三民族の共和国+α召喚   作:騎兵主義者

13 / 20
第13話:結局、ロウリア王国軍の行き先は挽肉製造機しかない

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月16日

 ロデニウス大陸 クワ・トイネ公国 ギム北東 とある森林

 

 ギムの早期制圧を諦めたロウリア王国の東方征伐軍本隊は、部隊を複数に分け、街道の要衝でもある城塞都市“エジェイ“及び穀倉地帯の制圧に向けて進軍していた。

 しかし、その内、ギム北東の森林を通過することになったとある部隊は、その森林にてその多くが消し飛んだのである………………

 

 

 

 件の森林にて何があったかだが………端的に言えば、銃兵(歩兵)の小銃や機関銃と、槍騎兵旅団が随伴させている装甲車両備え付けの機関砲や火砲による猛烈な射撃で足止めを受けたところに、クワ・トイネ騎兵の徹底した遠距離からの一方的な射撃や、レヒスカ槍騎兵によって行われる夜間襲撃のような、執拗な追撃もあってぐちゃぐちゃに、スクランブルエッグを作る時のようにロウリア王国軍は掻き乱される。

 このような攻撃を複数回に渡って受けた末に、降伏することを提案した者は処刑され、また逃亡したものは森に潜む獣に食い殺され、そして多くは銃火の前に赤い塵となり、あるいはレヒスカ槍騎兵の携える槍やサーベルの錆となって消えたのだ。

 

 

 

 この森林を進む、ロウリア軍部隊。その動きは度重なるルテニア公国空軍機やクワ・トイネ公国の竜騎士に、レヒスカ王冠領陸軍の陸軍航空隊による航空偵察や、クワ・トイネ騎兵やレヒスカ槍騎兵による斥候で探知されており、ロウリア側はそれを阻止することは不可能であった。しかもクワ・トイネの竜騎士は偵察ついでに導力火炎弾を撃ち込んでくるし、偵察機は機銃掃射を加えてくるのだ。その為に、敵軍と遭遇する前からこの部隊は消耗していた。

 そして、そんな哀れな彼らを待ち受ける敵軍だが──城塞都市エジェイに籠るクワ・トイネ公国軍の“西部方面師団“を率いる“ノウ“将軍の命令によって銃兵に改変された元弓兵7000と騎兵3000からなる機動部隊を編成し、またレヒスカ王冠領軍の派遣した第1機動打撃軍から抽出された“第4槍騎兵旅団“が装甲車両や、長い伝統と輝かしい戦歴を引っ提げ、各々の──レヒスカ王国が世界に誇る、世界最高級の馬産技術で生み出した軍馬──愛馬に跨り、あらゆる形でクワ・トイネ公国軍の援護についている。

 

 

 

「なあ、知ってるか?昨日の攻撃で隣の中隊が一つ消し飛んだらしいぜ………次は俺たちかもしれんぞ………」

「マジかよ………俺たちなんでこんな戦争に送り込まれちまったんだろうな………」

「大王様や将軍達は何を考えてこんな戦争を始めちまったのやら………血を流すのも、戦うのも俺たちだってのに………」

 

 ロウリア軍の兵士達は上官に聞かれないよう、声を潜めて不平不満をこぼしたり、情報を交換する。もはや彼らに戦場で大きな手柄を挙げようと言う気持ちは消えつつあり、その代わりとして望郷や厭戦の空気が蔓延しつつあった。

 そこに、馬に跨った指揮官がやってきて、兵士達に前進命令を出す。

 

「お前ら!前進命令だ!休止は終わり、野営地を片付けて隊列を組め!!」

 

 急いで身支度を整え、荷物を背負って武器を担ぎ、重い足取りで暗い森林の中を進む。

 この森に足を踏み入れた時点で、もはや生きて故郷へ帰れぬとも知らずに………………

 

 

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年4月18日

 ロデニウス大陸 クワ・トイネ公国 ギム北東 とある森林

 

 野営地を出発してから2日が経過し、いまだに森の中に居た彼らは突如として一発の銃声を耳にし、1人の重装歩兵が倒れるのを目にする。

 

