「うん。ちゃんと据えているな」
「初速の動きも、悪くない」
アレクシアの戦いを見ていた二人のエルフは彼女の戦いをそう評価する。
アレクシアが見せた初速と、その速さを掛け合わせた体捌きによる方向修正。
そこから生み出される千変万化の攻撃は戦い慣れている者であったとしても容易に受け止めきれるモノではなく、その強みが遺憾なく発揮されていた。
もし何も知らない者達が彼女達を見れば、二人が血縁関係であることを察せられるだろう。それだけでなくとも彼女達の麗しく優れた容姿は一際目立つモノだ。
そんな好奇心を持った視線をある程度受け止めながらも彼女達は試合に集中している。
冷静に戦況を分析している姿から察せられるが、彼女達も戦闘力は王国内でもトップ層に位置する実力者。
ナンパ目的で声を掛けに来る下心しかない凡夫達など相手にもならないのである意味当然なのだが、意に介さない。そうでなくとも『ブシン祭』の第二試合にて観客達を沸き上がらせた『閃光』の名を冠するリヴィ・ハイリアとなればこの場で知らない者はいない程なので、下心を持った下郎が声をかけられる訳もないのだが。
「しかし本当に彼は強い。剣を使わない武術だけであそこまで渡り合う…。シャドウとの戦いを見ていても感じていたが、一体何者なんですか…」
「ん…それは解らない。ただアレクシア達の、想い人。悪い人じゃ、ない」
「それは分かっていますお祖母様」
「でも確かに、あそこまで強い理由は…知りたい」
ガイアス・クエストは普通に接していれば良い人物だ。
力を誇示して周囲に強く出る事は無く、人と接する時も極めて普通だ。頭脳面では平均的だと聞いているが、戦い…それも武術と魔力操作に関しては王国所属としては随一と可笑しな評価。
クエスト家に伝わる秘伝でもあるのかと思いきや、両親は真面目に活動を続ける極めて普通の一般貴族であり、そんな話は聞いたことがない。
アレクシアやアイリスに直接聞いてみたこともあるが、彼女達もガイアスの強さの源は知らないという。
生まれて今に至るまでに僅か十数年の短い時間の中であそこまで高められるのは才能だけで果たして済ませて良いものなのか。そんなことを考えるが、オリヴィエが王女達よりも深く知る機会は訪れない事は分かっている以上無意味な考察だ。
だがどうやってそこまで強くなれたのかがいつまでも気になるポイントということだろう。
「ベアトリクス。貴女なら、ガイアスと良い勝負…できそう」
「ありがとうお祖母様」
ベアトリクスはオリヴィエの賛辞に礼で返した。
しかしその表情は明るいわけではない真剣なモノ。
オリヴィエが言っているのはあくまで武術のみに限定しての事だと、自分自身で理解しているからであった。
『武神』ベアトリクス。
『閃光』リヴィとして活動したオリヴィエの子孫であり、妹の忘れ形見を探して旅を続けてきた生粋の武芸者。
その実力はブシン祭の初代優勝者であり、この世界において戦闘力一点で見れば最高峰と言っても過言でない程の実力者である。
(わかっている…。お祖母様が言っている事はあくまで『武術』に関しての事…)
ベアトリクスは強い。それこそ王国所属の騎士団員を相手取った場合、王女達を除けば彼女に敵う相手は存在しない程に。
これは慢心ではなく、確固たる事実。だがその上でベアトリクス自身はガイアスと互角であると断言する事は難しいと判断していた。
その理由が第三回戦で見たガイアスとシャドウの戦いにある。
両者が生み出したあの戦いは、世界最強を決める一戦と呼んでも差し支えないレベルにまで高められたもの。
互いが見せていた『武術』でも『魔力』でも、彼らと肩を並べている者はいないと断言してしまっても可笑しくない濃密な戦いは、一定以上の実力者であるからこそわかる領域だった。
ベアトリクスも幾多の場数を踏んでいる。
その中でも命を賭けたやり取りを何度も経験してきた。
自身の死を覚悟したことも何度かある。
だからこそ、己があの場で戦う当事者であった場合を想像した時、彼らの全力に勝てる
魔力を使わない、または身体強化での駆け引きだけであれば何とかなっているかもしれない。
だが全ての力を用いた戦いに発展した場合、己はシャドウが放つ莫大な魔力に耐えきれるだろうか?ガイアスが使ってみせた千の軍勢に真正面から討ち勝てるだろうか?
