三民族の共和国+α召喚 作:騎兵主義者
──ロウリア王国の侵攻によって、クワ・トイネ公国とクイラ王国は国民国家の形成と、三民族の共和国や、かつて共和国の保護国であった複数の国々から受けた多大な支援を元手にあらゆる面で飛躍的な発展を遂げ、ついには“新列強“の中位へ名を連ねることに成功しました。
しかし、その2カ国と対比となる存在として、かつてロウリア王国と称されていた西ロデニウス諸国が具体例に挙げられるでしょう。ロウリア王国はかつてロウリア大王の元に一応は統一された国家を築いていましたが、地域間での経済的格差や一部諸侯によるロウリア王国統一への強い反発などがあり、今や“南ロデニウス共和国“*1と、“ロウリア評議会王国“*2、“中央ロデニウス自由諸侯領連盟“*3の3カ国に分裂し、一応この3カ国は三民族の共和国による援助である程度の発展は遂げています。
ですが、現状として彼らの国力は総合的に見ても、三民族の共和国による対パーパルディア・リーム戦略である“タイバーン計画“*4の一環によって、第三文明圏とその周囲でパーパルディア皇国と“リーム王国“に対する三角形の包囲網と攻勢拠点を形成すべく、種々の莫大な援助が行われた“トーパ王国“や“マオ王国“、“フェン王国“、“マール王国“、“シオス王国“といった国々はおろか、“ネーツ公国“や“アワン王国“、“ジーミ王国“のような小国以下とすら言えるでしょう。
これらの理由から、我々クイラ王国王立軍全体の方針としては、今後の王立軍装備・機材調達計画において王立空軍や王立海軍の整備と拡充に重点を置き、王立陸軍に関して兵数は現状維持の状態で、装備の順次近代化を進めていく方針になりました──
──中央暦1649年度クイラ王宮評議会 王立軍予算委員会 クイラ王国軍務大臣の報告より──
中央暦1639年/救世主暦1955年5月13日
クワ・トイネ公国 城塞都市エジェイ 北ロデニウス戦域軍統合作戦司令部
城塞都市エジェイの責任者にしてクワ・トイネ公国西部方面師団の将軍でもあるノウは、副官をはじめとしたクワ・トイネ公国軍の幕僚及び、レヒスカ王冠領軍から派遣された軍事顧問や将校に、旧保護国の軍から派遣された将校達と顔を突き合わせ、ここエジェイの一角に設けられた“北ロデニウス戦域軍統合作戦司令部“にて、無線から報告されてくる戦況に合わせ、大きなテーブルの上に広げた地図、その上で部隊を表す駒を動かしながら次の一手を考える。
ノウ将軍や幕僚が頭を動かし、イチゴのジャムを入れた紅茶を潤滑油として体に注ぎながらクワ・トイネ公国軍の部隊を表す駒と“戦線“*5のプレートをエジェイ近郊とギムに置き、攻勢ルートを示す赤色の矢印を赤鉛筆で地図に書き込む。
「まず第一段階として、ここエジェイを起点に全戦線で攻勢作戦を開始し、ギム包囲部隊の殲滅と包囲解放を行う。
この作戦に投入される戦力だが、我がクワ・トイネ公国軍からは西部方面師団“エジェイ“の3万1000に加え、召集と訓練が終了した第1師団“リーン・ノウ“の2万6000と第2師団“クワ・トイネ“2万5000の合計8万2000の兵力を投入する。
これらクワ・トイネ公国軍の兵力は主にエジェイ近辺の制圧と、ギムの包囲解放部隊である“第2北ロデニウス戦線“の一部として投入され、“第2北ロデニウス戦線“には前述の第1師団“リーン・ノウ“と第2師団“クワ・トイネ“が組み込まれる」
攻勢計画が地図上で組み立てられ、駒とプレートがそれに合わせて動き、色鉛筆で情報や矢印が書き込まれる。
クワ・トイネ軍の将校達が駒を動かし、色鉛筆で色々と書き込んだ地図へ今度は王冠領軍の将校が彼らと同じことを、別のルート、別の色の色鉛筆で書き込み、別の場所に駒を置く。
「今次作戦にて、我々レヒスカ王冠領軍は第1次派遣部隊の第1機動打撃軍、2個戦術航空群に加え、増援として第2次派遣部隊の第1装甲機械化軍団と第1及び第2空挺突撃師団、それから第5砲兵師団と第13戦術輸送航空連隊、第61突撃輸送航空連隊を投入することが決定した。
我々王冠領軍はロデニウス大陸北部の沿岸区域を主管轄区域とする“第1北ロデニウス戦線“及び第2北ロデニウス戦線に組み込まれる。
詳細だが、第1機動打撃軍と第2空挺突撃師団はクワ・トイネ公国軍の第1、第2師団及び西部方面師団と共に第2北ロデニウス戦線を編成する。また、第1北ロデニウス戦線の編成は第1装甲機械化軍団と第1空挺突撃師団、そしてリェタヴァ大公国海軍の第1、第4大公国海軍銃兵師団となり、大公国海軍の海軍銃兵は沿岸地域から強襲上陸を行なって戦線拡大を担い、また空挺突撃師団は空挺降下によって敵後方地域に展開し、陽動と突破口拡大を担う。
