国を変えた男(誇張表現)
ミドガル王国。
この世界において現在最も突出した武力を有している国家として認識されている大国だ。
特定の者達が活動を始めるほんの少し前までは周辺他国と遜色ない程度の経済レベルであったのだが、ここ数年で技術進歩、経済成長、流通網の強化だけでなく、それらを維持できる国力の伸びが非常に高い。
この急速でありながらも質が非常に高い成長はかの『ミツゴシ商会』があらゆるインフラに携わってきた影響とも言われているがこれは紛れもない事実だろう。
またミドガル王国は『芸術の国』オリアナ王国と同盟を結んでおり、防衛の任も受ける事があるために繋がりは大きい。それに加えて『ブシン祭』にて発覚した宰相ドエム・ケツハットによるクーデター計画の発覚やラファエロ国王が毒を盛られていたことなど、オリアナ王国内が混乱する中でも迅速に手を差し伸べたことも好印象に繋がっていた。
様々な要素を加味して武力・芸術・経済・医療などの分野において、ミドガル王国は世界において建国以降最も注目を浴びている国家と言えるだろう。
特に武力の分野において凄まじい。
なにせミドガル王国の『ブシン祭』は世界から腕に自信のある実力者が集い、そして頂点を競い合う祭典だ。そこで実力を見せた者達がミドガル王国に籍を置いている者達であるが故に、その反響は凄まじい。
…いや、頭角を現した中で、一人はベガルタ出身、もう一人は所属不明ではあったが…まぁそれは置いておこう。
目にも止まらない戦闘速度で敵を切り伏せる戦闘方法と靡かせる美しい金髪から『閃光』の名を冠した者も当然注目されたが、それ以上に長い歴史の中でも卓越した魔力制御能力を誇る者達が認知度としては高い。
“魔力の具現化”という魔力の可視化を上回る魔力制御を完全習得してみせた実力者が3人もいるのだ。
その内二人はミドガル王国を牽引する王女達というのだから驚きだ。
第一王女アイリス・ミドガルと第二王女アレクシア・ミドガルと言えば王国内でも知らぬ者は存在しない程の超有名人。
王族でありながらも王国が誇る騎士団最強の二人。その立場に甘んじることなく修練を続けるストイックな考えを持ちながらも彼女達が持つ親しみやすさから、よく国民達との交流も行っていて人気も非常に高い。
人気も認知度もかなり増加したこともあり、具現化まで至ったその実力から王女二人は二つ名が冠せられ、メディアの大々的な表現によって広まった。
劫火を従え、圧倒的な火力で障害を排除するアイリスは『
本来であれば護られる側であるはずの立場でありながら、腐心せずに実力を身につけたという事実。それは他の騎士団達も各々奮起しやすい影響を与えており、我こそはと日々鍛錬に励む騎士団員達の姿が見受けられていた。
そして残りの一人は詳細不明の実力者『シャドウ』と名乗った男と王国歴史史上、最大の決戦と呼ばれる戦いを乗り越えた上で優勝を掴み取った男 ガイアス・クエスト。
世にも珍しい剣を使わずに戦う徒手格闘が印象に残りやすいが、ゴーレムの操作に長けており、最大千体ものゴーレムを操作して戦う事が出来る男。
あの光景を見てしまった者達から一種の信仰に近しい持ち上げ方をされているのだが、本人は軽く流しているようであった。
これは公になっていないが、王国内である時期から野盗出現情報や行方不明者の位置情報などが警備隊の耳に入るようになった。その要因は彼が動かしているゴーレムによるものなのではないかと陰ながら囁かれている程になっている。
「まぁっ!非常にお似合いですよ
「着物、というのを実際に触れるのは初めてでしたが、これも貴重な体験。ウェディングドレスとは異なった趣がありますな!」
「質感も素晴らしい。まさか彼らの衣装がここまで良い品であったとは…!」
着せ替え人形となって使用人達の手によって人生大一番の戦いへ赴こうとしていた。
かつて数回だけ着た事がある衣装を身につけて、ガイアスはまるで宇宙を感じ取った猫のような表情を浮かべながら着せ替え人形の状態に陥っており、考えるのを止めていた。
ここまで呆然とした状態になったのは『ブシン祭』でもなかったことを考えれば、ある意味で彼らは偉業を成したと言えなくもない。
