さりな「どうしたのせんせ?」   作:FOOO嘉

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吾郎先生は自分以外の男が破滅するのを高みの見物してるタイプのなろう系主人公じゃないので破滅フラグは摘んでいくスタイルです。


メルトくんは可愛いから救わなきゃね

朝の寒さが誤差の範囲で和らぎ、猫のステップ程度の頼りない春の足音が聞こえて来たような気がしないこともない3月になっても苺プロは好調かつ安定していた。平常運転と言ってもいい。

アイドルを卒業して苺プロどころか日本を代表する女優となった星野アイが「ソンキョって言葉最近知って。ソンキョって凄く難しい字なんですよね。だから一体なんだろうって思って調べたらお相撲さんがやるあの姿勢だったんですね。あ〜あれなら知ってる。よくやるなって。ゴローあれしながら舐めると喜ぶんですよ」と発言したことで雨宮吾郎アンチスレが遂に2000の大台に乗ったりもしたが、平常運転である。力士に謝れ。相撲は格闘技というカテゴリーで単純に括ることのできない芸能である。火ノ丸相撲はもっと評価されるべきだ。

 

閑話休題。

 

数十年前に比べてすっかり元気がなくなった5ch(未だに慣れない呼び方だ。)で元気にスクスクとアンチスレが2000も立つのは凄いことだ。つくづく星野アイという唯一無二の存在が持つ発信力には驚かされる(戦慄)。

なお、アンチの間では雨宮吾郎はアイと肉欲の日々を過ごしながら、実の娘であるエメルビにもFANZA の本に載っているようなことをしており、更には昔から面倒を見てきた有馬かなや黒川あかねや MEMちょに対しても不埒な真似をしているに違いないという憶測が飛び交っている。

そのくせ彼らは上記の少女達の処女性を信じて疑わないのだからユニコーンは(馬鹿げた)可能性のケダモノとはよく言ったものである。

なお、娘にも手を出しかねない雨宮吾郎スレの常連の中には「雨宮吾郎先生の娘に向ける目は女を見る男の目であり、娘が彼を見る目もまた父親を一人の男として見る女のものであるという「雨宮吾郎は近親相姦者であるが鬼畜凌辱村の住人ではなく、寧ろ純愛村の住人である」という説を唱える者もいる*1

 

 

さて、そんな3月になって有馬かなに仕事が舞い込んで来た。俺が知っている鳴かず飛ばずになってあと5年もしたら脱ぐしかなくなるんじゃないか?というくらいに行き詰まっていた有馬かなではなく、苺プロに所属し子役イメージを脱却し人気子役から人気若手女優にいい感じにステップアップしつつある有馬かなである。

仕事に選んでいただける有馬かなではなく、仕事を選べる有馬かなである。

 

「喜べかな。ドラマのオファーだ」

「ドラマのオファー!」

社長である斉藤の言葉に有馬かなのテンションが上がる。

ドラマの仕事に不自由はしていないが、演技中毒者である有馬かなにとっては演技の場などあって困るものではない。ノット豊満感だ。

 

「それも主役だ」

「主役!!」

斉藤社長の言葉に有馬かなのテンションが更に上がる。

同年代の女優と比較しても主演作は多い方であるが、承認欲求に手足が付いたような有馬かなにとっては主役の話などあって困るものではない。かなの承認欲求は53万です。

 

「少女漫画原作だ」

「実写化かですか」

斉藤の言葉に有馬かなのテンションが少し下がる。

エゴサ大好き有馬かなは漫画原作の実写化がどれ程厳しい目に晒されているのかを重々承知しているのだ。村一つ焼かれたのかってくらいの誹謗中傷が出る時もある。変な家の実写化は絶対に許してはいけない。ただでさえ配役に疑問があるのに、スイーツをぐちゃぐちゃに混ぜて汚く食べさせる演技指導をするなど解釈違いも甚だしい。

 

「ちなみにお相手は売り出し中のモデル、鳴嶋メルトだ」

「デルモっすか⋯」

ヒゲの言葉に有馬かなのテンションが爆下る。タビオカですと言って正露丸をお出しされたらこうなるのではないかというくらいにガッカリを通り越した虚無顔である。まだわからないぞ、アマゾンズみたいにとんでもないデルモの可能性もある。

