魔法少女なヒロインにあこがれて   作:アマノジャック

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エピソード40 『芸能人の不倫とかプライベートとか正直どうでもいい』

その日、篠原心愛は自分の部屋であるものを探していた。

 

「チーポ、転神ステッキってどこだったかしら?」

「ステッキ?…エノルミータも魔幻獣も気配を感じないっチよ?」

「戦う訳ではないわよ…正体を隠したいだけなの。」

「…」

「あった!あった!」

 

心愛は転神ステッキを手に取り…呪文を唱えた。

 

「リリカルマジカル、トランスマジカル…チェンジ!」

 

ピカーン

 

「転神!超空転神トランセイザー!!」

 

超空転神トランセイザー!

篠原心愛は転神のかけ声とともに空気中の聖幻エネルギーを物質化して身にまといトランセイザーへと変形変身する!

その間わずか0.021ミリ秒!!

 

「で、どうして転神したっチ?」

「ちょっとトレスマジアに依頼が来てて…私にも来て欲しいみたいなの。ほら、覚えてる?前に真珠がテレビに出てた番組のMCさん。」

「…覚えてるっチよ。乳がデカい人っチね。」

「どういう覚え方!?まぁ、その人が依頼人らしくて…そうだ!チーポも来る?」

「ハッハッハッ、遠慮するっチ。けど、魔幻獣の気配を感じたら無理やり呼ぶっチから。」

「はいはい、それじゃあ…いってくるわ。SSS号!」

 

心愛は召還したSSS号へと乗り、目的地へと向かう。

 

───

 

トレスマジアとトランセイザーはとある芸能人の自宅へと来ていた。

 

「どうもぉ、『天花寺ホリィ』ですぅ。この前は助けていただきありがとうこざいましたぁ。今回もお手数をおかけしますぅ。」

「こちらこそ、魔幻獣の出るハプニングがありましたが…ケガが無いようでよかったです。」

「それで私たちへの相談というのは?」

「ウチらに頼むってことは…エノルミータ絡みかいな?」

「実はぁ、最近…私のぉストーカーさんがいるみたいでしてぇ…」

「それはウチらじゃなくて警察に言わんかい!」

 

マジアサルファが正論をぶちかますと涙目になりながらホリィは返事をする。

 

「…ここに引っ越す前にも相談してたのですけどぉ、変わらなくてぇ…それでぇ、ヴァーツさんからトレスマジアが力になってくれると聞きましてぇ…」

「ヴァーツはん!アンタの仕業かぁ!!」

「困ってる人を助けるのもトレスマジアの役目かと…」

「これは明らかにウチらの手に余ることやろがい!」

「サルファ!落ち着いて!」

「あたしたちで出来ることをしよ!ね?」

 

トランセイザーとマジアマゼンタの説得により、マジアサルファは渋々口を閉じる。ここでマジアアズールの口が開いた。

 

「あの…ストーカーってことは…今、この会話が盗聴されて筒抜けになっている可能性があるのでは?」

「この部屋は大丈夫ですぅ。ここだけは作戦会議室にしようと念入りに調べましたのでぇ。ここに入れる人間はぁ、私の厳選したスタッフさんとぉ、近所のスピーカーで有名な噂大好きの『井上』さんだけですぅ。」

 

「あらちょっと、ホリィちゃん。トレスマジアとトランセイザーが来ているの!作戦会議?盗聴器?何それ!?あらやだ怖いわ…盗聴器といえば近所の福島さんが…」がらっ

 

「おうおうおう!一番入って来たらあかん部類の人間が顔パスやんかコラっ!?おばちゃん、危ないから今日は入らんといてや!」

 

マジアサルファが青筋をたてながらその人を追い返した。その間にホリィは束ねられた手紙を取り出す。その手紙の最初のページの上に"今日のホリィ"と書かれていた。

 

「最近…ファンレターに混ざってぇ、こんな手紙が来るようになりましてぇ…」

「これってホリィさんの1日の行動ですか?」

「えぇ…」

 

トランセイザーたちは手紙を受けとると、その内容を読み始める。

 