「『ミドガル王国に守護神在り』。いやはやこうして貴方様の身支度を整えれるのは我々にとってまさに
「とても御目出度いですなぁ!何せ王国の歴史史上初めてとなる結婚式!それも
使用人達はガイアスの反応を待たず、持ち上げるセリフを口々に語る。
そう。彼らはガイアスが婿入りという形で王族の仲間入りするということで非常に力を入れて取り組んでいた。
こんな事になるなどガイアスは知らぬ所であるが、それもそのはず。
なぜならばこの様に手配していたのはミドガル王国の国王であるクラウス・ミドガルから直々に指名され、そして命じられた者達なのだ。
それに加えて王女達の依頼とそれに見合った報酬を提示されれば、己が持つ全てを投入して最高の式という形で歴史に名を遺そうと奮起するのも当然と言える。
ブシン祭を経て時間なんてほとんど経過していないというのに、いつの間にかガイアスには『軍神』の名が冠せられるようになっていた。
おそらくシャドウとの戦いで見せたゴーレム軍勢の召喚によって関連づけられた二つ名であると予測は出来るのだが、あまりにも大層な名前であるために諸手を挙げて喜びづらい現実がある。
だが事実として王国内において武芸で彼と渡り合えるのは謎の男シャドウとアイリスやアレクシアと言った王国最強格のみと言われており、その中でもガイアスと同格として見られているのは互角に渡り合えたシャドウだけだったりする。
そのため一層シャドウの異質さが際立って噂されており、それを耳に挟んだシド・カゲノーが内心で狂喜乱舞していたのだがそれを知る者はいない。
ちなみに今回の結婚式は王国の歴史上でも初の試みが多い。
それを聞いたメディアも困惑半分、ネタになる喜び半分で面白がって大ぴらに言い広めている状態だ。
初の試みである一つは出席する者達に関する衣類。
本来は王国の伝統ある衣装としてドレスや貴族の礼服が基本であった。
だが近年『ミツゴシ商会』が流行らせたスーツでもこのような場に相応しい感性というミツゴシ商会の巧みな話術が功を奏したことでそれらを身につけても問題ないと判断する者達も多くなっていた。
一つは新郎新婦の礼装の変更
これは分かりやすいが花嫁はウェディングドレスが基本的であったのだが、今回は特別な式にしたいとの要望があったことで着物――白無垢――を使用した和を基調とした式が行われる事が決まっている。
ガイアスが彼らに着せ替えさせられていたのも着物であり、日本で生まれ育った者が見れば即座に和を感じ取れる珠玉の一品だ。
こうなるように仕向けたのはアレクシアとローズであり、ガイアスが着物大好き人間である事を把握したことが原因である。折角式を挙げるのなら、好きな男が興奮する着物での結婚式をするべきだと主張したらしい。
いや王族の結婚式にその論調はどうなの?と思うだろうが、それが通ってしまっているから何とも言えないのだ…。
なお今回の着物を提供した雪狐商会のトップであるユキメはアレクシアからこの話を持ち掛けられてた時にひっくり返る程驚いたらしい。
ミドガル王国の…それも今、話題沸騰中の王女達が主役の結婚式に用いる装束。その話を王女自ら雪狐商会へ態々持ち込んできたのだ。
商人としての側面も持つユキメが『金が生る話』を無視するはずもなく即座に承諾。
最重要案件ということであらゆる商談を脇に置き、最高品質の素材で編んだ白無垢を納品まで急ピッチで作成していたりする。
ちなみにこの話をどこかで聞いた無法都市で生計を立てる一部の者達が沸き立ったり、ユキメ自身もアレクシアから
そして最も世間を騒がせたのが三人の王女達が結婚するということ。
それも
お察しの方が大多数だろうが、紛れもない『複婚』という名の『一夫多妻』だ。
話を聞いたガイアスは理解と放棄の狭間に無限を挟まれてしまったかのように情報が完結する事が出来ておらず、まだ現状を完全に理解しきれていなかった。
それを成すために国政内にて急ピッチで『複婚制度』の制定が議論された後に可決されたという事実に。
(……どうしてこうなった???)
