ゼーリエに転生したが、教え子たちが可愛すぎる   作:mazuton

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ゼーリエが好きなので書き始めました。
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1 転生は突然に

 気付いたら、知らない場所で少女の姿になっていた。それも人間ではなかった。

 池が近くにあったので水面で自分の姿を確認してみて、どうやらエルフに転生したようだと把握する。なんだか耳が長いし。

 

 元々、日本人であったことは思い出せるが、それ以外の自分自身に対する情報がいまいち思い出せない。周りは自然が広がっており、文明が存在するか不明であった。

 しかし、そんな状況であっても慌てる感じもなく現状を受け止めてしまう。元々こんな性格だったかはわからないが、随分感情の起伏に薄い感覚がある。慌てずにいられるのはありがたいが、こんな自然だらけなところでリラックスしてもいいことはない。このままでは獣に襲われたり、簡単に餓死してしまう。

 冷静に思考を回し、この場所にいても仕方ないと思い至る。適当に歩いていると、人が通ったような道をみつけ、道沿いに歩いていくと運のいいことにすんなり街にたどり着いた。そこから、紆余曲折を経てこの世界が魔法がある世界であること、自分が魔法の才能があることがわかった。

 

 日本における人生に対しての目的が明確にあったわけではない。しかし、こちらの世界には魔法がある。魔法は人を殺せるものから、生活のほんのちょっとした手間を省けるものまで多種多様であった。それなら、科学が発展した世界から転生してきた身としては、科学では到達し得ない領域に手を出せるのではと考えた。

 

 エルフの寿命はよくわかっていないが、話を聞くにどうやら数百年は当たり前のように生きるらしい。魔法の才能があり時間もある。それならば、魔法を覚えるしかない。

 そうして、満足がいくまで自分の持てる時間のほぼ全てを魔法習得に費やすことにした。幸い、この体は燃費が良く、そこらに生えている木の実を食べられれば生きるだけならできるとわかった。あとは浮浪者に間違えられない必要最低限の身だしなみさえ整えていれば全ての時間を魔法習得に費やせられる。

 

 魔法を習得するうえで、最初は知識を得るのに苦労した。なぜか、こちらの世界の言語を理解できていたので本を読むなど学習の上での難関を最初から突破できていた。しかし、どうやらこの世界では表立って魔法を研究することは禁忌とされているらしい。それならば自分で頑張って編み出すしかない。数少ない魔法の本があれば読んで、魔法を試して、改良する。わからなければ、色々試す。どうせ時間はあるのだ。トライアンドエラーを延々と繰り返した。簡単な魔法から始めて、一個ずつ知らない知識を潰していく。周りから狂人だと疑われたり、魔女狩りされるのを恐れて、力をつけるまでは一つのところに定住はせず、この世界の歴史も学ぶためにたまに世界を旅した。

 

 あらゆる修練を経て、初めて手からライター程度の火を出せたとき、感情が薄くなったこの体でも感動でプルプルと震えたあと、小さくガッツポーズをした。火を出すことなど道具を使えば誰にでも出来る。しかし、それを自分の力で成し遂げた。それは実用性とは別なところで魔法への愛着を持たせ、更に自らを魔法習得に傾倒させていった。

 独学に限界を感じ、魔法をより効率的に覚えようとしても有用な魔法は当然、大半が秘匿される。魔法を教えてください、と知らぬ者に言われて教えるものはいない。それならば、こちらから人々にまず対価を与える必要がある。

 最初は、そこらにいる人が困っているところを覚えた魔法で助けてあげた。お礼の代わりに魔法について知っていることを聞いて回る。

 たまに、領主や貴族から目を付けられることもあり、自分の身の安全を確保することの重要性を再認識し、魔法を覚えるだけでなく、自分の魔力の研鑽にも常に努めた。

 

 安全といえば、どうやら魔族という魔法を使うのが専売特許の種族がいるらしい。エルフがいるのだ、ドワーフやら魔族がいても不思議ではない。魔族は非常に厄介であった。倫理観がなく、こちらの命を呼吸をするように奪いに来る。魔法を覚えているとはいえ、こちらは唯の少女だ。油断をすればあっさり殺されてしまう。

