「うーん、誰も来ないっチな。」
「えぇ。ある程度覚悟はしていましたが…」
「帰ってもいいか?」
「みち子さん、お仕事ですので終了時刻まではいてください。」
デパートの1角でチーポとニコ、田中みち子が様々のパーツを机に並べていた。そこには大きく『楽しく作ろう!発明オモチャ体験コーナー!』と書かれた看板が置いてあった。
「まぁ、誰1人来てない所に入ろうとは思わないっチから…サクラを呼んでおいたっチ。」
「うぅ…気が進みませんが…これも未来に聖幻獣たちが地球に馴染むため。しっかりとした対応をしてみせましょう!」
「ちょっと待て!サクラってまさか…」
「「「こんにちは!!」」」
そこに3人の中学生…篠原心愛と柊うてな、水神小夜がやって来た。
「おー、心愛!よく来てくれたっチ!…キウィちゃんはいないっチか?」
「こりすちゃんと遅れて来るって…」
「分かったっチ。んー、あの娘にアイデアを聞きたかったっチけど…ま、後でいいかっチ。」
「あぁ!心愛さん!皆さん!ありがとうございます。ありがとうございます。貴女たちにも楽しんでもらえたらと思っています。」
「ニコさん、そんなに固くならなくても……あれ?みち子さん、今日はここでバイトですか?」
「お、お忙しそうですね…」
「…帰りたい。」
来た客の顔を見てゲンナリするみち子…ここで小夜が挨拶をする。
「みち子さん、心愛やうてなさんとも知り合いだったのですね…」
「…なぜ距離を取る?」
「だ、大丈夫です。イミタシオの真似が痛い何て思っていませんから…」
「声に出すレベルで思っているだろ!はぁ…」
「あれ?小夜は知らなかったの?」
「彼女はイミタシオだよ?」
「おい!貴様ら!?」
「…え?」
「あ…」
小夜とみち子の目が合い…互いに蘇る初対面での記憶。そして…
「忘れるの☆忘れるの☆忘れるって言うまで悪い子にはお尻ペンペンなの☆」
「待って!落ち着いて!今は変身してな……いっ!」バチンバチンバチン…
みち子は小夜の尻を叩き始めた。
「いや、何してるの!?」
「みち子、発情するのはバイトが終わってからにしろっチ。」
「と言いますか、ただの暴行ですよ!?みち子さん、落ち着いてください!」
「遠巻きに見ていた子がドン引きしてる…これがバイトテロなのかな…」
───
「う、うぅ…みち子、お家に帰る…」ずーん
「大丈夫です、みち子さん!小夜さんも許してくれましたし…これから挽回すればいいですから!」
「寛大な心に感謝…」
「まっ…お前くらいしか雇える地球人がいないっチからね。」
「チーポ!余計なことは言わなくていいから!」
ニコの言葉を無視してチーポはオモチャを1つ取り出して…心愛たちへと渡した。
「これって…タケコ○ター?」
「それは某ネコ型ロボットの秘密道具だよ…」
「竹とんぼね。こうやって回して…あら?」シュシュッ…
シュシュシュシュシュシュッ…
「ちょっと!?柄を回転させてもプロペラが回らないわよ!?」
「そういう物だっチよ。飛ばないからショッピングモールの施設内やカラオケの個室とかどんな所でも遊べる安心安全な竹とんぼっチ。ちなみに普通の竹とんぼもここにあるっチ。」
「飛ばない竹とんぼに何の意味が!?」
「確かに柄だけ回るのは凄いけど…」
「ハッキリ言ってゴミね…」
「んー、早速不評っチ。んじゃ、次はこれ!」
チーポは別のオモチャを取り出した。
「これはけん玉?」
「とりあえず形を真似たっチ。ちなみにどうやって遊ぶオモチャっチ?」
「えっとこのボールを…尖った所に穴を刺したり、窪みにボールを乗せたりするオモチャで…」
「懐かしいわ。私がやってみるわね。」
「ん?でもそのボールは…」
「せーの!もしもし…」
小夜が玉を上へと飛ばすと…
「はう!?」ボコッ
「うてなちゃん!?小夜、何して…」
「ち、違うの!玉が勝手に…」
何故かうてなの尻へと当たったのだ。
「その玉は身近にいる人へ追尾して執拗に攻撃する『尻肉鍛えボール』っチ。」
「何ですって!危ないうてなさん!」グイッ
「痛い!痛い!痛いって!」ボコボコボコッ
「伸ばせる限りに腕を伸ばして超協力してるじゃないの!」グイッ
「あう♡もっと♡もっと叩いてぇ♡心愛ぁ♡」ボコボコボコッ
「ず、ずるいよ小夜ちゃん…」ボコボコボコッ
小夜は邪悪な笑みを浮かべながら、うてなへとけん玉を向けたので、心愛も小夜へけん玉を向ける。結果…けん玉の玉で何度も尻を叩かれる中学生が2人並ぶこととなった。
………
「うぅ…ママにも叩かれたことないのに…」
「でも私と小夜、みち子さんには叩かれていたわよね?」