なおギムの青軍とクワ・トイネ公国軍の西部方面騎士団に関しては、後方へ下げて休養と訓練に専念させ、練度の維持と再編成に充てることとする」
動かした駒を、書き込んだ矢印を指で指し示しながら、王冠領軍の将校は司令部の幕僚に部隊配置と作戦計画を読み上げる。ロウリア王国へ、膝を地に着かせ、クワ・トイネ公国やクイラ王国、そして三民族の共和国にとって危険な思想を、引いては元凶であるハーク・ロウリア34世を玉座から取り除くために。
「現在時点で判明しているロウリア王国軍の兵力ですが、これまでに8万7000人ほどが合計で戦死しており、我々が獲得した捕虜は合計で6万7852人に上ります。ただしこれほどの人命をすりつぶしてもなお、ロウリア王国は継戦の意思が固く、これをへし折るには徹底した敗北と消耗が必要でしょう」
「そのためにも、まずは第1段階としてギムとエジェイを基点とした攻勢作戦“ギム=エジェイ攻勢“を発動し、次に第2段階として全戦線での攻勢作戦“夜明け“が発動される。
これら2段階の攻勢を受けてもなお継戦の意思が見られる場合には第3段階の無制限攻勢作戦“洪水“が実行される」
だからこそ、クワ・トイネ公国と三民族の共和国はロウリア王国を徹底的に叩くことにしたのである。
その第1段階が、ギム=エジェイ間を基点としたクワ・トイネ公国領土奪還作戦の“ギム=エジェイ攻勢“である。
ただし、この攻勢作戦だけを行なってロデニウス戦争は終わりというわけでもなく。第2段階と、第2段階を経てもなお継戦の意思が見られる場合には第3段階も順次発動される予定となっている。
中央暦1639年/救世主暦1955年5月23日
クワ・トイネ公国 城塞都市エジェイ 西方53約km地点 ロウリア王国東部諸侯団先遣隊野営地
ロデニウス沖での大敗北が知らされることもなく、“ロウリア王国東部諸侯団“の軍勢4万3740はクワ・トイネ公国によってロウリア王国の侵略に備えて築き上げられた城塞都市エジェイを攻め落とすべく行軍していた。
そんな彼らは現在、エジェイより西方に約53kmほど離れた位置にぽつりと佇む無人の、獣に荒らされた形跡のある荒廃した村を野営地としていた。
その荒廃した村の中、比較的に立派な村長の邸宅の一室で東部諸侯団を率いる“ジューンフィルア伯爵“を筆頭としたロウリア王国の東部諸侯と魔導士達は若干の懸念点を抱えながら軍議を開いていた。
その懸念点だが………偵察として先行していたホーク騎士団、その中の第15騎馬隊をはじめとする幾らかの騎馬隊は消息が途絶え、さらには魔力反応の一切が感知されなかったのである。
そして、それら消息の途絶えた騎馬隊には一つの共通点が存在している。それは、すべてエジェイ近郊に展開していた点である。
「偵察に出た騎馬隊が消息不明だと………それも、合計で700騎か………ははっ、これで大銀貨が何枚消えたのやら?」
「魔力監視哨では魔力反応を感知しておりません。飛竜や高威力魔法の使用はないと思われます」
「では、亜人どもにやられたというのかね?」
一応軍議ではある。だが、彼らは先行した騎馬隊のことばかりを話題にしていた。
消息の掴めない、消えた騎馬隊。しかもその騎馬隊捜索に出した少数の飛竜や斥候も同様に消え去り、彼らの地図上には戦場の霧が立ち込めていた。
そんな空気を打ち消すかのように、ジューンフィルア伯爵の麾下にある1人の魔導士がとある魔導士間で話題になっている噂の内容を語る。
「まさかとは思うのですが、その………」
「ふむ、もったいつけるでない、魔導士“ワッシューナ“よ。忌憚無く貴公の見解を述べたまえ」
「近頃、魔導士の間でとある噂が流れているのです。
………どうやら、東方征伐海軍が船団を3000隻も失い、さらには増援の飛竜250騎を全て撃ち落とされ、さらには一切の魔力反応が感知されなかったとの噂が流れております………」
「待て、待ってくれんか………それはあり得ないだろう?海からでもクワ・トイネを征服できるほどの大軍勢が、だ。仮にもそれが負けるなど、ありえない、あり得ないのだ!それは夢物語か何かにしか思えんぞ!!」
「だからそれは噂であると彼が言っておろう、そう取り乱すでない」
その魔導士──“ワッシューナ“──の語る噂の内容に、彼らは圧倒され、ある1人の叫びを引き金に軍議が紛糾しかける。しかしそれを別の者が止め、軍議は落ち着きを取り戻す。
落ち着きを取り戻し、ある貴族が自身の推測を、根拠となり得る事項を交えて語る。
「………だが、書類の様子を見るに、おそらく本国の方で何かがあったのではないだろうか?
