ゼーリエに転生したが、教え子たちが可愛すぎる   作:mazuton

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9 狂信者

 最近、カピエレの様子がおかしい。

 師匠流石です、と私を思ったより凄いように見てしまう状態が続いている。他の弟子たちにも触れまわる空回り状態だ。そろそろ、放置はやめようと思い始めた。最近は目からハイライトが消えてきた気がする。

 どうにもカピエレがおかしくなった時期に合わせて他の弟子たちも同調していた気がするので調べてみると、私に関する前世で言うファンクラブのようなものが出来ていた。活動は私を愛でるための会。会の設立者はどうやらカピエレではなく、フェアルという弟子だ。私の言うことを、はいイエスごもっともで盲信するところがある男だ。修行で傷ついても喜ぶので少し変だとは思っていたが。

 特に会の存在を隠すこともなく堂々と活動していたので、フェアルに話を聞きにいく。

 

「ゼーリエ様、わざわざ私めフェアルに会いに来てくださるとは感謝の極みでございます」

「前にもこんな事あった気がするな」

 

 狂信的なものを生み出してしまう原因が私にあるのかもしれない。そう思ってしまうほど既視感のある展開だ。フェアルは私がいかに素晴らしいかをわざわざ本人に説明してくる。それは誰のことだ?というエピソードを披露してくるのを、一応うんうんと聞いておく。褒められているのはわかるが、盛りすぎに感じる話にゾクッとしてしまう。

 

「ゼーリエ様のご尊顔をいつでも見られますよう、銅像を作成し拝められる建物を作ろうと考えております」

「一刻も早くやめてくれ。そんなことをされたら気軽に辺りを歩けなくなる」

 

 というか、弟子たちに崇め奉られる存在というのはどうなんだ。崇高な存在だと思われることでいいことは特にない。欲しいものはそんなことをしなくても自分で手に入れられる。

 

「すでに試作品を作りました、ご覧ください」

 

 なんか布が被されたものがあるな、とは思っていたが。フェアルの近くにいたファンクラブの一員が布を取り除くと、そこには私と完全に同じサイズの銅像があった。仕事が早いな、いつの間に作ったんだ。写真もないのに、鏡で見る私の姿そのままだった。自分の銅像に関することでなければ褒めていたかもしれない。その熱意を魔法習得に費やせ、と思いつつ、私の言う事に従い真面目に修行は受けているし、今回の件も私のためにやっているという思いは伝わってくるので文句も言いにくい。

 どうやって断るかを悩んでいると、そこに修行でヘロヘロになったヴィセンがやってくる。そして、私の銅像を見つけるなり、ウェッという顔をした。

 

「うわぁ、なにこれ。こんなの師匠喜ばないでしょ。迷惑じゃない?」

「師匠の偉業を後世に伝えるには一番の方法だ」

「だから、それを師匠は求めてないんじゃないのって話」

 

 ヴィセンは、はっきりとフェアル達の行動を否定した。意外にも、ヴィセンはこういったときに相手がどう感じるかに賢しいことがある。

 

「師匠は魔法に関してはすごいけど、私生活はなんか木みたいだし結構ポンコツなところもある。そんな女神様みたいな感じじゃなくて、僕たちみたいに不完全なんだ。こんな偉人な感じで持ち上げられるのは嫌なんじゃないかな」

「引っかかるところはあるが、言っていることは合っている。まさかお前が一番マトモだとはな、ヴィセン」

「ヴィセン、そんな失礼な態度で大丈夫ですか?師匠はお優しいのであなたの態度は不問とするでしょうが、他の方々はどうでしょうか」

 

 ヴィセンが周りを見渡すと、ファンクラブの全員から睨まれた状態であった。

 

「……よーし、師匠のために沢山銅像建てるぞー(棒)」  

「お前のそういうところは逆に見習いたくなるな」

 

 あっさり言ったことを翻すヴィセン。簡単に師匠を売るような弟子に泣けてくる。

 冗談はともかくヴィセンの言う通り、私には大層な崇拝も必要ないし、弟子たちの力をつかって自分の名を広めるつもりはない。仮に必要が出てきたらちゃんと伝えるので、それまではそういった活動は控えるように伝えた。

 

「わかりました。師匠がそうおっしゃるのであれば」

 

 フェアルはあまり納得が行っていないという感じではあったが、銅像を作っていくのは控えることを了承してもらえた。会の活動は認めて欲しいといわれたので、会員を変に広げないことを条件に活動を認めた。あまり手荒な真似をせずとも素直に聞いてもらえてよかった。

 

