王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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( ゚Д゚)◦○(またこいつらイチャ付いていやがる…)


 


四十八 ( ゜- )#;皿);皿)  (*´▽(゜_゜(~_~。*)

 

 

 ミドガル王国、本日晴天也。

 

 雲一つ存在しないその青空はまるで天が今日を祝福しているかの様。

 科学物質によって引き起こされる大気汚染などがまだ発生していないこの世界では空気も澄んでいる場所が多くある。

 こういう日にピクニックでもして丘の上でサンドイッチやおにぎりでも食べると最高に美味しいんだろうなぁ。

 

「ほらっ…しゃきっとしてよ」

「ふふっ、格好いいですよガイアスさん!」

 

 空を眺めて思考を放棄しようとするガイアスの傍には二人の女性。

 一人は甲斐甲斐しく世話を焼き、もう一人はガイアスを褒める。

 それだけを文字に書き表せばそれまでなのだが、その二人の女性が王国を代表する王女となれば話は変わってくる。

 まるで逆玉の輿を体現しているかのようだ。

 何も知らない…いや知っていたとしても、その光景を見た男たちは血涙を流しながらガイアスを睨みつけてきたことだろう。

 というか進行形で睨みつけられている。

 

「ぐぎぎぎぎ…なんであいつばかりぃ…!!」

「ほんとうですよ…!いい想いしすぎています…ッ!!」

 

 ガイアスの視界の片隅に映るのはチャラそうな見た目の男と丸刈りの男。確か名前はヒョロ・ガリとジャガ・イモ。

 シド・カゲノーを調べる際に確認したが、彼が行動を共にしているにしては優秀とは言い難い素行を行っている生徒である。まぁ愉快ではあるかもしれないが。

 

 チャラ男であるヒョロ。

 ギャンブルで金を擦るのが得意なすこしチャラさが出ている男。

 周囲の反応を見るに結構なトラブルメーカーらしく、よく何かをやらかすらしい。

 

 丸刈り男がジャガ。

 ヒョロ程ではないものの、婚約者がいる女子生徒をストーカーして問題になっていた事を今思い出した。

 よくヒョロと行動を共にしている所が確認されており、仲が良い様子だ。

 

 そんな彼らも立派な当然魔剣士学園の生徒。

 そしてシドが見繕った生徒であるということは、ガイアスが見知った姿もあるということ。

 それがいかにも目立たない生徒ですよーという雰囲気を出している男子生徒 シド・カゲノーである。

 何も知らない者からすればその辺にいる男子生徒と何ら変わりがないだろう。

 

 此方の視線に気づいたのか目が合ったが、シドはこれと言った反応は無い。

 彼からすればシド・カゲノーとして自分達と関わった事が無いからその反応は当然か。

 そして一方的に正体を知っているアドバンテージを態々(わざわざ)無くすのもおかしなことを考えると、こちらから話しかけるのも変な話。

 そのまま相互不干渉を貫くことにする。

 しかし付き添いのような形と予想出来るとは言え、態々観戦に来るとは結構暇なのだろうか。

 

(そして俺は何故二人に腕を組まれながらスタジアムに向かわねばならないのだろうか…?)

 

 ガイアスの気分は警察に連行される犯人だ。

 しかし傍から見れば王女を侍らせる男。

 客観的に見れば事実であろうそれは、ガイアスに否定する権利は存在しない。自分だってその光景を見れば侍らせてると考える自信しかない。

 

 アレクシアは正直可笑しくないと思っている。

 こういう言い方はアレだが、アレクシアとは身体を重ねた仲だ。

 彼女から好意を伝えられ、自分も答えを返してその想いに応えた。

 相思相愛という形で収まっている以上、両者を隔たるモノはない。国王陛下もこのことを知った上で何も言ってこないとなればそういうことだろう。

 

 しかしローズが自身の腕を組んで歩くことには些か疑問が浮かぶ。

 最近ミツゴシ商会で販売されている花の香り特徴の石鹸を使用しているのか、柔らかくも微かに甘い香りが鼻腔をくすぐってくるため、意識が彼女の方にも向いてしまうのだ。ローズ王女も持て囃される機会は少ないがスタイル抜群の美少女だし…。

 更にガイアスとアレクシアは15歳、ローズは17歳であり、彼女の方が年上だ。

 それなのに何故かローズがガイアスをさん付けして来るのも何か気になるところ。

 

(下手に突っつかないほうがいいんだろうなぁ…)

 

 ただいくら考えてもガイアスには女心が解らない。

 そういうこともあるのだろうと割り切って、思考を放棄することしかできなかった。

 

