王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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 まぁ開始前に情報がすでに漏れてるたら、こうなるよね。 
 
 
   


五十五 迎撃と抵抗と・・・

 

「ハッ…!ハッ…ハッ……~~ッ!!」

 

 雨が降り続ける。

 天から零れ落ちる数多の雨粒が大地を一気に濡らしていく。

 

「くッ…!」

 

 濡れるのも厭わずに走り続ける男は己の背後に刃を突き立てるべく機敏に動き続ける追手の存在を感じ取り、頭に浮かぶ言葉を吐き捨てた。

 

 敗戦であることはこうして己が逃げる状況に陥っていることから頭では理解出来ている。

 そうでなくては己はこれまで生き延び続ける事は出来なかっただろう。

 だが理解できていても、それを素直に飲み込めるのかと言われれば否。

 ただでさえ過去に大切なモノを奪われてきたトラウマがある彼にとって、今こうして再び仲間を失っている状況は当然許せるものではない。

 

(教団の雑兵は兎も角…『四つ葉』もやられた…!あんなに呆気なく…無様に…ッッ!!)

 

 獣人の男――月旦(ゲッタン)抜擢(ばってき)した四名の私兵団。

 獣人と人間で構成された面々は月旦が選んだだけあって、そこらの兵卒をもあしらえる腕利きの実力者だった。

 そんな彼らでさえも、己らが挑んだ相手には一切敵わなかったのだ。

 自ら挑んでみても結果は同じ。

 月旦は何とか一撃で致命傷を負うことは避け切りることが出来た為にこうして無様を晒しながら逃げている。

 作戦は考えなくても分かる・・・失敗だ。

 自分達だけ被害を受けているとは考えにくい。他に配属していたディアボロス教団のチルドレン達も同じように反撃殲滅されているだろう。

 

 普通の人間であれば自分よりも圧倒的強者が複数いる事が分かっている以上、戦意を失ってどう生き延びるかを考えるのが一般的だろう。しかし月旦はそうではなかった。

 雨が周囲を濡らして冷やしていくのとは真逆。

 大雨の中で、男の胸中に沸き上がり続けている感情は怒りという名の灼熱の感情だった。

 

「奪わせねぇ…これ以上、奪われて堪るかッッ!!」

 

 己の中に宿る魔力が男の怒りに呼応する様に降り注ぐ雨粒を蒸発させていく。

 赤黒い魔力は並の相手であれば一方的に蹂躙が出来る程に強大だ。それは切り札の一つとして常備していた『ディアボロスの雫』を模した錠剤は服用して適応した為。

 服用前とは比べ物にならない高みに到達出来たのだと確信が持てる程に魔力量が向上したのである。

 だがそれでも奴らの足元にすら届かなかった。

 

  ジャラリ

 

 取り出すは首から下げて衣服の中にしまっていたネックレス。

 その先に付けられた懐中時計には独特な意匠が凝らされており、市場に流せば相応の金銭を手にすることが可能だろう。

 だがこれは念には念を入れて準備していたアーティファクトの中に混ざっていた一品。

 教団の奴らが研究保管していた一品であり、研究途中ではあったもののである以上、無駄な効果は存在しない。

 

「アーティファクトよ…力を寄越せッ!!」

 

 握り潰す程に握力を込めながら魔力を流す。

 月旦の魔力に呼応するかの如く、時計の針が勢いよく廻り出した。

 教団が作成した錠剤によって増大した魔力が流し込まれたことでアーティファクトが起動したと同時。月旦を追っていた者達が彼に追いつき、周囲の異常に気付く。

 

「あれは…!」

「一体何を起動させたんだ!?」

「なんてとてつもない魔力っ…!!」

 

 黒を基調としたボディスーツに身を纏った女性達は先ほどまで感じなかった魔力の暴威を感じ取って冷や汗を流す。

 彼女達は『シャドウガーデン』の構成員。他の教団員を排除した後、月旦を追いかけてきた者達だ。そんな彼女達も命の駆け引きを乗り越えてきた猛者であることには違いない。しかし下手に近づけない。