「『AM6:00…ベッドから起き上がる音。おはようホリィちゃん。AM6:02…ホリィちゃん、ベッドに戻る。2度寝かな?かわいい♡』」

「うわぁ…」

「細かく記録されとるな…」

「『AM6:03…起きようとする。AM6:05…やっぱり寝直す。6:07…起きる。6:08…寝る。6:09…起きる。6:10…寝る。6:12…起きる。6:14…寝る。6:15…起きる。6:18…寝る。6:21…起きる。6:22…寝る…』」

「起きるまでに躊躇い過ぎやろ!?」

「あ…朝はメチャクチャ弱くてぇ…」

 

マジアサルファのツッコミにまたホリィは涙目になり、またマジアマゼンタたちが落ち着かせる。

 

「でもそれを完璧に記録しているこの手紙の主も怖いわね。」

「えぇ…たしかに記録の通りぃ、昨日は寝たり起きたりを合計37回繰り返しましたぁ…」

「へぇ、回数も合ってい……それを完璧に覚えているホリィさんもおかしくない!?」

「なるほど…」

「アズール、何か分かったの?」

 

ここでマジアアズールが冷静に状況を分析し始めた。

 

「この手紙から分かるのは…『寝室は確実に盗聴されている』、『カメラ的なものは使われていない』、の2つかしら。」

「おぉ!すごいよアズール!探偵みたい…」

「えへへへ…ありがとうございますトランセイザー様♡もっと褒めてください♡」

「確かに最初に"起き上がる音"って書いとるなぁ。」

「ならどうやって犯人はそんなものを仕掛けたのかな?」

「考えたくはないのですがぁ…ファンのプレゼントの中にそういう物があるのかもしれないですぅ。」

『!?』

 

ここでトレスマジア全員の目が丸くなる。

 

「ホリィさん、ファンのプレゼントを使っているのですか?」

「え?普通じゃないの?」

「あんなトランセイザー、こういう物は普通、事務所が管理しとるもんなんよ。」

「あたしたちのプレゼントもヴァーちゃんが厳重なチェックをしたのを事務所に置いてあるくらいで…自宅には持って帰ることはないよ。」

「そ、そうなんだ…」

 

1つ芸能界の知識がトランセイザーの頭へと入った。その間にホリィはいくつかのプレゼントを取り出した。

 

「だってぇ…ファンの方が私のために一生懸命考えて送ってくれたプレゼントじゃないですかぁ。一部の危険な人の心配をしてそれを全部シャットアウトしてしまうのは悲しくてぇ…」

「ホリィさん…」

「この延長コードとか凄く便利でしてぇ…」

「ホリィさん!?」

「何でピンポイントでファンがそんな物を送ってきてんねん!明らかに盗聴器仕込まれとるやろコレ!?」

「え…えぇっ!?そうなのですかぁ!?」

「ヴァーちゃん!すぐに解体して!」

「は…はい!」

 

ヴァーツが延長コードを受け取り一瞬で解体する。

 

「…あれ?特に何も仕込まれていませんね?」

「どういうこと?普通のファンがただこんな物を送ってくるのもおかしいよね?」

 

混乱するトレスマジアたち…ホリィは安堵の息を吐いた。

 

「シロでしたかぁ…よかったですぅ。私が深夜ラジオで『部屋のコード類が多すぎて困っていますぅ』と言ったのを聴いて送ってくれたファンが犯人じゃなくてよかったですぅ…」

「アンタが話をややこしくしとるんかい!」

「えぇ?私がぁ?どういうことですかぁ?」

「アンタ、今までよく芸能界に生き残れてきたなぁ!過去のメディアで言った好きなもんを全部ウチらに吐けやコラ!」ガシッ

「わ、わわわぁ…」

「サルファ!依頼人依頼人!」

 

マジアサルファがブチ切れて、ホリィの胸ぐらを掴むも、あわててトランセイザーが引き離した。涙目のホリィは指を折りながら口を開いた。

 

「好きだと公言したものですねぇ?確かぁ…お花…ワンちゃん…」

「結構普通ね。」

「ぬいぐるみ…かわいい小箱…アンティーク家具…机…電話機…コンセント…置き時計…花瓶…」

「盗聴器つけられそうな物ばっかりじゃない!?ホリィさん、本当に盗聴されるのが怖いの!?」

「ちゃうやろ!ほんまは盗聴によって聞かれるんに快感覚えるマニアやろ!」

「い…いわれもない誹謗中傷ですぅ。」

 