 

「他にもイケメンモデルが勢ぞろいだからな。イケメンに囲まれたからって浮かれてスキャンダルになるような真似すんなよ〜ハハハ」

「解散。お疲れっしたー」

お疲れっす有馬先輩。無駄な時間だったすよねホント。セクハラヒゲ親父ってマジ死ねばいいのに。

 

「うぉおおお〜〜〜!!待ってくれよ〜〜!!お前にしか頼めないんだよ〜〜!!!!」

「離してください」

斉藤が有馬の細い腰に抱き着く。それを全力で引きはがそうとする有馬。

 

「離してください!離して!!離せヒゲ!!!」

顔を掴んで引きはがそうとしていた有馬だったが、抱き着く腕の力に恐怖と嫌悪を抱く。

引きはがそうとする動きから、肘を落とすことに切り替える。手を痛めるようなことををせずに固い肘であるところにプロ意識が垣間見える。

 

「かなぁぁぁーー!!」

「は・な・せ!!HA!NA!!SE!!!」

ヒゲのグラサンのおっさんが女子高生に抱き着いているのならば、脳裏に過るのは『犯罪』か『枕』である。枕とはまたタイムリーっすね有馬先輩。

 

「何やってんですか二人とも」

額から血を流しながらしがみつく中年オヤジと、鬼の形相で肘を落とし続ける少女。

地獄のような光景にノコノコやって来たのは、現在日本において多くのモテない男から死を願われている男でランキングを作ったら確実にトップにたっているであろう男。

10年近く王座から陥落することのない絶対王者。

嫉妬界隈のリカルド・マルチネスこと雨宮吾郎である。

 

「先生!」「吾郎!」

「「何とかして(ぐれ)!!」」

「何について?」

 

とりあえず傷害罪から殺人罪にステップアップする前に我らが有馬かなを引き剥すことだろう。

 

「で、今回のドラマの案件は鏑木さんの仕切りで。借りがある社長は今回のドラマにかなを出すことで借りを返せと言われてると」

「そうなるな」

「はぁ!?ふざけんじゃないわよ!!」

血塗れの斉藤の治療をしながら吾郎が話をまとめると、即座に有馬が声を上げる。

有馬からすれば大人同士の勝手な密約に自分の身柄が左右されているのはたまったもんじゃないのだろう。本来の世界線ならば流しそうめんくらいするすると大人の事情に流されまくっていたのが嘘のようである。

「落ち着けってかな。気持ちはわかるけど」

「でもさ先生」

「社長にはいつも良くしてもらってるんだ。そりゃあ仕事としてタレントを大切にするのは当然だけど、それだけじゃないことはお前だってわかってるだろ?」

「うぅ〜〜⋯」

納得がいかないながらも有馬は押し黙る。

親回りの問題解決や、子役イメージ脱却に苦戦して一時仕事が無くなりかける時期まで、壱護が如何に手厚く有馬をフォローしてきたのかわからないほど鈍感な少女ではなかった。例えそこには絶えず吾郎が壱護を時に説得し、時に丸め込んでいるとしても、社長である壱護の決断があってのものだ。

「どんな名優だってすべての作品がヒットしているわけじゃない。どれだけいい演技をしても誤魔化せない程の作品にだって携わってきている」

 

後始末とかな。

 

「でもさぁ先生。私以外全員演技下手とかじゃないレベルよ?大根よ?大根ばかりの中に私がどれだけレベル下げて入ってもぶり大根よ?下手すれば大根の煮物に豚肉が入るようなもんよ?」

「美味そうな例えだなオイ」

それならそれでイケメン達を思い切り引き立て役にすればいい。

大根を細く切るとツマになる。刺身の引き立て役ということですね安西先生。

「それじゃ作品が⋯」

「オファーは出演であって作品を成り立たせるわけじゃない。座長?何それ?って顔していつも通りやればいい。それで鏑木さんに睨まれるかもしれない? 大丈夫丈夫。あの人がそれくらいでウチとのコネを棒に振る訳ないから」

だってあの人イケメン、美少女大好きだからな。

「先生がそれほど言うなら仕方ないわね。良いわ。大根共をまとめて千切っては投げ千切っては投げてやるわよ」

 

これドラマの話ですよね?バトルロイヤルの話じゃないですよね?

