッグで騎士団をこれからも率いていくのであれば、今よりも遥かに強靭な騎士団に変えていけるだろう。

 

「…そういう意味では雑兵の相手をさせて慣らしていくってのもありだったか…?」

 

「な、な…ッ!?」

 

「あぁ、そういやまだ一人いたんだった。まぁいいか」

 

 隣のお仲間が口を境目に横にスライスされた光景を理解できずにぱくぱくと口を動かす男。

 生かして返すこともない。というよりもこいつらが行動を起こすところからゴーレムを通して全て見ていたので尋問じみたこともする必要はなかったのだが、そこはその場のノリだった。

 一瞥して地面から槍を生やして背後から心臓を一突き。

 それだけで雑兵の価値も亡くなったモノが二つに増えた。

 

「これ以上放置するとあいつらの動きが過激になりそうだな…。事態が悪化してしまうなら…うん。今から潰すか」

 

 パチンッと指を鳴らす。

 

 外壁から。水路から。屋根上から。指の合図で蜘蛛の子を散らすように、一斉に動き出す。

 命は宿してはいなくとも、命令を遂行する。それがガイアスが淡々と周囲に潜ませていたゴーレム達。

 敵対組織を王国から駆逐するべく、各々の得物を手に取り夜の世界を駆けていく―――。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「アルファ様。お伝えしたいことが」

「ベータ?貴女が報告に来るほどの事があったというの?」

 

 場所は変わってディアボロス教団アジトの一つ。

 スライムで作られた黒のボディスーツを身に着けた金髪の女性が仲間からの報告を受けて少々驚いた表情を浮かべた。

 

 彼女の名はアルファ。

 魔人復活のため、陰で暗躍し続けるディアボロス教団に対抗するために作られた地下組織『シャドウガーデン』に所属するエルフの女性であり、組織運用から構成員への教育なども行うこともある実質的な統括者である。

 

 アルファの傍に立ち、報告する者はベータ。

 白銀の髪でショートヘアーが特徴のエルフであり、アルファとは『シャドウガーデン』を設立する以前から知り合いであった。

 

 『シャドウガーデン』の構成員は現時点で百を超える人数が所属し、その大多数が悪魔憑きという魔力暴走が原因で迫害されて殺されるのを待つだけの存在であった者達である。

 ディアボロス教団が悪魔憑きを治療すると称してかき集め、人体実験を繰り返している事実もすでに彼女達に把握されており、教団に対する敵対意識は日に日に増加している。

 

 元々有する魔力が膨大で、制御ができていない者達が発症するのが悪魔憑きであり、関係者と極一部しか知らないことだが『シャドウガーデン』総帥であるシャドウの治療を受けて元の状態に戻ることが出来た者達だ。

 彼に対して感謝と尊敬。そして忠誠心は極めて高く、構成員一人一人が非常に能力が高い。

 表で活動する騎士団であっても正面から当たっても一蹴されて終わるぐらいには戦力差がある。だからこそ『シャドウガーデン』がこの世界で唯一ディアボロス教団を相手にとって互角以上に戦い続けられているのだろう。

 

 『シャドウガーデン』でも別格の実力を持つ七人。

 その七人の幹部を“七陰(しちかげ)”と呼ばれているのだが、アルファとベータはまさにそこの幹部たちである。

 今回の任務もディアボロス教団がミドガル王国の地下深くで人体実験を行い、シャドウガーデンに対抗すべく人工魔人と言っても良い存在を作り出そうとしているのを把握したために、これを機に教団に関わる組織をまとめて殲滅するものであった。

 

「イプシロンより報告がありました。作戦通り教団と繋がりを持つ組織を襲撃。無事に殲滅は完了しております。しかし複数の教団拠点にて私達が突入したときにはすでに教団団員が全員殺されているのを確認しております」

「…私達よりも先に何者かが拠点を襲撃していたと?」

「はい。ですがそれでも少々不可解でして―――」

 

 ベータの言葉が伝えてきた内容にアルファは眉を(しか)めた。

 彼女だけでなく七陰メンバーは一人を除いて頭がきれる。その彼女達でも不可解と称する現場の状況は、今後の状況によっては自分達の脅威になりうる可能性を秘めていた。

 

 報告を終えたベータは作戦を遂行すべくこの場を離れている。

 アルファは屋根の上に立ち、作戦を行っている方向へ視線を送った。

 

「教団の関係者は全滅。ただし周囲の破損痕は一切存在せず、団員全員が暗殺されていた…か」

 

 教団も馬鹿ではない。最初に襲撃してからずっとシャドウガーデンに良いようにやられっぱなしの教団は監視や警備を強化し、自分達を迎撃しようと動き回っている。

 襲撃の可能性があることを理解している彼らを無抵抗の間に殲滅など、いくら暗殺が得意と言えども至難の業だ。更には大規模拠点内にいる全員が抵抗した痕跡すら無く全滅させるにはどれほどの技量差があったのだろうか。

 

「『シャドウガーデン』の敵か味方か…判断はつかないけれど、警戒するに越したことはないわね」

 

 アルファは謎の存在に対して警戒度を引き上げる。

 場合によっては“七陰”全員をぶつける必要もあることを頭の片隅に置きながら、アルファは作戦成功のためにその場から姿を消したのであった。

 

 




 
 
 
・主人公
 教団がちょくちょく暗躍し始めたから本腰入れて王国内のアジトを潰すことにした人。
 数多のゴーレムをリアルタイムで操る頭可笑しい所業をしている。

・アルファ
 主人公がシャドウからスライムを教えてもらっていることを知らない才色兼備の万能金髪エルフ。
 シャドウガーデンの影の統括者。
 読者にも人気がある。報われて幸せになってくれ。
 
・ベータ
 アルファの顔見知り。
 表の顔ではすでに執筆を活かして小説家として活用している。
 シャドウへの心酔度は1・2を争う。
 胸が豊満の為、ハニートラップには要注意。
 この世界ではアレクシアともそこそこ仲良くなれる可能性あり。
 
・教団の捨て駒二人
 語ることもなし。
 未遂の為、とある人物が監禁拷問ごっこをすることはなくなった。
  
 

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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