(…ローズさん。わかっているけど(・・・・・・・・)、距離を詰め過ぎよ)

(良いではないですかアレクシアさん。少しでもガイアスさんに察してもらわないと)

 

 言葉にせずとも伝わる事もある。

 ガイアスが上の空で歩みを続けている間に、アレクシアとローズは目で会話していた。

 ローズが愛おしそうにガイアスの腕を抱き締める姿は誰が見てもそういうこと(・・・・・・)にしか見えない。というかそういうこと(・・・・・・)なのだろう。

 

 きっかけはなんだろうか…とアレクシアは考える。

 おそらく決定的になったのはオリアナ国王の救出と治療のために駆け回ってくれた事なのだろうが、もしかすれば悪魔憑きの治療やブシン祭での対決によって彼を意識する事があった可能性もある。

 

(流石に一方的にやられた試合でガイアスに惚れたとか…ないわよね?なんだか心配になってきたわ)

 

 オリアナ王国は芸術の国。

 芸術国家と呼ばれているだけに、燃え上がる愛とロマンスが根底に眠っているのかもと脳裏に浮かんだ可能性をアレクシアは否定しきれなかった。

 まぁ趣味趣向は人それぞれ。

 アレクシアがとやかく言えるものでもない為、その考えは頭の片隅に押し込んだ。

 

 アレクシアは父親であるクラウスやラファエロ国王から今後の話は聞いている。

 ミドガル王国とオリアナ王国は今後も関係を強化していくため、政治的・軍事的にある種真っ当な判断が成される事。

 そのためアレクシアもローズが行動を起こすあれこれの背景を把握しているのだが、外でここまでの事をされると対抗心が出てしまうというもの。

 負けじとアレクシアもガイアスの腕を胸元に寄せるが、慣れない行動によって羞恥心に駆られて頬が赤く染まってしまうのも仕方のない事であった。

 

「おーい。到着したからそろそろ離れてくれると助かるんだが…」

 

「あら本当ね。折角だしこのまま控え室まで向かいましょうか」

「それが良いと思います。行きましょうガイアスさん!」

 

「えぇ…?」

 

 段々周囲の目が鋭くなっていることに気づいているガイアスはやんわりと離れる様に伝えたのだが、二人の反応は我関せず。

 理解した上で離れない選択肢を選んだ二人に困惑するしかない。

 まぁ無理矢理引き剥がすことをガイアスが選択するはずもない。となれば腕を組んだそのままの状態で会場入りする三人の絵面となる訳であり、それを見た民衆に注目されないはずがなく…。

 

「お、おい…あいつ…アレクシア王女とローズ王女を侍らせてなかったか?」

「アレクシア様だけに留まらず、ローズ王女にも手を伸ばしているのか…」

「だが実力は本物なの見ちまったから何も言えねぇ…」

 

 ヒソヒソと会話する国民達がそれを見て、ガイアスに関する噂が更に出回るのはある意味必然なことだろう。

 もしかしたらここまで彼女達は考えていたのかもしれない。

 結局ガイアスは運営の準備も出来て二人の名前が呼ばれるまで解放されることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日行われるはブシン祭。

 誰が優勝するのかを待ちわびていた観客達からすれば、大金叩いてでも見に行きたい決勝戦。

 本当は数か月前に終わる予定のはずだったのだが、スタジアムが崩壊してしまったことで延長する事を余儀なくされ、一時はブシン祭の優勝者を決めずに話を流してしまおう案も挙がったほどに関係者達が頭を悩ませた。

 

 結局は復旧させて優勝者を決める方針で話が纏まったことにより、泣く泣く作業員たちは復旧作業に勤しむ事になったが、致し方ない犠牲である。

 数多の努力と金銭の力によって実質的再建築されたスタジアムは最新鋭の設備が揃う王国内でも最高峰の施設に生まれ変わっている。

 予定の時間までは各々会場内の設備を堪能しているのだが、時間が近づけばその場にいた者達は全員観客席へと足を運んでいく。

 

 今日がスタジアム公開の初日ということもあるが、彼らがやってきた一番の目的は今から行われる事になる決勝戦。 

 なにせ現場に居た者達にとって、伝説の戦いとなっているあの一戦後に行われる決勝だ。

 

 空を支配したアレクシアと大地を創生したガイアス。

 自分達では届かない高みにいる二人の実力者。

 その彼が、彼女が、雌雄を決するとなれば結果が気になって仕方がない。

 

