実写版さりなちゃんが可愛すぎたからだ。
そこにツクヨミまで加えるとロリコン共はどうなる?
そう、爆発するんだ。
キャパシティオーバーってやつさ。
「海外か」
「どう?凄いでしょ?」
そう言ってかなはドヤ顔で胸を張る。生意気可愛い。
今年の誕生日でようやく18歳になる我が事務所イチオシの女優その1(その2は黒ちゃん。アイ?殿堂入りですよ)に海外からのオファーが来たのは先週のことだ。
TVの露出はバラエティーの出演をメインに、子役イメージを払拭しつつ演技の勘を鈍らせない為に演技の仕事は舞台中心に受けさせていた。
そのおかげかかなは俺の知る有馬よりも演技の懐が深くなったように感じる。
以前の我儘な太陽の演技はそのままに、時には眩しさよりも日向のような温かさを感じさせる演技が増えた。
これは素人考えであるが、カメラの切り替えができない舞台だからこそ求められる演技そのものの緩急を有馬が学んだ結果じゃないかと思っている。
「明るさ調節が出来るようになって便利だね」とはアイの意見だが、ぶっちゃけてしまえばそういうことだろう。無論、この話を聞いたかなは「照明みたいに言うな!!つまみ一つで明るさ自由ってか?」とキレていた。
バラエティーの出演の多さが、俺の知る有馬以上にツッコミにも深みを与えたのだろう。
さすがは俺の推しの1人である。ゴロー、カンゲキ!
ちなみに有馬かな強火オタこと黒ちゃんこと黒川あかねはそれを嫉妬と喜びの混ざり合った表情で聞いていた。
右側が嫉妬で、左側が歓喜というアシュラ男爵みたいな表情だった。器用だな、流石は俺の推しの1人だ。
なお、有馬から少し遅れたが、何の偶然かあかねにも海外の映画出演のオファーが来ている。
だけど、リアクションが面白いのでもう少しその情報は伏せておくことにした。
「どうよ先生?貴方の推しの子は貴方の期待を裏切らなかったでしょ?」
「馬鹿言うな。期待を超えてきたよ。頑張ったなかな」
「⋯⋯⋯えへへ」
頭を撫でてやると、頬を染めて喜ぶ。俺の知る有馬かなの5.6倍は素直だ。
中学時代の反抗期に入ってからは「気安く触らないで」と触れる物皆切り裂くモードになって、今ガチ直後の謎の塩対応時期を彷彿とさせる態度に懐かしさを覚えつつも涙で枕を濡らしたものだが、反抗期を超えたかなは子ども扱いを素直に受け入れるようになった。
頭を撫でても嫌がらないどころか喜んでくれるのだ。
ちなみに反抗期知らずの黒ちゃんはオールタイムいつだって喜んでくれる。「おじ様❤️」なんて呼ばれた日には気分はもうルパンだ。
ただ、あんまりスキンシップが過ぎると後が怖い。
後が怖いっていうか、奥さんと娘達が怖い。
自分も撫でろと抱き着いてくるルビーを始めとした娘っ子達。
何故かお腹を撫でて欲しがるエメラルド。
尻を撫でろ(っていうか揉みしだけ)と言ってくるアイ。
うちの女性陣はみんな甘えん坊が過ぎる。
特にエメラルド⋯あの子は年々甘えん坊になっている。幼い頃は双子でありながらルビーの良き姉として、何処か懐かしさを覚えるような大人びた振る舞いをしていたのだが、ある時期から甘えるようになってきた。
戸惑いよりも純粋に嬉しかった。
エメラルドは何処か遠慮したところがあった。
壁とまでは言わないが、見えない境界線のようなものを張って踏み入ろうとしていなかった気がした。
それが無くなったのだ。
エメラルドが踏み込んで来てくれた日を今でも思い出せる。
あれはエメラルドが小学校に入学した日のことだった。
『私はね、前世の記憶があるの⋯』
不思議と驚きはなかった。
夢見がちな少女の妄想と切って捨てるにはその言葉は深い悲しみに彩られ、それを告げるエメラルドの眼差しは6歳の女の子とは思えないほどに憂いを帯びていたからだ。
そして何よりも予感があった。
昔から時折幼い子供とは思えない言動を取っていた。
年齢に不釣り合いな程に大人びた表情。
遠くを見つめる寂し気な瞳。
僕の胸を予感が走った。
まさか、この子は「あの子」なのか?