それを考えた上で勝てると即座に断言できる程、ベアトリクスの目は曇っていない。
(――“魔力の具現化”か…。人よりは長く生きてきたこの身だが、まだまだ高みを目指せるのは喜ばしい事だな)
あの戦いは己の剣技を磨き直す良い機会だった。
それに加えて魔力制御の分野では己が圧倒的に劣っている事実。
己の目であの戦いを見届けたベアトリクスに少なくない衝撃を与えたが、逆に考えれば魔力制御という大きな伸びしろが残っている証拠でもある。
どれだけ時間が掛かるかはわからないが、あの技術を身につける事が出来れば今よりも高みを目指せることは確信を持って言える。
そのためベアトリクスは具現化に至るまでの魔力操作技術を学ぶために、放浪の旅へ出ることをせずに王国へ残る選択を取ったのだ。
「でも貴女の動き方は、本当に勉強になる。私の時では…なかった動き」
オリヴィエが言うのはベアトリクスが用いる体捌きだ。
『武神』とは別にエルフの剣聖として名を馳せている彼女。普通であれば彼女の剣技に目が向きがちになるのだが、ベアトリクスの持つ強みはそれぞれの所作から繰り出される洗練された最短動作。
長い得物を扱う中で、不意を突かれても即座に対応できる体捌きこそが彼女が一人でここまで生き抜けてきた強みとなる。
「アレクシアも、貴女の動き方に、興味深々だった」
「彼女は貪欲さには驚かされました。まさかこの短期間であそこまで身につけるとは」
アレクシアに流動的な体捌きを教え込んだ人物こそベアトリクスだ。
ガイアスが初見とは言えども対応が遅れるほどに極めたのはアレクシアが培った努力の賜物であるのは当然であるが、その土台にいるのがベアトリクスの技術である。
ガイアスもアレクシアやアイリスに武に関する技術を教えてきた。
だがそれはあくまでも徒手格闘がベースとして組み上げてきたモノであり、拳と剣では必要な間合いが全く異なる。
そのため剣技となれば彼女達が独自に鍛えあげるしかなかったのだが、このブシン祭で世界最高峰の剣技を有した人物との繋がりを持てたアレクシアがこの縁を活用しないはずがなかった。
短い間ではあるもののすでに盤石な基礎を身につけていたからこそ、ベアトリクスが教えた技術を即座に吸収し、己に合った域にまで昇華する事が出来ているのである。
「お祖母様が教えた初速。私が教えた動き。その土台となっている長年積み上げられた緻密で大胆な筋力の扱い方。そして魔力の制御能力。そのどれを取っても超一級品。
あの若さであれほどの実力を身につけたアレクシア王女は、すでに達人と呼ぶに相応しい実力者です」
ベアトリクスは素直にそう評価する。
練度の差こそ今はあれども、これから鍛えていくことを考えれば楽しみで仕方がない。
初めてアレクシアと手合わせしたときよりも彼女は強くなっている事をベアトリクスも実感していた。
『 アレクシア選手とガイアス選手が息もつかせぬ攻防だぁ! 』
剣戟と連打の応酬。
試合が開始されてから続く高度な駆け引き。
二人がぶつかり合う光景を見れば、ベアトリクスの言に異を申し立てる者はいないだろう。
オリヴィエもベアトリクスの発言を否定する事はせず、むしろ肯定していた。
「うん。だけど…」
剣戟が逸らされ、被弾する回数が増えていく。
被弾したことによって体勢が崩れ、隙が生まれる。
瞬き程の短い隙に対して、縫うように拳打が叩き込まれていく。
「
(…?)