宇宙を感じているガイアスが考えている事は知られることはなく、刻一刻と近づいてくるその時を待つことになるのだが、こうなるちょっと前へ時間は遡る。
◇
『 大波乱に満ちた本大会!その優勝者は、ガイアス・クエスト選手に決定だぁあああああ!! 』
ブシン祭決勝戦。
ガイアス・クエストが対戦相手であるアレクシア・ミドガルの意識を奪った事で戦闘不能と判断され、本大会は決着がついた。
魔力の具現化を用いるのを事前に禁止されていたことで見るポイントは一つ減ってしまったものの、二人の技術が純粋に高く、魔力制御も優れていたことから肉弾戦主体であっても観客達の目を奪うぐらいの事は出来たようだ。
沸き立つ歓声を一身に受けつつ、ガイアスは掲げていた右腕を下ろしてアレクシアを抱きあげる。ご丁寧に首へ負担がかからない様に胸元に頭が寄る様にしている所が様になっている。
それを見た一部の観客達が歓喜の声を挙げたのだが、ガイアスは敢えて聞かなかった事にした。
気を失っているアレクシアも気道を抑えただけなので当然命に別状はない。
呼吸もしっかりしている為、胸も上下に動いている。
このまま地面に寝かせるのも嫌なのもあって担架を使う程でもないためにそのままお姫様抱っこで抱え上げたのだが、そこでアレクシアは意識を取り戻した。
「……あ…」
湧く観客の歓声と感じる温もりで意識を覚醒させたアレクシアは、自分が今どんな体勢になっているのかを即座に把握して赤面した。
「…気づいたかアレクシア。すぐ降ろすよ」
「このままがいい…」
「えっ」
「降ろしたりしたら…怒るから」
「……わかった」
余計な気を利かせて降ろそうとしたのだが、アレクシアは襟袖をきゅっと掴みながら釘を刺した。
日常的に甘える姿を見せないアレクシアに湧き立つ気持ちはあるものの、一旦抑えたガイアスはそのまま会場内で突っ立っている訳にもいかない為、そのまま歩いて控え室へ戻るのだった。
賭博で勝った者が歓喜の声を挙げ、敗者が絶望の嘆きを挙げるのを遠目で見つつ、会場内では急ピッチで組み立てが行われている。
決勝戦を終えたにも拘わらず観客達の大半はそのまま残り、会場内での組み立てを肴にしながら飲酒を楽しんでいた。一応国家が『ブシン祭』の決勝戦を行うために準備を行っていたために、王国内では今日は休日扱いになっているのであるが、一応昼前にベロンベロンに酔っている者が出ているのは大丈夫なのかと心配になる。
まぁ運が悪くても博打で勝った賞金が盗まれるだけで済むだろうから、その時は酒に飲まれた自分を恨んで欲しいものだ。
ちなみに職員たちが何を準備しているのかと問われれば簡単な話、表彰式だ。
世間を賑わせ、そこに王女様まで出場している事を考えても質素な式典にする訳にもいかない。
それに加え表彰式後は閉会式も行われ、そこから漸くこの新生スタジアムが一般開放されるため、ミスが許されないのだ。
そのため関係者達は決勝戦前と比べてより引き締まった表情で取り組んでおり、そこにミツゴシ商会や雪狐商会も加わって和気藹々と各々の業務に取り組んでいた。
「優勝おめでとうございますガイアスさん!」
「うん。お見事」
「ありがとうございます」
「よく頑張りましたねアレクシア。貴女が誇らしいです」
「素晴らしい戦いだった。貴女はもっと強くなれる」
「ありがとう。納得しているけど…やはり悔しいものね」
選手や関係者しか入れない控え室にはガイアス達が居た。
ローズやオリヴィエはガイアスの優勝を讃え、アイリスやベアトリクスはアレクシアと会話をしていた。
特にアレクシアは自身の『壁』を壊したことで強さに磨きがかかっている。
それは彼女自身も分かっているために悔し涙を流すよりも先に、己の成長を喜んでいた。悔しがることは止めていないが。
「我ながら回転を加えて肘打ちの一手は良い選択だったと思っていたのに…どうして即座に対応できるのかほんとわからないのだけれど…。時折…いえ、大分理不尽な存在よね貴方って」
「それは…その通り」
「ま…まぁ、ガイアスさんですから」
「私達の常識に当てはめるのは危険だということは私達が一番理解しているはずなのですが…」
