シャーレ警備員は相談役……?   作:絆ストーリーを増やし隊

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case1『先生』の場合

 あなたはキヴォトスという場所を知っているだろうか。

 

 学生都市キヴォトス、簡単に言うならばきらら版GTA。

 透き通るような透明感のあるかわいい学生達が重火器を持ち、各々の青春を謳歌する。

 施設爆破、銀行強盗、土地爆破、銀行強盗、ハイジャック、国家転覆、資金横領、銀行強盗、エトセトラ、エトセトラ……

 

 日常的に弾丸が飛び交うのは可愛いもので、手榴弾、対物ライフルなんて朝飯前、戦車や迫撃砲すらも容易に飛び交う世紀末である。

 

 そんな場所で生活する生徒や住人もイカれたもので、銃弾が直撃したところで“いてぇ! ”で済ます強靭な肉体や神秘? に守られている。

 

 このようなイカれた場所に誰が好き好んでこようというのか、普通は撃たれりゃ死ぬんです、いてぇ! ですまねぇんです。

 

 さて、どうしていきなりこのような一般常識(ただしキヴォトスに限る)の話をしだしたかというと……居たからだ。その頭のおかしい人物が。

 

 “ねぇ、聞いてる? ”

 

 この目の前の男である。

 

「聞いてますよ、『先生』」

 

 “ならいいんだけど”

 

「先生が底抜けのお人好しでド阿呆って話ですよね」

 

 “全然違うけど!? ”

 

 俺が『先生』と呼んだこの男、この男こそが俺が先程述べた頭のおかしい人物に他ならない。

 失踪した連邦生徒会長殿からのお願いで“外”の世界からやってきた人間。

 複数ある学園において、“教師”と“生徒”しか立場が存在しなかったところに現れた“先生”という役職を持つ存在にして、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 この銃撃戦が三度の飯よりも多いこのキヴォトスに舞い降りたのにも関わらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「冗談です、ロボットジョークです」

 

 “君ねぇ……”

 

「先生は脆いんですから、刺される前に腹に雑誌でも詰めとくと良いですよ」

 

 “なんの話!? ”

 “生徒についての相談だよ! ”

 

「あぁ、そうでしたね」

 

 先生は苦笑いしながら溜め息をつく。どうやらかなりお悩みのようだ。

 この先生が赴任してから暫くが立つが、この先生は生徒のためならばあらゆる難局に立たされようとも突っ込んでいく姿を幾度も見せられている。

 特につい先日の“アビドス”での一件はヤバかった。たった一人の生徒のためにあのカイザーコーポレーションに喧嘩を売り、見事奪還して見せた。

 あの後は派手にヤバかった。まさかPMC代表取締役殿が一介の平社員にまで降格させられる事態になるとは……それでも首にしない、辞めない辺りこの会社の更なる闇を垣間見た気がして背筋が凍ったものだ。

 

 そんな先生の悩み事はやはり生徒に関する事、その上でこのタイミングだとすると。

 

「アビドスの子達についてですか」

 

 “うん、正確にはそのうちの一人” “あと、もう一人同じような頑張りやさんが居てね”

 

 生徒相手には見せない、でも生徒相手にしかしない柔らかで、優しい表情を浮かべる先生。

 たしかこういうのを慈愛に満ちた、というのだろう。

 

「はぁ……構いませんがね、先生には今一度俺の職業を思い出していただきたいのです」

 

 肩からぶら下げたAR、腰に差した拳銃に胸元には無線機。着ている制服には“連邦捜査部S.C.H.A.L.E”という刺繍が編まれており、その全てが真新しい。

 極めつけは胸の名札、その肩書きには“S.C.H.A.L.E警備部”と刻まれていた。

 

 “いつもありがとう! ”

 

「そうじゃないんですよね!」

 

 まぁ、そろそろ本音8割のコントは終わりにしよう。このままだと業務が滞り残業をさせられる可能性がある。

 

 “じゃ、まず始めに相談したいのは……”

 

 

【case1-a 『先生』:とあるくじら少女の睡眠不足】

 

 “その子はとある委員会でただ一人の先輩なんだけど” “日がら日中ずっと眠そうでね、どうにかしてあげたいんだけど……”

 

 俺の脳裏には今のところピンクのアホ毛がうへうへ言っている光景が浮かんでいる。多分間違ってない。

 

