三民族の共和国+α召喚   作:騎兵主義者

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 こっからが本作の本領にしてタグに貼っつけてる「原作キャラクター強化」の光どころってワケ


第2章:ロデニウス戦争 〜何故にロウリア王国は挽肉製造機へ身を投じてしまったのか〜
第10話:開戦前夜 〜嵐の前の静けさ〜


 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月11日

 ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城 玉座の間

 

 この日、ロウリア王国の王都"ジン・ハーク"は"ハーク城"にて、大王"ハーク・ロウリア34世"はクワ・トイネ公国とクイラ王国を降してロデニウス大陸を統一するための戦争を起こす時が近づいている中、最終確認の意味合いを強めに、玉座の間にて御前会議を開く。

 

「大王様、クワ・トイネ侵攻作戦についてお耳に入れたく参上いたしました」

「うむ。苦しゅうないぞ、話せ」

 

 まず最初に、ロウリア王国における軍務関連の最高責任者の"パタジン"将軍にクワ・トイネ公国を侵略するべく差し向け、クワ・トイネとロウリアとの国境近くに張り付けている"東方征伐軍"の軍備と作戦計画を報告させる。

 

「はっ!

 まずはクワ・トイネ国境に位置する"ギム"の町を先遣隊で制圧し、物資を徴発します。続いて城塞都市"エジェイ"攻略計画になりますが、こちらはエジェイを包囲し、挑発や牽制程度に留め、クワ・トイネ軍が反攻作戦に出たところを叩く計画になっております。

 また、対クイラ王国戦についてはクワ・トイネ全土の制圧が完了し、食糧供給を絶ってから攻勢作戦を行う計画になっておりまする。

 そして現在の時点で、“東方征伐軍“は戦時編成された軍勢を国境に終結させており、大王様の命令一つでいつ、いかなる状況であっても侵攻作戦を開始できます。

 なおこの戦争において投入する兵力は我が国が有する合計50万人中、40万人を侵攻に。残りの10万人は本土の防衛に回します。

 なお陸上からの侵攻作戦と同時進行で軍船4400隻からなる大艦隊を用いてクワ・トイネの港湾都市を制圧し、橋頭堡を築き上げて戦線拡大と早期制圧を計画しております」

 

 パタジンの報告が終わり、大王はパタジンに勝算を訊ねる。

 これ自体は最終確認に近く、どちらにしろ勝つのは確実視されているために対して意味のないものと化していた。三民族の共和国が大々的に動くまでは。

 

「2カ国を同時に敵に回して、勝てるか?」

「一国は農民の集まりであり、もう一国は不毛の地。どちらも亜人の比率が多い国であり、そのような国などに負けることはありませぬ」

 

 当然ながらパタジンの答えと、ロウリア王国の宰相にして外務関連の最高責任者でもある"マオス"より伝えられる情報の内容を思い出した上で疑念を抱いた彼はここに同席している宰相マオスへ、先月にロウリア王国へ鉄の大型船*1で乗り付けて、接触を試みてきた三民族の共和国とやらの情報を出すよう命ずる。

 

「宰相マオスよ、1ヶ月ほど前に接触してきた三民族の共和国なる国の情報はあるか?」

「大王様が懸念されている三民族の共和国ですが、クワ・トイネ公国から海を隔てて北東1000kmも離れているとのこと。クワ・トイネから1000kmも離れている上、飛竜(ワイバーン)を見たこともないと言っておりましたので、竜騎士を持たぬ蛮族の新興国家と思われます。

 ただし、近頃我が国の魔信機材が"共和国国際放送"なる組織によって行われる音楽や大陸共通言語による放送の受信を行なっているため、魔導技術に関しては一定の警戒が必要と思われます。

 また、その放送を聞くに、どうも三民族の共和国はクワ・トイネやクイラに対し20万人もの援軍を送ったとの内容も確認されているため、前線兵力の追加も必要になりうると考えております」

「ふむ、だがそうであったとしても、今手持ちにある戦力で十分対抗できるだろう。むしろ兵に与える褒賞の工面に忙しくなるだろうて」

 

 マオスから伝えられる情報に、少しだけ大王の抱える勝利の確信が揺らぐ。しかしそのような動揺を悟られるわけにもいかず、堂々と、特になんともないように振る舞いながら大口を叩く。

 その次に、ワインの注がれた杯を掲げ、クワ・トイネ公国及びクイラ王国に対する侵攻開始の命令を、開戦を強く宣言する。

 

