三民族の共和国+α召喚 作:騎兵主義者
本日、11月11日は第一次世界大戦の休戦記念日であり、ポーランド共和国の独立記念日でもあります。
今日はイギリスやカナダでは戦没者追悼記念日あるいはリメンバランス・デーとして、アメリカでは退役軍人の日として。フランスやベルギーでは休戦記念日として祝われています。
また、第一次世界大戦の休戦とポーランド共和国の独立回復は今年で106周年を迎えます。
第一次世界大戦にて、ただ自らの祖国のために戦って行った全ての兵士と、その最中で斃れていった犠牲者を追悼し、また彼らの類いまれな勇気と奉仕を讃えて。
ポーランド共和国の独立と自由、民主主義、言語。それら全てを取り戻すために戦った勇士達を讃えて。
かの大戦で戦った兵士達を讃え、犠牲者を偲び。彼らの功績、彼らの足跡を記憶し続ける為、ここに記す。
中央暦1639年/救世主暦1955年5月27日
クワ・トイネ公国 ダイタル要塞
朝早くに起床ラッパの音でベッドから飛び起き、茶褐色をベースに濃淡が入り混じった緑の迷彩が施された軍服上下に身を包み。空挺兵向けの丈夫なブーツを履き、最後に赤色のベレー帽を被った彼らは、駐屯地の食堂で旬真っ只中の白アスパラガス含め新鮮な食材をふんだんに使った朝食を手に入れるべく、プレートを持って大人しく列に並ぶ。
───シンプルな蕎麦の実を使った
これらを受け取り、素早く、しかし丁寧に味わって朝食を済ませ。
食後の紅茶を一杯と、茶請けの板チョコ一枚にキャラメル数個を持ち、プレハブ建築のブリーフィングルームで椅子に座った空挺兵達。
彼らが揃ったのを確認した“パヴェウ・ケセルマン“は肩に縫い付けられた、彼が大佐である事を示す肩章を光らせ、白いスクリーンに映写機で映し出されたギム周辺の地図や航空写真を指で指し示しながら、簡潔にまとめた作戦要綱を伝えていく。
「空挺兵諸君、今回我々が強襲降下をかけるのはギムの街を包囲するロウリア王国軍。その後方だ。
我々第2空挺突撃師団の任務はギムの解囲に於いて、敵戦線後方での陽動と撹乱が主目的となる。今次作戦での主力はあくまでも地上を進撃する第2北ロデニウス戦線の第1機動打撃軍とクワ・トイネ公国軍だ。
今回、我々が為すべき任務は彼ら第2北ロデニウス戦線主力がギムの街に到着し、ギムに展開する友軍と合流し、反撃を始めるまでの間、時間を稼ぐことだ。
作戦要綱については以上だ。次は我々を援護する部隊についてになる」
ここで一旦言葉を区切り、紅茶で喉を潤してから再び連絡事項を伝えていく。
「我々の援護に就くのは、クワ・トイネ公国軍の竜騎士達とルテニア空軍の戦闘機隊、それから王冠領陸軍航空隊の攻撃機になる。
それと、第2北ロデニウス戦線やギムに籠る友軍からの砲撃支援も見込めるだろう。そして、当然ながらグライダーによって我々の戦車が随伴する手筈となっている。
それと………最後に一言だけ言っておくと、これは“本番“に備えての作戦だ!だが、これが“本番“ではないからといって、気を抜いたりはするな!
