さりな「どうしたのせんせ?」   作:FOOO嘉

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14:00〜15:15 仕事
15:15〜16:00 保育園に子ども達の迎えに行く
16:00〜16:30 収録終わりのあかねの迎えに行く
17:00〜18:30 仕事
18:30〜19:00 帰宅
19:00〜20:00 子ども達を風呂に入れる
20:00〜20:30 妻帰宅、家族で夕食
20:45 子ども達を寝かしつける。
21:00 かな帰宅
21:00〜22:00 かなと歓談
22:00 かな就寝
22:00〜 妻と歓談



雨宮日記(下巻)

 

【14:00〜15:15 仕事】

 

「お疲れ様でーす」

 

MEMの動画を編集し終えて一服していたら、制服姿のMEMが事務所に顔を出した。

学校が終わってからここに来るにしては早いな。

「今日はテスト期間中だから早いんですよ〜。サボりじゃないですからね?」

顔に出てたらしい。

「テスト勉強は大丈夫なのか?」

「ここでやった方が捗るんで。家だと弟達がうるさいし。先生が教えてくれるし」

「僕は仕事中なんだけど」

「えぇ〜コーヒー飲んでるじゃん。コーヒー休憩の時でいいから」

「知ってるかい?煙草を理由に仕事を何回抜けても休憩扱いされないんだ。コーヒー休憩もそうでないと不公平だとは思わないかい?」

「うわぁ〜それお母さんもよく愚痴ってるやつだー」

だって15分の煙草休憩を4回もやったら1時間だ。昼休憩2回取るのと何も変わらない。

最も近年喫煙者の肩身は狭くなる一方なので、そういう風潮も廃れつつあるらしいが。

ざまみろ。

 

 

 

【15:15〜16:00 保育園に子ども達の迎えに行く】

 

仕事を中抜けする。勿論僕の可愛い天使ちゃん達のお出迎えだ。

エメとルビーに半日会わないだけで、僕の心はもはやカラカラに乾いて、飢えて死んでしまいそうになる。抱っこして、あの甘いミルクの香りを胸いっぱいに吸い込んで癒しを得たい。

車をかっ飛ばし(法定速度)て保育園に着く。

保育園に着くなり、僕の機嫌は急転直下。

エメの傍にはよく男の子達がまとわりついている。何ということだろう。

ルビーは年相応に無邪気に女の子達と遊んでいるというのに(なお、その他の女の子達と比較してもルビーのかわいらしさは群を抜いている。勿論、他の女の子達も無邪気でかわいらしいのだが、それはあくまでも幼児のかわいらしさだ。ルビーは最早花、宝石、輝かんばかりの星の如きかわいらしさだ。国宝級と言っても過言ではない)、エメの周りには男。

確かにエメは年齢不相応な大人びた落ち着きと知性があり、時折30を超えた女盛りもかくやとばかりのアンニュイな色気すら垣間見せるが、それらが男共を誘蛾灯のように引き寄せているのだろうか。

或いは蜜に群がるカブトムシであろうか。確かに男に大なり小なりカブトムシの角が装備されている⋯って馬鹿野郎、パパは絶対に認めない。そんな角をエメラルドに突き立てる日が来るなんて認めない。ルビーもしかり。

 

「あ、パパぁ!」

ルビーが弾丸のように突撃してくる。胸に心地よい重み。やっぱりアイと違ってぶつかられても軽い軽い。しかし、僕に抱き着いてきたのはルビーが先だが、先に僕に気付いたのはエメが先だった。エメラルドはルビーに比べると奥ゆかしい。子犬のように元気で可愛いルビーと子猫のように静かで優美なエメラルド。

まずい、ウチの子達のかわいらしさで既に犬的な可愛さと猫的な可愛さが完結してしまっている。

「あ、お帰りなさい、あなた⋯じゃなかった、雨宮さん」

エメとルビーの先生が普段と変わらずにこやかに迎えてくれる。挨拶が少し不思議だったのが、顔に出ていたのか、先生が慌てたように手を振る。

 

「やだ、ごめんなさい。さっきまでエメラルドちゃんとおままごとをしていたので、役が抜けきってなくて⋯」

 

なるほど、エメが娘で先生がお母さんというわけか。役から抜け出せなくなるほどにおままごとに没頭してくれていたのは、保育士の鑑だな。

それに役者の素質もあるのかもしれない。先生はとても可愛らしい人だから、案外行けるんじゃないか?

