三民族の共和国+α召喚   作:騎兵主義者

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 塹壕・機関銃・鉄条網の三位一体はあるけれども、そこに化学兵器を投げ込んでこないだけ有情だと思います。



第11話:開戦 〜挽肉製造機にようこそ!〜

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月12日

 ロデニウス大陸 クワ・トイネ公国 クワ・トイネ公国=ロウリア王国国境線 クワ・トイネ公国側

 

 この日、クワ・トイネ公国とロウリア王国との国境線では銃声と砲声、爆発音、断末魔、そして負傷兵の呻き声とクワ・トイネ兵や共和国遠征軍兵、旧保護国軍兵の叫ぶ罵詈雑言が絶えることはなかった………

 それは、クワ・トイネ公国軍や共和国遠征軍、旧保護国軍が籠る塹壕陣地に導力火炎弾を放って焼き尽くさんと、飛竜75騎からなる第一次攻撃隊が飛来し、越境した時から始まる。

 

 

 

 ロウリア王国の竜騎士団において、団長を務める“アルデバラン“はどうにも言葉にできぬ不安感を感じ、しきりに上空や周囲を見回していた。

 それを部下の竜騎士は気に留めず、ただ前へ前へ乗騎と共に飛び続けていた。

 そして、アルデバランは自分たちよりも高い空、雲の切れ目から降下してくる敵騎の姿を見付け、部下に魔信で指示を叫ぶ。

 

「………クソッ!上方に敵騎!総員、散開して上方へ空間制圧射撃用意!」

「了解!発射用意だ、相ぼ────!」

 

 ロウリア王国竜騎士団の全騎が導力火炎弾を放つべく乗騎に口を開かせたところで、自分達に向けて降下しつつある総勢16の敵騎が無数の光弾を放つのが見え、アルデバランや数人の部下は乗騎に口を閉じさせ、急ぎ反射的に回避する。

 それが間に合わず、射撃準備をしていた竜騎士達は、敵騎の──ルテニア公国空軍が保有する、フリホロヴィチ VG-6戦闘機からドカドカと放たれる20mmの機関砲弾で乗騎諸共撃ち抜かれ、原型を留めず挽肉のようになるものすら出る。

 

 そのような状況の中、何とか20mm弾のシャワーを逃げ切って再集結に成功したアルデバラン達21騎の竜騎士は攻撃目標である敵陣地が近づくにつれ、敵騎が追撃をかけてこないのに気づき、本来の任務である対地攻撃を行おうとした。

 乗騎の首を地上に向けさせ、導力火炎弾を放とうとした時。突如として目の前に現れた黒煙に乗騎と共に自身の体を包まれた所でアルデバランの記憶は途切れ、彼の視界は真っ暗闇に落ちる。

 そして、1人の竜騎士が地面に落ち──幸運なのか不運なのかはわからないが、彼の乗騎は最期に少しでも主人を低い所で落とそうとしていたのもあって──低空で勢いよく投げ出された彼の体は一度地面でバウンドした後に鉄条網に絡め取られ、その鉄条網と着込んでいた鎧が衝撃を吸収したことで、彼──アルデバラン──は脳震盪と打撲以外に大した負傷もなく、鉄条網を支えている杭にもたれ掛かって気絶した。

 

 

 

 さて、アルデバランの目前に現れた黒煙の出どころだが、塹壕陣地より若干後方に射撃陣地を構えるクワ・トイネ公国軍の対空砲兵が動かすポンポン砲の、ホッチキス機関砲の放つ37mm対空砲弾である。

 ポンポン砲の、その名の由来にもなったポンポン、とどこか気の抜けた発砲音を連続的に響かせ、ホッチキス機関砲の、ポンポン砲より遅い発射速度の発砲音が響き。曳光弾で弾道を描く砲弾は、弾頭に内蔵した時限信管が作動し、弾頭の炸薬に点火することで炸裂して黒煙や破片をばら撒く。

 また、クワ・トイネ公国軍の一部が上空を睨ませていたマキシム機関銃もタカタカタク!と銃声を掻き鳴らし、動作機構と直結しているクランクがひっきりなしに動くのも無視して、ただひたすらに7.92mm弾を上空のロウリア竜騎士目掛けて叩きつける。

 

 

 

 このような共和国式の出迎えに、ロウリア王国の竜騎士達は感激し過ぎて相棒の背から飛び降り、地面に降り立ったのだ。尚彼らが降り立った際の形状は人型でない場合もあるものとする。

 

 

 

 竜騎士達が撃墜される中、大地を踏み締めて進軍するロウリア兵は動揺しながらも、後方にいる恐ろしき冷酷な騎士アデムの脅しや、彼の率いる督戦隊の存在もあって、ただひたすらに塹壕陣地へ──挽肉製造機へと身を投げ入れる。

 しかしたとえどのような脅しがあったとしても、他国の土地に許可もなく足を踏み入れるだけでなく、害意を持って武器を揃え、隊列を組んで陣地正面に現れた時点で、彼らロウリア王国東方征伐軍先遣隊の運命はとっくの昔に決まっているもので。

 

「お母ちゃん!オイラの腕が!!腕がどっかにいっちまったよう!!」

「クソッタレ!なぜだ!?なぜクワ・トイネの亜人どもがこんな兵器を持ってるんだ!?アデム副将はワシらを騙したのか────!!」

 

 塹壕陣地の遥か後方から放たれ、至近距離に着弾して炸裂した155mm榴弾に、爆風と破片で右腕がズタズタに引き裂かれた挙句に吹き飛ばされたロウリア兵が遠い故郷に居る、自身の老いた母に腕がなくなったと泣き叫び。

