三民族の共和国+α召喚   作:騎兵主義者

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第2話:共和国と異世界国家の接触騒動

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年1月24日

 この日、“クワ・トイネ公国“は収穫日和を迎え、今日もまた平和な一日を過ごす………と思われていた。

 その“鉄竜“が“クワ・トイネ公国“の領空を侵犯するまでは。

 

 

 

 

 マイハーク近郊 クワ・トイネ公国軍 第6飛竜隊 竜騎士マールパティマ

 

 クワ・トイネ公国の沿岸部に位置し、貿易が盛んな港湾都市の“マイハーク“。その上空に、赤と白の市松模様と金の王冠を被った白い鷲の紋章を両翼に塗装した一機の四発重爆──“gruby Janek(デブのヤネク)“──が悠々と高度5500mを飛んで接近しようとしていた。*1

 そんなマイハークへと飛び行く“gruby Janek(デブのヤネク)“号を発見して追跡を図ったものの、速度と高度の壁で振り切られた第6飛竜隊に所属している竜騎士の“マールパティマ“は魔信で簡潔に報告を飛ばす。

 

「司令部!我飛行騎視認せり!!繰り返す、我飛行騎視認せり!!追跡は不能、進行方向はマイハーク!!進行方向はマイハーク!!」

 

 マールパティマから矢継ぎ早に叫ばれる報告を受け取ったクワ・トイネ公国軍の飛竜管制塔、そこの司令官は魔信越しに伝わる彼の声色から急を要する事態であると判断し、急ぎ他の第6飛竜隊を不明騎迎撃の為に出撃させる。

 

「第6飛竜隊に次ぐ、マイハークへ不明騎が侵入した。これを迎撃するため、第6飛竜隊には即座の全力出撃を命ずる!!目標を発見次第、撃墜せよ!!」

 

 

 

 

 

 マイハーク上空 レヒスカ王冠領空軍 第28戦略航空艦隊 PZL.67B “gruby Janek(デブのヤネク)“号

 

 さて、自分たちが撃墜対象とされていることに気付かず、マールパティマを振り切って悠々とマイハーク上空5500mを飛行する“gruby Janek(デブのヤネク)“号とその乗員達はさらに詳細な情報を求めてさらに高度を下げ始める。マールパティマや彼の同僚達が手綱を握るワイバーン(飛竜)達も十分辿り着ける3000mまで。

 そうして高度を下げた“gruby Janek(デブのヤネク)“号はミコラがよっこらせと引っ張り出した大柄で鮮明に撮影できるルテニア公国製のカメラでマイハークの様子を撮影するべく左回りで旋回飛行を始める。

 しかしその“gruby Janek(デブのヤネク)“号が行った降下と旋回飛行はやっとこさ追いついたマールパティマや、全力出撃で急行した第6飛竜隊の竜騎士にとっては絶好のチャンスであり、合計で13騎の飛竜は竜騎士の指示で導力火炎弾を撃ち出すべく口を開き、火球を生成する。

 

 ところ変わって“gruby Janek(デブのヤネク)“号。

 機内ではやっとこさ発見した陸地に文明が栄えているのを確認すると、乗員達は歓声を上げる………が、自分達の方へ本国で見るのより小さな竜が迫り、火球を生成しているのに気付く。

 しかし兵器の使用に関しては防衛目的以外禁止されているため、現状“gruby Janek(デブのヤネク)“が選択できる手段は回避して撤退以外に存在しない………操縦桿を握っている人物がそこら辺に転がっているような普通のパイロットならば。

 そもそも“gruby Janek(デブのヤネク)“の機長であるナシムは動きの鈍い爆撃機を巧みに操って幾度も激しく機体を揺らす対空砲火の嵐や、飢えた狼のように、執念深く追いかけては機銃や機関砲の弾を叩きつけんとあらゆる高度、あらゆる方位からお互いの表情がはっきりと分かる程接近してくるような敵の戦闘機乗りの群れを潜り抜けてきたのだ。

 

 そんなナシムがただ回避して撤退するわけもなく、むしろ機首を第6飛竜隊の編隊に向けるとスロットルレバーを倒し、エンジン出力を一気に上げるついでにロケットブースターも点火し、右のペダルを深く踏み込んで右にロールすることで機体を傾け、さらにはラダー(方向舵)を操作してヨーイング(水平に回転すること)する。

 

 このようなナシムの行動は導力火炎弾を放とうとしていた第6飛竜隊の竜騎士達にとって、恐ろしさと迫り来る死の実感を強く感じさせるものであった。

 何せこれまで旋回していた鉄竜が突然自分達目掛けて一気に突っ込んでくるかと思えば、いきなり右に体を傾けて横滑りをしながら大きな唸り声を上げて編隊をすり抜け、更には翼と尻尾から炎を吹いて自分達よりも高い所へ素早く上昇していったのだから。

 

 

 

 

 

 マイハーク マイハーク防衛騎士団 団長 イーネ

 

「………あの竜を操る竜騎士はなかなかの腕前だな。だが、戦う気まではなかったのか?それとも自分達の技量を見せつけることを優先した馬鹿なのか?」

 

 マイハーク防衛騎士団の団長を務める“イーネ“は弓に矢を当てがい、遙かな高みを堂々と飛行する竜こと“gruby Janek(デブのヤネク)“号に狙いを定めて弦を引く。そして、そこで矢を射ずに弦を戻し、先の行動から少しばかり操縦者を推測しながら呟く。

 なお彼女の推測は一部当たっていて、一部外れている。そもそもパイロットのナシムも他の乗員も揃ってスリルを好む性格であり、それ故にあの馬鹿げた飛行をして見せたのだ。つまりナシムは馬鹿ではあるが、戦意がないかと言われれば、それは大間違いだ。そうでもなければあの危険な、一歩間違えれば乗員もろとも“gruby Janek(デブのヤネク)“号が飛竜を巻き添えに墜落しかねない曲芸まがいの飛行はしていない。

 

「いやっほーう!!爆撃機乗り舐めんなドラゴン!!」

「俺らの方から近づいてやったらあいつらビビってやんの!!」

 

 なお危険飛行をかました張本人であるナシムは右拳を振り上げ、副操縦手と軽く拳をぶつけ合いながらマイハークにもう用事はないと言わんばかりに高度を上げてエンジン出力を緩め、本国へと進路を変える。

 少なくとも比較的近場*2の陸地に文明が存在する。これを確認しただけでも、ナシム達“gruby Janek(デブのヤネク)“号の乗員が成し遂げたことは共和国にとって大戦果と同等なのだ。ならば後は外交官に仕事を任せて、我々は祝杯をあげるだけだと笑いながら本国へ、親愛なる祖国の大地へと凱旋するのだ。

 

 

 

*1
陸地に接近してから高度を落としたので、執筆上の不備ではない

*2
飛行距離換算で約2700kmかけて辿り着いた陸地を近場と称するかだが、そもそもgruby Janek(デブのヤネク)“号は直線に飛行しておらず、当初は南方へ飛行していた。直進した場合は約1000km程である

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