女優部門にスカウトするのも手なのでは⋯

 

「ねぇ、パパ。早く帰ろ?」

 

エメラルドに袖を引かれて思考を打ち切った。

いつか、先生に打診してみようか、そんなことを思いつつ会釈すると先生は赤くなって慌てて頭を下げてきた。おままごとの役から抜けきってなかったことが恥ずかしいのだろう。なんともシャイで可愛らしい人だ。

 

 

 

【16:00〜16:30 収録終わりのあかねの迎えに行く】

 

「おじ様、今日はかなちゃんのドラマの第一話ですね」

 

車に乗るなりクロちゃんこと黒川あかねの第一声がそれであった。

保育園の帰りにそのまま収録終わりのクロちゃんを拾って家まで送り届ける。

ウチの天使ちゃん達は後部座席ですっかり夢の世界に旅立っている。可愛すぎる。

助手席のクロちゃんは鼻息荒くタブレットを操作して、本日放送開始のドラマのキャスティングや脚本を確認している。

 

「この脚本家さんはオリジナルはいいんですけれど、自分のカラーが強すぎて原作ものだと少し不安ですね」「あ、この俳優さんこの前不倫騒動で炎上してた人だ」「この女優さんの映画この前見たけど、凄くよかったです。役への解像度が高いというか⋯」

 

超早口じゃん。

 

「かなちゃんを採用しつつも泣かせに来るドラマではないのがなかなかわかってますよね」

「それな。かな=泣き演技と捉えてないな。ちゃんとオーディションをして、かなの演技力そのもので判断したのがわかる」

「ですよね。このかなちゃんの演じる子、明るいけれど少しナイーブなところが、ただ泣き演技を期待されている紋切り型の健気なだけの女の子じゃないんですよね」

「むしろ泣く子を明るさで励ますようなところがな。ある意味で我儘な、かなの我の強い演技力が当てはまる」

「だけど、演技プランによってはヘイトを買いそうな子ですよね。明るいけれどわざとらしくて鼻に付くと取られかねない微妙なキャラ付けですよ」

「そこを我儘で腹が立つけど明るくて憎めない、原作のキャラに寄せられるかがかなの腕

の見せどころだろうな」

 

この後めちゃくちゃかなトークした。

 

 

 

【17:00〜18:30 仕事】

 

クロちゃんママさんからやたらと熱烈な歓迎を受けつつ、クロちゃんを送り届けると事務所に帰還。

メム以外にも収録帰りのきゅんぱんやめいめいがエメとルビーの面倒を見てくれている。

二人とも子どもが大好きなのか、甲斐甲斐しい程に面倒を見てくれている。

やはり親友であるアイの娘というのもかわいらしさひとしおなのだろう。

 

「二人ともいいお母さんになるな」

 

仕事の合間に、二人にコーヒーを淹れてやりながらぽつりと言ってから、血の気が引いた。

二人がぽかんとした表情をしていたからだ。

もしや、これはセクハラに当たるんじゃないのか。

か。

そもそも、女性に母親になることを当然のこととして強いるような発言はまずいのではないか、そんな焦りがこみ上げてくるが、二人はすぐに花が開くような可憐な笑みを浮かべた。

 

「先生にそんなこと言われたら⋯その気になっちゃいますよ」

「何ならもう、お母さんな気がしてきました」

「私もなんか母乳出そう」

 

セクハラ発言を咎めるどころか、冗談でもって和ませてくれる二人の気遣いに涙が出そうになる。

 

それにしても、まるで我が子のようにエメとルビーを可愛がり、僕への気遣いまで見せてくれる二人は、20歳を超えたばかりとは思えない程落ち着いており、大人に見えた。

女性に備わった母性というものは本当に凄い。

 

「いつでも産みますから」

「何人でも産みますから」

 

きゅんぱんとめいめいの揶揄いを受けながら事務所を後にする。

社長の向ける眼差しが、屠畜場の豚を見るようなものだったのは気のせいだろうか。

 

 

 

【18:30〜19:00 帰宅】

 