 “やっぱりこういうのって睡眠グッズとかをあげたら良いのかな? ”

 “とかを考えたんだけど、やっぱり睡眠って人それぞれの形があるからね”

 “変なものあげてしまって気を遣わせるのもちょっとね……”

 

 さてどうしたものか。

 正直に答えるのならだが、先生が特別なことをしなくても先生が先生らしくその子と向き合っていくのが一番な気がするが、それだとダメなのだ。

 そもそも何で日中そんなに眠いのかすら、先生はまだ分かっていないのだが、そこについて深く突っ込まないのは先生は踏み込みすぎると考えているからか……となると。

 CPUをフル回転させ、()()()()()()()()()丁度良く騙せそうな着地点を模索する。

 

「無難な、無難な? 答えになりますけど」

 

 “今疑問符ついたよね”

 

「問題の解決方法は睡眠自体の質を向上させるか、その時間を増やすかになります」

 

 “そうだね”

 “そこで私は睡眠の質の向上を考えたわけだけど”

 

 ここからが問題だ。今現在の先生とその推定ピンク髪アホ毛うへうへ少女との距離を見定める必要がある。

 正確に見極めた上でその半歩先、踏み込みすぎるラインを……

 

「最後にその子と話したのは何時です?」

 

 “えっと、今日の朝のモモトークかな? ”

 “その前は寝る前のモモトークだったよ”

 

 ……えっと、そうですね。

 

「結構な頻度ですね??」

 

 “そうかな? ”

 

 今何時だと思います? 朝の8時です。ついさっきじゃん。絶対に昼もくるやつじゃん。

 

「そうですよ。今は置いときますけども」

 

 それならそれでこの手段で良さそうか? 

 先生が実行するかは別の話だけど、もしまかり違って通ったのなら推定アビドスくじらなら引いてしまって微妙な空気になってしまうだろう! 

 

「一緒にお昼寝とか誘ってみるのはいかかです?」

 

 “……じゃなくてお昼寝? ”

 

 先生はその言葉の意図が分からずか首をかしげる。

 

「そうそう、天気が良い日にね。段ボールでも下にひいて木陰でゆっくりと眠るんですよ。勿論その子と先生の二人きりでね」

 

 多分一番これがキくと思います。

 

 “それ、私が居る必要あるかな? ”

 “ホ……その子にその寝方を勧めるだけの方が良さそうな気がするけど”

 

「阿保ですね先生」

 

 “またアホって言った!? ”

 

 おっと、口が滑った。でも向こうも滑らしかけてたしノーカンノーカン。

 ここは隠さず言っても良いが信じない可能性があるからそれっぽいこと言って丸め込むか。

 

「いやいや、一緒に寝る人が居るって安心できるんですよ。猫とか犬とか集まって眠るでしょ? やっぱり動物って本能的にそうなんでしょうね」

 

 “うーん……”

 

「それに先生も言っていたでしょ。その子はその委員会でただ一人の先輩だって。一緒にお昼寝しようと誘うことも難しいんではないですか?」

 

 “それは、確かに? ”

 

「別に体をくっつけて眠る訳じゃないんです。まぁ、手は握れるくらいの近さは必須ですが。一度くらい試してみるのはいかがです?」

 

 “そうだね、一度その子に聞いてみるよ”

 “……? ”

 “今何かおかしかったような? ”

 

 気づくな気づくな、このまま押し流す……! 

 

「最初は照れ隠しで断ると思うのでもう一度聞いてみてください。俺の予想が正しければ二度目で必ず了承します。彼女なら」

 

 “なんかもう実際に見ているかのように言うよね君は……”

 

「気のせいですよ」

 

 気のせい気のせい多分きっとメイビー。

 

「この子に関してはこのくらいですか?」

 

 “そうだね、あとは自分で何とかしてみるよ”

 “ありがとう”

 

「いえ、生徒さんの為の相談ですから。俺の意見で良ければいくらでも参考程度に聞いてください」

 

 俺の普通の提案を良い感じに解釈して生徒さんの脳を焼くのがこの先生の先生足る所以だからな。

 

 正直やりすぎな提案をするくらいで丁度良い筈だ。

 

 先生、あなたにはちょっと距離感近すぎて“気持ち悪い……”と感じてもらわないといけないのだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 “頼りにしてるよ、で……”