 人の噂は離れれば離れる程に誇張されていくように、語られる内容が口伝いに段々と話が大きくなってしまっており、当時の試合を見ていない者達が興味を持つ程になっていた。

 それぐらい国中で関心を持たれているのである。

 

 そのため当然観客席は満席。

 活気があって大変よろしい。

 

 

『決勝戦を行うに当たって、皆さまにも再度連絡をさせていただきます。今回の~―――』

 

 

 そうして読み上げられる禁止事項。

 観客達にもわかるように簡潔に伝えられる内容であるが、やはり皆が指摘するのは“魔力の具現化”の禁止が一番大きいことだろう。

 

「なんで禁止なんだよ!」

「それを見に来たんだぞ!!」

 

『運営側の解答といたしましては、解禁(ソレ)によって受ける被害及び修復修繕費用を一任してくれるのなら喜んで解禁するとのことです』

 

「「「「 ……… 」」」」

 

 当然観客達の一部がブーイングを飛ばしていたのだが、そこは当然把握していた運営一同。

 それによって齎されるスタジアム被害に掛かる修復修繕費用を一任してくれるなら喜んで解禁するという解答に口を閉じるしかなかったようだ。

 やはりお金はパワー。

 すでに目も当てられない額が投入されている為、初日に崩壊する悲惨な光景を彼らも見たくないのだろう。アナウンスを聞いて心底安心している者達も見受けられた。

 おそらく彼らがこの会場を修復したスタッフ達だろう。いつもお疲れ様です。

 

 

『それでは入場して頂きましょう! 

 ガイアス・クエスト選手!アレクシア・ミドガル選手!!』

 

 

 名を呼ばれ、入場を果たす二人の戦士。

 両者共すでに国内で名を馳せる実力者として語られるほどの注目株。

 会場のボルテージが一気に上がり、会場が熱気に包まれる。

 移動販売のスタッフ達が目まぐるしく動き回り、飛ぶように発泡酒が売れていた。

 それだけお祭り好きにはたまらないということだ。

 

「ガイアスー!このまま優勝しちまえー!!」

「王女様頑張ってー!!」

 

 声高に叫ばれる声援を一身に受ける二人だが、気負うことなく自然体。

 それだけの場数を踏んできたということでもあり、緊張するよりもここで戦うことが出来る歓喜に満ちている事も非常に大きい。

 

『本日の実況席にはお二人の実力を一番知っているであろう人物がいらっしゃっております!他を圧倒する程の実力と具現化によって炎を操る姿から、ついた二つ名は『炎皇』!ミドガル王国第一王女アイリス・ミドガル様にお越しいただきました!』

『貴重な場に呼んでくださってありがとうございます』

『いえいえいえ!こちらこそ王女様のお隣に居られるなんて光栄です!』

 

 今回決勝戦を行うに当たって彼らの解説実況を行うために呼ばれたのはアイリス・ミドガル。

 一回戦でアレクシアと死闘を繰り広げた武闘派王女だ。

 結果としては敗北を喫しているが、アイリスは現時点の騎士団員で最強であることは紛れもない事実。

 今回の戦いでもアイリス程の実力者であれば、二人の戦いも上手く解説が出来るのではないかと運営が国王陛下と王女へ打診したことで実現していた。

 

『第一回戦でのアレクシア王女との戦いは素晴らしいものでした。あの戦いを一度でも見ればアイリス王女が王国最強の一角であることは疑いようもない事実でしょう。そのうえで今回の戦い、アイリス王女はどう見ますでしょうか?』

 

 実況のマイクパフォーマンスは程々に、今回の趣旨であるガイアスとアレクシアの戦いをアイリスはどう見ているのかを聞いた。

 

『アレクシアとの戦いは私にとっても最高の戦いになりました。

 結果は敗北という形になってしまいましたが、アレクシアの成長が何よりも嬉しいものですね』

 

 聞かれたアイリスはまず最初に妹の成長を喜んだ。

 本当はものすごく悔しい気持ちもあり、ガイアスに涙を見せる事になったが、それを態々言う必要もない。

 

『アレクシアと私を比べれば魔力量や膂力では私が勝ります。ですが結果を見て頂けるとわかりますが、勝者として歩を進めたのはアレクシアです。

 卓越した技術と魔力制御は私よりも高い。今回は互いの“魔力の具現化”が制限されている以上、どれだけアレクシアがガイアスの想像を上回れるかが鍵になるでしょう』

『なるほど!』

 

(あまり言いすぎないでよ姉さま…)

 

