白梅に明くる夜ばかりとなりにけり   作:FOOO嘉

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ツクヨミにスリングショットを着せない本編の無能采配を許すな。


20◼︎⚫︎年8月25日

「暑い」

「夏だからな」

「塩水しょっぱい」

「海だからな」

 

 

打ち上げられたアザラシもといツクヨミは濡れてワカメのように乱れた髪の隙間から俺を恨めしく見上げる。

いやいや、お前が泳げないのも海がしょっぱいのも夏が暑いのもお前がトドなのも俺のせいじゃないだろ。

 

「ほれ、起きろジュゴン」

「え?誰が人魚姫だって?」

「おこがましいにも程がある」

「多様性の時代でしょ。今度のアリエルは幼女でも構わないじゃないか」

「アースラ役ならいけるんじゃね?」

 

どうでいいがアースラの化けた人間役美人だったよな。

 

「お前何で泳げないのに海に来たがったんだよ」

 

しかも、生意気にビキニまで買わせてやがって。

黒は女を美しく見せるとか言っていたが、いい値段がした。古くなったスク水切って縫い直してやろうという俺の案を蹴りやがって。

 

「夏といったら海だろう?そしてBBQ」

「お前みたいな奴が脱サラして農業始めて破滅するんだよ」

 

いい面しか目に入っていなさ過ぎる。

ドラマの見過ぎだし、半分食い意地張ってるし。

身体に張り付いた砂を払ってやると、仕方なく手を差し伸べてやる。

 

「何?この手は」

「わかるだろ?」

「岩陰に連れ込んでいやらしいことでもするつもりかい?薄い本みたいに。薄い本みたいに」

「こら、未成年何処からそんな知識手に入れた。そして、そんな薄い本は(そんなに)無い。泳ぎ教えてやるってんだよ」

「ここまで来て泳ぎの授業かい?」

「ここまで来て海に入らないのはもったい無いだろ。浮き輪買っておいてあるし。手を離さないでやるから」

 

ツクヨミは不服そうに膨れ面をする。

 

「それじゃあ、兄妹みたいに見られてしまうじゃないか」

「まるで今は兄妹みたいに見られていないみたいな物言いをするな」

 

本当にそうなら俺は今頃パトカーの中だ。

 

 

いや、周囲の大人の人達がチラチラこっち見てるのは違うよな?違うよな?

 

ツクヨミは俺の手と自分の手を暫く見比べると、フンと鼻を鳴らす。

 

「私としては海にはもう満足したから、パラソルの下でアイスを食べるかBBQでも良いんだけど?」

「満足するの早過ぎる。波に弄ばれてトドになっただけだろ」

「けど、君がどうしても私とまだまだ海を堪能したいなら…付き合ってあげるよ」

「はいはい、それで良いよ」

 

溜め息を吐くと、ツクヨミは楽しげに笑いながら俺の手を取った。

 

 

 

「ところで、後で日焼け止め塗り直してね?」

「焼き豚になるからな」

「そうそう、こんがり焦げ目が付いて…フン!!」

「痛ッ!?蹴るな蹴るな」

 

なんだかんだ浮き輪を付けたツクヨミと2時間近く泳いで海を満喫してしまった。

その後浮き輪が抜けなくなったツクヨミに腹が捩れる程笑った。

 

 

 

「…ヒリヒリする」

「すっかり焼けたな」

 

宿で寝そべったままのツクヨミは、痛々しいほどに身体中が赤くなっている。

シーツの上で全裸になったツクヨミの身体に化粧水を塗ってやる。

手のひらに普段の子供体温よりも熱くなった肌の感触が伝わってくる。

柔らかくて熱い餅をこねているようで少し面白いが、それを言うときっと拗ねるだろう。

普段なら「えっち」とか「ムラムラきた?」と聞いてくるであろうツクヨミがなすがままに身を委ねているあたり、本当にグロッキーなのだろう。

 

「お前、こうなるのがわかっててよくねだったな」

「…初めてだから仕方ないだろう」

「はぁ?」

「海も日焼けも全部初めてさ。初めてなら君とが良かった。それだけだよ…」

「ふーん…」

「…」

「…」

 

ぴちゃぴちゃと化粧水を手のひらに出して、滑らかな肌に塗っていく音に、古びた旅館の時計の針の音だけが重なる。

開け放した窓から波音と海の匂いが潮風に乗って流れてくる。

 

こういう時間は悪くない。

少女の熱った身体を出来るだけ丁寧に撫でてやりながらそんなことを思った。

 

 

「もしかして襲いたくなった?」

「低温調理されてる肉みたいな状況でよく言えるなお前」

 

台無しだよ。

 




チラチラ見ていた大人達は美男美女兄妹にテンション上がってるか、ロリコンかです。
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