三民族の共和国+α召喚   作:騎兵主義者

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皆様、明けましておめでとうございます。
遅筆で進行も碌に進まない拙作ですが、どうか今年もお付き合いいただけたら幸いです。
皆様、今年もよろしくお願い致します。そして皆様が幸運に恵まれてありますように。


第20話:Výsadkári!

 

 

 

 中央暦1639年/救世主暦1955年5月27日

 クワ・トイネ公国 ギム包囲線外周

 

「中尉、ニコデム小隊は全人員を掌握しています!装備につきましても、コンテナから多少余剰気味ですが完全に回収できています。また、火器小隊も火器・弾薬共に無事回収しており、欠員もありません」

「そうか、よろしい。私は無線を聞いているから、その間の指揮はお前に一任する」

「了解」

 

 ローワン達は道中で敵に遭遇することもなく、無事に指揮下の小隊とすんなりと合流し。

 案内役の空挺兵とは別の、顔に戦傷がある先任下士官──“ヴェリミール・マズルスキ“上級軍曹──から報告を受けつつ、無線機のイヤホンを片耳に押し当てながら電源を入れ、周波数を調整しつつヴェリミールに命令を出す。

 

『こちらは第2空挺突撃師団司令部。展開中の全共和国軍空挺兵に次ぐ、後続の第2北ロデニウス戦線はおよそ3時間後に合流する。それまでの間、ギムの友軍と共同でロウリア軍に打撃を与えよ。

 我々の目的は時間稼ぎだ、敵の完全な撃破ではない。我々の勝利条件に関しても同様に、第2北ロデニウス戦線がギムに到達することであって、我々による敵の撃破ではない。

 このことを各自理解しておくように。以降の詳細は諸君に一任する。司令部、通信終了』

 

 周波数を司令部と繋がるものに合わせてみれば、一方的に司令部が捲し立て、空挺兵からの言葉を聞くこともなく、直ぐに通告が終わる。

 ローワンはこれ以上無線を聞いていたところで他の情報は何もないだろうと踏んで、回線を閉じてイヤホンを戻し、無線機の電源を切ってヴェリミールを呼び寄せる。

 

「上級軍曹!戻ってこい!」

「はいなんでしょう?」

「やるべきことはあらかた無線でわかった。小隊の指揮は私がやる、お前は持ち場に戻れ」

「上は何と?」

「『約3時間後に増援が来る。それまでギムの友軍と時間を稼げ、後は自分で考えろ』とだけ。いつも通りだろ?」

「いつも通りですな」

「そう、いつも通りさ。そんで我々はそれを考えてうまくやり遂げる、そうだろ?」

 

 走り寄ってきたヴェリミールへ連絡事項を簡単に伝えて、小隊の指揮に取り掛かる。その為に必要な携帯無線機もしっかりと回収し、動作確認を済ませる。

 腰のベルトにぶら下げた地図入れから地図と色鉛筆を取り出し、作戦前に書き込んだ情報に追記を入れながら計画を立てる。

 

「さて、我々はどう動くかだが……」

「先程3分隊と4分隊に近くを偵察させましたが、敵は発見していません。このあたりまでは接敵しないで行動できます」

「ふむ、となればそれ以外の方向へ移動するには偵察を出した方が良いな。だがまずは通信の方を確認しておこう」

 

 同じように携帯無線機を携えたヴェリミールと顔を突き合わせ、地図を見ながら次の行動プランを組み立てる。

 指揮下の空挺兵が周囲を警戒しながらも、小銃の他に弾薬や小銃擲弾、汎用機関銃とその三脚や無反動砲等を抱えて移動命令に備えつつ、陣地構築を始め、腰のベルトに吊り下げたスコップのカバーを取り外し、地面に突き立てて塹壕を掘っている。

 そして火器小隊の方は自分たちが運用する20mm機関砲や46mm自動擲弾筒、81mm迫撃砲を簡易的な射撃陣地に据え付け、いつでも火力支援を提供できるように展開している。

 あっちこっち動き回る兵士たちを横目に、2人は携帯無線機の周波数を近場の空挺部隊と繋がるように調節し、何か情報が転がっていないか耳を傾ける。

 