 アイリスの言葉はアレクシアも理解している。

 ガイアスの想像を越えれなければ、一矢報いる事なんて夢のまた夢だ。

 

『ではガイアス選手はどう見ますでしょうか?』

『……』

『…?アイリス王女?』

 

 ガイアスの名を挙げると少しの間黙り込むアイリス。

 それを訝しんだ解説が声を掛けると「えぇ」と反応。

 アイリスは傍に居る側近に目配せをすれば、側近も頷いたのを見て話しだす。

 

『今大会は非常に優秀で、そして強力な実力者達が集まりました。リヴィ選手。アンネローゼ選手。ローズ選手。…そして規定により敗退となりましたがジミナ選手。自画自賛するようですが、私も彼らと肩を並べられる強さであると自負しています』

 

 その言葉を否定する者は誰一人としていない。

 第一回戦からこの決勝戦まで、観客達を驚かせ続けた大会であったことは紛れもない事実。

 

『シャドウと名乗った者は例外なので省かせていただきますが…今大会にて最強が誰かと問われれば、私は間違いなくガイアス選手を選ぶ。それほどに彼は強い』

『あ、アイリス王女がそこまで言うほどですか…!ち、ちなみにどのような所を見て言われるのでしょうか?』

 

 自分よりも強いと断言したことで一部の観客達も動揺が奔る。

 ガイアスが魅せた“魔力の具現化”と武術。その二つは遥か高みにあることは理解できているが、それはアイリスを見ても、アレクシアを見ても同じこと。

 彼らからすれば魔力の可視化ですら強者認定できる要素なのだから、それよりも上の段階を見せられても全部同じように見えてしまっているのだろう。

 

『アレクシアとは別ベクトルで魔力制御が突出しています。

 ゴーレムを操って攻撃をする事が出来る事はあの戦いを見ていれば理解できると思いますが、彼はその上で身体強化を絶えず掛け続けて不測の事態に対応できるように意識を張り巡らせています。そんな芸当は早々出来るものではありません』

 

 それは一定以上の実力者であるが故に如実に感じ取れる。

 “七陰”の面々がガイアスに驚いていたのはそのポイントもあるだろう。

 

『それはつまり、この戦いはガイアス選手に軍配が上がる可能性が高いと見ているということでしょうか?』

『私と戦ったアレクシアのままでいるのであれば、そうなると見ています。何せ互いに手の内を知っている者同士の戦いですから、対応力ではガイアスが上でしょう』

『随分とガイアス選手を評価されていらっしゃるんですね』

『当然です』

 

 解説の質問に対し、堂々と答える。

 

『彼は、ガイアス・クエストは…、私達の最愛の師匠(・・・・・)ですから』

 

 アイリスの返答に、「えっ…」と言葉を失ってしまったのは解説だけではないだろう。

 だがアイリスの真剣な眼差しに、解説はそれが事実であると受け入れざるを得なかった。

 その情報は再び国内を騒がせるのに十分すぎる代物。

 

(目に物見せるのです、アレクシア)

 

 情報の爆弾を投下しながら、アイリスは眼前の戦いから目を背けることは無い。

 スタジアムが崩壊してから今日までの集大成。

 その結果が示されるのだ。

 

 

 

 

 

「ついに、だな」

「そうね。ここまで来るのに…長かったわ」

 

 思い返すはこれまでの人生。

 アレクシアが初めてガイアスと出会ってから続けてきた鍛錬の成果は、アレクシアが今この場に両足で立っている事が証明している。

 

 着実に成長している喜びがあった。

 『力』を得たことで天狗になっていた時に思いっきり叩かれた事もあった。

 それでも彼女が継続してきたのは、目指す頂が見えていたからである。

  

 そのおかげでアレクシアは『ディアボロス教団』の計画を真正面から打ち破る事が出来た。

 それらが実を結んだから、好敵手(アイリス)を倒すことが出来た。

 そして今、アレクシアは最愛の人(ガイアス)の前に立っている。

 

「挑ませて貰うわ。私が、私達が信じる…世界最強に」

「思う存分かかってこい…!」

 

『 構えてェッ 』 

 

 双方を促すレフェリーの声で、互いに構える。

 ガイアスはシャドウとの戦いで見せた開手での構えを。

 アレクシアは剣を収めたまま、腰を沈めた居合の構えを。

 

 沸き立つ歓声も鳴りを潜め、ただ静かにその時を待つ。

 

『 始めィッッッ!!! 』

 

 駆ける両者。

 そしてその合図と共に歓声が爆音となって会場を叩くのだった。

 

 

 

 




 
 

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