「………おい、今のはなんの音だ!?」

「くそっ、1人やられた!敵襲!てきしゅ──!!」

「あああああぁ………もう嫌だ!!こんなとこにいられるか!!俺は家に帰るぞ────!!!!」

「神様お願いします!!悪いことは絶対にしません!!他の人に優しくします!!良き人間として正しい行いだけします!!だからどうかこの哀れでちっぽけなあなたの(しもべ)をお助けください、お守りください、お導きください………………!!!!」

「こっちだ、こっちから敵が攻撃してきている────!!」

「うわぁ!?飛竜だ!!飛竜が来たぞ!!急いで逃げ────!!」

 

 兵士は槍を構え、剣を鞘から引き抜いて臨戦態勢に移るが、そんな彼らを出迎えたのはぴゅうと飛びかかる無数の銃弾に身を貫かれ、レヒスカ槍騎兵のお供としてやってきた装甲車が装備する機関砲や、同じくお供の戦車が装備する戦車砲の榴弾に吹き飛ばされ、挙げ句の果てにはクワ・トイネの竜騎士が操る飛竜の導力火炎弾に焼かれ。

 周囲でバタバタと倒れる戦友を見て怖気付いたある兵士はその場にうずくまり、ひたすらに祈りを捧げる。

 

「な、何が起こったんだ………?」

「ううう………誰か………誰か助けてくれ………」

「こ、降伏する!!武器は持ってない!!助けてくれ!!もう戦いなんてクソ喰らえ!!」

「もう戦争なんて嫌だ!!降伏します!!殺さないでください!!お願いします!!家に娘と妻を置いてきたんだ!!2人を置いて死にたくない!!」

 

 とうとう、なんとか攻撃を生き残った幸運な兵士と負傷兵、早々に地面に倒れ伏して攻撃が終わるまで待ち、攻撃が止んだ頃に武器を捨てて両手を大きくわかりやすく振って敵意がないことを、武器を持っていないことを示して降伏した者以外、生き残ったものは存在しなかった。

 

 

 

 

 

 戦闘が終わり、血の匂いを嗅ぎ取った肉食獣を小銃で撃って追い払い、国や立場の違いなく負傷者以外の全員で戦死者を簡易的な墓穴に埋め、墓標を立てた後。戦闘とその後始末を終えた兵士達は少し和やかな空気感の中、フィールドキッチンで調理された温かく美味しい食事を楽しむ。

 負傷兵には応急処置を施した上でウシュカ*1を浮かべた具と栄養が豊富なクルプニック(チキンスープ)を与え。

 生き残った兵士や投降者にはそのスープに加え、豚肉の塩漬けを混ぜたライ麦パンにバターと山羊乳のチーズ。それからここ数日目にすることも口にすることもなかった、漬物じゃない新鮮な洗浄済みの生野菜をたっぷり使ったサラダに、牛肉が串に刺さったシャシウィク(串焼き)を受け取り、捕虜になったロウリア兵達は喜んでそれらに齧り付く。そしてロウリア兵の一部は捕虜の、それも一兵卒にまでこのような食事を与えるような王冠領軍兵士の待遇に、そして料理の味と内容に、感激のあまり涙を流すものすらいた。

 

 

 

 この戦いを生き残り、捕虜となったとあるロウリア兵の回顧録には、この時与えられた食事の感想が鮮明かつ詳細に記載されていた。

 ──まず最初に、私は4切れ与えられた豚肉の塩漬けが混ぜられて、茶色いライ麦のパンの内、1切れを手に取り、そのまま齧り付いた。まず最初は──当然ながらライ麦パンなので──酸味としっかりとした歯応えがして、次に豚肉の塩漬けの、しょっぱさと少し口の中で溶けた脂身、そして豚肉の歯応えとしっかりとした味を感じた。

次にスープだが、この時与えられたクルプニックと言うスープは鶏肉の塊がゴロゴロ入っている上、にんじんや玉ねぎにじゃがいもなんかの野菜もたっぷり入っているし、味も少し淡白ではあったがその分飲みやすく、鶏肉と野菜の風味をしっかり感じられる。さらにはこのウシュカとかいうのは歯でその白い皮を引き裂いてやれば、中にはしっかりとした歯応えのあるキノコに挽肉の肉汁と味を強く感じられるのもまた素晴らしいものであった………