「諸君、大義であった。今より、我々は動こう。

 クワ・トイネを、クイラを制し、我らの手でロデニウス大陸を統べる。これは余の、歴代ロウリア大王の大願であり、悲願であった!」

 

 城内が歓喜の声で埋め尽くされ、万雷の拍手が大王に浴びせかけられるが、それをもう片方の手で制し、演説を振るう。

 

「その偉大なる父祖の、全てのロウリア王国の民の思い描いてきた大願を果たすべく亜人どもを駆逐し────人間の王道を開くのだ!!その先に、我々人間の新しき、麗しき良き未来が訪れるであろう!!」

 

 この演説が最後の引き金となり、城内はより一層歓喜の声と拍手の嵐が轟き、さらには王都ジン・ハークの町を包む。

 

 

 

 

 

 しかし、そのような虚勢を張ったハーク・ロウリア34世は不安因子である共和国の存在を警戒し、今回侵攻作戦を計画する上で多大な援助を受けた"パーパルディア皇国"にさらなる援助を求めるべきか。それを決めるためにも、宰相のマオスだけを連れ、彼ら2人以外に人のいない静かな回廊を歩きつつ、自らの考えを打ち明ける。

 

「マオスよ、三民族の共和国だが、余の考えとしては大きな脅威になりうると考えている。この脅威を取り除くため、"パーパルディア"にはあの三民族の共和国を餌にしてさらなる援助を引き出そうと考えておる。まあ、パーパルディアが彼の国を攻め落とせるかはわからんがな」

「大王様、それは………」

「これが空手形どころか、盛大な詐欺であるのは余が一番わかっておる。

 だが、だがだ。ロデニウス大陸から1000km以上も離れた遠い地にまで魔導放送を届かせる技術力は、それだけで多少なりとも脅威になるであろう?

 で、あるならば。そういった有益な魔導情報だったりを餌にし、あの三民族の共和国から来た使者が宣っておったことを伝えてみせればパーパルディアも積極的に動く可能性があると見て良い。まあ、その余やお主がもたらす情報に少しの嘘が混じっておったところで、あやつらはわかるまい。

 それに、これまでパーパルディアから引き出した融資を我々が返せませんとなったら、だ。奴らは躍起になってその損失を埋めるためにも、三民族の共和国に手を伸ばす可能性だって考えられる。それを引き起こすためにも、どうにか情報を集めねばならん。

 マオスよ、改めて貴様にロウリア大王、ハーク・ロウリア34世の名で命じる。三民族の共和国に関するあらゆる情報を集め、それを用いてパーパルディアからさらなる援助を引き出せ」

「ははーっ!大王様の名、確と承りましたぞ!」

「………歴史がどのように流れるとしても、後世の歴史書には確実に余の名が『稀代の詐欺師』と書かれるのは決まったものだ………」

 

 そう自らの考えを打ち明けた後に、改めてマオスに命令を下す。

 この計画が後にパーパルディア皇国と三民族の共和国との全面戦争になるとは考えつつも、パーパルディアの没落に繋がるとは誰も知らずに。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月11日

 ロデニウス大陸 クワ・トイネ公国 クワ・トイネ公国=ロウリア王国国境線 クワ・トイネ公国側

 

 ギムの近郊、とある平原の塹壕線にて。

 かつて三民族の共和国の保護国であり、現在は民主主義を掲げ、共和制国家として独立国としての新たな旅路を歩み始めた"マルンディア自由国"は"マルンディア自由国陸軍"に所属するレヒスカ系マルンディア人歩兵将校、"ヴィトミル・ピェホツキ"少尉は神経質に、不安げに、そして丹念に自らの"キラーイ"wz. 39短機関銃を整備する。

 

「少尉殿、戦争経験はあるんでさぁ?」

「ない。俺が生まれたのと、士官学校に入ったのは何年か知ってるか?」

「あー………知りませんや」

「そうか、だがそれは俺だって一緒だ。俺もお前のことは名前と年齢と階級しか知らん、だがそんなもんだろう」

「そんなもんですかね?」

「さあな。だが俺から一つ言えることとしては、味方に共和国遠征軍がついている限りはなんとかうまくいくだろうさ。少なくとも、元とは言え俺もお前も共和国の同胞ではあったんだ。そして共和国は共和国の同胞をそう易々と見捨てはせんよ」

「へぇ、そうですかい。

 まあなんにしろ、他と違って共和国の保護国時代から共和国はあっしら地元民に対して差別だのなんだのしねえ上に、少尉殿のような白肌の奴らと俺ら黒肌を対等に扱ってくれるなんてのァ、他のとこの同じような黒い肌の奴らに恨まれそうな気もするんですけんど」

