今年この作品を投稿し始めて、ついにここまで来ました。
過去に色々と投稿していましたが、一定の投稿ペースを維持できたことは無かった様に思えます。途中で詰まったのは力不足と言わざるを得ません。
ですが感想、評価、お気に入り。
そのどれもが投稿へのモチベーションになったと思います。
紀伝体 王国を知る『軍神』より―――。
ミドガル王国が建国してこれまでの歴史上、ここまで世界で名を轟かせる事になるとは国内で暮らす誰もが想像もしていなかっただろう。
表で活動をしている者達。陰で暗躍を行う者達。誰もがここまで変貌を遂げると思うのか。
『炎皇』と名高いアイリス妃殿下による“魔力の具現化”から始まったと言われているミドガル王国の変化の兆しであるが、実はもっと前から行われていたとされる。
それよりも何年も前から野盗や他国からの諜報員に関する情報が王国騎士団に流れてくるようになったことが根拠に挙げられている。
検挙率がこれまでと比べて断トツで伸びており、これによって被害を受ける国民や商人達が減ったのは明らか…であるが、情報が明らかに一騎士団員が調べきれるモノではないことは分かっていた。
そこで我々独自に調査を続けた結果一つの候補に挙がったのが一人の男…否、ガイアス殿下である。
尚、ガイアス・ミドガル殿下の名前をここに記載させて頂く事に関してはアレクシア妃殿下より事前に許可を戴いていることを先に記させていただく。*1
ガイアス殿下が生まれ育ったのはミドガル王国の土地に関する役割を担っているクエスト家。そこの息子として生を受けた。
勉学に励みながら自衛のために武芸を習うのは貴族の間では至極当然の流れであるが、ガイアス殿下はここで一つ問題が発生したとクエスト家現当主のアース・クエスト殿は語っていた。
『はい。私達の息子は、本人も断言しているので言いますが、剣才はまっっったくないのです。おそらく5歳児に剣を持たせて戦わせたとしても、息子は負けるでしょう』
殿下の経歴を知っている者達からすれば驚愕に値する事実だ。
信じられないと思う者もいるかもしれないが、これはアレクシア妃殿下やアイリス妃殿下も同意されている。というか筆者が心配するぐらい滅茶苦茶に扱き下ろしていたのだが、聞いている此方がハラハラしてしまうレベルであったことをここに記しておく。
流石にその内容を記載してしまえば不敬罪待ったなしだ。なので記載していない事は許していただきたい。
そんなわけでガイアス殿下は剣技を習得なされていない。
時折行われる式典にて儀礼剣を握る事はあるが、基本的に帯剣していないのはここが理由である。
最も殿下は剣技を用いずに徒手格闘主体の非常に珍しい戦闘方法を確立させている武芸者。そして王国内でも最も魔力制御に長けた英傑であることを考えれば、剣を扱えない程度は誤差にもなり得ないだろう。
もし殿下の武芸に興味がある者は首都にて開かれている道場の扉を叩くと良いだろう。
色んな意味でこれまでの固定概念が壊れる事を約束しよう。
…いやホント、殿下自ら教える道場とか意味が分からない。
失礼、話が脱線した。
今や世界有数の武芸者としても名を馳せるガイアス殿下であるが、『シラット』と呼ばれる武術を扱いだしたのは4歳の頃からと記録が残っている。
アース殿がその光景を初めて見た時は息子が独特な動きをしているとしか思わなかったらしい。
しかし年々成長していくに当たって独自の武術でクエスト家の武術指南役や警備兵を一蹴するレベルとなり、殿下に敵う相手がクエスト家が収める領地からいなくなってしまったらしい。
流石に記録に遺していると厄介事を引き寄せかねないという理由で当時はその事実を闇に葬っていたそうなのだが、今や語り継がれる事になっているのは大変興味深い。
なお殿下のゴーレム操作を行う魔力制御能力をどこで鍛え上げたのかは妃殿下でも把握できていなかったため、ここで記載することは不可能だ。
妃殿下もその幼少期から出会ったようで、そこから交流と鍛錬が始まるに至る。
これも信じられない事実だが、『
『あの時、ガイアスと出会わなければ今の私はいない。そしてここまで平和を維持しながら、ミドガル王国とオリアナ王国が発展する事もなかったでしょう。それだけ王国に貢献してくれているの。…そういえば知ってた?今や当たり前になっているイータさんが作成した魔力電池って、ガイアスの魔力核が原点になっているんですって』
妃殿下が名を挙げられたイータとは、王国屈指の発明家イータ・ロイド・ライトである。
彼女が生み出した発明品はミドガル王国を豊かにするのに大きく活躍した事はここで語らずとも知っているだろう。
そんな彼女が参考にした原点が殿下の魔力核だというのだから、一体殿下は何処まで我々を驚かせればよいのだろうか。
流石にイータ氏とコンタクトを取ることは出来なかったが、その過程で偶然話を聞くことが出来た人物がいる。
『閃光』リヴィ・ハイリア殿と『武神』ベアトリクス殿だ。
おっと読者諸君は嫉妬の念を飛ばさないで欲しい。
今や『美味しい物をたくさん食べさせ隊』が陰で大規模な勢力となっている事は筆者も理解している。というよりも筆者だってその一員。君達の気持ちがすっごくわかるのだ。
だから敢えて記載させてもらう。
めっっっっちゃくちゃ綺麗で魅力的なエルフであった。綺麗な声をしていたし、最高だった。
いいだろう?羨ましいだろう?