 それは下手に近づけば手痛い反撃を貰う事を即座に理解したが故。

 

「――ッ。こちらイプシロン、応援を求めるわ」

『了解。すでに向かわせてる』

 

 遅れてやってきた水色髪のツインテールのエルフ――七陰(しちかげ)第五席 イプシロンも状況の悪化を即座に把握。

 部下達を護るように得物を構えながら移動しつつ、腕部に装着していたゴーレムに呼びかけた。

 

 応援要請に即座に反応が返ってきたこと、そしてすでに応援を派遣しているとの回答を聞いたイプシロンは「流石」という感想と「恐ろしいわね」という二つの感情を抱く。

 敵であった場合は非常に恐ろしいが、友好関係を構築出来ている今であればこの上ない心強い味方だ。自分達以外にも教団に対抗する勢力があり、かつ友好的という事実は『七陰』達にとっても助かる存在であった。

 勿論教団相手は自分達が持てる全力で狩りきる気概で挑んでいる。だがイプシロンは…否、現在『シャドウガーデン』に所属しつつカゲノー領で暮らす構成員の殆どは倒すよりも生き抜くことを最優先として行動を変化させていた。

 

 『シャドウガーデン』を立ち上げた名目はディアボロス教団に対抗する事。

 その目的は変わっていない。故にディアボロス教団の抹殺は優先事項として非常に高い。

 “悪魔憑き”として長短あれどほぼ全員が辛い経験を経てこの地下組織の仲間になることを決意した以上、目的を廃することはあり得ない。彼らが研究という名の人体実験や情報工作を行っていなければ自分達はあんな経験をせずに済んだのだから、その怒りは当然のモノ。

 だがシャドウと結婚を経た今現在、彼女達の内心に小さくない影響を与えているのもまた事実だ。

 最愛の主の傍で生き続けたい。

 生きて産まれた主の子の成長を見守りながら、可能なら自分も主の子を授かりたい。

 そんな感情が彼女達の中で芽生えていたのだ。

 

 それはイプシロン個人が抱いている感想という訳ではなく、他の七陰全員が同じような考えを抱き始めている。

 統括者たるアルファが決めたわけではない、自分達が総帥シャドウたるシド・カゲノーと婚約したことによって自然と変化していった感情(モノ)だ。

 『シャドウガーデン』と同盟関係を越えて友好関係へ発展している『ミドガル王国』にも心強い仲間がいる事実も彼女達の優先度を変えた要因の一つであることは確かであろう。

 

 月旦はアーティファクトは起動している事を理解しながら、歯噛みする。

 緻密に練られた計画だった。

 相手にバレない様に国外で計画を練り続け、闇の中で刃を研ぎ続けてきた。そうして行動を始めた結果が今の現状だ。

 月旦は知る由もないが、彼が計画を実行するとほぼ同時、彼が身を置いていた場所であるガーター商会。その会長職に居た男 ガーター・キクチは既に逮捕され、商会が裏で行っていた恐喝や賄賂を含めた悪事はすでにメディアによって流されている。

 かつて繁栄を極めたガーター商会であっても今回の一件で衰退は免れないだろう。

 それはまぁ良い。

 ガーター商会は『雪狐商会』が参入してからというもの、大きく勢力が削がれていたのだ。仮に破産したとしてもミドガル国内の市場に影響を与える程の力は存在していない。

 

 ただシャドウガーデン(彼女達)にとって想定外だったのは月旦の抵抗が予想以上に強かったこと。幹部に近しい相手ではあるものの教団幹部である『ナイツ・オブ・ラウンズ』ではない相手の為に、そこまで時間はかからないと考えられていた。