それこそ、飛竜50騎を急ぎ本国に帰したこと。それに加えて、我々諸侯団に対する戦果要求が過大になってきたこともだ。おそらくだが、最近の本国は何かしらの脅威に晒され始めたのかもしれないのだろう………だからこそ、本国を防衛する戦力の再編のためだとか………」
その語りが終わりこそしたが、結局軍議はエジェイ目指して命令通り進軍することに決まったものの、彼らはまだ見ぬ敵と、命令を出したアデムに恐れをなしていた。
「………たとえ噂が真実であったとしても、だ。我々に下された命令を覆すことはできぬのだ。そもそも、指揮官にはあのアデムがついている。奴に逆らおうものなら、一族郎党に何をされるのやら………」
ジューンフィルア伯爵は、自分のようなロウリア王国の東部諸侯とその領民から編成された東部諸侯団を率い、エジェイ目指して道を進む。
戦場の霧に包まれ、後ろにはアデムが家族を人質にとっている。そんな状況で、彼らは家族を危険に晒さないためにも、現実としては明るく、思考の上では霧に包まれた街道をただ前へ前へと進むことだけを選ぶ。
「………それに、だ。現状、再び偵察を出す時間と余裕もない。つまり──我々は進むしかないのだ、噂の何かが潜む道の中を………」
そうジューンフィルア伯爵が締めくくり、東部諸侯団はエジェイ目指しての行軍を始める。
彼らの進む街道には、彼らがどのような手段を取ろうとも叶うことのない軍勢が近づいているのに、だ。
中央暦1639年/救世主暦1955年5月25日
クワ・トイネ公国 ギム=エジェイ間街道 中間地点 レヒスカ王冠領陸軍の車列
ギムとエジェイを繋ぐ街道、その中間地点にて。
ロウリア王国軍の東部諸侯団と、レヒスカ王冠領陸軍の第1機動打撃軍に属する第1王立有翼騎兵師団は対峙していた。
騎兵が先導し、その次に戦車隊が続き。後詰めとして機械化歩兵が街道を通っていく中で、隊列を先導する彼ら騎兵達へ彼らのさらに先を進み、斥候として散開している
『こちら第52槍騎兵連隊、第104中隊!ロウリア王国軍らしき部隊の隊列を確認した!
座標は2PRF*6割り当て区画の
フサリアに随伴している装甲車や戦車の無線どころか、分隊に配備される小型の無線機から聞こえてくる内容を聞き、フサリアを率いる、見た目の割に歳を食っているエルフの指揮官が茶化す様に軽口を叩き、オーディエンスのフサリア達からは心底愉快そうな笑い声と冗談が返ってくる。
「………よーし、聞いたか諸君!我々はどうやら英雄になるチャンスを二度ももらえるそうだ!素晴らしい、我々は他の奴らに嫉妬されちまうぞ!」
「どうやら主は我らが勲章の山を積み上げて祭壇を作ってほしいみたいですな!」
「嗚呼、なんと素晴らしき戦場かな!名誉を、栄典を独り占めできるだなんて!」
フサリアの大半が
フサリアは後からやってきた戦車師団を引っ張り出し、ついでにと陸軍航空隊の空中援護も要請した上、自走砲の砲兵陣地を広げてからついでに紅茶を淹れ、携行している戦闘糧食からチョコレートやキャラメルにクッキーやビスケットを引っこ抜いては突撃前のお茶会と洒落込み。
優雅なお茶会を終わらせ、最後に打ち合わせを済ませてから戦車隊と仲良く突撃する手筈を整えて、有翼騎兵は前進する。
友邦クワ・トイネとクイラを助け、ロウリアの野蛮人へ共和国の掲げる自由と民主主義、そして人種・民族間の平等がいかに尊いものであるかを教育するために。