だがオリヴィエは冷静に状況を見てそう判断。
会話には入っていなかったが隣で観戦していたローズ・オリアナはオリヴィエの発言に若干の違和感を感じ取ったが、言葉の中に含まれる意図までは把握できなかった。
だがすぐに状況が一変する。
ガイアスが放った肘打ちが、アレクシアの
「あっ!!」
「「!!」」
声を挙げてしまうのも仕方のない事。
試合が始まってから2回目となるクリーンヒット。
最初のアレクシアの攻撃はガイアスが即座に対応したことで状況を一変させるには至らなかった。しかし今回は違う。
観戦していた彼女達の目に映ったのは顳顬を正確に撃ち抜かれたことで、アレクシアがその場で崩れ落ちる瞬間だった。
(本当に強い。そんな事は出会った時からわかってた)
戦場に身を置いているアレクシアは思う。
彼――ガイアス・クエストと出会ってから
様々な経験が出来た。
多くの知見を得た。
その過程で心が折れてしまいそうなほどの痛みを受けることもあった。
だがそれを乗り越えたからこそ、今のアレクシア・ミドガルが存在している。
(でも…それでも、私は貴方に追いつきたい。その一身で取り組んできた)
最初は憧れだった。
自分と同い年の少年が、自分よりも遥かに優れた魔力制御を持っていたから。
(いつからだろう…。その想いが何時の間にか変わっていったのは…)
嫉妬したこともある。怒りを出したときもある。
彼の善意を踏みにじったことも多々あっただろうに、彼はそれでも根気よく傍に居続けてくれた。絶対に面倒な奴だと思っていただろうに、正面から受け止めてくれた。
おそらくその辺りからだったのかもしれない。私が彼を異性として好きになったのは…。
(…あれ?なんで今、そんな事を考えているのかしら…?)
アレクシアの耳に届く声が反響して聞こえる。
何があったのかを考えて、そういえば視界がぼやけて見えている事に気づく。
足に上手く力が入らない。
まるで自分が宙に浮かんでいるかのような浮遊感。
このまま瞼を閉じれば心地よい眠りに落ちることが可能なのかもしれない。
(でも何か違う気がする…。さっきまで、何をしていたんだっけ?)
『アレクシア!』
自分を呼ぶ声がする。
多くの事を学んで、鍛えて、目標に向かって走り続けた。
まだ追いつくまでは行っていない。
だが確かに背中が見えていた。
その背中に手を伸ばすも、届かずに虚空を切るのみだ。
『アレクシア!!』
自分を呼ぶ声がする。
そう、『ブシン祭』だ。
私は『ブシン祭』に出場していたのだ。
一回戦で姉さまと戦った。
二回戦では名前は憶えていないけど、戦って勝ち上がった。
三回戦は相手が試合放棄したのだ。
そして決勝へと歩を進め、目標である彼と相対する事が出来たのだ。
(ガイアス…彼と戦って、私は…)
彼が見ている。ただ淡々と。
あの目はよく見てきた。
戦いの場で見せる真剣な眼差し。
その双眸が
(そう。自分の成長を、見せる絶好の機会…)
ブレる視界の中でアレクシアが考えたことは悲観的な事でもなく、まどろみに身を投げる事でもなかった。
彼に追いつくため。アレクシア・ミドガルという人間をガイアス・クエスト一個人へ向けて、アピールするため。
これまでの恩を返すためにどうすればよいのかを考えてきた。
王女としてガイアスを立てる。一人の女としてガイアスを傍で支える。資金提供をすることでガイアスに悠々自適に過ごしてもらう。ガイアスを言うことを全て為せる存在になる。今の自分が出来る様々な可能性を考えてきた。
だがふと思ったのだ。
それはガイアスが心から求めていた事なのだろうかと。
確かに喜んでくれるだろう。
長年傍で見てきたのだ。それぐらいわかる。
だがガイアスが求めていたのはそこではないのではないかと思うきっかけがあった。
そのきっかけが第三回戦でのシャドウと戦っていた時だ。
あの時の彼は勿論真剣に戦っていた。悔しさとか愚痴を零しはしていたけれど、それ以上に楽しそうだったのだ。全力で鎬を削れる相手との戦いを。
(ガイアスは…楽しみにしてくれていたんだ)
『決勝で会おう』
姉であるアイリス・ミドガルとの戦いを終えた時に態々彼から伝えてくれた言葉。
その言葉に含まれた期待をあの時の私は喜びで受け止め切れていなかったが、ガイアスは文字通り全力でぶつかり合える事を楽しみにしていたのではないのか?