 何せ『七陰』を一人、そしてこの場にはいないが『ナンバーズ』からも人員を動かした上での迎撃戦。敗退なんて許されない。

 だが教団(奴ら)も背水の陣を敷いているのか、各地でしぶとく抵抗を続けて現在に至っていた。

 

 今回の戦いは状況を俯瞰して見れば『シャドウガーデン』の圧勝だ。

 『シャドウガーデン』は一部怪我を負った者はいるがそのどれも重傷とまではいかない軽微なモノ。対する『ディアボロス教団』の構成員は月旦を除いてほぼ全てが撃退されており、間もなく全滅する。

 そうなれば各地で戦っている仲間達が集結し、月旦の逃げ道は完全に断たれることになる。

 それだけでなく月旦の足掻きを把握したイプシロンが応援を呼んでいる為、要警戒であることは味方内へ伝達されている。更にガイアスの手筈により、増援が来るまでそこまで時間もかからないだろう。

 それらの情報を纏めれば断言出来る。月旦側に勝ち目は存在しない。そのはずだ。

 

(一体何なの…この魔力密度は…!!)

 

 その客観的事実があったとしても、月旦が持つアーティファクトから溢れ出る魔力の密度にイプシロンは嫌でも警戒せざるを得ない。

 赤い紋章のようなモノが出現しているのだが、かつてリンドブルムで行われた女神の試練で見た赤い扉を彷彿とさせる。あれはディアボロス教団がディアボロスの左腕を封印して研究する為に隠蔽した結果であった。あの時は教団が封印されていた戦士達の魂を興業に活用ことで真実に対する目くらましと資金集めの手段として悪用していたのだが、イプシロンはそれに似ていると思った。

 

 警戒しながらも月旦の手の中に納まっているアーティファクトの針は廻り続ける。

 月旦本人だけであればどうとでもなる。しかしイプシロンが警戒する大本は月旦の背後に浮かび上がってきた紋章だ。

 あの紋章を消すことを考えるのなら、(原因)を破壊するのが一番手っ取り早いだろう。

 

「核は...右手か!!」

 

 下手に近づくのは危険だ。思わぬ反撃があるかもしれない。

 であればどうするか?答えは簡単。離れて攻撃をすればいい。

 

 イプシロンの魔力操作は七陰随一。

 常日頃からスライムスーツを独自に活用し続けながらも研鑽を続ける彼女だからこそ、斬撃を飛ばす程度の魔力操作はお手の物。下手に力む必要もなく、呼吸をする感覚で操るぐらい容易いものだ。

 彼女が持つ大鎌から核を破壊すべく大気を裂く斬撃が放たれる。

 下手な防御であれば真正面から斬り裂く威力。

 『緻密(ちみつ)』の名を冠すが如くイプシロンが大鎌から放つ斬撃は、彼女の狙いから一ミリのズレもなく月旦が握るアーティファクトへと向かう。

 

「ガァァァアアアアアア!!」

 

 放つ相手は敵耐勢力。それも教団関係者とあれば加減なんてものは当然しない。

 だが防御ごと切り裂く勢いで放った攻撃を月旦は咆哮を挙げながら身に纏った魔力で強引に叩き壊した。

 

「なっ!?」

「イプシロン様の斬撃がっ!?」

「っっ!(あの異質な魔力が明らかに月旦を強化している…!)」

 

 月旦に纏っていくどす黒く、そして威圧感と嫌悪感を感じるその魔力。

 イプシロンは改めて脳内で状況を分析することでふと気づく。紋章から漏れ出ている魔力に近しいモノを自分は知っていると。

 

「アーティファクトから出ている魔力…、まさか…魔人ディアボロスの…!!」

 

