自称ヒーラーの男 作:呪いの石仮面
任務帰りの昼時。"その男"はファミレスでお昼を食べていた。
「………ッ」
「すっげー……」
「フードファイターってやつ?」
ただその量が異常だ。
メニューの大半をテーブルに並べ、ピッチャーに入ったままの水を飲む。
図体は大してデカくない。普通、並、平均的……より少し大きいくらいか。
線は細いが引き締まった肉体。"いつもの制服"では無い、Tシャツとふくらはぎまで捲ったジャージのズボン。
まさしくどこにでも居そうな青年。
そんな彼の前に並ぶ料理が次々と口の中へと消えていく。
豪快だが丁寧な食べっぷり。育ちの良さが伺える。
そんな中、来店してきた客。
「いらっしゃいませー」
「………」
青年はそちらに視線を向け……すぐに逸らした。
「1名様ですか?」
「はい、1名です」
そんな会話が聞こえ、案内された席は青年の2つ離れた四人席。
何やら独り言……いや、"会話"が聞こえてくる。
五条悟、封印、虎杖悠仁、両面宿儺、そして戦争。
そんな単語を耳に食事を進める青年。
「──殺す、ことより封印することに心血を注いだ方がいいよ」
『────』
「特級呪物、"獄門疆"を使う」
ピクッ
会話を耳に、聞こえてきた単語に反応したその青年は、手を止め、箸を置きピッチャーを手に水を飲む。
もう一度チラッと横目に見れば……やはり間違いない。見間違いでは無い知った顔。なんでいるのか。そもそも"なんで生きてるのか"。
面倒なことになりそうだななんてことを思っていた。
『───ッ』
人ならざる声に興奮が混じり室内が熱くなってくる。暑くでは無く熱くだ。
冷房がついてるはずなのに夏の外のようなレベルの熱さ。
そんな中、店員のひとりが外へと逃げ出した。
生存本能か。青年はいい判断だなんてことを思いながら食後のデザートを口へと運ぶ。
やがて店員の1人がその席へ注文を聞きに近づいていた。
「お客様、ご注文はお決まりで……すか…?」
そんな言葉を最後に直後体から炎が上がる店員。
悲鳴が聞こえ、次々と店内の人間が燃え始める。
そんな中、青年は温くなった水を飲み干し、背もたれに体重を預け、今度はガッチリと顔ごと件の客へ目を向けた。
「……特級が3、呪詛師が1……つか、呪詛師も特級か。ダルいな」
『『『「ッ!?」』』』
「つかなんで夏油君いんの?……あー?中身が違う?誰お前?」
『火礫蟲ッ!』
人ならざる存在。頭が火山のような1つ目の男が青年へ向けて何かを飛ばした。
それは羽をばたつかせる小型の虫。
それを青年はだらりと垂らした腕を振るい消し飛ばす。
『……な!?』
驚く火山の化け物を尻目に青年はテーブルに手を置いた。
直後粉々に砕け、塵よりも細かくなるソレ。次の瞬間に触手のように唸る木製のトゲが火山の化け物に向かって飛んで行った。
『これは…!』
「……んー、まずいね」
間に割り込む袈裟を着た客。青年に夏油と呼ばれた彼はトゲを受け止め青年を睨んだ。
「まさか君がいるなんてね」
「任務帰り。腹減ってたもんで。呪霊さんや呪詛師さん達もファミレスって使うんだ」
「ははは、まさか。ただ腰を休めたかっただけさ」
「そっかそっか。だったら腰を休めるだけにしてよー。こんな騒ぎ起こされちゃこっちも知らんぷりーなんて出来ないよー」
「んー、すまないね。まさか君がいるとは思ってなかったからさ」
そうしてはははと笑う2人。
辺りは燃え盛る店内。不釣り合いな光景である。
そんな夏油を見た火山の化け物はコソコソと口を開いた。
『何者だ。あのガキは』
「……五条悟と並ぶ呪術師。現在生きている特級呪術師4人のうちの1人さ」
『本当か…?』
「ああ、ほんとだよ」
そんな夏油の言葉に驚愕する火山の化け物。
こんな青年が特級呪術師。更に五条悟と並ぶほどの呪術師など到底信じられなかった。
しかし、
『ならばこの場で全員でかかればかなりの大打撃に……』
「それはやめとこう」
『何故だ』
その言葉に夏油は即座に否定する。
「今の戦力で彼と戦うのはこちらとしてもかなりの痛手だ。この中の何人かは死ぬことになるね、確実に」
『ならばワシ1人で』
「それも良くないよ。そもそも君と彼が戦ったらそれこそ人目に付く」
『……くっ』
「ファミレス内の人間殺しまくっといて人目を気にするのか。てか来ないのー?来てもいいのに。まあ来ないなら来ないで別にいいか。こっちも今はオフだから手を出す気は無いし」
「うわー、それはありがたいね。ま、私たちの会話聞かれてたと思うけど……そういうことだから」
「あっそ。まあ、その時が来たらきっちり殺しますよ」
「……祓う、の間違いじゃ無いのかな?」
「いや、殺すであってるでしょ。祓うも殺すも同じことだもん」
「確かに。それじゃあね」
手を振って去っていく夏油。それの後について行くようにほかの3人の呪霊も青年をチラチラと見ながらその場を後にした。
さて、食事も済み問題も去った。会計をしようと伝票を手に席を立つ。
青年はそのまま歩きレジまで行き、伝票を置き声をかけた。
「すみませーん。お会計ー」
「………え?あ、はい……あれ?私、今死んで……」
「どしたんです?疲れてます?」
「え?あー、いえ大丈夫です。えーとお会計ですね!……4万6720円になります!」
「………………え、高」
財布が軽くなる青年。
札が少なくなった財布に涙を零しながら"全てが元通りに治ったファミレス"を後にした。
なんとなくで書き始めました。
好評なら続きます。