ゼーリエに転生したが、教え子たちが可愛すぎる   作:mazuton

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5 魔族

 ゼーリエの一番弟子であるフランメは、人類の魔法の発展に大きく寄与した。人間は彼女の働きによって、最終的には誰もが魔法を使える世界へと進んでいくだろう。エリーゼとしても、魔法が広がることに異論はない。ゼーリエは才能のあるものにだけ広まればいいと考えているようであったが。

 人類への魔法の普及の必要性に密接に関わりがあるのが魔族の存在だ。基本的に、この世界の人間が魔族に出会えば殺される可能性が非常に高い。なぜならば、人類とは見た目以外は根本的に異なり、ごく自然に人間を騙し、殺めるように種族として進化しているからだ。

 魔族、その大半を率いる魔王の討伐に関してフリーレンに任せていたゼーリエであったが、自らの近くでみかけた魔族は駆除していた。人類に対して甚大な被害をもたらすことのある魔族。ゼーリエは積極的に狩りに行くことはしないにしろ、近くにいて気持ちのいいものでもない。家の中に出てきた虫をそのまま放置するのは気味が悪い。そういった感覚であった。

 

 魔族には悪意や罪悪感といった概念が存在しない。一例として、

 

「おかあさん。助けて」

 

 少女の姿をした魔族を追い込んだときに、命乞いとしてそういった言葉を発する。だがその魔族に母親と呼べる関係性の者などおらず、単純にその言葉を発することで人間が見逃す可能性があがることを知っている。そして、客観的に見れば引っかかるわけがないと思っていても、人間に存在する倫理観によって、その戯言を信じてしまう。

 なぜ、そのようなことが起こるのかといえば、魔族を人間の枠組みにあてはめてしまうからだ。人間ならこう考える、人間ならこうする。そういった誰もが無意識に持つ当たり前の常識が魔族にも通じるという誤解。

 

「だから、魔族を見つけたときには基本的に即殺す。一匹みつけたらうじゃうじゃ出てくると思え」

「師匠、そんな虫ではないのですから」

「それがズレている。奴らは虫だ、と思っていた方がまだ誤解が減るくらいだ」

 

 弟子の一人のカピエレが、魔族に対する見積が甘いので諭すように伝える。

 騙されたと気づいてからでは遅いのだ。弟子たちは大半が人間である。当然、不慮の事故や戦火によって命を落とすこともある。魔法は有用ではあるが、万能ではない。死んだ人間は生き返らせられない。いつかは死んだ人間を生き返らせる魔法も出てくるのかもしれないが、現段階ではそのような魔法は見つかっていない。

 

「お前は昔から優しい子だったな。それは美徳であり、お前を簡単に殺し得ることを理解しておけ」

「はい」

 

 カピエレは、昔から魔法を知ることに貪欲であった。私の後ろをちょこちょことついて回っては、わからないことは何でも聞いてきた。しかし、生真面目な性格や常識に囚われるふしがある。魔法使いの戦いにおいて、常識に囚われることは相手の実力を見誤り、騙され死に至ることにつながる。優しさ、良心は特に魔族に対しては持ってはいけないのだ。

 

 

 

 

 

「だから、あれだけ口を酸っぱくして言っていただろうが」

「申し訳ないです、師匠」

 

 カピエレは、ぼろぼろになりながらゼーリエの前に立っていた。彼女も馬鹿ではない。ゼーリエの教えを学ばず魔族に騙されるような奴ではない。その腕に抱えている子供を庇い、本来なら負うことのなかった傷を得るはめになったと容易に想像できる。カピエレには才能があるが、実戦経験があるわけではない。

 単純に、そこで出会った魔族がカピエレにとって厄介であったのもある。人間を姑息な手でだます魔族もいれば、ただ力が強く、使う魔法が強大なものもいる。今回は後者であった。死んだ人間を生き返らせることはできない。人間はあっさりと死ぬ。ゼーリエにとっては、人類の時間は魔族に殺されなくとも無に等しい。だからこそ、弟子がそんなに生き急いで殺されるのも気に食わない。

 

「私がいなければ死んでいたぞ、馬鹿弟子が」

 

 カピエレの傷をいやしながら、目の前に現れた巨躯の魔族に相対する。ゼーリエも状況を正確には理解していない。しかし、お使いに行かせていた弟子が、魔族に手負いにされたらしいことだけがわかる。