それでは………誰か、質問がある者はいるか?」
パヴェウがあらかた伝えることを伝え、質問がないか聞いてブリーフィングルームに並べられた椅子に座る空挺兵達を見遣る。
「ふむ、質問は無し………と。
よろしい、総員解散!15分後までに装備を装着して、飛行場へ集合しろ!」
質問が上がらず、茶請けの板チョコをぱきりと歯で割る音や、キャラメルを口の中でカラコロと転がす音以外は言葉もなく静かな様子を見て、ブリーフィングを終了となり、空挺兵達は解散した。
ブリーフィングを終えて解散した空挺兵達は、席から立ち上がると急いで装備を受け取りに武器庫や弾薬庫等へ走って向かう。
そこで弾薬ポーチやら雑嚢やらホルスターやらといった装具を受け取り、身に着ける。ついでに被っていた赤いベレー帽を空挺部隊向けの耳当てが付いたヘルメットに変え、ポケットに押し込む。
次に、自動拳銃のような動作方式と見た目をしたwz. 51短機関銃を太腿のホルスターに押し込み。キャンバス生地のケースに収納された、折り畳み式銃床と固定倍率の光学照準器が取り付けられたwz. 48/50自動小銃をスリングで肩から提げる。
装備を整えた後は、前後に予備とメインのパラシュートがついたハーネスを胴体に取り付け。最後に輸送機が並ぶ滑走路へと向かい、駐機中の輸送機やグライダーに乗り込む。
そうして出撃準備を済ませた空挺兵たちは、輸送機の座席に座り、降下地点に到達する、その時が来るまでの間中、エンジンの駆動音が鳴り響き、ひたすらにプロペラが風を切って回る中をただ静かに運ばれていく。
中央暦1639年/救世主暦1955年5月27日
クワ・トイネ公国 ギム上空→ギム包囲線外周
道中、彼らの護衛として派遣された空軍の戦闘機や陸軍航空隊の攻撃機、クワ・トイネの竜騎兵と合流し、編隊を組む。そのまま空を征く空挺兵達は戦友を引き連れ、地上を進む友軍からの誘導を受けながら目的地であるギムの街に近付いて行く。
飛行時間と飛行ルートを地図に照らし合わせて空挺兵達は目的地が近づいたことを察し、その答え合わせかのようにジャンプマスター*1を務める、緑色の目と燃えるような赤い髪が特徴的な猫人族の中尉“ローワン・ヴォルヌィ“が透き通るような、それでいて凛とした声で命令を叫ぶ。
「赤ベレー共、起立!降下区域にあと5分で着くぞ!フックを掛けて装具点検を始めろ!!」
空挺兵はその命令に無言で従い、静かに席から立ち、輸送機の天井に張り渡されたアンカーケーブル*2に自動索を頑丈で簡単に壊れそうにはないフックで取り付け、前に立つ戦友のメインパラシュートを点検する。
「装具点検終了!異常無し!!」
「よろしい!諸君、もうすぐで戦争の時間だぞ!喜びたまえ!!」
装具点検を終えた事を空挺兵が叫び、ローワンが降下用のドアを開く。開いたドアからは冷たく、少しばかり戦場の匂いがする空気が流れ込み、クワ・トイネとロウリアの竜騎士が空戦を繰り広げ、ルテニア公国空軍の戦闘機でロウリアの飛竜が狩られ、攻撃機によって空挺部隊の脅威になりそうな兵器や陣地が破壊される様が見えてくる。
そんな惨状の中、悠々と輸送機はギムを通過し、包囲網の後方に到達する。
赤いランプが点灯し、ブザーがビー!ビー!ビー!とがなりたてることで空挺兵達は気を引き締め、降下と降下後の戦闘に備える。
地上では後方へ飛びゆく輸送機を見たロウリア軍が空挺兵を迎撃する為、一部の部隊を移動させる様子が見える中、ランプは緑色に光る。
「総員、降下!!さあ行くぞ赤ベレー共、祖国を守る“パラソル“の名を奴らに叩き込んでやろうじゃないか!!」
「共和国万歳!!」
緑色の仄かな光が機内を照らす中、ジャンプマスターのローワンは空挺兵へ降下するよう捲し立て、開いたドアの縁を掴む空挺兵の背中を叩いて地面へと降下させる。
背中を叩かれた若き空挺兵は、自身の親愛なる祖国である共和国を讃え、勢い良く降下地点へ飛び込んで行く。