“魔力の具現化”が禁止されているために全てを賭しての駆け引きは出来ない状態になってしまったが、それでも決められた手札を全部使って行われる駆け引きを、彼は楽しみにしていたはずなのだ。
『 アレクシア!! 』
自分を呼ぶ声がする。
そこでアレクシアは漸く思い出す。
ガイアスの攻撃が自身の顳顬を撃ち抜いた事を。
地面が近づいてくる。
このまま眺めているだけでは地面と正面衝突してしまうことだろう。
『 アレクシア選手が崩れ落ちたァ!! 』
機材から発せられる音声が耳に入る。
何を言っているのかは把握できないが、自分が陥っている状況を考えれば何を言っているのかは何となくであるが理解できた。
(私は、何をやっているの?)
沸々と自分に対して怒りが沸き上がってくる。
今後
あったとしても受け入れてくれる可能性があるだろうか?
そんな限定的な未来を信じるよりも、今この場で相対している事実と向き合い大切に扱ったほうが何倍もマシな選択のはずだ。
だが現実はアレクシアはガイアスの攻撃を受けて昏倒しそうになっている。
それでいいのか?
貴重な機会を使って、ここで終わって満足か?
(そんなわけがない…!)
こんな情けない姿を見せて、何が酬いるだ。
ここで折れる程度であれば、彼の傍に居る資格なんてない!
ゆっくりと動く時間の中で、アレクシアは下唇を嚙み切った。
僅かに感じる痛みと口内に広がる鉄の味。
その不快さと痛みが気つけの役割を果たす。
「~~~~ッッ!!」
地面と口づけを交わすその直前。
アレクシアは自身の右手に全霊を込め、即座に大地を殴りつける。
「!!」
頭が地面と衝突するよりも先に右腕で大地を叩くことで来るべき衝撃を全て自身の腕に集約させる。
腕が傷つくことも厭わずに殴りつけたことで皮膚が裂けて血が漏れだすがその程度の怪我は誤差。即座に回復させて地面から腕を引き抜いた。
そうしてゆっくりと立ち上がるアレクシアだが、追撃は来ない。
ガイアスを見れば冷静沈着に見えるものの、僅かに表情が緩んでいるのが分かった。
「…情けない姿を見せたわね」
「そんなことはないさ。よく立ち上がってくれた」
アレクシアの言葉にそう返すガイアスだが、皮肉で言ったわけではない。
心底からそう思っていた。
長年アレクシアを鍛えてきた関係上、両者の手の内は基本的に割れている。
そんな中でアレクシアが初めて見せた動きはガイアスの警戒度を上げるには十分すぎるモノ。
自分に見せたことすらなかったその動きを考えれば身につけて僅かな期間しか鍛錬出来ていないということなのだが、普段以上に徹底して攻撃に移行した。
その結果彼女の顳顬へ攻撃を入れる事に成功したのだが、本来であれば即座に視界が転じて意識を失っているはずなのだ。
それを倒れるまでの僅かな時間で意識を取り戻し、気つけから即座に対応するとなれば褒めるしかないだろう。
(物心がついてから十数年。王都ブシン流も私なりに学んできたけれど、ガイアスに通じる感じがしない。何より思った以上に、
剣を握る手は緩めない。
だがアレクシアの中で、己の剣技に対する自信が失われかけていた。
アレクシア・ミドガルは凡才である。
彼女がそれと共に“凡人の剣”と呼ばれるに至ったのも天才と呼ばれる類ではなかったからだ。
今では姉であるアイリス・ミドガルを倒してこの場に立っているものの、それは魔力制御で勝った結果であって、剣技ではまだまだアイリスに敵わない。