「さてさて、どんな情報が入ってくるのやら」

「できれば良い情報であれば良いのですが。ただ、ここが戦場である以上はどのような情報であったとしても甘んじて受け止めるしかありません」

 

 周波数を調整し、時々ギムに籠る歩兵や戦車兵の通信を拾いながらもなんとか空挺兵の通信を拾い、ついに2人は有益な情報を手に入れる。

 

「ふむ……近くのPAWEŁ(パヴェウ)小隊とKAROL(カロル)小隊は敵と睨み合いになっているようだな。そしてこの2個小隊は援護を求めている……と」

「中尉、援護に駆けつけますか?」

「意見が一致したな、それなら話が早い。さっさと同胞を助けに行くぞ」

「了解」

 

 無線機を通して近くに降下し、合流した2個小隊がロウリア軍と対峙し、援護を求めていることが判明するとすぐさま自分達の戦力を増やすためにも援護と合流をあっさりと決める。

 そうと決まれば行動は早く、ヴェリミールは声を張り上げて指揮下の部隊に命令を出し、支度を急がせる。

 その命令に従って空挺兵達はこれまで構築していた陣地を放棄し、移動できるように荷物をまとめ、小銃を抱えて各自が所属する分隊ごとに固まり、火器小隊は射撃陣地に据え付けた火器類とその弾薬を分担して担ぐか牽引して移動に備える。

 

「総員聞けぇ!これより我々は友軍2個小隊の援護に駆けつける!陣地構築を止めて直ちに移動準備!わかったら早く動け!」

「よし、友軍は概ね10時の方向、ここから520m程先に展開している!移動だ移動!駆け足前へ!」

 

 移動できる状態になったことを確認し、友軍が陣地を構えている地点での合流を目指して駆け足で進み始める。

 少なくとも合流するまでは攻撃が始まっても持ち堪えるだろうし、反撃もできるかもしれない。だが、それも敵の数次第といったところではある。

 敵──ロウリア軍──の数が対処しきれないほどに多い場合、共和国側の技術的な優位は数で押し切られるだろう。

 

 そうなれば、待ち受けているのは悲惨な末路だけだ。同胞がそのような目に遭うのは避けたいものだし、それ以前に味方と合流しておいた方が迷子になる可能性を下げられる。

 リスクは下げられるだけ下げた方が良い。その分だけリターンも大きくなるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合流した地点であるギム郊外の森の一角、400mと少々を駆け足で抜け、小高い丘に到着した一行はそこで空挺兵の見張りからの誰何を受ける。

 

「モントゴメリー!!」

「防衛しか出来ないインポ野郎!!」

「……友軍か!ちょうど良いところに来てくれたな!さあ、早く登ってこい!」

 

 ローワンは味方空挺兵からの誰何にすぐさま下品ではあるが正式な答えを叫び、ポケットに押し込んでいた赤いベレー帽を取り出して振って見せる。

 ローワンの答えと、振られている赤いベレー帽を見て空挺兵は立ち上がり、ローワンら一行に早く丘の上へ登ってこいと催促する。

 その催促に従い、ローワン達は丘を駆け登り、丘の上に構築された簡易的な陣地に辿り着く。

 

「ご機嫌よう、中尉。私は“モルデハイ・リリエンフェルト“大尉だ、今はここにいる2個小隊の指揮を担当している。これほどまでに強力な援軍が来てくれて助かるよ」

「ご機嫌よう、リリエンフェルト大尉。現在ロウリア軍と対峙していると聞きましたが、状況は?」

 

 そこで2個小隊を束ねて指揮する屈強な体つきの、ローワンに比べて一回りは大きい“モルデハイ・リリエンフェルト“大尉と挨拶を交わすのもそこそこに状況を把握するために質問を飛ばす。

 ローワンからの問いに、モルデハイは丘の麓と、遠くに見えるロウリア軍の軍旗を先頭に進む増援を指で指し示しながら把握しているだけの状況を教える。

 