 一度、子供の姿をした魔族に油断したところを半殺しにされ、決して魔族に気を許さないことを心に誓った。奴らは自分たちとは別の生き物だ。死にかけてからは、敵を倒す魔法をたくさん覚え、とにかく必死で研究をした。毒の魔法。雷を出す魔法。自らの身体能力を向上させる魔法。記憶の中にあった、創作の世界にある魔法を実現できないかと色々なことを闇雲に試した。試しては失敗し、試しては失敗し。たまに上手くいく。そういったことを延々と繰り返しているうちに、気づくと周りにいる人々では成し遂げられない領域にまで魔法の練度を高め、そこらの魔族には負けないようになっていた。

 一つの街に根を張るようになって初期のころは、少女の見た目から街の人々に可愛がられることもあったが、魔法を際限なく覚え、打算の人助けをするうちに賢者のごとく崇められるようになった。

 

 面倒になったので、逃げた。

 別に、魔法があれば一人で生きていけるし、どこでも生活できる。変に目立って貴族やら魔族やらに目を付けられるのも鬱陶しかったのもある。最初の100年近くを生きるための魔法習得に費やし、そこから数百年を趣味と凝り性なところもでてきて、生活魔法から何の役にたつのかもわからない魔法も覚えた。

 

 何百年経ったかわからないタイミングで。流石に飽きてきた。頑張りすぎたかもしれない。誇張抜きでこんなに魔法特化で極め続けた奴はいないんじゃないか。むしろ居てほしい。魔法について語り合いたい。私より頑張った奴はいるだろうが大体は寿命で死んでるだろう。エルフは強すぎる。

 最近は目新しい魔法を見つけることもできていない。この前覚えた魔法など、爪を切りすぎたときにちょっと伸ばす魔法だ。便利でうれしくはあるが、最初に魔法を使えたときの喜びを久しく感じていない。ただでさえ感情の起伏が小さいのに、今はもう無の境地だ。あまり健全ではない。

 

 そこで、本格的に人に魔法を教えることにした。大っぴらに教えると貴族が鬱陶しいので、孤児を拾って弟子にして教えてみた。最初は自らの経験の集大成をしっかりと余すことなく教えた。

 

 弟子が体の色々なところから血を出してぶっ倒れた。

 おかしい。人間だったころの感覚もあまり思い出せないが、寝る時間と食べる時間を確保さえすれば死にはしないのではなかっただろうか。人間には時間が足りないので、記憶を植えこむ魔法を使ってみたのだが相性が悪いらしい。やはり、譲渡する形にしないと駄目なのかもしれない。弟子を回復し、ほかの方法を試そうとしたところで異議が唱えられる。

 

師匠(せんせい)、勘弁して!死んじゃいます」

「大丈夫だ。人間は栄養と睡眠が十分にとれていればそんな簡単には死なない。死にかけるくらいなら私が治してやる」

「そういうことじゃないです……師匠」

 

 魔法を覚えてから数百年はまともに人と会話をすることなく、たまに魔族を滅ぼしたりするくらいだったので、人に魔法を教えるのが楽しい。人に教えることで、自分だけで学ぶのとは別の視点が入るのでとても新鮮だ。

 

「お前は才能がある。私を超えられるかもしれないぞ」

 

 そんなに意識したわけでもないが、弟子は結構、というかかなり才能があった。無理やり詰め込んだら先ほどのように潰れそうにはなるが、魔法の根幹であるイメージがちゃんとできている。

 

「超える前に死んじゃうよ」

「死んだら殺してでも生き返らせる」

「もうやだ、滅茶苦茶だよこの師匠」

 

 弟子が半泣きになっているが、仕方がない。この世界は弱者に厳しいのだ。自分で生きる術を身につけなければあっさり殺される。心を鬼にして、たまにウキウキしながら弟子に魔法を伝授していった。

 最初は言葉だけでも敬う様子があった弟子であったが、身長を抜かされてからか、お姉さん風を吹かせてくるようになった。別にいいのだが、ほんのちょっとイラっとしたので、魔法を半泣きになるまで詰め込んだ。詰め込んだ分吸収するので、楽しくて仕方がないのだ。優秀な弟子が悪い。

 

 

 ある日、弟子が旅にでると言い始めた。自分には目的があると。

 

「もったいないな。教えたいことがまだ山ほどあるんだが」

「勘弁して。師匠の求めるところまで行ったときは私死んじゃってるよ」

 

 そういって、あっさりと私のところを去っていった。

 一番弟子が居なくなってしまったので、弟子をもうポンポンとることにした。もう、貴族とか魔族のことは気にしなくていい。かかってこいの精神だ。少し自棄になっている自分がいることに気づく。

 正直、寂しい。あんな才能のある弟子、なかなかいないのに。割と、私は人に教えるのが好きなのかもしれない。

 

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