 

 “もう一人の子なんだけど”

 

「ここまで来たら最後まで付き合いますよ……」

 

 “助かるよ! ”

 

 普通に放置したらクリティカルヒットを連続して順当以上に絆を深めて帰ってくるからな……

 

 

【case1-b 『先生』:頑張りやさんにご褒美を】

 

 “この前にであった子なんだけど”

 “その子の委員会がそれはもう激務でね”

 “休みがないくらいで正直心配なんだけど……”

 

 先生は腕を組んで深く考え込む。

 

 “多分真正面から休もう、と言っても休んでくれない気がするんだ”

 “自分がやらなきゃ、って言ってね”

 “それがその子のやりたいことなら応援したいんだけど……何か私に出来ることはないかなって思ってね”

 

 頑張りやで休む暇もない位忙しい。で最近先生がであった子で言うと……白いもふもふした毛玉が脳裏を過る。

 

 “いたわるのが一番なのは分かってるんだけど……”

 “けど特別なことするのは嫌がる子でね”

 “本音をぶつけても中々信じてくれないし、手強いね”

 

「その子とは結構話すんですか?」

 

 “そうだね、仕事終わりに会いに行ったりはしてるよ”

 “向こうの都合がつく時間がそれくらいだから”

 

 相変わらずのブラック労働に涙が出そうだ。出ないけど。

 それにしてもこの聞き方だとおそらくは……

 

「ある程度の候補はあるんでしょう?」

 

 “まぁ、少し位は”

 

「お聞かせ願っても?」

 

 “そうだね。今のところ夜にしか会えていないからね”

 “何かにかっこつけて昼間に会えないかなって”

 “難しそうだけど”

 

「へぇ、デートですか」

 

 “そうなるかな”

 

 否定もせずにあははと笑う先生。なんというか余裕がある、同じ大人からしてもカッコ良いと思う。

 

 こんなの男慣れしてない女学生に浴びせて良いイケメンオーラじゃないだろ。脳が破壊されるぞ。

 

 嫉妬すら起きない感想は置いておき、正直なところプランが出来上がってるのなら言うことはない。

 下手に口出して違和感を持たれたら、ようやく構築できたこの立場を脅かされる可能性があるからな。

 

「それで良いと思いますよ。場所はどこにするんで?」

 

 “えっと”

 

 先生は端末をいじり、一枚のホームページを開く。

 そこにはデパートが表示されており、様々なショップが内包されているのがわかる。

 

 “ここ、昼間の平日だと人が少ないらしくて”

 “彼女は人目を気にしてしまうから、学校から近くてのんびり出来るところならここかなってね”

 

「いいじゃないですか」

 

 “そう言ってくれるのは嬉しいけど”

 “大人っぽい子の好みそうなものってわかるかな? ”

 

「大人っぽい子の、ですか」

 

 脳裏に浮かんだ悪魔的白毛玉を強くイメージする。

 ……あの子先生が絡んだら何でも嬉しそうにすると思うけどなぁ。

 それでも、確か……確か……あれとかはどうだったか。

 

「香水、とかはどうですかね」

 

 “香水? ”

 

「ええ、大人っぽい子なんでしょ? ならメイク用品とかありますけど……一緒に買いに行くなら香水とかいかがですかね。確かこのデパートの中にもあった筈ですよ専門店」

 

 “本当だね、でも香水か……”

 “難易度高くないかな??? ”

 

「んなことないですよ」

 

 先生なら簡単でしょ? 

 まぁ、初デート? で香水をプレゼントするなんてよっぽど好感度稼いでないとドン引きされる筈だ! 

 そのまま言うと勿論却下されるので誤魔化していく。

 

「口紅とかファンデーションとかよりも直感的な匂いの方が良し悪しがわかると思いません?」

 

 “……確かに? ”

 

「ついでに言うとお互いにプレゼントしてみるのも面白いかもしれませんね」

 

 “それって……”

 

 “お互いに似合っていると思った匂いの香水を買って交換するってことかな”

 

「そう言うことです、香水なら委員会活動中もつけてておかしくありませんし何時でもこの時の事思い出せるでしょ。デートの締めはこれで決まりです」

 

 別の意味でキまるかもしれないけど。

 

「あと、その子重度の頑張りやさんなんですよね?」

 

 “うん”

 “手伝ってあげたいけど、その気持ちは応援したいと思ってる”

 

「でも過度な褒め言葉は受け取らないと」

 

 “特別扱いは気が引けるみたい”

 

「だとしたら普通に扱うのはいかがでしょうか」

 

 “普通に? ”

 “それって……”

 “あっ、なるほど”

 

「分かっていただけましたか? 俺の言いたいことが」

 

 “うん、これなら……”

 

 そう、つまり……

 

 “遠慮させずに甘やかせる! ”

 

 無理に褒める必要はない! 