帰宅するとタイマーに掛けていたお風呂がちょうど沸いたところだった。

スイッチが入る直前だった炊飯器のスイッチを一旦切る。

帰りに寄ったスーパーで舞茸が安かったので、お揚げと、鶏肉と一緒に炊き込みご飯に変更だ。

 

パパっと材料を切り、めんつゆとお酒と一緒に炊飯器に入れてスイッチ。

 

「パパ〜早くお風呂〜」

「お風呂お風呂。パパとお風呂」

 

子ども達に急かされながらお風呂に入る。

 

 

 

【19:00〜20:00 子ども達を風呂に入れる】

 

ウチの子達はアイと入るのも好きだが、僕とお風呂に入ることの方がどうやら好きらしい。

これは父親の欲目とか願望じゃなく事実ね?

 

「パパ、頭洗って〜」

「はいはい。ルビー、この前ママがシャンプーハット買ってあげてただろう?一人で出来るんじゃないのか?」

「だって、パパに洗ってもらった方が気持ちいいんだもん」

「まったく、甘えん坊さんだな」

 

いつも一緒に入るたびに、あとどれくらいこの子達とお風呂に入ることが出来るのだろうかと思うと切なくなってくる。

世の中にはたまに中学生まで父親とお風呂に入っていたとか、高校に入っても一緒にお風呂に入っていたなんて声も聞くが、ウチの子がそうなるとは限らないし、それはそれで健全とは言い難いだろうから、断腸の思いで断るしかないのだろう。

いや、それならまだいいが、そのうち「パパ臭い」とか「パパと洗濯もの一緒にしないで」なんて言われるようになることの方がより現実味があって恐ろしい。

 

「パパ、洗って。重点的にここを」

「エメ、女の子がM字開脚は止めなさいといつも言ってるだろう?」

「はーい」

 

いやいや、お尻を突き出しなさいっていう意味じゃないからね?あと広げなくていいから。

「大きくならないね⋯」

 

なったら一大事だよ!!

ママに刺されちゃうよ!!

鳩尾の辺りを!!

 

「でも、ママがこの前パパにこうやって⋯」

「広げるな広げるな、ママはとりあえず置いておこうか」

「お尻振ってたよねママ」

「ねー?」

「ママは置いてこうね。ね?」

 

寝室の鍵掛けるようにしないとな⋯

 

 

 

【20:00〜20:30 妻帰宅、家族で夕食】

 

「たっだいま〜〜エメ、ルビー、寂しかった〜?みんなのママが帰って来ましたよ〜〜!!」

ミヤコさんに送られて、上機嫌な愛妻が帰ってきた。

お昼の国民的番組で爆弾発言をかましていたとは思えない。

というか、トレンドが凄いことになってるんだが。

 

「アイ、今日のお昼の生放送なんだけどな⋯」

「んもう、いつもどおりハニーって呼んでよ、ダーリン」

 

初耳なんですが。

 

「あのな、アイ」

「ハニー」

「だから⋯」

「ハニー」

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯」

「あのな、ハニー。ああいう発言はもう少し慎重に、できれば事前に僕や社長に確認を取ってからしような?」

「はーい、ダーリン」

 

エメラルドとルビーの呆れた眼差しが痛い。

母親にとことん弱い父親に呆れ果てているのだろう。

 

 

炊き込みご飯の出来は、大雑把に作った割には絶品と言ってもいい出来だった。

余った分はラップに包んで冷凍しておこうと思っていたが、かなの分を確保した残りは大半がアイの胃袋の中に消えていった。

先週、アイが家族の前で宣誓した糖質ダイエットは既に過去ログとなって奥深くに保存されてしまったのだろう。

かなが「1週間もてば御の字ね」と呟いていたのを思い出す。ピタリ賞だよ、有馬。

 

 

【20:45 子ども達を寝かしつける】

 

子ども達を寝かしつけていると、アイがスマホに向かって舌打ちをしていた。

ヒカル君からハニーとダーリンについての説明が送られてきたらしい。

 

「何が『僕もゴロさんをハニーって呼ぼうかな』よ。そう軽々しく欧米風の呼び方なんてし

てたら浮かれポンチ丸出しじゃないの!!」

 

ブーメランが刺さるどころか、刺さったままブーメランごと飛んでいく妻もまた可愛いなと思う。

 

 

 

【21:00 かな帰宅】

 

