自称ヒーラーの男 作:呪いの石仮面
感想書いてくれた人ありがとうございます。モチベになります。
その日の青年は映画館に足を運んでいた。
平日の時間。人なんてほとんど居らず、まばらに……と言っても青年含めて"6人"しかいない。
学校をサボった学生だろうか。まあ、かくいう青年も学校に行くのが億劫で適当に任務を受け、ササッと終わらせサボりの時間に当ててるのだが。
今見てるのはそこまで出来が良くないB級スプラッター映画だ。
別に好きな映画、好きな監督、好きなシナリオというわけじゃない。それならなぜそんなものを見るのか。
この青年が、【クソ映画に貴重な暇な時間を使うというのは1種の贅沢だ】という考えを持っているからだ。
呪術師というのはイカレている、というのは共通認識ではあるが少なからずこの青年もそれなりに頭がおかしい類の人間なのである。
しかしそんな中、3人の学生らしき集団が映画の邪魔をする。
会話に花を咲かせ、スマホをいじり、映画館でのマナーを守らない典型的な不良。
これには流石の青年もため息がこぼれる。
──仕方ない
そう思い、席を立ち3人の元へ足を運ぼうとした青年。
しかし、彼は途中でその動きを止めた。
『君達、マナーは守ろうね』
体中ツギハギの男がそんな言葉と共に3人の体に触れると頭部が変形した。
歪で奇っ怪な形。
「…………」
無言の青年。
振り返ったツギハギの男と目が合い……青年は目を逸らした。
任務でもない今はオフの時間。プライベートに仕事は持ち込まない主義の青年。
それにマナーを守らなかった学生も悪い。いい躾の機会でもあるか、とそんなことを思いつつ映画見終わってから直してやろうと席に戻った。
ツギハギの男もまた、仲間から聞いた話による特徴と合致した青年と気づいたが……手は出すなと釘を刺されている。
騒ぎを起こすわけにもいかない。ニコッと青年に笑顔を見せ映画館を後にした。
それの後を追うように外へと出る男に気づいたが……そこまで他人の世話を見るほどお人好しでもない。
青年は無視を決め込みつまらなそうに映画の続きを見ていた。
映画も見終わり、映画館を出る青年。
「……あ」
すっかりド忘れしてた。踵を返し、向かう先は頭が変形した学生3人。
手を当て頭を元に──
「………ん?」
──戻らない。
ただ形を変えただけ?違う。
"これが正しい形"として設定されている。
言わば変形では無く変更。
「……1回壊すか」
次の瞬間、学生3人は粉々に砕け散った。
まさしく粉微塵。いや、もはや塵も残さない程に細かく。
と思った次の瞬間には元通りに座っている3人の学生。
「……呼吸と心拍が復活しないな」
彼らの胸と口に手を当てる青年。直後にビクンと跳ねる学生の体。
青年が手を離すと規則的に胸が前後に動いている。正常な呼吸を確認できた。脈に手を当てても……規則的で問題は無い。
これを他2人にも同様に施す。
全てを終えスヤスヤと眠る3人を尻目に青年は次こそその場を後にした。
「……一応連絡しといてやりますか」
ポケットに手を突っ込み取り出すのはスマホ。
電話を開き、連絡帳一覧からとある人物へと電話をかける。
「………あ、しもしもー。オレオレ、オレだよオレ。………オレオレ詐欺じゃないから切らないでねー。………そうそう今東京………映画館にいんだけどね……え?………あー、サボリジャナイヨー。いやとにかくさ、呪霊がいてね?……そうなの3人殺しちゃってたのよ。………いや追いかけてないけど………だって今オフだし………まあ治したけど?………そゆこと、一応連絡はした方がいいでしょ。………え?あーまあ特級クラスだとは思うよ知らんけど………って後ろうるさくない?………ハイハイ、今から帰りますよって……お土産?龍と剣のキーホルダーでいい?………ッ!うるっせー。分かったってなんか美味しいもん買ってってやるよ。……ハイハイまたね歌姫センセー」
通話アプリをタスクキル。
電源ボタンをポチッと、スリープモードにしたスマホをポケットにしまい、次に取りだしたのは財布。中身を確認。
……さらに減る残金にため息がこぼれた。
「よろしくおなしゃす!」
「お久しぶりですね」
「…………」
青年の前にいる2人の男。
片やスーツ姿のサングラスをかけた男。片や青年と同じ学校……もっとも通っている場所は違う学生の青年。
「虎杖悠仁です!好みはジェニファー・ローレンスです!お世話になります!」
「私は……自己紹介はいらないでしょう。どうぞよろしくお願いします」
「あー、まあ頑張りましょうか」
学生、虎杖悠仁と1級術師、七海建人。
この前の青年が見つけた映画館の事件を共に追うことになった2人である。
「まあ、いつも通り自分はバックアップ中心に。怪我したらいつでもどうぞ。俺は回復役と思ってくれればいいので」
「……相変わらず非効率ですね」
「他もできることをこっちでわざわざやる必要も無いので」
「……分かりました」
そう言って七海はサングラスをかけ直した。
「先輩ッスよね?俺見たことないんスけど……」
「俺は京都校だ。ユウジは東京だろ?なら会うわけないよ」
「へー、京都にも呪術高専ってあるんスね!」
青年の虎杖悠仁に対しての第一印象は"普通"だった。
両面宿儺をその身に宿す。その話は聞いていた。何かあれば……何も無くとも将来的にトラブルを起こすような兆候を見ればこの場で処分を考えてはいた。
しかし、至って普通。
呪力の乱れも、精神の問題も何も無い。まさしく正常。
今はひとまず様子見を。そんな判断を下し、彼は七海に向かって口を開いた。
「とりあえず情報の共有から行きましょうか」
プライベートなら見逃す。仕事ならば殺す。
青年の脳裏に浮かぶのはツギハギ呪霊。……そして夏油の皮を被った何者か。
この2人が繋がっていたとしたら……そんなもしもが思い浮かび青年は面倒くさそうにため息をこぼした。
主人公の術式わかった人いそうだなぁと。