『ガイアスのこと、知りたい?…ん。強い』
『お祖母様…そういうことを聞きたいわけではないと思いますが…』
『あと…イータ、すごく賢い。でもたまに、解剖しにやってくる。ちょっと、怖い』
『え、解剖?』
『ん』
なんと『武神』殿は『閃光』殿の娘さんであったという衝撃的な事実が判明したので、一緒に記載させていただく。
解剖というバイオレンスなワードを聞いた気がしたが、筆者の空耳だろう。
ある程度話を聞いていると『閃光』殿はアイリス殿下によって助け出され、殿下に治療されたらしい。
今や魔力操作を極めれば腕の一本や二本治せる事が証明され始めていることを考えれば、殿下が助けた事実も違和感がない。
だが彼女達も殿下の事情を詳しく知る機会はなかったらしい。
それでも貴重な経験であることには違いないので、経費で彼女達に沢山食べて頂いた。
嬉しそうに頬張る姿を見て癒されました。ありがとうございます。
『ミドガル殿下達にはいつもご贔屓にしていただいております。今後も安定した成長と地域の方々の暮らしを豊かにしていけるよう、私達も活動を続けていこうと考えています』
筆者の取材に応じてくださり、自社の方針を語ったのは今やミドガル王国にて聞かない事がない大企業である『ミツゴシ商会』を一代で築き上げた鋭才。ルーナ会長である。
王都に本社を置く『ミツゴシ商会』には足繁く通うミドガル陛下や妃殿下の姿がよく目撃されるため、非常に『ミツゴシ商会』の品質を気に入っている事が分かる。
世間を騒がせたあの制定作成にも少なからず関わっていたという話もあるが、そこは我々が探るべきものではないだろう。
なにせルーナ会長も『複婚制度』を最初期に活用したことで有名だ。
盛大に行われた殿下達の結婚式前に発表された『複婚制度』に対して理解が追いつかなかったのは記憶に新しいが、結婚なされた殿下達に追随する形でルーナ会長も『複婚制度』を使ってカゲノー家へ入籍をされている。
小説を国内に爆発的に広めるきっかけを担ったナツメ・カフカ先生や天才作曲家でありピアニストのシロン先生と共に多くの女性がカゲノー家へ嫁いだのも世界に衝撃を与えた一員だろう。
今やカゲノー家も優秀な人材と資産を抱える王国有数の貴族として多大な影響力を持っているため、シド殿やクレア殿の話を聞きたかったのだが、残念ながら都合が合わなかったためにここは次に回していこうと思う。
『これからも、ミツゴシ商会をどうぞご贔屓に』
取材後にお土産を戴いたが、これは賄賂では断じてないのでしっかりと記載させていただく。
新商品、大変美味でございました。
◇
「いや、なにこれ」
最近文学市場に出回っているという紀伝体をちょっと読んだガイアスの第一声がそれだった。
「ミドガル王国の紀伝体よ。ミドガル王国で起きた歴史的な出来事を各権威や個人に分けて記述した――」
「いや、紀伝体そのものの意味を聞いているんじゃなくてね…」
アレクシアが紀伝体について語るのだが、違うそうじゃない。
ガイアスは「許可なんてした記憶もないし、話をされたこともないんだけど…」と言葉を溢す。
「当然じゃないの。貴方、そう言った話を嫌いで受けるどころか話題に挙げられる事を嫌うじゃない。それも下手に話しかけて機嫌を損ねちゃうとあらゆる情報を抜き取られるって一部の界隈に怖がられているのよ?」
アレクシアが告げる内容には非常に思い当たる所がある。
ちょっと前…『ブシン祭』の準決勝が終えてスタジアムが崩壊したときの話になるが、マナーの悪い一部のメディアが周囲の配慮も忘れて情報を集め続けていたことがある。ガイアスもブシン祭で目立った主要人物であるために当然それに巻き込まれた結果、一方的に相手の不正悪行を素破抜いて騎士団員に叩きつけた後、他の業界や民衆達へご丁寧にその情報をばら撒いたことがあった。
不倫、偽造、賄賂云々と流石に教団関係者ではなかったものの、それでもOUT。結果的にその一部関係者は王都で暮らすことが出来なくなってしまったのだが、王国の警告も無視していたから当然の処置である。
「それに関しては反省も後悔もしていない」
「でしょうね。アレの所業は結構辟易していた人達も居たようだから、むしろ感謝の報告もあったわ」
コトッ
