「くそ…くそ…蘭朶!!」
「まぁ、落ち着けっチみち子。蘭朶ちゃんはボクたちの心の中に生き続けるっチ。」
「チーポ貴様、今は何も喋るな。」
エノルミータに敗れた田中みち子。さらには仲間であった多田蘭朶までもが人質に取られ…チーポに煽られる始末。エノルミータたちは既に去っており、みち子とチーポだけがその場に残っていた。
「イミタ…みち子様!そのお姿は…?」
「ペスカ!貴様は無事だったのか!」
「大変なことになりましたわ!蘭朶が…!」
そこへパンタノペスカが合流して…状況を伝える。内容はみち子も知っていたが、ベルゼルガがマジアベーゼに敗れて拐われたこと。そして、パンタノペスカがどうしようもないと判断し…その場から撤退したことだった。
「それで貴様はノコノコと逃げ帰った訳か…!」
「…申し訳ございません。」
「まぁ、落ち着けっチみち子。とりあえず、味方が1人残っている…不幸中の幸いだっチ。」
「蘭朶…!」ぎりっ
みち子の脳内に蘭朶との出会いが流れ出した。
───
───
これはみち子がロードエノルメとしてマジアベーゼに敗れた直後の話である。ヴェナリータより手駒として使われたことを知り…激昂して殴りにかかるとシスタギガントによりあっさりと握り潰される。
『悲しいですぅ。』ぽいっ
グショっ!!
『ぐ…あぁ…』
そのままナハトベースの廃棄区間へも投げ捨てられたみち子。その姿は服すら纏えず、痣や出血が目立つボロボロな状態。それでもエノルミータへの怨みを忘れず、黒く染まったハート形の変身アイテムを2つ手に取った。
『よぉ!えーと…元ロードエノルメでいいっチか?』
『貴様は…トランセイザーの……うっ…!』
『とりあえず、ここから出るっチ。時空転移!』
チーポの能力によりナハトベースから何処かの路地裏へと移動したみち子だったが…変身アイテムを手に持ったまま、意識を失った。チーポは人間態になり、みち子を背負い歩き出す。
『…みつけた。』
『君は誰だっチ?』
そばにはトレスマジアではない白い魔法少女の姿もあり…
『…マジアブラン。』
そう名乗るとみち子とチーポを自身の家へと案内したのだった。
───
───
場所は再び篠原心愛のバイト先…
「すみません、○川急便です。○マゾンから荷物です…これでいいんですよね?」ぼそっ
「そのまま頼むよ篠原編集。」ぼそっ
心愛はなぜか配達員に扮して段ボールを持っていた。遠くより男女の声が聞こえてくる。
「はい、お待ちを…」
「待て、開けるな!担当に違いない!」
「…有栖川編集、バレてるみたいですけど?」
「大丈夫、ここは『桐』先生の部屋だ。掲載誌こそ違うが…締め切りを守る彼は我々編集にとっては聖人のような存在だ。失礼のないように。」
「いや、開けますよ。○マゾン来たって言ってるでしょ?」
「南アメリカの熱帯雨林がお前んちに来るわけないだろ、落ち着けオッサン!」
「いや、お前が落ち着けオバハン!」
言い争いの末…桐が扉を開ける。
「はいはーい。どうも…」
「えーと、こちらが…」
すぼっ!←有栖川が段ボールから顔手足を生やす音
だっ!←原稿回収対象の漫画家が逃げる音
「『御堂』先生の原稿を回収しに来ました有栖川編集です。」
「あぁ、いつものですか…」
「…いつもこうなのですか?」
「君は新人編集かな?ちょうどいいや…これ、頼まれていた原稿。」
「はい?掲載誌が違うって聞いてますけど…」
「あれ?読み切りあるって聞いてない?まぁ、いいや…有栖川さんに渡しておいてね。」
心愛は桐の原稿を回収した。
「そうそう…君は魔人にならないように気を付けてね。」
「魔人って何ですか!?」
「いやー、前に原稿出しに○川書店まで行ったら初の長期連載が決まったことを言われんだ。」