勿論基礎と数ある型を徹底して鍛えあげているアレクシアの実力は剣技だけで見ても相当なレベルに達している。
ただそれが眼前の男 ガイアス・クエストに通じるのかを問われているだけの話なのだ。
「…お前らしくないな」
「!」
「普段のお前なら、当たって砕ける勢いで来ても可笑しくないはずだろう?」
「――そうかもしれないわね」
軽く一呼吸を置いて同意するアレクシア。
これまでの修行において、彼女はまずは挑戦する事を第一に多くの事を取り組んできた経歴がある。
それは弱点にも成り易いがその反面、行動力を味方につけて人一倍経験を積める武器に成り得るのであり、その前向きさでここまで急成長を遂げたとも言える。
だが今のアレクシアは自分の中で生まれる違和感に蝕まれていた。
「ねぇガイアス、貴方なら…わかるかしら?」
「わかる。俺も通った道だからな」
問いかけるは彼女が感じ取っている違和感に関してだ。
だがそれを理解しても、ガイアスがアレクシアに助言をすることは出来ない。
それは試合中だから等という理由ではなく、助言できないからである。
「貴方も…」
「今は試合中…時間をかけて何かするような真似はしない。が、初心を再確認させる事は出来る。俺にとっても
「――!」
「いくぞ」
小休憩を挟んだ両者の距離を即座に埋めて攻撃を繰り出すガイアス。
ハッと我に返ったアレクシアも護りへ移行するが反撃には未だ転じれない。
顳顬に被弾したときのような被害は流せているが、少なくない被弾をする状況だ。
ビシッ
『アレクシア選手流石に厳しいか!?』
『ガイアスは手首を鞭の様にしならせる事で被弾時に生まれる衝撃を増やしています。ダメージよりも牽制に近い攻撃ですが、そちらに意識が向き過ぎれば手痛い一撃を貰いかねないでしょう』
頬を叩く衝撃で視界が一瞬潰されてしまう事でガイアスの姿を見失いそうになる。
気配察知と直感で身を捻って躱せているがそれが何時までも通じるとは思わない。
(冷静に…っ!でも、このままじゃさっきの繰り返しよ…!!)
(焦る必要はない。確実に詰め切る)
己に焦燥を抱くアレクシアとは対照的にガイアスの内心はリラックスしている。
緊張感を持つことは非常に大切だ。だが持ちすぎれば身体を必要以上に硬直させやすくなってしまい、時にそれが弱点に転じてしまう為だ。
緊張と弛緩。
この二つを上手く使い分ける事で必要最低限の体力消費で済ませる事が出来る。
地味な手法であるが、戦いが長期になればなるほどその恩恵は非常に大きなものとなる。
決勝戦というこの場においてだけで言えばそこまで重要ではないのだが、アレクシアを冷静に分析出来ている現状では有利と言えるだろう。
『アレクシア選手がたまらず距離を取った!ガイアス選手の乱打を嫌ったかぁ!!』
乱打の中に紛れ込ませた肘打ちにアレクシアは前蹴りを合わせる事で発生した力の流れを利用して何とか距離を稼ぐことに成功。剣のリーチを生かせる間合いを確保することができた。
(集中…集中…ッ!)
ガイアスの攻撃は多彩だ。
鞭の様にしなり、鎚の様に重く、槍の様に鋭い。
(冷静さを欠けばそこを突かれる!内心は常に冷静に、初めに習った
何とか攻撃を往なしながらアレクシアの脳裏に光明が浮かぶ。
手を伸ばしても届かない…。しかし諦める程ではない高さにあるナニカ。
自分の中で何かがあればそこに手が届く確信を持った。
(そう。何かが足りない…!私とガイアスの間に、決定的なナニカが…!)