「皆の認識は…化け物?」
「酷い言われ様だなおい…。」
味方になってくれる人がいない。
アレクシアの発言に心底同意する様に頷く一同にガイアスは嘆いた。
ちなみに彼女達だからこの反応なのであって、一般生徒達からは完全に境界線を引かれている事にガイアスは気づいていない。
これも普段関わり合いがない弊害なのだが、知らぬが仏という奴だろう。
「まぁ“壁越え”をしたと言っても自分のスタイルを確立した直後だったからな。自分にピッタリの動きが出来るようになったと言っても対処方法はある」
「…例えば?」
「アレクシアは独り立ちするまで俺が鍛え上げてきたんだぞ?アレクシアが勝つために何かを企んでいることを念頭に置けばいくつかの選択肢が外れるから、そこから消去法だ」
「ただの人読みじゃないの…」
「ま…まぁガイアスさんですから」
「ローズさんそれしか言えていないですよ?」
アレクシアから『武』を教えてもらうようになったばかりのローズではガイアス達の戦いを理解するのは難しい。
そんな彼女もメキメキと実力を伸ばしている最中なので、自分の戦い方を確立するまでそう長くはかからないだろう。
「あっ。ここにいらっしゃいましたか!」
「ん?」
談笑をしているガイアス達の元に一人の騎士がやってくる。
一般の騎士団員とは異なり、装飾に凝った防具を身につけている事から、彼がクラウス国王陛下の護衛も務める親衛隊に所属する者だとアイリスやアレクシアは即座に把握した。
「えーっと…」
「ガイアス、心配はいりません。彼が身につけている紋はお父様の護衛を務める親衛隊のみに許された証です。おそらくお父様の指示でここまで来たのでしょう」
「アイリス王女様の仰る通りです。クラウス国王陛下がお待ちになられておりますので、是非来て頂けるようお願い申し上げます」
「ご丁寧にどうも…」
そんな流れでやってきました玉座の間。
ではなく、応接対応をするための場所だろう。
クラウス国王陛下の立場であれば玉座に座ってこちらから
「よく来てくれたガイアス君。どうか座ってくれ。勿論ローズ王女に『武神』ベアトリクス殿。『閃光』リヴィ殿も楽にしてくれて構わない」
「ん」
「では失礼致します」
「わかった」
興味本位でついてきたローズ達はガイアスとは別のソファに座ることになるが当然の流れだろう。
アイリスやアレクシアは今回の話に関わるためかガイアスの傍に座っている。
ありえないことだ。
いくら『ブシン祭』で優勝した選手を相手にするとは言っても、相手は国の最高権力者。
己の立場を軽視してこのような場に招き入れるのか。
給仕が準備したのは巷で話題に挙がっているミツゴシ商会のコーヒー。
それを軽く一口喉に流してからガイアスは本題に入る事にした。
「態々国王陛下から呼んでくださりありがとうございます。早速ですが、どのような問題が起こったのでしょうか?」
ガイアスは秘密裏ではあるが、何度かクラウスと会って話をしている。
秘密裏に会う際は立場の都合を考えずに話すようにしていることもあって、口調を崩す事には躊躇いはない。
だがガイアスとてある程度常識を弁えている。
公の場で話す際は当然敬語を用いる事は当然の事、余計な不和を起こさぬよう心掛けていた。
しかし今回クラウス国王は王としての姿ではなく、クラウス・ミドガルという一個人で話をしたい様に感じ取った。
こういう時は大体緊急事態が起こったり、ディアボロス教団によって面倒事が起きた時に依頼という形で話が行われることが多かったりする。
なのでガイアスは緊急の要件なのではないかと判断し、本題に入るように促したのだ。
「ふふっ、君のその切り替えの速さは流石だな。だが安心してくれたまえ。今回はディアボロス教団や国内問題で呼んだわけではないのだ。……いや、ある意味国内問題か?」
「やけにふわっとした感じですね…」
緊張感をもっていたのだが、どうやら今回は緊急案件ではなかった様子。
自分の発言にちょっとした疑問を持っているクラウスを見て、ガイアスも緊張を解く。
急ぎの案件ではないが、ある意味で国内問題になるとは一体…。