 

 ……あれ? 

 

 “普通に凄いことしてるんだから普通に褒めれば良いんだ”

 “他の生徒がやっていたら褒めるぐらいのラインでの褒めならば遠慮はしない……いやさせない! ”

 “でないと他の子を褒めることが出来なくなっちゃうからね! ”

 

 先生は天恵を得たりとにこりと微笑む。

 

 俺はやっちまったかもしれない。

 

 可愛そうに……某委員長殿はこのスパダリ先生に目をつけられたばかりにでろでろのどろどろに甘やかされてしまうのだ。俺のミスで……

 もしかしたら……取り返しがつかなくなるかもしれないけど、その前に先生が見切って止めるだろう。

 

 “やっぱり相談して良かったよ”

 “ありがとう! ”

 

「お礼なら今度また生徒達の話を聞かせてください。ついでにエンジェルマートで高級お菓子買ってきてください」

 

 “任せて! ”

 

【case1『先生』終】

 

 ふと時計を見る。

 話し始めて結構時間が経ってしまっているようだ。

 そろそろ冗談でもなくガチで業務に支障がきたしてしまう。

 

「先生、そろそろ」

 

 “え、あ!? もうこんな時間”

 

 “まずい! 戻らないと! ”

 

 “今日は当番でユウカが来ると思うけど! 多分14時過ぎに来ると思う”

 “それまでには帰ってくるつもりだけどもし早めに来ちゃったら中に通しておいて! ”

 

「はいはい了解行ってらっしゃいませー」

 

 シャーレの仕事を手伝ってくれる“当番”として誰が来るかを業務連絡し、先生は己の事務所に駆けて行った。

 多分昼前まで事務作業をし、その後アビドスに向かうのだろう。件の子とお昼寝をかました後に帰宅、当番の早瀬ユウカと残りの事務作業と何か要請があった場合はその対処をし、時間が来れば当番の子を家に帰す。その後も黙々と事務作業をやり続け……何時もシャーレの明かりが消えるのは夜遅く。

 

 いやぁ、正気を失う激務である。これでまだフル回転でないと言うのだから。

 そんな俺も自らの仕事を行うべく警備員室へ戻る。

 

 さぁ、本格的に仕事を始める前に報告書を提出しなければ。

 

「連邦捜査部S.C.H.A.L.E、先生についての報告書っと」

 

 S.C.H.A.L.E警備部と刻印された名札を外す。

 さて、先生がデスクにつくまで後少し。

 この警備部に就任している俺が存在し、()()()()()()()()席に着いている筈であるこの瞬間だけほんの少しの間ならセキュリティを一部ダウンさせられる。

 手元の端末を操作し、必要最低限抜き出せた情報と報告書を載せたメールを用意、送信と押すだけの状態で待機する。

 

「すみませんね、先生。あなたの事は嫌いではないんですが……これも仕事なんです」

 

 手早くセキュリティシステムの一部をダウン、送信を押し、数秒。送り込めたことを確認してすぐにセキュリティを元に戻す。

 

「後は痕跡を消すだけっと」

 

 自前のソフトを使い、送信したという痕跡を消し去る寸前、送り先をもう一度だけ確認する。

 C・C・R……つまりは

『カイザーコーポレーション』

 そう書かれていた。

 

 そう、俺こと連邦捜査部S.C.H.A.L.E所属警備部隊長は……

正体不明の“先生”と連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの調査、内部工作を命じられた

 

 カイザーコーポレーションのスパイである。

 




絆ストーリーが増えた結果、原作よりも好感度がはね上がった生徒達が見たくなったのです
見えてる闇は全て先生と生徒の♡で踏み潰される(無慈悲)

次回、セミナー会計襲来……!
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