「見てくれ、丘の麓にロウリア軍がワラワラと集っているだろう?」

「ええ、それなりの数がいますね。概ね3か4個中隊ほどでしょうか?」

「多分それくらいだろうな。で、あっちの方に我々の方へ近づいてきているロウリアの部隊もある。確実に麓にいる連中の増援だろうな」

 

 それなりの数が揃っている麓のロウリア軍と、その増援であろうこちらに近づいてくる軍旗。

 先んじて敵の数を減らすためにも、迫撃砲を装備した火器小隊を率いるローワンへ、モルデハイは砲撃を加えるように要請する。

 その要請に快く応じ、部下に命令を出し、射撃の準備が終わり次第射撃を始めさせる。

 

「そこで、だ。中尉が引き連れている火器小隊であの軍旗を目印に迫撃砲を叩き込んで欲しい。できるか?」

「了解、すぐに始めます」

「頼んだ、頼りにしているぞ」

「迫撃砲分隊は準備が終わり次第あのロウリア軍の連中を狙って榴弾を叩きつけろ!」

 

 照準があらかた終わり、迫撃砲の砲口に81mmの迫撃砲弾があてがわれ、そして保持していた迫撃砲兵の手が離されて榴弾はすぽりと底へ落ちる。

 そして、ドン!と力強い砲声と砲身内からの残響が周囲に響き渡り、麓のロウリア軍は身構えるが、それは拍子抜けに終わる。ただし、後方から近づいていたロウリア軍に関してはそうでもない。何せ少しばかり離れているとはいえど、彼らの近くで爆発が起こったのだから。

 先の試射の弾着を観測し、観測結果によって算出された諸元に基づいて迫撃砲の照準が修正され、再度の試射が行われる。

 

「第2射、敵集団に命中!効力射に移行!」

「ほう、腕利きの砲手が居るのか。これなら安心して背中を任せられるな」

 

 2度目の試射でロウリア軍の集団を捕捉し、中心に榴弾を叩き込む。

 榴弾の炸裂によって噴き上げられ、立ち込めていた土煙が晴れる頃には移動を続けるロウリア軍の隊列の中心に2度目の砲撃でぽっかりと穴が開き、狼狽している兵士達の姿があった。

 至近距離に着弾した砲撃に狼狽し、恐慌し、隊列が崩れそうになるが、それを上官や他の兵士が引き留め、再び行軍を始めたところで照準が定まった迫撃砲による猛射が始まる。

 砲口に弾を滑り落としさえすれば、事前に狙いをつけた地点へ砲撃を迅速に叩き込めるという迫撃砲の特性をフル活用し、迫撃砲兵は景気良く何十発も撃ち込み、増援として送られたであろうロウリア兵達をどんどんと消し飛ばして行く。

 

「麓のロウリア軍、前進開始!」

「よろしい、現代戦というものを連中に教育してやろう。機関銃は敵を引き付けてから撃て!機関砲と小銃は単発か点射だ!いいな!」

「了解!」

「自動擲弾筒は敵が後退したら撃ち始めろ!」

 

 後方で迫撃砲によって消し飛ばされる友軍を少しでも助ける為か、麓のロウリア軍は丘を登るべく前進を始める。とは言っても肝心の友軍を消し飛ばしていた迫撃砲の射撃は砲身を冷却する為に停止されている。ただ、だからと言って砲撃が再開されない保証にはならないし、次は我が身に降りかかる可能性もある。それを避けるためにも、ロウリア軍の指揮官は前進命令を出す。

 丘を登るべく背前進し始めたロウリア軍を迎え撃つは共和国軍の精鋭たる赤いベレー、空挺兵達と彼らが即席で築き上げた野戦陣地、そしてそこに据え付けられた機関銃や機関砲、自動擲弾筒である。

 人をどれだけ効率的に殺傷するのか、それだけを考えて作られた共和国の火器がロウリア兵に向けられ、火を吹く。

 

 まず最初に、先頭を進む兵士達へ共和国兵─但し一線級部隊である─の標準装備である自動小銃が単発や点射での射撃を始め、次に一定の距離まで敵を引きつけた機関銃がタタタタタ!と連続した銃声を奏でて数人をまとめて薙ぎ払う。