目の前にコーヒーカップを置くアレクシアへ軽く感謝を伝えて一口。
ちょっと前まではそこまで飲む事もなかったコーヒーは、アレクシアが己の練習がてら淹れてくれる機会が増えたために今となっては飲みなれた味だ。
ミツゴシ商会から直接足を運んで豆の品定めをすることも最近の楽しみの一つになっているらしい王女様は、一体どこに向かっているのだろう。
「今回の紀伝体を許可したのはイメージ定着と情報操作の一環かな?」
「その通りよ。貴方が情報を出し渋るから、貴方を知らない国民達のイメージが肥大化しすぎない様にってことでお父様の許可も得ているわ」
「ついでに一部市場を動かしつつ、これまでの関係者の名を広める役割も持つ…か」
ガイアス以外の人物全員、今回の件はそれらリスクを把握したうえで許可したのだろう。
悠々自適に過ごすオリヴィエやベアトリクスにもわざわざインタビューを載せていることからも分かるが、随分とアレクシア側もこの筆者に手を回したらしい。
そうでなければ一個人が彼女達へ
紀伝体と称しているが、内容を軽く見てみればミツゴシ商会や雪狐商会の新商品に対する感想や筆者の欲望なんかがちらほらそのまま載っている以上、これを正式な紀伝体として認めてよい物なのか非常に悩むところではある。
しかしそれが親しみを感じるとか、豆知識を得れるなどの反応を生み出したことで結果売れ行きは意外にも好調らしい。
まぁ筆者の感想でプチ炎上的な事も起こっているようだが、インターネットが普及していないこの世界では可愛いものだろう。
実際オリヴィエ達エルフ一族は綺麗だったり魅力的だったりと筆者の感想もわかる気がする。
………ん?
圧を感じた気がするが気のせいだ。そうに違いない。
隣に座るアレクシアの頭を優しく撫でる。
そうすれば僅かに感じた圧は即座に霧散。アレクシアは心地よさそうな表情を浮かべており、まるで猫のような印象を受ける。
(始めに彼女と出会った時は、こんな関係になるとは考えもしなかったなぁ…)
雨の日に好奇心から向かった王城で初めて出会ったあの時から、この関係は始まったのだ。
当時色々教えたものの、こうして夫婦にまで発展する事になるとは予想すらしていない。
人生とはわからないものだ。
『ブシン祭』優勝後に行われた国王との会談。あの後クラウス国王陛下は各メディアに対して正式に娘達…王女の結婚式の宣言を行った。
優勝者が決まって沸き立っていた所に燃料を追加で投入したのだ。それも相手が今話題の優勝者であり、更には王女全員が嫁ぐことに一悶着あったがそこはクラウス陛下とラファエロ陛下が表立って行動を行ったことで無事に収まっている。
そうして無事に行われた結婚式は本当に華やかであった。
各要人は勿論の事、表立って活動を行っていないはずのシャドウガーデンの面々も集まり、ディアボロス教団の妨害も発生せずに無事終えることが出来て安堵もした。
そこから王族としての教育を追加で受けながら、王女達の手を借りてなんとかやっていけている。
ちなみに結婚式の翌日、カゲノー家の長男 シド・カゲノーを夫とする『複婚』申請が届いた。
アレクシアに語った『一夫多妻制』が決め手となって『シャドウガーデン』はミドガル王国に留まることを決定したのだ。
本当にあの法案が国内に留まる要因になった事実に対する驚愕と、陰の実力者に成ろうとしていたシド・カゲノーがガイアス達の前例を元に、逃げ道を判断させる間もなく確保された結果に笑いによって変な声が出た。
美女集団に囲まれながらも、諸悪の根源を見るような眼を向けられたが無視を決め込んだことをここに記しておく。
現在ガイアスの妻として正式に公表されているのはアレクシア、アイリス、ローズの三人だ。
王の娘達と結婚したことにより、ガイアス・クエストは本格的に王族の仲間入りを果たすこととなり、国家関係者からは『殿下』と呼ばれるようになる。
今でも呼び慣れないが立場が立場なので仕方がない。そうして現在の立場に収まった結果、ガイアスは正式にガイアス・
まだ王族入りしてから一年経ったものの、あまり生活は変わっていない。それはガイアスとアレクシアもだが、ミドガル魔剣士学園に在籍している為であり、学生としての立場が重要視されているからだ。