「心愛ちゃんに叩かれるのがいい…」
「そこは同意見ね。」
「やめて。」
自身の尻を抑えるうてなと小夜。その様子を見つつニコはため息を吐いた。
「…やっぱり、誰も来ませんね。」
「さっきのを見て来たいと思う子供がいるか!…サクラにする人間を間違えてるからだろ。はるかは呼んでいないのか?」
「先約がある、ってことでダメだったっチ。」
「…蘭朶を呼んだらダメか?」
「それは好きにしたらいいっチけど…もっと来なくなりそうっチ。」
「何だと!?貴様…」ガシッ
「と、とりあえず、わたしたちも何か作ってみようかな!…そこに何人か来てるみたいだし。」
チーポの胸ぐらを掴むみち子をよそに、うてなは机にあるパーツを1つ手に取った。
「あ!この竹串の両端に付いたタイヤのパーツとかいいかも!車を作ってみようかな!」
「車!」
「車作るの!」
端にいる子供たちの視線がうてなへと集まる。
「おぉ!子供たちに好感です!うてなさん、お願いします!」
「うてなさん、手先が器用だから。」
「完成!後は電池とモーターを入れて…スイッチオン!」
うてなはそのまま、車を形付けるパーツを集め…オモチャを作りあげた。そして、見ていた子供たちに向けて走らせると…タイヤが人の腕へと変形して1人の子供の腕にへばり付いたのだ。
「ぎゃー!」
「逃げろー!!」
見ていた子供たちは…車(?)を叩き落として逃げていった。
「な…何コレ!?」
「はい。これは電気の力で対象にしがみつく『はなさへん手くん』です。」
「どこで使うのですかコレ!?」
「カエルみたいで鳥肌たったわ…」
「さっきから変な物が多いですね…何を参考にしたのですか?」
「さっきのは車がヒト型へと変形するアニメだっチ。こういうの子供は好きっチよね?」
「…少なくともわたしは嫌かな…」
「安心してうてなさん、私もだから…」
「他にも地球のオモチャを色々と参考にしたっチよ。」
「もうダメな未来しか見えないのだけど…」
「そういえば心愛?さっきから無言でいるみたいだけど…」
うてなと小夜は心愛の方へと向くと…心愛も何かを作っていた。
「後は綿を詰めて…完成!」
それは黒い球体に大きな単眼、さらに周りにはちぢれたような黒い毛が生えた何か…
「こ、心愛ちゃん?何を作ったの?」
「…ベア。」ボソッ
「ベア?…あ!思い出したわ!『バッ○ベアード』ね!ゲゲゲの○太郎に出てくる妖怪よね!」
「違うわ。テディベアよ。」
「「…はい?」」
テディベア…愛らしいクマのぬいぐるみ全般のことをいう。決して『このロリコンどもめ!』などと言う妖怪ではない。
「おい、チーポ。これも貴様が用意したオモチャか?」
「いや、これは普通の市販品だっチ。心愛の女子力の低さが出てるっチね。」
「女子力って次元じゃないだろ!?どうすれば、テディベアがバッ○ベアードになる!?」
「心愛ちゃん、カレーを作ったら魔神を召還しちゃうレベルだから…」
「何故カレーを作って魔神が出てくるんだ!?」
「むしろ私が聞きたいんだけど!?」
「…わ、私も何か作ってみるわね。」
混乱するみち子…仕切り直すように今度は小夜が何かを作ろうと部品に手を伸ばす。
「あら?可愛い人形の顔があるわね。これを使おうかしら…それでこの細い瓶をボディにして…」
人形の顔パーツを手に取り、近くの空き瓶へと挿した。すると…
スポーーーン
「人形のパーツが黒髭危機一髪みたいに飛んでったーー!?」
「しかも天井を突き破ってるわよ!?」
「これはですね…非力な方に向けて作りましたビン『絶対にフタなんて閉めさせないくん』です。どんな固いフタでも内側から開けてくれますよ!」
「フタを憎むあまりに目的と手段が入れ替わってますけど!?」
「それより人形の顔は?」
「追いかけましょう!」
天井を突き破った人形を追いかけて屋上へと上がる心愛たち。その間にニコが人形の顔パーツについて説明を始めた。
「あの人形はですね…空中に漂う色んな物質を引き寄せて自分の身体を作るのですよ!」
「すげぇ!?」
「すごい…」
「すごいすごい!!」
と、ここで3人の女の子も後ろから付いてきていることに気がついた。ここでニコの顔がパッと明るくなる。
「君たち!オモチャ作りに興味が!?」
「うん、オモチャ大好き!」
「大好き…」
「大好き!!」
「って、なつなちゃんとあきほちゃんとみふゆちゃん!?」
「どうしてここに?」
「ひ、久しぶりだね…」
「心愛ちゃん!」
「小夜ちゃん…」
「うてなちゃんも…こんにちは!!」
はるかの妹たちだった。