あさましいと知りつつもそんな期待に満ちた予感を抱いたのは一度や二度じゃなかった。
そして、彼女の言葉は僕の予感を決定付けようとしていた。
『私は孤児だったの』
違ったわ。
予感違ったわ。
『親に捨てられて⋯育った孤児院は劣悪な環境で殴る蹴るは当たり前だった。食事はパンと粗末なスープだけ。いつも殴られるのが怖いし、お腹が空いて苦しかった』
そして予想外にヘビーな過去だった。
『親と楽しそうに歩く子達を見つける度に悲しくて寂しかった。そして、ある日病気になったの。だけど碌にお医者さんにも連れて行ってもらえずに⋯死んじゃったんだ⋯7歳の時に』
悲しすぎる壮絶な過去に俺は言葉を失った。
なんていうことだ。
この世界はどこまで残酷なんだ。
『ごめんなさい⋯黙ってて。気持ち悪いね、こんな普通じゃない娘なんて⋯』
『気持ち悪いものか!!』
思わずエメラルドを抱きしめていた。
『辛かっただろう?そんな悲しい記憶を抱えたままで⋯僕の方こそ、エメの抱えてる辛さに気づいてやれなくてゴメン』
『お父さん⋯?』
『気持ち悪いはずがない。むしろそんなことまで話してくれてありがとう。僕の娘になってくれてありがとう』
涙に濡れた青みがかった瞳を見つめる。
その名の通り、いやその名を持つ宝石よりも遥かに澄み切った美しい瞳から決して目を逸らさずに告げる。
『前世の記憶を忘れろなんて言わない。だけど君は僕の大切な娘なんだ』
頬を伝う涙を指でそっと拭ってやる。
『前世の分まで僕がかならず君を幸せにするよ』
『おn⋯お父さん⋯いいの?』
『当たり前だろ』
何処にも行かせまいとするようにエメラルドの小さな体を抱きしめる。
腕の中で震える幼い娘、さぞかし勇気が必要だったのだろう。
それでも告白したのはきっと黙っていることの罪悪感に抗えなかったからだ。
『これからも一緒にいてくれる?』
『ああ』
『一緒に寝てくれる?』
『ああ』
『一緒にお風呂に入ってくれる?』
『ああ』
『私が16歳になっても上記の約束を守ってくれる』
『ん?ああ、もちろんさ』
『⋯⋯忘れないからね?』
『ああ。約束だ』
『うん。うん、うん。約束だよお父さん⋯』
『絶対守ってね?』ニチャアアアアアアアアアアアアア……
あの日が本当の意味で僕とエメラルドが親子になれた日なのかもしれない。
僕はきっと忘れない。
不安そうに震える小さな身体。
迷い猫のような瞳。
温もりに安堵する無垢な笑顔。
エメラルドのすべてが愛しいと思った。
「あの⋯流石にちょっと恥ずかしいんだど?」
「ん?おっと、すまんな」
「別にいいけど⋯」
うっかりかなの頭を撫でながら物思いに耽ってしまった。
ずっと撫で続けていたせいか、かなの髪は少しばかり乱れてしまっている。
お詫びも兼ねてソファーに座ると隣にかなを座らせる。
「かなの髪は手触りがいいからな」
「⋯髪のお手入れなんて常識でしょ?それよりも。他所であんまりやっちゃダメだから」
「セクハラになるな」
「っていうか事案」
「ひど!」
「頭撫でられて喜ぶチョロメスはマンガの中だけだからね」
辛辣な言葉に懐かしさを覚える。言葉も反抗期の頃よりも大分マイルドになって、その成長に喜びと寂しさを覚える。いつかルビーもエメラルドもそっけなくなってしまうのだろう。
今はまだ一緒にお風呂に入りたがる甘えん坊達だが、もう中学生になるのだからそろそろ時間の問題だろう。
いずれ俺の顔を見て舌打ちをしたり、パパでもお父さんでもなく「あの人」とか「アレ」なんて呼ばれるのかもしれない。あ、想像したら泣きたくなってきた。
「なぁ〜にしんみりした顔してるのよ」
「え?」
「顔見たらバレバレよ?大きくなったなとか、ルビー達もすぐに大きくなるんだろうなとか、そんなこと思ってたんでしょ?」
「君はエスパーか何か?」
「先生がわかりやすすぎるだけよ。杞憂だと思うわよ?あの子達の反抗期なんて」
「言い切るなぁ。どこかの誰かさんの反抗期を思い切り味わった気がするんだが」
「どこの誰なのかしらねぇ〜」
ぬけぬけとすっとぼける推し。とても可愛い。
「勘だけど、あの子達は少し⋯変わってるから」
「そうか?確かに他所の子よりも群を抜いて美少女であることは変わってると言えるかもしれないが」
「そうじゃなくて。ま、とぼけるのはいいけど、あんまりあの子達を子どもだと侮ってると
思い知らされるかもしれないわよ?」
「何を思い知るっていうんだよ⋯怖いわ」
「ふふふ、さぁね」
愉し気に笑うかなの横顔は、記憶にある有馬に重ならない。
あの頃の何処か張りつめたところを持つ有馬と今俺に黙って頭を撫でられているかなは違う存在なのだ。
そのことを嬉しくも寂しくも思う。
かつてアクアだった俺が遺してきた人たちに未練がないかと言われたら、今も未練はある。
妹は、「星野ルビー」は元気だろうか?