 かつて自分達を苦しめた元凶であり、憎き存在。

 ディアボロス細胞によって暴走した魔力あの時の感覚。

 イプシロンはあの時のソレに近しいナニカを感じ取り、アーティファクトのカラクリを大雑把に把握した。

 魔人ディアボロスの研究を行い、『ディアボロスの雫』などの研究成果を生み出していた教団であればその成果をアーティファクトに組み込んでいても可笑しくはない。

 その可能性に気づいたのが今この状況下でなければ彼女も問題なく対策出来ていたかもしれないが、この状況が良くないことは明白。

 シャドウガーデンの構成員であり、イプシロンの傍で活動を続けてくれている者達は非常に優秀。それでも教団の幹部クラスを相手取るにはまだ実力が追いついていないと彼女は判断している。

 イプシロンがナンバーズに推薦している559番は検問付近の後始末を任せている為に合流はもう少しかかるだろう。

 

「貴方達、退いて559番と合流し、やってくる増援をこちらへ誘導して頂戴。私はこのまま迎撃に専念するわ」

 

「…ハッ!」

「…ご武運を!」

 

 イプシロンの指示を理解し、悔しさを表に出しながらも素直に従う構成員達。

 これから行われる戦いに自分達では足手まといにしかならないと直感で察したが故の即決。

 その即決が功を奏すことになる。

 

「逃がさん…貴様らは、俺が…オレガ奪いつくスッ!!」

 

 魔力に呑まれていた月旦が、畏怖と共に魔力の刃を全方位へ差し向ける。

 冷静に自身に脅威となり得る攻撃のみ、イプシロンは撃ち落とす。

 世界の陰に生きる者達の生存競争が再開した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 

「あら、ガイアスはん。突然どないしたんでありんす?」

 

 扉を開けたガイアスへ応対するのはゆったりとお茶を飲んでいたユキメ。

 場所は『雪狐商会』が近年場所を移したミドガル王国に存在する本部だ。

 時刻としてはイプシロン達『シャドウガーデン』が月旦達『ディアボロス教団』に対して迎撃作戦を開始する少し前となる。

 ガイアスは王宮を後にした後、ユキメに会うべく商会の本部へやってきていた。

 

 ユキメとて商会のトップとして活動を行っている以上、忙しい身。

 だがガイアスから事前に来るとの一報を受けてこうして身支度を整えて出迎えていた。

 

「ユキメさん忙しい中突然申し訳ない。時間を戴いても構わないでしょうか?」

「ぬしとわっちの仲でありんしょう?折角来てくれた以上、お茶で良ければ準備させるでありんす」

「月旦が行動を開始しました」

「――――・・・・・・。そう、でありんすか」

 

 現国王の訪問に対して何もしないなどありえない為にすぐ部下へお茶請けの準備をする様に指示をするが、ガイアスの発言を聞いて瞬時に雰囲気が変化した。

 彼女が『雪狐商会』を発足させてここまで勢力拡大に努めてきたのも月旦を見つけるために情報を集める為でもある。勿論金銭問題の解決もあったが、それはミドガル王国と手を握り合う関係に持ち込めた事もあって成長は約束されているようなものだ。

 しかし月旦に関する問題は違う。

 あくまでも月旦とユキメにある問題は個人的なものであって、王国を巻き込むわけにはいかないからだ。

 ガイアスからこうして情報を教えてもらっているのはアレクシアとの交渉によって目的の人物を見つけ、情報を彼女に流す事が条件に入っている為。ガイアス達が活躍した『ブシン祭』以降ガーター商会が落ちぶれていく中で、その内部に入り込んでいた月旦は闇に身を(ひそ)めて姿が確認できていなかったのである。

 

「――場所は?」

「ミドガル王国の国境警備が敷かれている西側です」

「情報感謝するでありんすガイアスはん。ぬしはこのまましばらくゆっくりしてくんなし。わっちはすぐに向かう事に致しんす」

 

 だが目標が表に出てきた以上、ユキメとしては黙って傍観している訳にもいかない。

 普段持つ扇とは別に特注の鉄扇を手に収めて退室しようとするユキメをガイアスは止めた。

 