 1人の、とある歴戦の重装歩兵が悪態を吐いてアデムが騙したのかと疑ったところで、クワ・トイネ兵の構えるwz. 98小銃から放たれた7.92mmの小銃弾が彼の頭蓋を兜ごと貫き、脳漿を地面にぶちまける。

 

「くたばれ!ナチ・ロウリアの腐れ外道が!」

「異種族差別はんたーい!!差別主義者には死を!!」

 

 そう王冠領軍兵士が叫びながら6.35mmの小銃弾を、wz. 48/50自動小銃やwz. 48/52軽機関銃の特徴的な甲高い銃声と共にばら撒いてロウリア兵を撃ち殺し。

 

「ああくそ!地獄に堕ちろ、ロウリアのクズが!」

「なんてこった!こんなことになるんならさっさと任期を終わらせておくべきだった!あっしにはもう直ぐ三人目の子供が生まれるってのに!!早く帰らせてくれェ!!」

 

 マルンディア自由国の新品少尉がwz. 39短機関銃の引き金を引いて排莢口から塹壕へ長さ25mmの薬莢をばら撒き、迫り来るロウリア兵の体や鎧、盾に9mmの風穴を開け。その側で黒人兵卒が泣き言を喚きながら半自動小銃の弾倉に5発クリップで束ねられた7.92x57mm弾を押し込む作業を2回行い、薬室を閉鎖して装填作業を終え、引き金を引く。

 

 他にも掩体壕に押し込まれた青軍の保有する戦車がその主砲から榴弾を放ち、同軸機関銃で銃弾をばら撒き。また、対空自走砲は砲塔に収めた対空機関砲を存分に振り回してロウリア兵の挽肉を量産する。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月12日

 ロデニウス大陸 クワ・トイネ公国 クワ・トイネ公国=ロウリア王国国境線 クワ・トイネ公国側

 

 名誉も冒険も、一切が消え失せた最前線からいくらか離れた地点に設けた前線司令部。

 その天幕内で、アデムは右肩に被弾しながらも、何とか息絶え絶えに飛び込んできた伝令の騎士が告げる報告に対し、ぞんざいに増援を送り込めとだけ返す。

 

「ア、アデム副将殿………!現在先遣隊はギムへ侵攻中です。ですが、敵の防御が固く、敵の放つ光弾によって、我々は劣勢に置かれています………」

「そうですか、でしたら増援を送り込みます。そのことを伝えるように」

「はっ………!」

 

 このような結果になるとは、誰も予想していなかったのだ。それこそ、ロウリアにとっての重要な情報源であるロウリア王国の密偵が何人かクワ・トイネやクイラで消息不明になったのは知っていたが、それでも生き残った密偵からあらゆる形で情報は入ってきていた。

 それらの情報には、「増援に来た共和国遠征軍とやらは我々と大して変わらない装備をしている」と言ったようなものしかなかったのに。

 しかし、そこでアデムはふと一つの考えが頭に浮かぶ。

 

「………今後、我が国の密偵を名乗る者は全て拘束し、何を喚こうとも無視しなさい。また、同じように我が国の密偵を名乗る者が渡してきた情報は全て無視するように。

 それから拘束した密偵は拷問をして情報を吐かせた後、罪状を刻んだ木札を吊り下げて縛り首にするように。今後、私たちに接触してくる全ての我が国の密偵は裏切り者と同義です、信用してはなりませんよっ!!パンドール将軍に………いや、大王様にも、軍の全員にこのことを知らせなさいっ!!!!行け、今すぐに!!急げ!!早く!!」

「はっ!!すぐに本隊にその旨通告してきます!!」

 

 アデムは、その考えが纏まると即座に天幕内の全員にそれを叫び、伝令にもそのアデムの考えを上官のパンドール将軍どころか主君のハーク・ロウリア34世にまで伝えるように、ヒステリックに命令する。

 彼はロウリア王国の密偵が、最早ロウリア王国の役に立たないどころか、敵になったと判断したのだ。

 

 後方の本隊に、仲の良い戦友が何人も居る、1人の若き兵士は、急いでアデムの推理を本隊に、戦友に伝えるべく走る、走る、走る。

 

 

 

 そうやって走った末に、彼は本陣に、本隊に、戦友に、パンドール将軍にアデムの推理を、先遣隊司令部が知っている限りの前線の状況を伝える。

 伝令に飛び込んできた若き兵士の報告を聞いたパンドール将軍は、作戦を大幅に変更することを、幕僚に、“東部諸侯団“の貴族達に告げる。

 

「………なるほど、では当初の作戦計画を放棄し、本隊から幾らかの戦力を抽出してギムを包囲する。異論はあるかね?」

「………確かに、敵の攻撃らしき爆音と少しの地響きはここからでも聞こえてきますな。

 だとしたら、ギムは包囲だけして兵糧攻めを行い、エジェイや他の町から落とすことにしましょう」

「ふむ………“ジューンフィルア“伯爵の案を採用する。大王様は早期のクワ・トイネ制圧を望んでおるのだから、早期制圧を優先せねばなるまい。それに、こんなところで躓いているようなのは無能の証でしかない」

 

 そのパンドール将軍の決定に、東部諸侯団を取りまとめるジューンフィルア伯爵が提案を出し、パンドール将軍はそれに賛同する。他の貴族や幕僚も、当初の作戦が三民族の共和国なる存在で大幅に変えねばならないことを理解した上で、「大王様が望んでいるのはクワ・トイネの早期制圧であって、ギムで足踏みすることではない」と考え、パンドール将軍と同じように、ジューンフィルア伯爵の案に賛同する。

 

 

 

 たとえギムを迂回したところで、彼らがギムにあるような挽肉製造機から逃れられるわけもないのに………

 

 

 

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