三民族の共和国+α召喚 作:騎兵主義者
中央暦1639年/救世主暦1955年2月26日
三民族の共和国 レヒスカ王国 王冠直轄領 ヴァルショヴァ 共和国新王宮 大議事会堂
この国──三民族の共和国──において、普段であれば本来の使用者である共和国の両院議会の議員たちの代わりに、この大議事会堂と縁遠い存在であるはずの共和国軍の将校やレヒスカ国王*1、リェタヴァ大公、若きルテニア公の他、保護国の王族及び将校団が、外務省や国防省の官僚にクワ・トイネ公国とクイラ王国の在共和国大使と駐在武官と共にこの委員会へ参加していた。
議題はクワ・トイネ公国とクイラ王国に対して、共和国遠征軍の編成と両国に対する遠征軍の派遣と編成する部隊に関してである。その為に、それら共和国軍の内部事情に詳しい軍の人間を呼び付けて作成させた資料を使い、説明させていた。
まず最初に、神経質そうな片眼鏡を掛けた平原精霊人の、レヒスカ王冠領陸軍に所属する女性の高級将校が海外に対して派遣可能な王冠領陸軍部隊を報告し、次に“共和国遠征軍“の編成を提案する。
「現在レヒスカ王冠領陸軍においては、第1機動打撃軍“
また、我々レヒスカ王冠領軍からはリェタヴァ大公国軍やルテニア公国軍及び保護国軍から部隊を抽出し、それら抽出部隊を用いての“共和国遠征軍“編成を提言する」
王冠領軍将校からの淡々とした報告と提案を受け、若手のリェタヴァ大公国海軍士官が大公国軍にて一般的な兵隊タバコでもある薬草タバコ*5の“ヴィーティス“を燻らせながらリェタヴァ大公国からは海軍の艦隊を引っ張り出そうと語る。
──どうせ陸軍を派遣したところでレヒスカ人が持っていくのだろうから、ならば我々は海軍を出すことにしよう。そもそもルテニア人も海軍を持っているが、内海艦隊で外海に出すには不向きで改修が必要な上、空軍や陸軍の方が予算配分が多い。なんならレヒスカ人は陸軍を出したので、遠征軍を編成する以上は、陸軍のこと以外はもう口出しできなくなる──
そんな思惑がありつつも、海軍はリェタヴァ大公国から出すということでまとまり、そうなれば自然と空軍はルテニア公国が出すという具合に決まっていく。
「でしたら我々リェタヴァ大公国は海軍艦艇を派遣しましょう。
我々リェタヴァ大公国海軍からは“本国艦隊“を抽出し、派遣することが可能です。この艦隊は“アウクシュタイティヤ級装甲艦“*6全艦と"ヴィリュノ級装甲巡洋艦“*7そのほかで合計56隻が投入可能になります」
「なるほど、我々ルテニア公国からはルテニア公国空軍を出しましょう。
戦術航空連隊が1個*8あれば、ワイバーンのスペックを鑑みた上で制空戦闘を行う場合はこれぐらいで十分でしょう。これ以上は過剰火力にもなりえますし」
もしこの陣容で共和国遠征軍が編成された場合、ロウリア王国の侵略から両国を守り抜くどころかむしろロデニウス大陸を制しかねないレベルに投じられる軍勢にクワ・トイネ公国やクイラ王国の大使館から派遣された面々はロウリアに対し哀れみすら感じていた。
だがしかし、ここで決まったところでまだまだ話さねばならないことがあるのも事実であり、この日の委員会は最終的に共和国遠征軍の編成と派遣までは決定したものの、予算や議会決議についてまでは通らなかったので後日開かれる共和国“臨時セイム“で議決が行われる予定である。
ただしまだ未定とは言っても、具体的な数の援軍が派遣されることは明らかになったため、クワ・トイネ大使館やクイラ大使館の面々は喜びと希望混じりの文面と声色で本国に報告していく。
そもそも、共和国から派遣される援軍は少なくとも編成準備は行われ、あとは派遣するだけになったのだから、援軍到来が秒読みに近いこの状態を報告しないわけにはいかないのもあるだろう。
その規定委員会から数日後。予算案は無事に通過し、議会決議も通過した上、当初の計画より投入部隊の数が若干増えた状態で共和国遠征軍の派遣が認められた。
それはまず最初に共和国全土に広く伝えられ、次にクワ・トイネ公国とクイラ王国に。その次はロデニウス大陸全土へ情報が届き、最後には第三文明圏どころか全世界にまで届く。その情報の流れは外交ルートや、あるいは共和国が保有した巨大な情報・電子戦用アンテナ設備を用い、クワ・トイネ公国との交流から開発された魔導ラジオ放送で広く届けられたのである。
「中央暦1639年2月29日、三民族の共和国は共和国遠征軍の編成と、クワ・トイネ公国及びクイラ王国への共和国遠征軍派遣をここに強く宣言いたします!
これは我ら共和国にとって重要な存在である、クワ・トイネ公国及びクイラ王国の安全保障を脅かす、狂人の如く他者を排斥し、その薄汚い刃を伸ばそうとする野盗の如きロウリア王国の迫り来る脅威からクワ・トイネ公国とクイラ王国の国体と市民。そして市民の権利と自由と安寧を守護し、ロウリア王国の脅威が消え去るか。
或いは我々が共に勝利を掴む、その時まで共和国遠征軍はそこに留まり、戦い、勝利する!
力強く台本を読み上げる共和国中央放送のアナウンサーが、最後に三民族の共和国の掲げる標語を読み上げて放送を締め括る。
この放送自体はロウリアに対する警告でもあるのだが、他にもう一つの目的がある。それは共和国が転移したこの世界に対し、「我ら三民族の共和国はここに在り!」と存在を全世界に対してアピールするためでもある。
事実この放送の後、クワ・トイネ公国やクイラ王国を経由して他の国々と共和国とで国交を開いたり、関係を持ち始めたのである。
我らは栄えある
我らは平等と権利、自由と平和を守護し。その為に全世界で戦うは我らRSEなりや!
RSEは勝利から勝利へと前進する!そう、勝利から勝利へと!
人々の自由と権利、そして共和国の名誉の為に!
我らは皆格好良くて素晴らしい兵士達さ!なぜなら我らはRSEなのだから!
我らは常に善行を重んじ、皆に優しく、愉快であれ!それが我らの軍紀だ!
しかし戦場において、我らの一人一人は百の虎より勇猛果敢であり!
死を恐れもせず、地獄の底まで呪われた敵を追い続けるのだ!
──軍歌「共和国遠征軍讃歌」の一節──
中央暦1639年/救世主暦1955年3月4日
三民族の共和国 全土 あらゆるところで
この日、共和国の全土では共和国遠征軍として出征する兵士達に紙吹雪を浴びせて花束や花輪を贈り、勇壮な行進曲と共に、堂々と胸を張ってパレードする兵士達を盛大に送り出していた。
そして出征しない部隊は敬礼や捧げ銃、礼砲で武運を祈り、出征する兵士達を見送っている。
また、リェタヴァ大公国海軍が本拠地とするクライペダの軍港からも多数の艦隊が出航し、それを見送る市民や他艦隊の将兵に商船の乗組員らが帽子や国旗に軍旗を振り、それに出航する本国艦隊の艦船は汽笛を鳴らして応える。
彼ら出征した共和国遠征軍が目指すのはロデニウス大陸、その東部に位置するクワ・トイネ公国とクイラ王国である。彼らはロウリアの脅威から両国を守り、またロウリアに対する重石として存在するために選抜され、編成され、派遣されたのである。