 だが我々捕虜に与えられた食事はこれだけでなく、他にも色々と与えられたのだ。

 例えばサラダなる、新鮮で彩り溢れる、漬物じゃない、久しぶりの生野菜も出てきたし、シャシウィクなる牛肉と野菜の串焼きも受け取った。

 私は、ふと思い立って1切れのライ麦パンにバターを塗ってチーズを乗せ、サラダと串に刺された牛肉をもう1切れのライ麦パンで挟み、その私が作ったもの──後に知ったが、それはサンドイッチと呼ぶ料理らしい──は、実に美味しいものであった。

 ライ麦の酸味と歯応え、塩漬けにされた豚肉の溶けた脂身としょっぱさに豚肉の歯応えと味。バターの濃厚な牛乳の味と、山羊乳チーズのしょっぱくて酸っぱいながら柔らかくてさっぱりとした味。次にサラダの、オリーブ油と塩のシンプルな味付けのされたサラダ──トマトなる赤くて丸く酸っぱい野菜や、キュウリにレタスのシャキシャキとした食感と爽やかさを演出し。最後にシャシウィクの、噛むたびたっぷりの旨味が詰まった肉汁溢れる、ちょうど良い歯応えと味の牛肉。

 これらの組み合わせが、実に素晴らしいものなのは私も知っているし。あの戦いに従事し、生き残った全ての兵士もまた知っている。

 それでこのサンドイッチだが、私が始めたそれを、まず最初に周りの捕虜が真似をし始め、次に我々と同じメニューを受け取っていたレヒスカ王冠領の騎兵達が、最後にはクワ・トイネ兵もその真似をして、この“捕虜のサンドイッチ“は出来上がり、戦後のロウリアで、クワ・トイネ公国で、レヒスカ王国で、三民族の共和国に広まったのだ。

 このサンドイッチは、あの戦いで亡くなった戦友には悪いが、戦争が起きなかったら生まれなかったのかもしれないね。そうでもなければ、あの“捕虜のサンドイッチ“は作られることがなかっただろうから!

 

 ──とあるロウリア兵の回顧録より──

 

 

 

 と、このような捕虜になったロウリア兵と王冠領軍や旧保護国軍にクワ・トイネ公国軍の兵士達による交流もところどころでありつつ、全体的にロウリア王国軍は前進した全ての部隊が悉く大打撃を被り、多数の死体を積み上げ、数え切れない量の血を流したのである。

 それでも、ロウリア王国の特色とは人口の多さにあり、事実として各地におけるロウリア王国軍の消耗の様子が伝えられると、迅速に補充兵が送り込まれる。

 ただし、一部では不満の声が高まりつつあり、諸侯は召集を渋り気味ではあったが。

 結局のところ、この対応は挽肉製造機に押し込む肉の量を増やしただけであって、クワ・トイネというパン籠を手に入れ、引いてはロデニウス大陸を統一することは完全に不可能な夢物語と化していた。

 

 

 

 

 

 ──当時の時点でロウリア王国が倒れるには、より多くの血と、圧倒的な敗北が必要である可能性がある。そのように我々共和国遠征軍の将校達は判断していましたし、私はリェタヴァ大公国海軍の士官として、大公国の貴族としてそのために必要なことを実行しました。

 その為に、ロウリア王国が数多の山や森を禿げ上がらせて揃えた4400隻もの大艦隊、“東方征伐海軍“を、当時私が指揮していたリェタヴァ大公国海軍の本国艦隊、そして乗艦の“アウクシュタイティヤ“は叩きのめしたのです。

 

 ──ロデニウス戦争当時リェタヴァ大公国海軍本国艦隊司令官であった“カジミエラ・レインガルダイテ“退役大将の回顧録「カジミエラ提督従軍記:第5巻-異世界転移騒動からロデニウス戦争まで-」より──

 

 

 

*1
薄い小麦粉の生地でキノコや挽肉を包み、小動物の耳状に形を整えた茹でダンプリング

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。