クラウスがアレクシア達に目配せをすれば彼女達は頷いた。
「ゴホンッ。確かに時間も有限だ。君の言う通り本題に入ったほうが良さそうだ」
緊急案件ではないと言ったはずなのに、前で腕を組んで真剣な表情になるクラウス。
ガイアスも彼の切り替えにおのずと真剣な雰囲気になり、またコーヒーを一口。
「まず
「ブーーーーーッッ!!!?」
「「「「!??」」」」
そして盛大に噴き出した。
噴き出したコーヒーが対面のクラウスにかからなかったのは幸運と言えるだろう。
「この場で何を言ってやがりますか貴方は!?」
何とかコーヒーをこれ以上溢さずに机に置けたのは褒めて欲しい。
流石に第三者がいるこの場でそれを追求されるとは思ってもおらず、完全に不意打ちを喰らう。
あまりの動揺で語尾が強くなってしまったのはご愛敬だ。
「あ、アアアアアアレクシア?ど、どどどどどういいうこことですかかか??!」
クラウスの発言に対してガイアス以上に動揺を隠しきれていないのがアイリス王女だ。まるで油が切れてしまったブリキの人形の様にぎこちない動きと言葉が分かりやすい。
次点で動揺していたのは給仕を担当していた面々。
第二王女の逢引きを国王自らの口から突然聞かされたことで驚いて食器を手から落としそうになっていたが、プロ意識を何とか保ったことで食器を割る事は無かった。
ローズは王女という立場であるが故にそういうこともあると納得しており、オリヴィエは「おー」と暢気に反応を零す。ベアトリクスは私がこの場に居てよいのだろうかと小声で反応を零しながら若干居心地が悪そうにしていた。
「ハハハッ!すまんすまん。だが王国の未来を考えれば重要な話だということも君ならわかるだろう?」
「だったら当事者だけで話合いの場を設ければよかったのでは…」
「先ほど言っただろう?時間は有限だと。あぁ、当然だがここで話す事は事前に娘から許可も得ていたから心配しないで欲しい。まぁ要するに君達も関わってくるからまとめて話そうということだ」
アレクシアをちらりと見れば「ごめんね☆」と悪びれもなく返す彼女に、ガイアスはデコピンで返答した。アイリスは全身を震わしながら言葉を失った。
「私の娘が決めた相手だ。そしてその相手は私も詳しくはなくともよく知っている男となれば、此方が反対する理由など一つもない」
そうしてクラウスは頭を下げてこう告げた。
「我々の
「いや、展開早くね!?」
第二王女が王族でもない、地位がトップクラスの貴族という訳でもない。…いや、今回ガイアスが表立って活躍を見せたことによって裏から王国を支えていた功績を一部引っ張り出せるようになった。それによってクエスト家にも恩賞を与えられることになったため、他の貴族達と比べると影響力は確かに高くなっていた。
それでも嫁がせる迎い入れる関係なく王族の娘が関わる以上はもうちょっと考えても良いのではないかとガイアスは思った。
「…ん?ちょっと待ってください。
「その通りだ」
扉を開けて入ってきたのはミドガル王国とも深い関わりを持った男性。
ドエム・ケツハットの策謀によって憔悴状態になり、入院中であるはずのラファエロ国王陛下であった。
「お父様!」
「おぉローズよ。いつも元気があって私は嬉しいぞ」
席から立ち上がって抱擁を交わすオリアナ王国関係者。
つい先日まで立ち上がるのも困難と言われていたはずなのにも関わらず、両足で力強く立っていることに驚愕せざるを得ない。
「ラファエロ…国王陛下、体調の方はよろしいのでしょうか?その…随分と、鍛え直されたようで…」
「うむ!確か…イータ殿、であったかな?彼女から色々薬を戴いてな。それを服用したお陰で力が漲り、こうして自らの足で立てておる。ミドガル王国には非常に優れた医療技術があるものだ」
「いや、それはそれで大丈夫なのかしら…?」
アレクシアがラファエロ国王の変化に唖然としていた。
ろくに食事を与えられていなかった枯れ木の状態から、なんというか…こう、ボディビルに出ても違和感がないほどに筋肉に覆われた肉体にはハリと迫力が確かにあった。
前情報なしにそれを見れば誰もが驚く。誰だってそうなる。俺だってそうなる。