母のように思っていたミヤコさんをきっと泣かしてしまっただろう。
有馬、あかね、MEM、多くの人たちを悲しませてしまったかもしれない。
だけど、その未練が少なくとも今の俺の歩みを止める理由になることはない。
その未練が俺が今この生の中で幸せになろうとする思いを阻むものではない。
「ところで、私の出る映画ってどんなタイトルなの?」
「ああ、【マンボウ〜怒りのアフガンドッグ〜】だな」
「何て?」
「【マンボウ〜怒りのアフガンドッグ〜】だ」
「ちょっと待って」
「主演だぞ」
「わーやったー⋯じゃなくて。何よその魚なのか犬なのかわからないタイトル」
「かなの役は『ターキー少尉』らしいな」
「鳥なの?」
「かなの年代の子にはマンボウシリーズは確かに馴染みがないか」
「しかもシリーズものなの?」
かなが零れ落ちそうなほどに目を見開いている。
確かに18歳の少女が背負うには重すぎるビッグタイトルかもしれない。
っていうかマジかよ、かながターキー少尉なのか。熱すぎるだろ。
「お、かなここにいたのか」
「社長」
「先生もいたか。相変わらず仲良しだな」
「社長。かなに映画タイトル話しちゃって良かったですよね?」
「もちろん、そろそろ広報にも載せるつもりだったしな」
「ちょ、社長。マンボウって⋯」
「ああ、あのマンボウシリーズだぞ?俺の事務所からマンボウシリーズに出るタレントが出るなんてな⋯」
「泣いてるし⋯⋯⋯」
壱護社長がサングラスを外して目頭を押さえる。
感無量なのだろう、その気持ちはよくわかる。俺だって思わずもらい泣きしてしまいそうだ。
かなは呆然としている。
確かに演技でもなく大の男が泣くのは18歳の女の子には見慣れないかもしれない。
「かな、社長の気持ちもわかってやってくれ。自分の育てたタレントが出演するんだ⋯マンボウに。それも…ターキー少尉なんだぜ?」
「だぜ?って…」
「やっぱわかってくれるよな先生」
「もちろんですよ。上がりますよマジで」
「ぶち上るよな。ターキー少尉だぞ?」
「あげあげですね」
「おっさん達があげあげとか言わないで!!」
「ターキー少尉ってことは、歌と踊りが認められたっていうことだからな」
「ええ。Bゼロでの経験が生かされて、こうして女優の道に集約するなんて⋯」
「ねぇ、ターキー少尉って何?」
「これも先生がかなを口説き落としてくれたからだぜ」
「く、口説き落としたって言い方やめろ!!!私がチョロメスみたいじゃない」
「かなならアイドルとしても輝けるって信じてましたから。俺の推し(の1人)ですから」
「うぐっ⋯先生、それズルいっていつも言ってるじゃんっ」
「ターキー少尉に求められる演技力なら他にも候補はいた。あかねもな。だが、演技力と同じくらいターキー少尉に必要な歌と踊りを兼ね備えてるとなると有馬かなしかいない、ジョージ・ルーファス監督のコメントには痺れたぜ」
「だからターキー少尉って何?」
有馬かなという稀代の女優になりうる才能を秘めた少女が、一体どんなターキー少尉を見せてくれるのか。
俺の胸は未知の世界への扉の前に立った時のように弾んでいた。
なお、アイも推薦したのだが、ルーファス監督から「NO〜〜!!!!ターキーはもっとションベンくさいガキじゃなきゃいけませ〜〜〜ん!!!」とのことだった。
アイは「失礼しちゃう!!ションベンくささなら私だって自信あるのに。ね?ゴロー?私ゴローとする時よく ──── 」とんでもないことを言いそうだったので、推薦の件はなしになった。
雨宮吾郎(45)
妻と娘達(かな、あかね、MEM含む)を愛する苺プロのタレント専属医師兼マネージャー。
アンチエイジングのせいなのか年齢を言うとギョッとされる程度に若作り。
マンボウシリーズは怪作と名高い3作目「マンボウ〜カブキ町大炎上〜」が好き。
13歳になっても娘達が変わらず甘えてくれるのが嬉しい。娘が中学生になったので流石にお風呂に入るのは問題があるとして、入浴を断った。妻は喜んだものBジェネのパフォーマンスが引くほど下がったため入浴再開。アイは浴びる程自棄酒を煽った。
☀️有馬かな(18)
太陽のような輝きを持つ大女優(の卵)。