「ヴィセン、ちょっといいか」

「なんでしょうか」

 

 話もまとまり、解散し始めたその場で、ヴィセンを呼び止める。

 

「最近、カピエレが私のことを神格化しすぎていてな。私から言っても表面上は言うことは聞くがあまりわかってもらえていないんだ。お前の方から少し話しておいてくれないか」

「んー。師匠で駄目なら僕から言っても聞かないと思いますよ」

「それでも、頼む」

「……わかりました。やるだけやってみます」

 

 ヴィセンは自信なさげに頷く。その様子をカピエレが遠くから眺めていた。それを気づかない振りをしておく。困った弟子たちだな。

 

 

 

 

 

 

「やあ、カピエレ、最近の調子はどう」

「別に変わりないさ」

「なんだか気づいていそうだから単刀直入に言うけど、最近師匠からお前の様子がおかしいって言われているんだ」

「そうか」

 

 カピエレは淡白に答えた。少し元気がなさげであったが、黙っている分には美人だ。話してみるとクソ真面目で師匠大好きなだけの女の子だとわかる。さて、僕としてはあまり大した話ができるわけじゃないんだけど。

 

「どうせ、私のことをなんとかしてほしいと師匠に言われたんだろう」

「見てたの?まあ、そうだね。変に畏まり過ぎないで欲しいってだけだと思うけど。それはできないの?」

「頭ではわかってるんだけどな。師匠に拾われて、色々なことを教えてもらった。そして、魔法を覚えていく度に思うんだ、人間である私達には師匠の域に到達できない」

「それはそうだね。師匠の実力に追いつくなんて、フランメ様程の才能の人が、人生を全てかけたら可能かもしれない、くらいの話だ」

 

 師匠は人間である僕たちとは過ごしている時間が違う。魔法の才能があるだけでなく、ほとんど全ての時間を魔法にあてている。すでに、師匠に勝てる人はこの世界にはいないと思う。魔族でさえ、師匠に勝てるやつがいるとは思えない。そんなヤツがいたら簡単に人間なんて滅ぼされているはずだ。 

 

「師匠は我々よりも長く生きる。師匠はあんな人だ、自分が他人にどう思われているか興味がない。あんな凄い人が、あまりにも知られていなさすぎる。私達は師匠に恩を受けすぎている一方で、それを返せていないんだ。それなら、師匠の偉業を広げようとするのも弟子として当然だろう」

「ハハハ」

 

 カピエレがあまりにも深刻な顔で語るものだから、笑えてきた。カピエレが不満げな顔で此方を見てくるので悪い悪いと謝っておく。

 

「みんな勘違いしてるよ。師匠は人格者で民を導いてくれてる存在だ、みたいに。確かに、僕たちは師匠に恩があるしそれを忘れてはいけない。でも師匠はそれを素晴らしいことで恩を返して欲しいと思っているのかな。そんなわけないじゃん」

「どういう意味だ?」

「人生の大半を魔法に捧げて、極めることしか考えて来なかった人だよ?多少外面よく出来ても、本質は狂信的なフェアルとかよりよっぽど狂ってるのさ。僕たちに魔法を教えているのだって、ただの暇つぶしで偉業だなんて本人は思ってないよ」

 

 僕は、何故か声が少し震えるのを感じながら話す。

 

「どういう目的で僕たちに魔法を教えてるのかは師匠にしかわからない。本当に気まぐれで、優しさもあるんだろうけど。どこか芯の部分で、やっぱり冷たくて暗いものを持っているんだと思う」

 

 師匠が僕たちに向ける、どこか実験動物を見るような冷徹な視線を感じることがあった。なのに、愛情を感じることも間違いなくある。なんだか矛盾するような感覚に師匠が何を考えているのかわけがわからなくなった。

 

「だからなんだ?馬鹿馬鹿しい。師匠の心の内など我々にはわからない。現実として、身よりもない我々に、自らの知識を分け与え、我々は力をつけているんだ。それ以上を求めるなど恥を知れ」

 

 カピエレは厳しい言葉を浴びせてくる。

 

「確かにね。僕たち二人の中間くらいの捉え方でちょうどいいのかもしれないな。……カピエレ。別に今のままで考えを変えなくてもいいけどさ。もう少し取り繕いなよ。師匠、あまり今の君の態度が居心地よくないみたいだからさ」

「ああ、わかった」

「わかっているのかな、本当に」

 

 不安は残るけど、伝えることは伝えたし、あとはカピエレ次第だ。後はしーらない。僕は今まで通り、あまり才能はないかもしれないけども地道に魔法を学んでいくだけだ。

 

 

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