思い出せ…思い出せ!
ガイアスに初めて傷をつけることに成功したあの時からアレクシアは自立できるようになった。
彼が習得している武術『シラット』の基礎鍛錬を行いながら、『王都ブシン流』を学ぶことに決めて剣を振り続けてきたこれまでの時間。
ガイアスという優れた師を得ていたのにも関わらず、アレクシアは拳ではなく剣を握り続けることを決めたのだ。
『初心を再確認したければ、いつでも頼ってくれ』
彼はアレクシアへ免許皆伝を宣言したあの時に共に贈られた言葉。
『武』を習得したあの時から、長い道のりを進み始めたアレクシア。
そこから始め、継続した事は“基礎から徹底して練り直す事”。
応用も確かに大切だ。
だが何よりも基礎という地盤が盤石でなければ予想もしない場面で崩される可能性がある。それを恐れたアレクシアは、揺るがない基礎を目指し続けた。
体捌きを己の身体と連動させるべくコンマ単位での微調整、剣を振るう際の力の入れ具合、力と魔力の流し方、一度習った内容を年単位をかけて再度実施するという孤独であり、過酷でもある手法を選択した。
それを選んだことは後悔していない。
“凡人の剣”であったとしても、基礎を徹底的に突き詰めた時の強靭さは彼女も理解をしている為に、あの時からアレクシアは自分で
(――今、出来ること…)
ガイアスと戦う前、他の実力者達に教えを乞うことで確かに彼の不意を突くことに成功した。
それでもガイアスは即座に対応して見せたために喜ぶ間もなかったのであるが…それに関してはアレクシアも彼ならばそうなるだろうと納得していたために精神的に来ることはなかった。
だがそこでアレクシアはふと思い至る。
それは裏を返せば、自分程度の速度でガイアスに
(――――あっ…)
アレクシアが振り下ろす刃をガイアスは左腕を用いて側面から弾く。
横から加えられた力によって剣は空を切る事になり、隙を生み出す結果となった。
(そういうこと…)
だがアレクシアの脳裏に浮かぶ感情は怒りでもなく、焦りでもない。納得だった。
極度の集中により、再度時間が遅くなっている様に感じる。
そのまま腰に据えられたガイアスの右拳。
それがゆっくりと突き出され、アレクシアの腹筋を貫こうとしたその瞬間――
カチリッ
アレクシアの脳内で、ナニカが
・ベアトリクス
短期間ながらアレクシアに体捌きを教え込んだ師匠。
地盤がしっかりしていたお陰でどんどん技術を吸収していくアレクシアを見て、自分も弟子を取ったらこんな感じなのだろうかと考える。
『武神』という名の通り武芸者の中でも優れているが、恰好がドスケベすぎるエルフ。
・オリヴィエ
アレクシアに初速の出し方を教えた師匠。
だけどスライムで構成されている彼女とは違ってアレクシアは人間なので完全再現は出来ない模様。
さりげなくシャドウですら見切れない速度を有する可笑しな強さにしてしまったエルフ。
復活前と比べても友人が出来、孫娘達と会え、弟子が出来て、美味しい物を食べる生活を悠々と過ごしているので、原作と比べて1番救済されているかもしれない。
・ローズ・オリアナ
アレクシアに教えを請うオリアナ王女。
色々あってガイアスやアレクシアを慕っているが、彼女の方が年上なので書いてて色々脳内がバグりそうになる。
独学で学園最強まで辿り着いている為、才能は間違いなくトップクラス。
・アレクシア・ミドガル
おや、アレクシアの様子が…?
クロスオーバー好きかい?
-
うん、大好きSA!
-
まぁ良いだろ
-
知らんな
-
クロスオーバー、お許しください!