 その魔族は、ゼーリエの姿と纏う魔力を確認して、侮りの様子を隠さなかった。

 

「少しは手ごたえのある人間がいたかと思えば、さらに弱そうなやつが来たな」

 

 ゼーリエはつまらなそうな顔をしながら話しかけてきた魔族を眺める。

 

「魔力も雑魚。こんなのでは戦ってもつまらんではないか」

「お前のような単細胞な奴が魔族にいるのだな」

「小童が。魔力は魔法を使うための全ての源だ。魔力の小さなものは力が弱い。力が弱いものは他の物を従えることは出来ない。魔力がないというのはそれだけで存在価値が下がるのだ」

「ほう、そうなのか」

 

 ゼーリエは冷えた表情を隠さない。ゼーリエは体から出る魔力を抑えていた。確かに、抑えている魔力に揺らぎがあると魔族には気づかれやすい。しかし、気づかなければその魔力を信じてしまう。魔力の大きさをステータスとしている種族だ。魔力の大きさですべてを判断するという穴がある。それは魔法使いの戦いにおいて、致命的な欠点だ。その欠点が目の前の魔族だけなのか、種族としての習性なのか検証を・・・。いや、孫弟子にまかせたのだから追求はやめておこう。少なくとも、どうやら目の前の魔族は相手の力量を測ることは出来ていないらしい。

 

「お前のほかにいないのか。魔族は」

「ここら辺一体を仕切っているのは我だ。我に従う魔族も多く困っているところだ。魔力の乏しいお前には用はないので死んでもらうが、後ろにいる奴は多少魔力が強く見どころがあった。我が使い潰してやろう。有難く思うがいい」

「そうか」

 

そういって、ゼーリエは手を魔族の方へかざす。

 

「何のつもりだ」

「今から、私は火の魔法を使おう。私が最初に覚えた魔法だ。奇をてらったことは一切しない。避けるなり受け止めるなり好きにするといい」

「愚か者が。誰が小童ごときの初歩的魔法を避ける必要がある。そもそも、魔法が発動するとも思えんが」

「言ったな。それなら、死ぬがいい」

 

 ゼーリエは宣言通り、基礎的な火の魔法を魔族に対して放った。

 

「ふん、こんなもの、避けるまでもない」

「魔族が全員、貴様のように頭が悪ければ孫弟子も楽で仕方なさそうだが」

「何を馬鹿な。な、なに!我に火など効くはずが」

「魔法はイメージがものをいう。この炎にも満たない灯程度の魔法が、貴様を燃やし尽くすまで消えることはない」

 

 魔族に届いた火の魔法が、魔族の体を覆いつくして青く輝きその身体を焼き尽くし始める。悶える魔族が必死に振り払おうとするが、この火はそういった物理的な性質を持ったものではない。そこから一気に火力が増して魔族を包み込んだ。

 叫び声をあげながらのたうち回った後、徐々に動きが鈍くなっていく魔族。そこから放たれる青い光に照らされたゼーリエは、最初から変わらぬ視線でその光景を見届けた。最期、魔族であった黒い炭のようなものが風で崩れるように流されていく。

 強者による弱者の蹂躙。近くで見ていたカピエレは、ゼーリエの見せた一切の情け容赦のない攻撃に畏敬の念と恐怖を感じていた。普段の修行では厳しい面もあるが弟子に対して優しいことがカピエレにはよくわかっていた。その優しさが、魔族に対しては一切感じられなかった。魔族は確かに恐ろしい。ゼーリエにとっては何でもなくとも、カピエレにとっては間違いなく脅威であった。

 しかし、その脅威をいともたやすく葬り去ることのできるゼーリエも、間違いなくこの世界における異端であることをカピエレは理解した。

 

「帰るぞ。その子供を安全な場所に移しておけ」

「は、はい」

 

 そんな彼女に師事して、自分は何かを成し遂げることができるような強さを得られるのか。少なくとも、ゼーリエよりも強く、弟子に思いやりがある人を知らない。長い生を持つゼーリエの記憶に残るような魔法使いになりたい、そう思ったカピエレはこれからより一層魔法を極めるため修行すると心に誓った。

 




魔族絶対殺すウーマンは、
魔族への恨みにプラスして師匠から弟子に受け継がれていた説。
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