王女を実力者に変えたくて!   作:〇坊主

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八 報 連 相は正確に

 

 

『シャドウガーデンに用があります』

 

 

 店内で警備を担っていたメンバー。彼女たちは訪問してきた男へお帰り願うべく動こうとしたのだが、その発言に皆総じて言葉を失った。

 

 本来であれば適当に流してお帰り願うべき場面であったのに、確信をもって言い放った言葉に動揺してしまったのである。

 信じられない出来事に対応を忘れていたメンバーが我に返ったが時すでに遅し。対応が遅れた事実そのものが、先ほどの問いが正しいのだと答えを示してしまったのである。

 その後あまりの失態から激高して武力行使を行おうとしたメンバーであったが、その衝突直前にガンマが一喝することで事態を一時的に収めたのだった。

 

「大変失礼しましたお客様。ですがここはミツゴシ商会。シャドウ…ガーデンなるものとは無関係でございます。それにこんな時間帯にアポイントもなく訪れるのは聊か非常識です。お帰りをお願いしますわ」

 

「それに関してはこちらに非があることは重々承知の上です。ですが貴女方『シャドウガーデン』に、どうしてもお伝えしたいことがありましたので無礼を承知で参らせていただきました」

 

 ガンマの追及を素直に認め謝罪する男。

 苦し紛れに否定したが彼にとって、実際に事実なのだが、自分達ミツゴシ商会が『シャドウガーデン』で構成されている事を確信している様子だった。

  

「…謝罪を受け取りましょう。では一体なんの御用があったのでしょうか?」

「ルーナ様!?」

 

「理解が早くて助かります。お伝えしたいことはディアボロスk…」

 

 対応する姿勢を見せたガンマ。

 それに驚いたスタッフはガンマが名乗っている偽名のルーナの名を叫んだ。

 だが要件を終えなければ眼前の男が引くこともないと確信したガンマは脳をフル回転させながら自体の対処に当たろうとしたのだが、彼の口から教団の名が出かけた瞬間、その場にいた全メンバーが男の元へ殺到。

 首元以外にもアキレス腱や鳩尾といった急所を的確に狙い、寸止めで留めたことで男もそこで口を動かすのを一旦止めた。

 

「要件を聞いてくださるのでは?」

 

「余計な事をしゃべるな」

「下手な動きを見せれば、始末する」

 

 即座に両腕を後ろに回され、地面へ押さえつけられる。

 有無を言わせない圧をメンバーから感じ取りつつも、男は至って冷静。

 ガンマも彼女達の行動を窘める事はせず、警戒度をさらに引き上げた。

 

「ディアボロス教団…その名を私達の前で語る行為。冗談では済まされませんよ?」

 

「冗談でもなく大真面目。教団関係者…幹部に近しい奴を捕らえた。そいつの確保と情報抜き取りを依頼したくてね」

 

「…なんですって?」

 

 男の言い分に眉を顰めるガンマ。

 教団の幹部に近い人物とあれば、自分達も何の手も打たずに接触する事はない。戦闘力という意味でも厄介なのだが、奴らは狡猾だ。幾多の罠を張り巡らしている可能性も高い。

 目の前の男がその罠の一つである可能性は否定できず、それどころか怪しさが勝っていることが、警戒を解けない理由であった。

 

「貴様…冗談では済まないと言ったはずだ!」

 

 首筋に押し付けられた刃が食い込みそうになり、皮膚で止まる。

 後一回でも逆鱗に触れるようなことを言えばそのまま刃が首を貫くことだろう。

 

「残念だが俺は王国関係者。教団とは敵対関係にある。故にディアボロス教団と明確に敵対している『シャドウガーデン』と協力関係になるべくここにやってきた。というわけだ」

 

「王国関係者…。その言が正しければ確かにこちらにも利があるでしょう。ですが、教団は王国…それも騎士団を含めた多くの場所に入り込んでいる事は我々も把握済みです。

 貴方が王国関係者であることが事実であったとしても、教団と敵対しているという発言を担保するものではないわ」

 

「流石組織のブレインだ…。言っている事が正しすぎてわかりやすい」

 

「「「 ッ!! 」」」

「落ち着きなさい」

 

 ガンマは表向きはルーナと名乗り、ミツゴシ商会の長を担っている。

 そこがシャドウガーデンの隠れ蓑として使われていることがバレている以上、彼女がブレイン役と思われていても可笑しな話ではない。

 

「話が通じそうで非常にありがたいのですが、非常に困った。貴女が仰ることは事実。なぜなら俺は王国関係者ではあるが、騎士団所属でも、王族でもない。そして教団と敵対している事も極秘事項でね。王女様ぐらいしか事実を理解している人物はいないんだ」

 

「それでは話になりませんね。お帰りを、と言いたいところですが貴方をそのまま帰すわけにはいきません。より詳しい(・・・)お話を聞かせて頂きます。連れて行きなさい―――っ!?」

 

「残念だが、そんなゆっくりしている程暇ではないんだ」

 

 そのまま男は近くにあった椅子に腰かけた(・・・・・・・・・・・・・)

 

「!??!」

「いつの間にッ!?」

 

 戦闘員の彼女達が気づかない程の早業。

 拘束から逃れ、そして向けられた凶器をよけながら優雅に椅子に座ったのである。

 ゆっくりしている程暇ではないとは何だったのかをツッコんではいけない。

 

「俺が伝えたいのは教団の手の者を捕えたこと。そしてそれを“シャドウ”率いる『シャドウガーデン』の面々に伝え、協力関係を築きたいということだ。ご理解していただけたかな?“七陰(しちかげ)”の一柱、ガンマさん?」

 