「止めないでくんなし。わっちが行動する意味、ぬしにも教えたはずでありんす」

「えぇ。しかし今回の一件は月旦とユキメさん、貴女だけの問題に収まらない。ミドガル王国も根幹から関わってくる問題になる。故に貴女に確認しなくてはいけないんです」

「確認・・・?」

「貴女が、この世界に蔓延る闇と真正面から対立する覚悟があるか、ですね」

 

 月旦は只の獣人族の男ではない。

 ディアボロス教団が関わってくる以上、月旦へ復讐を行うなら必ず教団との接点が生まれる。そうなれば奴らもユキメの内情を探り、必ず『雪狐商会』や無法都市の情報を探り当てるだろう。そうなれば何も知らされていない無関係の者達に被害が出る可能性は否めない。

 当然ながら王国やミツゴシ商会と友好的な関係を築けている彼女達を放置する訳がないので裏工作をこちらで仕込む事になるが、1から10まで保護する事は現実的に不可能である以上、トップである彼女には裏社会の真実を把握してもらう必要があった。

 

 事前にアレクシアがアルファに頼んで準備してもらっていた資料を渡す。

 ペラリペラリと渡された資料、そして証拠となる研究内容など、国家機密に近いレベルの情報を見ているユキメの表情は芳しくない。

 復讐対象者がここまで堕ちているのかと考えているのだろう。

 

 ガイアスが渡した資料には『ディアボロス教団』によって引き起こされてきたこれまでの悪事やそれに対抗する組織としてミドガル王国が動いている情報が記載されている。

 『シャドウガーデン』の存在は伏せられており、資料を見ただけでは『ミツゴシ商会』が『シャドウガーデン』が運営する企業であることは理解することは出来ない様に工夫されていた。

 これはもしユキメが真実を知り、教団との関わりを拒否した場合を加味した為である。

 

「…・・・にわかには信じがたい話でありんすな」

 

 彼女は元々知略に優れた妖狐族のお嬢様だ。

 幼い頃から聡明であった彼女の頭脳が無ければここまで商会を大きくすることが出来なかったし、何より無法都市で色町を支配する事は不可能であっただろう。

 無法都市は国による統治がされていない名の通り無法の地。

 彼女が無法都市の一角を支配するまでにも醜い側面を見てきた。そんな彼女だからこそ、この資料に記載された内容は嘘だと断言する事が出来ない。

 何よりも教団が起こしてきた研究や工作の中に、気になる内容があったのである。

 

(獣人の複数の部族と盗賊らを唆して周囲の集落を壊滅させて獣人の実験体確保・・・。これは・・・)

 

 彼女が今こうして行動をする原点。

 まだ幼く、碌な抵抗が出来ずにほとんどのモノを失った当時の苦い記憶が蘇る。

 

 碌な抵抗も出来ずに複数の部族に襲撃を受けたあの日。獣人の中でも戦闘面で優れている方であったはずの大狼(おおおおかみ)族の精鋭達が一矢報う事が出来ずに蹂躙されたあの事件は、確かに今にして思えばおかしな点が存在していた。

 当然大部族同士の抗争であった為、数で負けていた自分達が敗北することは仕方ないし納得できる。だが大部族同士の抗争を察知する事が出来ないだけでなく、ほぼ同じタイミングで二つの勢力がユキメ達の集落を挟撃する形で攻撃を仕掛けてきたのは明らかに可笑しな話ではないか。

 

(あの時はまだわっちは幼かった故に状況把握が遅れてしまった・・・しかし、あの時あった会話では、確か気配も無く有無を言わせぬ勢いで攻めかかってきたはず・・・)

 

 当然ながら集落の周囲には見張りを配置することですぐに危険を察知できるようにしていた。

 それでもこちらが一切察知する事が出来ず、相手が一方的に攻撃をするなんて事が可能なのか?

 

(まさか・・・あの時の襲撃ですら、この教団の仕業である可能性がありうるという事・・・っ!?)