 地面に伏せ、這って進むことで共和国軍による射撃を乗り越え、なんとか距離を詰められてもそれを察知された途端に小銃や機関銃で撃たれて阻止される。

 

「敵部隊、後退していきます!」

「自動擲弾筒、射撃開始!」

 

 これ以上進もうとしても戦死者を増やすだけだと判断したロウリア軍指揮官は後退せよと命令を下し、それが最前線に伝えられて後退が始まるとともに、追撃が加えられる。

 共和国謹製の自動擲弾筒、それが勢い良くダン!ダン!ダン!と分離式の金属製弾帯に取り付けられた46mm擲弾を撃ち出し、急いで撤退するべく反転して丘を降りようと走り、或いは転がるロウリア兵目掛けて大量の砲弾を届ける。

 勢い良く飛翔した数十個の擲弾は背中を見せて丘を下るロウリア軍の目の前やど真ん中に命中し、共和国兵の悪辣な銃火を切り抜け、撤退できると思っていたロウリア兵を徹底的に痛めつける。

 

「撃ち方止め、撃ち方止め!!」

「射撃中止!無駄弾を使うな!!」

 

 共和国軍による悪質な火力の投射によって擦り潰されたロウリア王国軍、数個中隊分の人命は哀れにもクワ・トイネ公国の土壌の肥やしとなり、家に戻ることは永久に無い。

 完全な勝利を収めたと判断したモルデハイとローワンによって射撃を止めるように命令が出され、それに従い先程まで盛んに射撃していた空挺兵達は引き金から指を離し、弾倉や弾薬ベルトを交換して次の戦いに備える。

 

「さて、一旦は状況が落ち着いたことだ。今のうちに戦場掃除と陣地構築を進めておこう。休憩はその後でもできる、だろ?」

「おっしゃる通りで」

 

 射撃が止み、頭を下げてひたすらに耐えていたロウリア兵も逃げ出した事で完全に丘の主人となった空挺兵達は戦場掃除と陣地のさらなる強化に取り組み始める。

 それとは別で、モルデハイやローワン達将校による部隊間の通信と連携の確保やさらなる合流が始まり、空挺兵に通達された作戦の目的である時間稼ぎを着実にこなす。

 少なくとも、後方に突如として降り立った空挺兵の対処にも兵力を割く必要が出たことによって、ロウリア軍の包囲網は薄くならざるを得なかった。

 

 そして、その影響は最前線であるギムの包囲線にも影響が出ていた。

 本来ならばなんとか揃えた16万5500もの大兵力で包囲し、そして一気呵成に全てを突撃させ、人海戦術によって防衛陣地からの弾幕を無理矢理に突破させる予定ではあった。

 それが後方に展開した共和国軍の空挺兵によって崩れ、その対処にも兵力を割かねばならなくなったことによってアデム謹製の攻勢計画は規模を縮小し、作戦開始は深夜へと変更される羽目になった。

 そして、その計画変更はアデムにとっての命取りとなる。

 

 

 

 




前回と今回で登場した合言葉の元ネタはマーケット・ガーデン作戦におけるフレデリック・ブラウニングとバーナード・モントゴメリーの失態と責任転嫁を嘲るものです。
そしてこんな合言葉が正式なものとして認められているということは、共和国が存在していた世界でもブラウニングとモントゴメリーが同じことをやらかして恨まれているってことです。
流石に作戦前から苦言を呈していた上で、自分の部下に甚大な損害が出たからと言う真っ当な理由で批判をしたソサボウスキーを責任回避のスケープゴートにするのはいかんでしょ。



今回登場した46mm自動擲弾筒の構造的には閉鎖機/尾栓をノルデンフェルト偏心螺式に取り替えて分離式弾帯が使えるようにしたボフォース 40mm機関砲です。
ソ連製の2B9 82mm自動迫撃砲とかドイツ製のM-19 Maschinengranatwerferみたいな他の自動迫撃砲との技術的関連性はないです。

閉鎖機については火砲に詳しいえすだぶ氏のTogetter「基礎から始める大砲のメカニズム(閉鎖機編)」を参照してください。
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