確実に面白がってイータが投薬を繰り返した影響だろう。
結果として良かったものの、裏でアルファがイータを叱っていたことを知るのはシャドウガーデンの面々のみである。
「ガイアス君、オリアナ王国は君に多大な恩がある。故に我々はその恩に報いるべく考えたのだ」
「…えーっと、まさかと思いますが…」
「うむ!私の愛娘であるローズを、貴殿に嫁がせることにしたのだよ」
「……???」
少し目線をずらせばローズと目が合う。
抱擁を解いたローズはゆっくりとガイアスの傍へ近づいてゆき、手を取った。
「お父様の言葉通りです。私は、オリアナ王国は、ガイアスさんに大恩があります。このまま何もせず過ごすのはオリアナ王家の名折れ。ガイアスさん、オリアナ王女の立場だけでなく、一人の女性として、私は貴方と共に生きていきたい。傍で支えたいのです」
「えっ…んん??いや、アレクシアは…?」
「ちなみにアレクシアさんから了承は頂いております」
「????」
「―――――…」
「アイリス、死んでる」
「…あの、お祖母様。私は何を見せられているのでしょうか…?」
「ん、追い込み漁」
流れるように脳内に押し込まれている情報を処理しきれずによくわからない表情を浮かべるガイアスに対し、愛おしそうに手を両手で包み込むローズは頬を赤らめつつ嬉しそう。
なお何も聞かされていなかったアイリスは真っ白に燃え尽きていた。
「王女、二人?…嫁ぐ、迎い入れ?前代未聞、過ぎません…?」
「娘のアイリスも含めたら三人だな」
「いやいやいやいや正気ですか」
「正気だとも。このために色々手を回してきたのだ」
スッと差し出される一枚の用紙。
いやな予感がピンピンしながらも動揺を抑え込みながら確認すればそこには『複婚』と記載された新たな制度制定の記述がしっかりと記載され、適応が開始される日時や国印までしっかりと載っていた。
この制度は国内に存在せず、そんな考えも王国内で見たことも聞いたこともない。
そしてこの内容はとある人物に語った様に、とっても覚えのあるモノだった。
何とか首を動かしてアレクシアを見る。
彼女はこれまでの仕込みが全て上手くいったと言わんばかりの笑みを浮かべながら、告げた。
「これからも…
完全に外堀が埋められて舗装工事まで完了していた事実に、ガイアスは頷くことしか出来なかった。
・アレクシア・ミドガル
これまでの準備が花開いたことで王手を宣言した第二王女。
もう絶対に逃がさない。
・ローズ・オリアナ
アレクシアに弟子入りしつつ、社会的国際的観点からガイアスの元に嫁ぐ事を決めたオリアナ王女。
妹であるクララ・オリアナにオリアナ王国は任せることを話し、同意を得ている。
・アイリス・ミドガル
ローズもガイアスに嫁ぐとかこんなに話が動いている事とかに衝撃を受けていたが、何よりもガイアスとアレクシアが夜伽をしていたことに多大なショックを受けた第一王女。
なぜか脳裏にアル社長が浮かんだ。
????『殺してやるぞ
・クラウス・ミドガル
ガイアスと適度に交流をしながら裏で手を回しまくっていたお父様。
無事優勝したので話題が薄れる前に情報の爆弾を叩き込む。
・ラファエロ・オリアナ
イータの様々な投薬によって爆速復帰を果たしたオリアナ国王。
本人の身体的悪影響が見受けられないのが逆に恐ろしさを感じる。
大胸筋が歩いてそう。
・ガイアス・ミドガル
三人の王女と結婚する男。
今後の展開で増える可能性も否ではないことを彼が知る由もない。
クロスオーバー好きかい?
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うん、大好きSA!
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まぁ良いだろ
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知らんな
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クロスオーバー、お許しください!