「「「ッ!!??」」」

 

「っ!嘘でしょう…早すぎるっ!」

 

 先ほどから得物を向けてきていたメンバーは“七陰”の名を挙げた途端に襲い掛かってこようとしたが、すでに拘束されて無力化されていた。

 厳しい訓練を乗り越えてきた彼女達が一瞬の内に無力化された事実に流石のガンマも動揺を隠しきれない。

 

 戦闘員が無力化されたことは非常に不味い。

 ガンマは確かに頭脳面において随一に近いほどに優秀だ。後方支援から組織運営だけでなく、指揮系統も担うことも多い。

 シャドウガーデン内では主たるシャドウ、陰の統括者アルファに次いで第3位の序列を有する彼女だが、致命的ともいえる弱点が存在した。

 

 それが運動音痴であった。

 

 日常では何もないところで転んだり、階段を踏み外して転げ落ちて鼻血を出すことなど日常茶飯事。

 教団と戦う時も己が持つ強大な魔力を用いた防御力と力でごり押しで戦うのだが、運動神経や戦闘センスは皆無と言っていいのである。

 

 防御力に至っては“七陰”の中でも飛びぬけていると自負している彼女であっても、拘束されてしまえばどうしようもない。

 自分が組織運営においてどれだけ重要なポジションにいるのかも客観的に理解しているが故に、状況把握で後れを取った今の現状に動揺してしまうのだ。

 さらにメンバーを拘束しているモノに気づき、更にガンマは混乱する。

 

「くっ…!!」

「その拘束しているのはスライム!どうして主さまのスライムボディスーツを…!?」

 

 主であるシャドウより授けられたスライムの兵装。

 それは『シャドウガーデン』に所属すると同時に授けられ、そしてその扱いを叩き込まれるもの。

 基礎中の基礎でありながらも、最も有用している組織の秘密兵器だ。

 この兵装がスライムを素体として作られた物だということは教団にすら知られていない。

 

 それを正体不明の男が用いる。

 それが不気味で仕方ない。

 

「それは簡単だ。俺も昔にスタイリ……シャドウからこのスライムを教えてもらったからだ」

 

「なんですって…!?」

 

 その報告はガンマにとって寝耳に水だった。

 そのような報告を受けたことは当然ながら一度もない。

 だがそれも当然なのだ。男がシャドウからスライムの有用性を学んだのは、まだアルファたちが“悪魔憑き”として排斥されている時期であったのだから知る由もない。

 更にはシャドウ――かつての“スタイリッシュ盗賊スレイヤー”本人は、転生者繋がりということで仲良くなったものの、それ以降は出会っていないのである。

 わざわざ転生者であることを明かす必要もないため、“七陰”の面々が知らされてなくて当然なのだ。

 

「…っ!!主さまから直々に教えられたモノということは教団と敵対しているということは本当…?であれば作戦中に起きていた不可解な現場も主さまが事前に思い描いていたモノであったというの…?

 

「色々考えてもらっているところ悪いけど、敵ではないことは理解していただいたかな?」

 

 脳をフルスロットルで回すガンマであったが、その一言で我に返る。

 彼のいうことが事実であれば、教団と敵対しているというのも理解できる。

 

 『陰に潜み、陰を狩るもの』

 

 かつてシャドウガーデンを作るに当たって、シャドウ本人が語った意義。

 確かに私達は主さまの力になるべく、救われてからずっと鍛えあげて活動を続けてきた。

 彼も同じような立場であり、シャドウの陰の協力者として私達と力を合わせるように動いているのではないのか。

 ガンマは脳内にてその結果を叩き出した。

 

「なるほど…ご理解しました。先ほどまでのご無礼を謝罪いたしますわ。貴方のお名前を、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

「ガイアス・クエストです。名乗りが遅れて申し訳ない」

 

 そこでガイアスも名乗っていないことに気づいた。

 慌てて名乗り頭を下げるが、ガンマは大丈夫です。と返してくれる。

 

「大丈夫ですよガイアスさん。そして先ほど貴方が仰られた内容を信じましょう」

「本当ですか!それは助かります。自分達だけでやりくりするのも限界があったもので」

「いえいえ。教団に対抗するというのであればお互い様ですわ」

 

 先ほどまでの緊張感はなんだったのか。

 ガンマが一人で理解してからというもの、和やかに。そして協力関係になることも意欲的だ。

 さりげなく拘束も解かれたメンバー達は現状把握が追いつかずにどうすべきか困惑している。

 

「主さまのご協力者となれば非常に心強いです。これから仲良くして頂きたいですわ」

 

 ガンマがにこやかに手を差し出してくる。

 友好であることを示す握手。

 良くなかった事態は、最初の邂逅から収まるべき場所に収まったのである。

 

「ありがとうございます。シャドウの協力者ではないけどよろしくおねがいします」

 

 そうしてガイアスはその手を握った。

 勘違いはいけないことなので、しっかりと訂正した上でだ。

 

 

「…え?」

「え?」

 

 

「「………え?」」

 

 

 そのせいで状況がややこしくなったことは言うまでもないだろう。

 

 




 
 
 
・ガイアス・クエスト
 話をつけに行ったけど、連絡してなかったや。
 緊急だし、内容が内容だからしゃーない。突撃ー!
 
 相手からしたら一方的に情報握られてて恐怖しかない。

・ガンマ
 話を聞いたら主さまからスライムを賜ったと知り困惑。
 そこからたたき出された答えに納得し、友好関係を築くことにしたが、そうではなかったので困惑した。
 協力者でもないのに、ウチの事がバレてるってドユコト…?
 
 

【興味本位】挿絵があったら見るのか

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