 

「その意気だかな!」

 

煽てるのが得意な吾郎と、煽てられるのが得意な有馬。良いコンビである。

斉藤はアイコンタクトで吾郎に「ありがとう」と伝える。吾郎も有馬にわからぬように頷く。

ここにきて、吾郎が通り掛ったのは偶々だったのかという疑問があるかもしれない。

無論、偶然のはずがない。寂しがり屋で友達もいない有馬かながオフの日を過ごすのは第二の家(というか実質実家)となっている雨宮家か苺プロの事務所である。

かなの性格もスケジュールも把握している吾郎は当然居合わせる。というかスタンバっていた。

まず社長である斉藤から仕事の話をし、これを承諾しない場合の二の矢である。

吾郎なら最終的に有馬を丸め込んで乗せてオファーを受けさせてくれるという確信が斉藤には元々あったのだ。大人ってズルい。

吾郎が拝み倒せば多分抱かせてくれるくらいには有馬の吾郎への好感度は高いと斉藤は見ている。勿論そんなことは口にしない。口にしようものなら吾郎の奥さんが黙ってはいない。宮崎の山奥で人知れず白骨化なんてしたくない。

吾郎としても有馬にドラマの話を受けさせたいという思惑はある。

一つ目は有馬かなに今一度自分が恵まれていることを自覚させることだ。

幼い頃に苺プロに入った有馬かなはアクアだった頃に知っている彼女とは異なり、仕事の数にも質にも恵まれていた。

しかし、恵まれているだけではいけない。人は慣れる生き物である。

周囲の大人たちが配慮して文句の無い環境を用意されていることを当然のことと捉えるようになると天狗の第一歩。

有馬かなの鼻はピノキオよりも伸びやすく、ピノキオよりも折れにくい。

そのくせ一度へし折ると卑屈になっていくというから面倒臭い。なればこそ、伸びる前に自覚させなければならない。

今までの自分が如何に恵まれていたのか、それを自発的に感謝し、謙虚になってもらう必要があるのだ。

なお、超高性能CPU(読心機能搭載)こと黒川あかねちゃんにはそういった大人の小賢しさは通用しないのだが、彼女はそもそも自己評価が高くない故に自己鍛錬の塊なので普通に良い仕事を回していくのだ。

今ガチどうすんだって?あかねとMEMちょ回収できてる時点で出す訳ねーだろあんなクソ番組。

 

そして二つ目は鳴嶋メルトの覚醒である。

嘗て星野アクアの数少ない男友達の一人であり、信頼できる男が鳴嶋メルトである。しかし、それはあくまでも覚醒後の話であり現在のメルトは顔がいいだけの増長した子どもだ。

有馬やアクアが関わらないまま芸能界を生きていたとしたらほぼ間違いなく早々に迂闊なスキャンダルで芸能界から抹殺されていたことは想像に難くない。

雨宫吾郎となった今、メルトは全く関りの無いモデルでしかないのだが、「あのイタイままのメルトを放置しておくのも寝覚めが悪いし、吉祥寺先生も気の毒だし」という素直に友達が破滅する芽は摘んでおきたいと言えばいいのに一体誰に対して言い訳しているのだろうか。こいつゲロ甘だぜとっつぁん(失笑)。

メルトが覚醒するのかという疑問については、メルトのポテンシャルを知っているのでまぁまぁ楽観的だ。きっと自分がいなくともやる気全開の有馬かなの光を目の当たりにすれば燃えるにちがいない。

この男の計画も見通しわガパいのは今に始まったことではない(苦笑)。

そんな訳で有馬かな、「今日は甘口で」出演決定である。

 

 

*1
コテハンは「花京院」。雨宮吾郎近親相姦両想い説を語る時は長文になる恒例であり、そんな時スレの住人は「スプラッシュした」と囃し立てるのがお約束である。




多分続く。
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