B小町ニュージェネレーションゼロ(通称:Bゼロ)のセンターを務めていた。
Bゼロ自体がルビーとエメラルドがセンターを務めることが出来る力(主に歌唱力)を手に入れるまでの繋ぎだと公式が言っている。
わかりやすく言えばナルトが火影になるまでのカカシ先生。
演技力と歌唱力とダンス力とションベンくささからターキー少尉に選ばれた。
なお、アジア人がターキー少尉役に選ばれるのは初めてである。
️斉藤壱護
彼には二つの夢があった。一つは自分の育てたアイドルが東京ドームに立つこと。
もう一つはマンボウシリーズに自分の事務所のタレントが出演することであった。
二つとも夢が叶い、しかも片方は出演どころか主演である。感無量である。
マンボウシリーズは当然初代派。壱護のような直撃世代にロリコンが多いのはこの一作目のターキー少尉の影響が大きいと言われている。
何十回と見返している。ミヤコさんは当然付
き合わない。
⭐️雨宮アイ(33)
完全無欠の元アイドル、現女優。
マンボウシリーズはイマイチ面白さが理解できないが、それを熱く語るゴローがムラムラする程可愛いと思ってる。
「クールぶってるインテリの癖に少年みたいに無邪気になるのズルいよね?」
中学に上がってもゴローと入浴しようとするルビーとエメラルドに危機感を抱き始める。
そんな双子に「まだまだ子供だな。甘えん坊だ」と笑う夫の楽観的な見解に憤慨。
中学に入る前から旦那にムラムラしていた彼女からすれば楽観的な夫の危機感の無さは遺憾の意であろう。
年齢に比べて嘘みたいに幼い顔立ちなのでターキー少尉候補に挙がったが、立ち上る色気を見抜いて候補から外したジョージ・ルーファス監督の慧眼には服する他ない。
⭐️雨宮ルビー(13)
B小町ニュージェネレーションのWセンターの1人。赤い方。
成長と共にせんせへの想いは恋心から父親への親愛に昇華された⋯とエメラルドには説明している。本当に?
13歳の誕生日を迎えた自分を感極まったように抱き締めたゴローの腕の強さと温もりと匂いと流す涙に軽くイキました。
中学入学の日にゴローからお風呂は別々と言われた結果、エメラルド共々クソほどパフォーマンスが下がった。
これも一重に父の愛を欲する健気な娘であったが故に。本当にぃ?
★雨宮エメラルド(13)
B小町ニュージェネレーションのWセンターの1人。緑の方。
ルビーと並ぶ姿はさながら赤い狐と緑の狸。或いは強龍神。
前々世さりな、前世ルビーの雨宮家長女。
転生の代償として自分がルビーと名乗ることはできないことに絶望 ─── することもなく、少しずつ前世を匂わせる行動をとり始めた。
具体的には、幼い子供とは思えない言動を時折取ってみたり。
年齢に不釣り合いな程に大人びた表情を浮かべてみたり。
特に意味なく寂し気な眼差しで遠くを見つめてみたり。
そうしてラインを見極めていき、小学校入学と同時に盛りに盛った悲惨な前世を吐露する。
結果 ──── セーフ。
ゴローが自分を「さりな入りの星野ルビー」だとバレなきゃいけるらしい。
エメラルドは賭けに勝った。
「エメラルドは今線を引いたんだ」
「線……?」
「審判(神)は今フエを吹かなかった。ファウル(違反)じゃないとな」
「つまり、あれくらいの暴露ならこれからずっと審判はファウルを取れない。今のをとらなかったんだから」
「これでエメラルドは前世バレの境界線を引いたんだ」
マンボウシリーズ
第一作目「マンボウ」から始まるシリーズ。
脈絡も無く歌い、踊り、銃撃戦が始まることでおなじみ。
幾度かのマンネリによるシリーズ打ち切りの危機を迎えつつも、根強く続く長期シリーズ。
「マンボウ〜怒りのアフガンドッグ〜」は9作目。なんと前作から15年ぶりの新作である。
ブロードウェイを血の海に染め上げた伝説の荒くれ者タータン・キティー(通称:ターキー)がアメリカ政府の要請を受けてめちゃくちゃくやるのが基本フォーマット。
9作目にして初のアジア人が抜擢されたことに意義を唱える声も多く存在したが魔法の呪文「多様性」により押し通された。なお、この魔法の呪文により同一人物であるはずのターキー少尉の人種はこれから先安定しないこととなる。