王族と言えどまだ学生。
そのため二年生になったガイアスとアレクシアは国家運営においてそこまで活動は出来ていないのが現状だ。
ローズは元々留学という形でミドガル王国へやってきていた。
今回の結婚によって第三妃殿下の立場に収まり、ローズ・
ミドガル魔剣士学園の三年生であったローズは卒業生代表としての役目を果たした後、一度オリアナ王国へ帰国して色々と雑事を終わらせてから正式にミドガル籍を獲得。
今ではミドガル王国で外交分野でその力を奮ってくれている。
第一王女であったアイリスは第二妃殿下の立場となった。
結婚式では誰よりも初心な反応を溢していたことが原因で、凛々しくカッコいいイメージから凛としているが可愛い面を持っていると認知される事になり、彼女の印象がより良い方向に切り替わったりした。
現役バリバリの騎士団長を続けている為、他国から――特に武力を重視する国家から危険視されていたりするが、そこまで心配はしていない。彼女は強いし、何より直感がすごいから。
三人の中で魔力込みで戦闘力を競わせたら一番強いのはアイリスだ。ブシン祭から独自に腕を磨き続け、より破壊力と継続戦闘力に磨きがかかっている。
一流の騎士達が束になっても敵わない魔獣を剣を使わずに殴り倒したなんて話も聞く機会があり、魔剣士を目指す者達から見れば羨望の的や目標とされているらしい。
第二王女の立場であったアレクシア・ミドガルは第一妃殿下となった。
『壁越え』をしたアレクシアはあれからも研鑽を続けて独自の戦闘スタイルに磨きをかけており、もう手加減をした状態では勝てないだろう。そのぐらいメキメキと成長を続けている彼女だが、普段から行動力が高い事を生かして各所に出向いて地域情勢を把握しようとしていた。
勉学に励んでいたのも彼女の考えが内政強化に重きを置いているからだろう。
『ミツゴシ商会』や『雪狐商会』と連携を取りながら、今後も継続的な成長を目指して学生生活の傍らで日々活動に勤しんでいる。
ただいくら緊急用ゴーレムを身につけているからと言って、一人で行動するのは心配になるから控えて欲しいものだ。
ガイアスはこれまで通りゴーレムによる情報収集を継続しつつ、学業と特訓を継続している生活をしている。
武術に関する質問攻めがあまりにも面倒な事があったので、王家のコネを使い道場を開いた。
と言ってもそんな一年で剣しか握らず、それも魔力のごり押し一辺倒で戦ってきた人間が即座に徒手格闘を収められるかと言われれば当然ながらそんな事はないために、まずは認識を変えていくところから地道に始めている所だ。
最近の悩みは一部の魔剣士学園の教師や生徒が門下生として通っている為、学園内で出会った時の対応が地味に悩むところ。
そんな感じでミドガル王国内は非常に平和な状態が続いている。
これも一重に同調してくれた『シャドウガーデン』の活躍もあるためお礼に向かったこともあるのだが、彼女達から見ても『ディアボロス教団』へ表立って対立してくれている組織があるだけで動きやすいので助かると返事を戴いた。
女神ベアートリクスを信仰している『聖教』とは“悪魔憑き”の対応を巡って真正面から敵対することになってしまったものの、明確に治せる手段を有しているのでいずれそうなる運命だったのだろうと前向きに考えている。
ディアボロス教団が今後も王国内で余計な行動を取らない様に監視を続けていくことで、少なくとも自分達が死ぬまでは平和を維持していきたい。
そんな漠然とした理想を頭の中で思い浮かべていると扉が開いた。
「ただいま帰りました」
「待ち遠しかったですわガイアスさん」
先程話に挙げていたアイリスとローズだ。
役割を無事にやり遂げるとこうして一か所に集まる事にしている。
これは労わるという側面もあるが、折角結婚したのだからと陛下が時間を設けるように気を使ってくれたという訳だ。
(まぁ、未来を見据えて活動するのも王族の役目…か)
時間は夕暮れ前。16時ぐらいと言ったところか。
城内で食事をすることが基本的だが、今回の様に時間を活用して外食を4人で行う機会が増えた。
国内の活気を直で感じたいというのもあるし、ずっと城内で豪勢な食事をし続けるのも気が引けるという考えからなのであるが、彼女達は嫌な顔一つせずに同行してくれている。本当に出来た女性達だ。