 

 考え得るは情報操作。

 ユキメ達の集落に敵対する部族の族長らが居るあたりの情報を互いに流し、こちらの見張りを優先的に排除。そして部族同士を煽り戦闘を誘発させながら、盗賊らが漁夫の利の形で襲撃を行う・・・。

 

『俺は“力”を得た!だが貴様等全員俺の呼びかけに応えなかった!!』

 

 ならばあの襲撃の時に月旦が喋っていた内容にも納得がいく。

 襲撃から集落を守り切れずに絶望していた月旦に対して甘言(かんげん)を流して“力”とやらを与えて復讐するように誘導していたとしたのなら・・・。

 

「ガイアスはん」

 

 月旦を討つ為に殺気を滾らせていたユキメではない。

 静かに、ただ静かに。まるで自分の沸き立つ怒りにそっと蓋を閉じる様に感情を抑えながら、ユキメはガイアスへ問いかけた。

 

「わっちが月旦を倒した場合、このディアボロス教団とやらへの敵対行為と見做(みな)される、で間違いないでありんすか?」

「間違いなく、確実に」

 

 ガイアスは断言する。

 ねちっこく動き回る教団が、障害となり得る存在を見逃すことなど在り得ない。

 もし奴らから妨害工作を受けない可能性があるとしたら一つだけ。

 奴等に知られず、伝わらぬ様に教団関係者を皆殺しにすることだけだ。

 

 ユキメはガイアスの断言を聞いて軽く息を吐き出した。

 その直後、得物である鉄扇が潰れてしまうのではないかと思ってしまう程に強く握り締めるユキメの瞳には覚悟が宿る。

 それは己自身の意志で、ディアボロス教団と敵対する事を選択したということ。

 

「月旦がわっち等に行った凶行は許すことはない・・・。しかし、それ以上に、わっちの怒り(想い)を、ぶつける相手がいるとなれば、無関係でいる事は在り得ぬ事」

 

 純白の尾からゆらゆらと魔力が溢れる。

 純白から金色へと色を変えた魔力の質は、そこらの者達を圧倒する程の力強さを有している。

 今の姿であれば『ブシン祭』の頃のアレクシアやアイリスとも良い戦いが出来るのではないかと思わせる程に洗練された魔力の質の高さはまさに伝説を冠した金毛九尾に相応しい。

 

 幻想的なその光景を見て、ガイアスは只々見惚れる。

 それぐらい今の彼女は力強く、そして美しかった。

 力を緩め、握り締めていた鉄扇を大きく開いた後にユキメはガイアスへ微笑む。

 そうして彼女が告げた言葉は、まさに覚悟の証であった。

 

 

「ほな行きましょうか、ガイアスはん。

 ディアボロス教団とやらに、お礼参りに洒落込むと致しんしょう」

 

 




・月旦
 『剣鬼』の二つ名を持つ大狼族の男。
 過去に両目の視力を失っていたが、教団の錠剤を服用して適応したことにより魔力が増大。
 それに伴って身体機能が強化されて無事に視力が回復する。
 まぁそれで『シャドウガーデン』の構成員は兎も角、『七陰』達には本来勝てるはずもないのだが…?


・イプシロン
 七陰の第五席『緻密』のイプシロン。
 『シャドウガーデン』の中でも魔力操作に長けるエルフの実力者。
 パッと見ではボンッキュッボンッを体現する超絶抜群のプロポーションを持つが、実はスライムボディスーツで肉付けをしている為そう見えている。実際は子供体型である。
 あまり活躍の場が無くなっているのが最近の悩み。
 
・ユキメ
 ガイアスから齎された情報から月旦が豹変した原因を悟って覚悟を決めた着物美人。
 狐耳触りたいし、尻尾に包まれたい。
 戦闘に向かう前から金毛九尾の形態に至りながらガイアスへ微笑む。
 
??「惚れてまうやろー!」
 
 

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