「もしかしてはるかちゃんも一緒?」
「うん!でもおねえちゃんは迷子だよ!」
「それで探してるの…」
「そしたら面白そうなの見つけたの!!」
「そ、そっか…とりあえず、連絡はしておくわね。」
そして、そのまま屋上へと入る。すると、ちょうど人形の顔が落ちてきて…
ドスンっ
「ヘビさんだ!カッコいい!」
「怖い…」
「強そう!!」
10個の野球ボールが連なったボディとビニール袋による翼が合わさり、ケツァルコアトル化した人形の顔がそこにあった。
「空中にある野球ボールが多くない!?」
───
「チーポさん、妹たちを見つけてくれてありがとう!!」
「偶然っチよ。今日はここに来てたっチか、はるかちゃん。」
「お誘いを断ってごめんね。ずっと前から約束してたから…」
「いや、いいっチよ。楽しんでほしいっチ。」
「それでだ…ここを回すとだな…」
「わぁ!?とんだとんだ!」シュシュッ
「次、あたし…」
「あははっ!何コレすごい!全然回らない!!」シュシュシュシュッ…
再び、デパートの一画へと戻ってきた心愛たち…みち子がはるかの妹たちへ竹とんぼを説明してる中、キウィとこりすも合流してきた。
「遅くなった悪ぃ。」
「ん…」
「あ!こりすちゃんだ!」
「久しぶり…」
「一緒に遊ぼ!!」
「ちょうど今、竹とんぼの説明をしてる。貴様も良かったら…」
「ん!!」ダッ
そして、こりすもみち子の説明を聞き始めた。
「キウィさん、ですね!初めましてニコです!」
「ん?誰だコイツ?」
「ボクの上司だっチ。んじゃ、早速っチけど君の小学生みたいな感性を見込んで…子供の好きそうなワードを教えて欲しいっチ。」
「えぇ…んなもん、はるかっぴの妹かこりすに聞いた方が良くね?」
「ボク個人としては君が一番小学生に感じるっチ。」
「まぁ、いいけどさ…んん!そんじゃ、耳をかっぽじってよく聞け。『ウン○』、『最強』、『超スピード』…これがアタシたちの心に火を点けるキーワードだ。」
「おぉ!?」
「アタシたちって言ったけど!?」
「確かに小学生な感性だコレ!?」
目を輝かせるニコをよそに心愛とうてなのツッコミが入る。
「なるほど…いい響きです。ウン○最強超スピード…」
「ニコさん、自分で何言ってるか分かってます?」
「んじゃ、ニコ!キウィちゃんの小学生魂を信じて…早速作るっチ!」
「そうですね!そのアドバイスの全てを盛り込んだ究極のオモチャを!はあぁぁ!!」
ニコの手が高速に動く…そして、オモチャが一瞬にして完成し、起動させた。
「みてください!これがボクの作った超スピードウン……」
バビュン
「あぁ、言い切れません!」
「言い切らなくていいわよ!?」
「ニコ!今のはカメラで撮ってたっチ!ちょっと巻き戻して…スロー再生!からの停止!おぉ!?」
「これは…」
それは超高速に動いたため目ではとらえきれず…そのまま壁へとぶつかった。しかし、チーポが撮っていた映像から…車輪が付いたウン○のオモチャだということが分かった。
「ウン○っチ!これは間違えなくニコの作った超スピードのウン○だっチ!」
「チーポ!えぇ、ウン○です!とてもウン○です!」
「何回ウン○って言ってんだ、このウン○好き幻獣共は!?」
女子中学生たちの前で連呼される最低なワード。そして、ニコは壊れた壁からオモチャを回収した。
「みてください!この超スピードウン○…『最強』ですので壁に穴を開ける衝撃で激突しても傷1つありません!」
「ならさっきのビデオのくだりは要らねぇだろ!」
「これで子供たちを集めましょう!」
「待って!それは色々とまずいわ…」
止めようする小夜たちを無視し、ニコはオモチャを片手にテンション高めにみち子のところへ向かうと…
「みち子さん!みてください!この超スピード最強ウン…」
「子供に何てものを見せるんだ貴様ぁ!?」バシッ
「あれー?」
そのままビンタをもらった。オモチャはそのままこりすたちのそばへと落ちる。
「あ!ウン○だ!」
「ウン○ウン○!!」
「ん…」ひきっ
「き、汚いよ…」
なつなとみふゆが興味を持つ中、ドン引きするこりすとあきほ。そして、なつなは人形の顔をオモチャの上から差し込んだ。それを倒れたニコに向けて動かし…
「これは、超スピード最強ウン○人間……んんっ!?」ボコッ
超スピードのまま、ニコの顔へとめり込んだ。この負傷により、体験コーナーは中止となり…壁と天井の修理が行われ…ニコとチーポによるイベントは失敗に終わった。その後、小学生の間に『超スピード最強ウン○』が流行したが…PTAにより粉砕されたのち焚き上げられた。