「今回は何処にしましょうか?」
「たまにはあれも良いんじゃないかしら。そう…食べ歩き!」
「女性がそんな事…はしたないと言いたいですが、今そのスタイルも流行っているのでしたね」
こうして出歩くことで流行が何かがおのずと耳に入ってくるのも貴重な機会だ。
特にアイリスは普段騎士団長として活動する関係上、こういった事に疎いためにアレクシアからよく連れていかれる事が多い。その結果こうして食べ歩きなども許容できるようになってきていた。
少し前には閑静な場所であったがある時期から出店の機会が増え、蒸気機関などの交通が整備されるようになったことで王都屈指の食べ歩きエリアを確立したこの地区は、基本的にどの時間でもお腹を空かせた者達で賑わっている。
特にミツゴシ商会の物流経路の確立によって、海の幸も国内市場へと入ってくるようになったことで珍しい物を食べたいという層が集まってより活気が出るという好循環になっていた。
「並びすぎるのもあれだから程々の…お、あれは」
「たこ…ですか」
「あれって確か…たこやきっていうんでしょう?私結構興味あったの」
「あの標章は
人当たりの良さそうな紳士からたこ焼きを購入して、一口。
程よく焼かれた表面とトロッとした内面が舌を楽しませつつ、独自にブレンドされたソースとマヨネーズがカツオ節と上手く絡んでペロリと平らげてしまう程に美味しい。
豪華な料理も良いものだが、こういった一品が国内にも普及し始めているのは国内を活気づけるのにも一役買ってくれている。
邪魔にならない様にすぐに店から離れて振り返れば、王女達が堪能した一品ということで眺めていた民衆がたこ焼きを買おうと集まる光景だった。
あそこの店主は魔剣士学園で何回か見た気がするが、楽しそうに調理をしているなら何よりだろう。
内政を学んでいるアレクシアから今職人たちが独自の路線で『食』に関する技術を高め始めていると聞いた。
自分達が外食を行う際に選ばれた店はかなりのアピールポイントとなり、しばらく繁盛するらしい。なんだが商売繁盛を願掛けされている感覚を覚えるが、業界内では自分達に味を評価してもらう為に日々腕を磨き続けているのだと。
職人気質の者達が美味しさを求めて活動を続けるその姿は非常にありがたい。
元々王国国民内の食事事情も良いとは言い切れなかったので、優先して食文化推進を行っているのだ。主にアレクシア主導で。
適度に食べる美味しい食事は日々の暮らしを豊かにするのである。
この時間は決まった道筋はない。
誰かがあれを食べてみたいと言えばそれを堪能するし、興味がある品があれば全員でそこに向かう。
日々国の未来の為に活動を行っているからこそ、こうして何も考えずに直感的に動くことも多い。
適度に会話をしながらやってきたのは王都が一望できる高台だった。
ここは明るい時間帯であれば人々の活気を、夜になれば電灯によるイルミネーションと星々の輝きを独占する事が出来るスポットである。
特に他意はない。
ただ何となく足がここまで進んだだけ。
だが時間も進んできた現在では丁度夕暮れが一日に終わりを告げている最中であった。
「―――街並みも、大分綺麗になったな」
始めは自分がやりたい事を成すために王女達と関わりを持ったのがきっかけだった。
彼女達もこうして成長し、弟子を取り、王国の未来を担う必要不可欠なまでになった。
ローズも遅ればせながらも成長を続け、こうして自分達と肩を並べても遜色ない程に武芸面は兎も角、精神的に成長を遂げていた。
オリアナ王国と現在も仲良く交流を行えているのも彼女の手腕による所が大きい。
ミツゴシ商会と関係を持ったのもディアボロス教団がきっかけだ。
元々シャドウことシド・カゲノーと関わりはあっても、アレクシアがゼノンを撃退していなければここまで円滑な繋がりは持てていなかった様に感じる。
彼女達の技術力のお陰でミドガル王国は大きく発展をしており、文化面・衛生面・物流面など様々な分野で無くてはならない存在に変わっていた。
病で亡くなる頻度が減少した。
飢餓で苦しむ機会も減少した。
襲撃による被害も目に見えて減少した。
しかし問題点は多々存在する。