「さあ降下しろ!!行け!!行け!!」
先に飛び込んだ空挺兵の後に続き、機内にいた他の空挺兵達も続々と飛び込み、最後の1人を機内から放り出したところで、最後に残ったローワンもまた機内から飛び出して行く。
急速に近づいてくる地面、顔に吹き付けてくる風、先に飛び降りた戦友達の開いたパラシュートによる、満開の白い花々。
そして、自動索が機能した事によって無事に開いたパラシュートと、それによって生まれた空気抵抗に引っ張られる感覚。
どこか心地良さを感じる浮遊感に身を委ね、地面に足が付くまでの間、ある程度操縦をしつつもパラシュートに吊るされる。
パラシュートに吊るされ、地面につま先が届いた時。
ローワンは教範通り、スムーズに五点接地で衝撃を全身に分散させながら着地し、すぐさま太腿のホルスターから短機関銃を抜き、安全装置を解除してスライドを引き、いつでも発砲できるようにしてホルスターに戻した。
少しばかり周囲を見回し、脅威がない事を確認できれば、いそいそとナイロン生地のパラシュートを畳んで、バッグに押し込む。
ある程度降下直後にすべき作業を済ませ、最後にキャンバス生地のバッグから銃床が折り畳まれた自動小銃を取り出そうとしたところで、ガサガサと何者かが草を掻き分け、ぱきりと地面に落ちた枝を踏みつけた音を聞きつける。
物音の方向へ、急いで事前に取り決められた合言葉を投げかけると同時に、ホルスターから短機関銃を引き抜き、銃口を向ける。
「ブラウニング!」
ローワンの誰何に、空挺兵なら知っている答えは返ってくることがなく、物音は動き続ける。しかし音源が空挺兵である可能性も拭いきれず、もう一度だけ音源に向けて合言葉を投げかける。
「ブラウニング!!」
「────大王様万歳────!!」
投げかけた問いに対して望んでいた答えが返ってくることはなく、音源からは気迫を込めた蛮声と共にロウリア兵が剣を上段に構えて突進してくる。
が、ローワンはひらりと突進をいなしつつロウリア兵を背中から突き飛ばして転ばせた。
「ぬおおっ!?」
ロウリア兵は咄嗟に突き飛ばされたのに受け身を取れず地面に膝をついてしまい、多大な隙が生まれる。その多大な隙に付け込んだローワンはロウリア兵の無防備な背中に向け、引き金を引いて短機関銃を発砲する。
パン、パパパン!と軽い銃声が響き渡ると共に閃光と鉛玉が放たれ、銃口からは硝煙が細く上がる。
どさり、がちゃりとロウリア兵は複数の弾痕から赤い鮮血を流しながら地に伏せ、最早彼が動くことは無くなった。
倒れたロウリア兵の体を転がして仰向けにさせ、検死をしてから取り損ねた自動小銃を回収し、スリングで肩に掛け、弾倉を叩き込む。
いざ他の空挺兵と合流しようと歩き始めたところで、再び謎の音源に出くわす。
先ほどと同じように、音源へ銃口を向けつつ合言葉の片方を投げかけて、音の正体を暴きにかかる。
「ブラウニング!」
「愚か者!」
勢い良く投げかけた合言葉、その答えが返ってくる。つまるところ、二つ目の音源は確実に友軍である。
銃口を下ろし、ゆっくりと近付く。向こうも同じ事を考えていたようで、すぐに同じ格好をした、年若い人狼族の空挺兵と合流する。
「ご機嫌よう!」
「どうも、ヴォルヌィ中尉。現在
「ああ、頼むよ。我々の身の振り方についても話し合わねばならんしな。だが火器小隊と合流できたのは僥倖だ、あいつらの持つ20mmや46mm、81mmの火力は実に素晴らしいものだ、お前もわかるよな?」
「まあ、はい。頼もしいですよね」
作戦前に複数指定された合流地点の一つに、自身が小隊長を務める小隊と、別の小隊。そして機関砲や迫撃砲、自動擲弾筒などを装備した火器小隊がいる事を聞きつけ、表情を緩ませながら空挺兵と共に合流地点へと向かう。移動の最中、ローワンは火力の素晴らしさを若き空挺兵に布教しつつ、周囲を警戒しながらすたすたと歩く。