収録を終えたかなが帰宅する。

9時帰宅は決して早い時間ではないが、かつての彼女の生活を思えば随分と改善されている。

 

 

 

【21:00〜22:00 かなと歓談】

 

かなの出演するドラマがちょうど始まるところだったので、夕食を取るかなに付き合って晩酌をしながら見る。というか、遅い時間ならどこかで食事をしてきてもいいと言ったら「家で食べるからいいの」と強く言われてしまった。

そこまで有難がるメニューでもないが、そう言われて悪い気はしない。

 

かなの分の炊き込みご飯は明日の彼女のお弁当にするつもりだったが、別のメニューを考えるとするか。

バランスの良い食事と十分な睡眠時間。運動はレッスンやらで人並み以上にしているかなだから問題ないだろう。

それだけ揃えば育ちざかりの子どもは大きくなる。

 

そういえば、最近身長が伸びたと喜んでいたのを思い出す。

もしかして、俺の記憶にある有馬よりも、かなは成長するのかもしれない。

 

あかね並みのスタイルになったりしてな。

動くたびにたゆんと揺れるかなの胸。

ステップに合わせて上下左右に揺れるかなの胸。

上目遣いになるとくっきりと谷間が出来るかなの胸。

 

 

ダメだ、想像がつかない。

かなと揺れる胸というのがそもそも自分の中で一つの映像にならない。

 

「先生⋯何か失礼なこと考えてない?」

 

お吸い物を啜りながら、じろりと睨むかなに笑顔で答える。

 

「いや、かなの演技力はやっぱりすごいなと思ってな」

「ふふーん、でしょう?」

 

ちょろ可愛いな俺の推し。

 

ごめんな、大人は嘘吐きなんだ。

 

 

 

【22:00 かな就寝】

 

かなが就寝した頃、クロちゃんからメッセージが届いた。

かなのドラマの感想なんだろう。君も早く寝なさい。

 

『今後への期待を込めて70点でしたね、おじ様』

 

まぁまぁの辛口だった。

 

 

 

【22:00〜 妻と歓談】

 

「ねぇ、ダーリン⋯⋯明日私ね、オフなんだよね」

 

存じ上げています。

 

「だからね、しよっか?」

「あははは、ゲームか何かかい?」

 

人は無駄だとわかっても抵抗を試みる生き物です。

 

「そうだね、子供を増やして家族を広げるゲームだね」

 

シムシティかな?

ちなみに私は6時起きです。

 

「ア⋯ハニー?俺は明日早いから、今日は⋯」

「しよ?」

 

人間て凄い。

 

たった二文字で人を黙らせるだけの圧力があるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【3:00 就寝】

 

持ってかれるかと思った。

吸い付いて離れないんだもん。

 




・雨宮吾郎
近々3児の父になる予定


・雨宮アイ
ご懐妊。
ここから先の子供達は誰々の転生とかじゃない。


・雨宮エメラルド
広げたのは、ちゃんとパパが洗えるように皺を伸ばすという心遣い。


・雨宮ルビー
パパに頭と背中と前を洗ってもらうのが好き。
思春期に近付くに連れてぺぇを重点的に洗ってもらおうとする。


・有馬かな
出演したドラマは原作ファンの間ではプチ炎上したが、視聴率がクソ良かった上に評価が高いという劇場版パトレイバーみたいな評価になった。


・黒川あかね
はぁー?視聴率とかオリジナル要素が良いとかそんなの、監督と脚本家の自己満が結果オーライに繋がっただけでしょ?原作を踏み台にして自分のやりたいことを表現するのはズルいんだわ、そういうのはオリジナルでやれ、ただし、有馬かなの演技は神だった。

といった内容の書き込みをして、掲示板でパチってる。
ゴロー先生からネットに耐性を付けろとは言われたけどそういう方向じゃねーんだわ。


・MEMちょ
ゴロー先生のせいで、父性への飢えが爆発。
配信に落ち込むと頭を撫でてもらうことがルーティン化。
アイに見られた日のゴロー先生は、普段より睡眠時間が2時間は減る。


・雨宮大亜門奴(ダイヤモンド)
生まれてくる雨宮家長男。
未来の雨宮エンゼルスの四番でピッチャー。
ダイヤモンドなだけに野球のセンスが凄い。
中身は普通の子。というか以降のアイが生む子達はみんな普通の子。
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