「ふん。せいぜい俺とお前は肌の色が違うだけで、皮をひん剥けば同じ赤い血が流れて、肉屋に吊るされた肉の塊のように同じ真っ赤に剥かれた姿になるだけ。そうだろ?」

 

 そんな彼に1人の濃い緑色の軍服に身を包み、wz. 38M半自動小銃を抱えた先住民系マルンディア人の兵卒が彼に話しかけてくる。

 彼は黒人兵卒の雑談を適当にいなし、ひたすらに整備を続ける。ロウリアのクズ共来るなら来い、来たら地獄に叩き込んでやる。と心の中でひたすらに唱えながら。

 

「その通りだ、少尉。だが悲しいことに俺らの出身地である"コロンビア"の馬鹿共はそうじゃないのさ。そいつらは全くもって、見事なまでに知能が足りてないのだ。絶望的なまでに、それこそダチョウよりも頭が悪いんだぜ!」

「そう、それに"メロヴィング"の内情もコロンビアと結構近いもんだったな。あいつら"自由、平等、友愛"なんて標語掲げておきながら、実際にはその標語は白肌専用のものみたいになってたし」

 

 と、そこへ数人の青いレヒスカ王冠領軍式の軍服に身を包んだ兵士達がやってきては雑談に混ざる。

 彼らが装備しているものは最新のwz. 48/50自動小銃にwz. 48/52軽機関銃であり、自分達マルンディア兵とは全く違う、真新しい装備をした王冠領軍の精鋭部隊、"青軍"の銃兵であった。

 なお青軍の兵士達は元々三民族の共和国に住んでいたわけではなく、他国で生まれたり、あるいは育った者がほとんどであった。いわば青軍とは一種の外人部隊のようにも思えるが、あくまでも入隊資格はレヒスカ系人に限られているので、外人部隊であるとは断言しにくい。

 そんな彼らはどっかりとクワ・トイネ公国とロウリア王国の国境線、そのクワ・トイネ公国側に築かれた塹壕陣地に籠り、機関銃や対空機関砲陣地に火砲を据え付け、戦車を掩体壕に押し込んで、ただひたすらにロウリア王国の侵略に対して備えていた。 

 

 

 

 ロウリア王国の侵略に備えているのは共和国軍や旧保護国軍だけでなく、再編成されたクワ・トイネ公国軍も同様であった。

 城塞都市"エジェイ"に籠る"ノウ"将軍率いる3万ものクワ・トイネ公国"西部方面師団"は一部をエジェイ=ギム間の街道防衛による補給線維持に割り当て、また騎兵3000と元弓兵にして現銃兵の7000を機動戦力として抽出している。

 また"モイジ"団長率いる"西部方面騎士団"はギムから市民を避難させ、共和国遠征軍や旧保護国軍と同様に塹壕を掘って籠り、供与されたwz. 98、wz. 98a小銃や"ベルティエ"wz. 12軽機関銃に水冷式の"マキシム"重機関銃を構え、対空用に37mmの"ポンポン砲"や"ホッチキス"機関砲に空を睨ませ、"その時"が来るのを待っていた。

 

 モイジは最後の仕上げに、兵士たちへ渾身の演説を振るう。

 身振り手振りも大袈裟気味に、内から湧き上がる戦意を顔に浮かべ、声に乗せて轟かせる。

 

「ギムの町を守るためのベストは尽くしたし、妻や娘は後方へ逃した。あとは我々が足並みを揃えて戦うだけだ!

 諸君、クワ・トイネ公国の勇士諸君!我々は戦う、たとえ白骨となろうとも!

 我々は生きてクワ・トイネ公国の盾となり、死でクワ・トイネ公国に我らの忠誠を、そして我等クワ・トイネ公国西部方面騎士団ありと後世に、全世界に示すのだ!!」

 

 このモイジによる演説を受け、西部方面騎士団の兵士は気焔を燃やし、旧保護国の兵士は手に持つ銃を高らかに掲げて音を立て、「ウラー!!」と力強く3回叫ぶ事でモイジの、クワ・トイネからの期待に応えるべく、頼もしさを演出した。

 共和国遠征軍の──レヒスカ王冠領軍の──兵士達はレヒスカ語の古い讃美歌を、宗教的で愛国的な讃美歌の"Bogurodzica(神の母)"を堂々と、そして王冠領軍の古き伝統に従ってアカペラで、声高らかに合唱する。

 

聖母、神の母、神の名なるマリア!