「それはすごいですね。」
「それで少女漫画家の御堂さんにアドバイスを聞くも役に立たず…だからプロである少女漫画雑誌の編集部に取材することになってね。」
「なるほどなるほど…」
「手の空いてる社員として紹介されたのが魔人だったんだ。」
「いや、どゆこと!?」
「まぁ、そういう反応になるよね。」
死んだ目で桐は話を続ける。
「原因が原稿回収する時に…人の器を捨てないといけなくなったのだとか…」
「いやいやいや!そんな場面ない……いや、ありましたわ!」
先ほどの姉妹漫画家を思い出す心愛。原稿回収を拒否する2人に有栖川は肉弾戦を繰り広げ、自身はライトセイバーにより対応。原稿回収とは命がけの仕事であると身に染みている。
「君はそうならないようね?とりあえず魔人さんから夢と現実のバランスが大事ってアドバイスはもらえたから本当にプロなんだって実感出来たのが何ともね…」
「…知りたくなかったわ。」
げんなりする心愛だったが…2つの音がこちらへ向かっているのに気づいた。
「はっはっは!土踏まずから生えた『編集から逃亡筋』は私自身の意思じゃ動かせない!つまり、私は別に原稿催促から逃げてない!仕方ないってやつだ!」ペタペタペタっ
「なら…」
逃げる御堂に対し、有栖川はその場で足をぐるぐると高速に回し…渦巻きを形成する。
「ギャクマンガ走り!」
「今時そんな表現するマンガねーよ!ってそこのガキ、邪魔だ!どけ!」
「新人編集ちゃん、危ない!」
「大丈夫ですよ。私…戦えますので!」ぶおんっ
扉前の心愛を突破しようとする御堂に対して心愛はライトセイバーを構える。
「食らえ!鋭そうな柄トーン!!」びゅんっ
「全部まとめてぶった斬り!」すぱっ
「ぐぼらっ!!」
御堂は柄トーンを飛ばして攻撃するも…心愛はそれらをライトセイバーの一振りで対処した。
「おぉ!有栖川さん、あの新人編集すごいですね!」
「あぁ、田中編集の代わりだが…かなり役に立っているな。」
「そうそう、例の完成原稿は彼女に渡しましたからね。」
「そうか……では御堂先生。アナタも原稿を。」
「てへぺろ。」
「え?何?聞こえない。」がちゃ
「全くもって申し訳ございません。この時間になっても未だに完成に至りませんでした。」
逃走を阻止された御堂へ有栖川は機関銃とロケットランチャーを向けた。降伏した御堂は渋々と原稿を進めたのだった。
───
撤退したみち子はパンタノペスカ…もとい桃森百花は蘭朶の家へと戻っていた。状況が状況だけに空気が重い。
「みち子さま…蘭朶のこと、どういたしましょう?」
「黙っていろ!今考えている…!」
「…あら?外の方が騒がしいような…」
「今はそんな事を気にしている時では…!」
「おーい、みち子!外を見ろっチ!」
現れたチーポの言葉に従い窓をみる2人。
「「マジアベーゼ!?」」
空高くにシアターが生成させ、アップされたマジアベーゼの姿があった。
『ベルゼルガのォ!』
『カット!声が裏返ってる!悪そうな台詞は?』
『ヒャッハー!』
『おーけー!本番いくよ!』
『グッフッフ…!凡百の群衆どもよご機嫌よう!わたしはエノルミータ総帥マジアベーゼ様だ!ヒャッハー!この映像は魔法少女組織シオちゃんズに向けて放送はれているぜ!ヒャッハー!聞こえているかイミタシオ!ヒャッハー!』
「…ぐだぐだっチな。」
「そんなことはいい!蘭朶は!?」
『我らエノルミータに逆らう愚かなシオちゃんズ!その1人がこの魔法少女ベルゼルガだ!ヒャッハー!』
マジアベーゼは悪い顔で捕らえたベルゼルガを映し出し、そのまま言葉を続ける。
『我々はこれより…ベルゼルガの公開処刑を行う!ヒャッハー!!処刑は本日正午…震えて待つが良いわ!ヒャッハー!!!』
その言葉を最後にシアターが消えた。