ついにはトランセイザーまでもがホリィへとツッコミを入れ始める。

 

「2人とも!とりあえず、寝室を調べに行こう!ね?」

「…怪しい候補がありすぎて逆に特定が難しそうね。長期戦を覚悟しましょう。」

 

マジアマゼンタ、マジアアズールを筆頭に部屋へと入るとフワッとした香りが鼻についた。

 

「ホリィさんの寝室…いい匂いですね。」

「はい…リラックスのために環境には気を使っていましてぇ…今使っていますルームフレグランスはぁ…このファンから貰ったバラの香りですぅ。」

「おう!その盗聴器の漬けもんを今すぐ捨てんかボケェ!」

 

部屋に入って数秒後、ホリィが持ってきたフレグランスには…盗聴器が入っていた。

 

「えっ?まさかこれにも盗聴器がぁ…?」

「アンタの目はタピオカかハイドロボールかコラァ!」

「これって中で何か調整してるデバイス的な機器じゃなくてぇ?」

「盗聴器やろ!…はあ、アホくさ。見つかったみたいやしウチは先に帰る…」

「待ってサルファ。」

 

盗聴器が見つかり、帰ろうとするマジアサルファにマジアアズールは待ったをかける。

 

「何やねんアズール。」

「まだ全てが終わったとは限らないわ。さっきの手紙…かなり細かく書いてあったでしょ?液体漬けの盗聴器1つであれだけ出来るとは思えないの。」

「そうだね!アズールの言う通りだよ!ホリィさん、他にもファンから貰ったものってありますか?」

「ではぁ…ぬいぐるみたちを…」

 

ホリィは近くのタンスを開けると大量のぬいぐるみが姿をみせた。

 

「わぁ!メディアで言っていただけあってすごい量ですね!」

「でしょぉ?全部、私好みのかわいいのでしてぇ…お気に入りはこのボディがぬいぐるみでは無い形のやつとぉ…」

「没収や。」

「何かよく分からない箱を抱えてるやつとぉ…」

「それも没収な。」

「『背中にチャックが付いてて中に物が入れられるようになってるけど絶対に開けないでね』という手紙がついてたやつですねぇ。」

「おんどれ、ほんまにええ加減にせえよコラァ!どう見ても全部盗聴器やろがい!」

「な、何のことですかぁ!?」

「何なん?変な家に住んでて察しが悪いって何なん?ホラー作家の物真似でもして終わっとんのか?あぁん?」

「だから何の話ですかぁ!?」

 

ホリィへと詰め寄るマジアサルファを無視して、トランセイザーも盗聴器を探し始める。

 

「もうこれって盗聴器が付いてない所を探す方が難しいんじゃないの?例えば…額縁の裏とか…」

 

トランセイザーが額縁を返すと…40個近い盗聴器がびっしりと付けられていた。虫の如く貼りついていた光景にトランセイザーは言葉を失くす。

 

「こ…こんなに同じところに密集させて設置することに何の意味があるのでしょうかぁ?」

「やかましい!おんどれは常識を問える立場か!」

「しかしこれ…すごいね。盗聴うんぬんよりも先に電磁波の心配するべきレベルだよね?」

「私は今までぇ…この環境で生活していたのですねぇ…」

 

ホリィはヨロヨロした足取りでベッドへと向かった。

 

「何も知らずぅ…このベッドで寝てて…でも気付いてしまった今はもう…安らかに眠れな…Zzzz…」

「寝れとるやんけ!てか寝るなや!誰のために盗聴器探しとると思とんねん!」

「すみません…条件反射でしてぇ…すぐに起きま…Zzz。起き…Zzz。」

「また37セット繰り返すつもりかコラ!」

 

ジリリリ…

 

マジアサルファは目覚まし時計を近距離から鳴らし、無理やりホリィをベッドから引きずりだす。

 

「…?サルファさん、ちょっとソレ貸してもらえますか?」

「ん?ええけど…」

「…。やっぱり…この時計にも盗聴器が入っていますね。」

「…よう分かったなヴァーツはん。」

 

時計から盗聴器を取り出したヴァーツにげんなりした顔を向けるマジアサルファ。そしてホリィは手で顔を隠し、その場で踞った。

 