汝の御子、我らの主、神の名を持つマリアに問え、

我らを憐れみ、我らに委ね給え!

Kyrie Eleison(主よ、我らを憐れみ給え)!

 

 王冠領軍兵士達の合唱に、モイジ達クワ・トイネ公国軍の兵士達も、旧保護国の兵士達も、更には川を、国境線を超えた先に陣を構えるロウリア兵達も静かに聞き入る。

 前線にいる全ての兵士もまた、王冠領軍兵士達の合唱を聞き、呼応してあらゆる所から合唱に加わる。

 

神の子よ、あなたの洗礼者のために、

我らの声を聞き、我らの願いを叶え給え!

我らの祈りを聞き届け給え、

我らの願いのために、今日我らに与え給え、

祝福された大地での生活を、

死後に楽園へ住まうことを!

Kyrie Eleison(主よ、我らを憐れみ給え)!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月11日

 ロデニウス大陸 クワ・トイネ公国 クワ・トイネ公国=ロウリア王国国境線 ロウリア王国側

 

 一方国境地帯のロウリア王国側はその森林に陣地を構える"東方征伐軍"の本陣。

 そこでは魔法通信によってクワ・トイネ公国外務部より繰り返される退去通告を無視し、王冠領軍兵士達による混声合唱を聞き流しながら、東方征伐軍を率いる将軍、"パンドール"は満足げに配下の部隊を眺め、机の上に広げた地図を見遣ってから、──3万の兵力を抽出して編成された先遣隊を指揮する──"アデム"副将の、他の幕僚の方へ向き直してから短く告げる。

 

「明日、明日に我々は国境線を越え、ギムを落とす」

 

 クワ・トイネ公国を落とすどころかロウリア王国が揃えられる数以上の飛竜が投入されることに疑念を抱きつつも、この侵攻作戦に500騎もの飛龍が投入されることに彼は満足していた。

 と、そこへアデムがギムを落とした後に手に入るであろう戦利品の──捕虜や民間人も含めた──扱いを訊ねるが、パンドールは彼に一任する。

 彼の残虐さを知らないわけでもなく、それを知っておきながら冷酷な騎士である捕虜や民間人の扱いをアデムに一任させた時点で、それを知った共和国からは、確実に上官としての責任を取らせるべく、軍人としての名誉が無い絞首刑での処刑が執行されることになる。

 

「ギムを落としたら、略奪を咎めない、好きにさせよ。但し軍の秩序が乱れないようにはせよ。それから女は好きに嬲って構わないが、使い終わったら直ちに処分するように。一匹たりとも亜人を街から出させるな。全軍に通達しろ」

「はっ!」

 

 閑話休題。

 パンドールから望み通りの答えが得られたアデムは天幕を出て部下に命令を下す。伝令となった彼が、アデムの恐ろしさにさっさと立ち去ろうとしたところ、アデムは彼を呼び止めて命令を追加する。

 

「いや、待て。嬲っても良いのは変わらないが、100匹ばかり放流してやれ。恐怖を伝染させるように。

 それから………敵騎士団の家族がギムにいる場合、なるべく残虐に処分せよ」

「は、はっ!」

 

 げに恐ろしき命令を通達するよう命じられた彼は、冷酷な騎士アデムから早く逃れるべく、走ってその場を急ぎ立ち去る。

 命令を下し、走り去る部下をそのままに、天幕から離れて顔が見えないようにフード付きのローブを被った男と言葉を交わす。

 

「アデム殿、この度は東方征伐軍先遣隊指揮官の就任おめでとうございます」

「白々しいですねぇ、ローブで隠してもいやらしい笑みが透けて見えますよ」

「我らが支援した飛竜で武勲を立ててくださいまし」

「ええ、あなた方から頂いた飛竜はありがたく使わせてもらいますが、私は亜人を殺せさえすればそれで良いのですよ」

 

 ローブの男と言葉を交わし、そのまま夜の本陣を散策するために歩いて行くアデムの背中を見つつ、何も知らないローブの男は、アデムは、パンドールは、ロウリア王国兵は明日に備える。

 

「おぉ、怖い怖い」

 

 

 

 彼らを待ち受けるものは、勝利の美酒や煌びやかな戦利品などではなく。

 かつて三民族の共和国が存在した世界にて、可能な限り多くの敵兵を殺し、敵国の人的資源をすり潰すためだけに考案された、あらゆる残酷な発明品が待っているとも知らずに………

 

 

 

*1
正確にはリェタヴァ大公国海軍の"ヴィリュノ級装甲巡洋艦"3番艦"ケルナヴェ"

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