急速な変化は、時に問題を引き起こすのだ。
まだ新米だが国の運営に携わる事になって感じる事は多々ある。
これまで漠然と考えていた諸問題を解決するために、どれだけの人手や運、そして金銭や人脈が関わってくるのか。
そしてこの平和を維持し続ける事がどれだけ困難な事なのかも、国家全体の…おそらく一部分にも満たないだろうが理解出来てきた。
「えぇ。私達はこの美しい街並みを、これからも護っていく義務がある」
「そのために私達は共に手を取り合ったのです。ガイアスさん…いえ、旦那様。この平和を守っていく為に、共に歩んでいきましょう」
「当然だけど貴方一人に背負い込ませないわよ?ローズさんの言う通り、その為に私達がいるんだから」
街並みを眺めるガイアスの後ろに立つ三人の王女。
平和を作るのではなく、維持し続ける事の困難さがどれだけの事なのか日々国の未来を考えてきた王女達が解らないはずがない。
彼女達は己の胸中に確固たる覚悟を有していた。無かったのは一国民であったガイアスだけだった。
独自に動き、あまり協調路線を取らなかったのはそこまで責任を持てないと自己保身の考えからだったのかはわからない。
だがこうして彼女達と向き合ってみれば改めて理解できる。自分もこれから国の未来を、国民の幸せを目指して取り組んでいく覚悟が必要なのだと。
「アレクシア、アイリス、ローズ」
自分を慕い、結婚までしてくれた妻達。
全員が笑みを浮かべ、ガイアスを見ていた。
「俺はまだまだ未熟者だから、色んな失敗もしていくだろう。情けない姿も見せていくだろう」
物心ついた時から考えていた
将来の為に、
「だからこそ、俺は皆が必要だ」
右手を差し出す。
これまで明確に伝えていなかった事を、ここで伝える。
「アレクシア、アイリス、ローズ。改めて言わせてもらう。俺は皆が好きだ。これからも幸せを守っていくために…俺と共に生きて欲しい」
王族として役目を果たす為に。
国民の想いに報いる為に。
そして何よりも妻達の幸せを守る為に。
差し出された手には三つの右手が添えられた。
『 末永く、よろしくお願いします 』
間髪入れずに告げられた解答と共に影が重なった。
それが示す意味をここで語る必要はないだろう。
一つここで言える事は一つ。
彼らがこれから築き上げていく未来は紆余曲折あるだろう。
今、夕暮れから夜へと空模様が変化している様に、将来王国が暗く辛い状況に陥る事も必ずある。
だが夜明けも必ず訪れる。
その光をどれだけ維持していけるのかが、これから自分達に課せられた課題だ。
一人で動き続けるだけであれば、その未来に太刀打ち出来ないかもしれない。
しかし傍に支え合える大切な者達がいる限り、彼はもう一人で生きていくことはないと断言できる。
ならば心配はいらない。
何故なら彼らには…否。
ミドガル王国にはすでに頼もしい仲間達が、傍にいるのだから――――。
??「勝ったッ!第一章完!」
そんなわけで突然ながら、一旦完結という形に納めさせていただきました。
これはアニメ1クール分…つまり『ブシン祭』が終了したあたりまで書き終えたことで本作品も一つの節目を迎えたと判断したためであります。
本作品は元々強くなった王女を活躍させたいという一点だけを主目的において始めた作品なので、ここまで長引く予定もガイアス君が活躍する予定も本来はありませんでした。
正直ゼノンとアレクシアを戦わせて完封させたいぐらいのかっるい気持ちの作品がここまで続けれるとは…いやはや恐ろしい。
なので突拍子な設定が生えてきた事もここに起因している訳ですね(唐突な言い訳)。
また本作品を投稿するに当たって個人的に嬉しかったのは二十八話からの『王国最強』や四十一話からの『頂』にて多くの方から評価やアンケート反応をしていただき、一時ランキングに顔を出させていただいた事でしょうか。
出れたやったー!の気持ちでひっそりとによによさせていただきました。
今後は閑話や思いつきをちまちまと書いていきながら、二章分を投稿していけたらなぁと大雑把に考えておりますので、その時は時折暇つぶし程度に覗いてくだされば嬉しいなと思ったり。
それでは改めて、ここまで見てくださってありがとうございました!