「悲しいですぅ。私の生活が駄々漏れだったとは…まさか、寝る前のルーティンも見られて……恥ずかしいですぅ。」

「ルーティン?どんなルーティンなの?」

「トランセイザー…空気読もな?」

「まぁ、人間誰しも何かしら公言できないような習慣があったりするから…」

「えぇ、その通りですぅ…アズールさんはよく分かっていますねぇ。」

「それでどんな奇行なの?」

「いや、今の流れでそれを聞くんかトランセイザー!?」

「そうですねぇ…私の場合ですと半泣き状態のまま、全裸でスクワットをしながら早口言葉を連呼していますねぇ。」

「アンタも律儀に答えんなや!」

 

「こら、ホリィ。あんまり自身のプライベートを外部に漏らさない。」

 

扉が開くと同時にスーツとメガネを付けた女性が入ってきた。

 

「あっ…『竹内』さぁん。」

「えーと、スタッフさんの誰か?」

 

「私は竹内…ホリィのマネージャーをしてる者だ。トレスマジア、トランセイザー、今の話はオフレコで頼むよ。ホリィのイメージを崩す訳にはいかないからな。」

 

「おぉ!しっかりしてそうな人や!」

「ちょっと怖いかも…」

「私がそばにいますよトランセイザー様。」

「腕利きマネージャーさんだね。」

「竹内さぁん…盗聴器が私の部屋にぃ…」

「あぁ…気づいてしまったか。」

『!!』

 

竹内を除く、その場の全員が目を丸くした。

 

「アンタ、まさか知っとって…」

「どういうことですか竹内さぁん?私が盗聴されていると知ってぇ…」

「この部屋にある機器はもう全て使われていない。」

「…え?」

「うちのプロダクションと私が…ホリィの危機をのうのうと見過ごすと思ったか?送り主も全員特定済みだ。これらの送り主は全て、あなたへの愛が行き過ぎたファンだった…だが、皆きちんと罪を償いますと言ってくれたよ。昨日の手紙の件も把握している…あなたが気に病むといけないからと秘密裏に事を進めたのがいけなかったな。不安にさせてすまなかったホリィ。」

「竹内さぁん…ありがとうございましたぁ…」

 

ホリィはそのまま竹内へと抱きついた。

 

「一件落着…ですね。」

「最初からあたしたちが出る幕じゃなかったか。」

「でも貴重な体験が出来たわね。」

「まぁ、終わったなら何でもええわ。」

「というかトレスマジアってエノルミータとは関係なく動くこともあるんだね。」

「スポンサーを得るための芸能活動もありますからね…これも全てはエノルミータ壊滅のためです!」

「トランセイザーはんが買ったアズールのフィギュアもそういうやつやしな。」

「え?私のフィギュアを持っているのですか♡嬉しいです♡」

「う、うん…とりあえず、私たちは帰ろうか。」

「今回の依頼料はうちのプロダクションから出そう。これが私の名刺だ…ホリィではなくこっちに請求をしてくれ。」

「分かりました。それではボクたちは失礼しますね。」

 

そして、トランセイザーとトレスマジアたちはその場を後にした。

 

「私ぃ…これからも頑張りますねぇ。ファンのため…竹内さんやスタッフさんのためにぃ…」

「ハハハ…そうかそうか。ところで寝る前に全裸でスクワットをするスペースってどこになるんだ?」

「この辺ですねぇ。」

「…ふむ。よし、ちょっと物寂しいからこれをここに置いておくわ。絶対に場所を移動させないようにね。」

「はいぃ。」

 

竹内はそのまま近くにある棚に花瓶を置いた。…そう、先ほどホリィに言われたスペースへと向けた一眼レフ付きの不自然な花瓶を。

 

 

「……なぁ。今思ったんやけどあのマネージャー…さっきのウチらとホリィはんの会話、どやって聴いてたんやろか?」

『…あ。』

 

その後、何やかんやで竹内はクビになったらしい。

 

───

 

「さてさて、シスタギガント…トランセイザーやトレスマジアについて何か分かったことはあるかな?」

「…特にありませんねぇ。あえて言うならぁ…サルファがうるさかったくらいですぅ。後はぁ…トランセイザーのマスコットがいませんでしたぁ。」

「やはり、そう簡単には尻尾を出さないか…うん。また接触出来そうな時があればお願いするよ。」

「分かりましたぁ…ヴェナリータ様ぁ。」

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