◇
・カゲノー家
各々がこれまで表で活動していた名とカゲノー姓を名乗るが、本名はアルファ・カゲノーやガンマ・カゲノーと言った形で登録されている。
王女達が結婚なされた後すぐに時間を置かずに『シャドウガーデン』の、それもシャドウを間近で見て脳が焼かれてしまわれた者達全員がシド・カゲノーの元に嫁いだ結果、国内最強の武力と資金力と開発力を保有するに至る。
一国と渡り合える最強領地の完成であるものの、アルファの方針に倣い皆で平和に日常を謳歌している。
なお陰の実力者を目指した男は現実を受け入れるのに多大な時間を要したというが、家業もアルファ達が手伝ってくれる故に陰の実力者を目指す生活は変わっていないようだ。
陰庭一同『 主様確保…ヨシッ! 』
陰の実力者「ドウシテ…」
・クエスト家
一人息子であるガイアスが王家の王女達を娶ったことで阿鼻叫喚に成らざるを得なかった。
王家から様々な手を回されてる事となったため国内の影響力も非常に高いのだが、土地の開墾や維持は国民の為であり、国民のお陰という考えは変わらず接し続けたことで領民達からの評判も高い。
ミツゴシ商会が店舗展開を行う際に率先して手を回している為、結構資金面も潤沢である。
・『閃光』と『武神』
ミドガル王国に滞在する実力者エルフ。
ふらっと二人で旅に出ることもあるが、どちらもたまにぬけている所があるため『シャドウガーデン』のとある人物の命を受けてナンバーズが遠くから見守っていたりする。
『武神』はガイアス達の生々しい話やアルファが嫁いだ事を受けて、自分も伴侶を見つけるべきなのか悩んでいることがあるらしい。
・アレクシア・ミドガル
『嵐纏』の名を持つミドガル王国第二王女にして第一妃殿下。
ガイアスの名前を出すことを勝手に許可したり、裏でガイアスを逃がさないために各所に手を回したり噂を立てさせたりと工作を多々していた。
内政面に優れており、国家運営に携わる。
・アイリス・ミドガル
『炎皇』の名を持つミドガル王国第一王女にして第二妃殿下。
真っ直ぐな性格の為、顔や反応に出るという理由からあらゆる重要案件を話されることが無かった不憫な王女。
戦闘面に優れており、国家防衛に携わる。
・ローズ・O・ミドガル
正式名称はローズ・オリアナ・ミドガル。
現在二つ名は無いものの、日々精進している為遠くない時に二つ名が冠されるオリアナ王国王女にしてミドガル王国第三妃殿下。
三人の中で唯一他国の人間であるためか、相手との距離感を埋めるのが上手い。
外交面に優れており、国家戦略に携わる。
・ガイアス・Q・ミドガル
正式名称はガイアス・クエスト・ミドガル。
ミドガル王族の王女達を娶る形で王族の仲間入りを果たした男。
本作品初期構想時は過去に修行をつけてくれた謎の人物ポジで収めようとしていたけど三話目ぐらいでその構想は破綻していた気がする。
『ブシン祭』によって武術に興味を持った者達が殺到したために王都で道場を開いたが、殿下から直接教えてもらいたいとより人が増えて困ったりする。
当然半数は前段階で仕訳けられていくのだが、根性がある者達が今後鍛えあげられていくことで将来王国の防衛を担う人材へ育っていくことが期待されている。
情報面に優れており、治安維持や諜報面に携わる。
クロスオーバー好きかい?
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うん、大好きSA!
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まぁ良いだろ
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知らんな
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クロスオーバー、お許しください!