お久しぶりです。
リアルが忙しくて投稿が遅れてしまいました。次回の投稿も遅くなると思われます。読んでくれる方々には大変申し訳ありませんが、気長に待って頂けると幸いです。
前回のアンケートに参加してくれた方々ありがとうございます。今後の参考にさせて頂きます。
窓から漏れる光が俺の顔を照らす。妙に落ち着く匂いが鼻の下を通り、耳元に誰かの呼吸音が届く。混濁した意識の中でもがきながら、俺が徐々に目を開けていくと……目の前に見慣れた人物の顔があった。
そこに居たのは、俺の腕を枕にして眠る廣井さんだった。可憐な寝顔を無防備に俺の前に晒している。
酩酊からの度重なる嘔吐によっていつも台無しになるが、彼女の容姿は言うまでも無く整っている。それが黙ることで文句無しになったとなれば、思わず見惚れてしまったとしても何もおかしなことでは無いだろう。
寝起きだった俺はそのまま『どうして廣井さんがこんなとこで寝てるんだろう』と考えながら、しばらくその顔をボーッと眺めていたが……時間が経つにつれ、徐々に意識がハッキリしてきたことで昨日の
まず最初に『嗚呼、やってしまった』という言葉が頭に浮んだ。その次に、胸の中で感情が激しく、複雑に渦巻いていくのを感じる。それは羞恥であり、焦躁であり、苦悩であったり……様々な負の感情が溢れてきて、その中に確かにある安らぎと喜悦に気づいた時、更に羞恥の濃度が上がる。
今すぐ奇声をあげて、暴れて、部屋から出ていきたい欲求が溢れてくるが……このまま感情のままに暴れてしまうと廣井さんを起こしてしまうのでなんとか押さえ込む。
かといって、このまま廣井さんに枕にされ続けていると、いつまで経っても動けない。俺は彼女を起こさないように慎重に、ゆっくり……彼女の頭の下にある俺の腕を抜いて、空いたスペースに代わりの枕をねじ込む。
先程と変わらない様子で寝息を立ててる彼女の姿を見て、ほっとしながら……今度は俺が口から息を吐き出す。
強く、長く。身体の中に渦巻いていた様々な感情を全て吐き出すかのような勢いと長さで。
「くっそ……どうかしてるのか? 俺は」
吐き出し終えた後は天井を仰いで悪態をつく。
いくら疲れていて、最近熟睡出来ていなかったからといってあのタイミングで寝る馬鹿が何処にいる? 誠に残念ながら馬鹿はここにいた。最悪だ、自分で自分が嫌になる。
その自己嫌悪につられて、頭の中に仄暗い不安が次から次へと溢れてくる。酔った勢いでやってしまっただけで本当は廣井さんは無理をしていたのではないか。もし、そうだとしたら俺はなんてことをしてしまったのだろう。
最悪だ。対抗心で調子に乗りすぎた。酒を飲んで暴走する彼女を止めるべきだった。仮に、彼女が知らず知らずのうちに無理していたのだとしたら……いや、止めよう。そうやって自己完結でネガティブな方に考えるのは俺の悪い癖だ。
相手がどう思ってるのか分からないのなら、うじうじ考え続けて立ち止まるより、まず行動してみた方が絶対良いのだ。俺は結束バンドの初ライブを見た、あの夜にそれを知った筈だろ。成長しろ、遠坂健治。
廣井さんがあの時どんな思いをしていたかなんて……結局、彼女に問正せば分かることなのだ。そこで彼女が少しでも嫌な思いをしていたのなら……誠心誠意謝って二度としないことを誓うとしよう。
──だけど、もし、彼女が嫌がってなかったとしたら?
「……なにを」
この期に及んで、俺は何を考えているのだろう。何故、俺がこんなことを思うのか分からない、分からないが……それは明らかに望みすぎだ。分かっている筈なのに、それなのに……。
「嗚呼」
俺は
──廣井さんが、俺との抱擁を不快に思っていないでくれてることを期待している。
──あの時、俺の誘いに頷いたのは見栄からでは無く、本心であったことを期待している。
──肌を通して感じた、あの鼓動の音が。俺だけの物では無いと感じたのが、俺の哀れな勘違いでは無いことを期待している。
──彼女がまた、もう一度、俺と抱擁を交わしてくれることを期待している。期待しているんだ、どうしようもなく。
何故、俺の頭にこのような欲求が生まれてるのか分からない、理解できない。確かに昨夜はよく眠れたし、心地良さも感じた。だけどそれだけが理由じゃない気がする。
「……今は考えてる場合じゃないんだよな」
俺は時計を見ながら溜息を吐く。そろそろ家から出る準備をしなければならない。廣井さんの家から学校に行くとなるといつもより早く家を出なければ間に合わないのだ。
俺の混乱などいざ知らず、時間は無情にも過ぎていく。いつまでも答えが分からない問題を解くために頭を捻り続ける時間など無い。期末テストのように、分からない問題は一旦飛ばすのが現時点での最適解な時もある。
あまりにも難解な問題すぎて、いっそのこと永遠に回答を保留にしておきたい気さえするが……それは出来ないだろう。
──俺はいつか、この難問と向き合う時がやってくる。根拠は無いが、そんな気がするのだ。
俺は顔を洗い、昨日の残りのピザを適当に口に放り込む。
口の中に冷えた油とチーズ、そして固くなった生地の触感が伝わり、どうせ食べるなら温めるんだったと少し後悔するが……すぐに『まぁ、別に良いか』と思い直す。廣井さんと一緒に食べるなら兎も角、俺一人で食べるんだったら『温めて美味しく食べよう』という気持ちよりも『わざわざ温めるのが面倒臭い』が勝ってしまうのだ。
そもそも廣井さんの部屋にレンジなんてあるのだろうか? という疑問もあるし。
そうして手早く準備を終えた俺は、ドアから出る前に振り返って『……行ってきます』と部屋の奥に言葉を投げる。
当然、返事は返って来ない。少し寂しさを感じるが、この状況で廣井さんが実は起きてました……なんて状況になったら気まずさと、気恥ずかしさで非常に困ってしまうから寧ろ、返って来ない返事に俺は安心した。
それに、例え返事が無くても『行ってきます』と投げかけれる相手がいるだけで俺にとっては非常に喜ばしいことだ。
そうして俺は先程の難問を頭の片隅に追いやりながら、学校へと向かうのだった。
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「おはようございます! 遠坂先輩!」
「うっ……おはよう。喜多さん」
彼女の全身から迸る『キターン』に早速目を焼かれそうになる。夏休み期間中、喜多さんは友人とのお出掛けに費やし、俺はバイトに費やしたのでほとんど会っていなかった。それ故に、この喜多さんの目が眩む笑顔も久しぶりだ。
俺が喜多さんの『陽』の光に目を細めていると……彼女は小声で『……え?』と呟いて、不思議そうな表情を浮かべて俺の顔を覗き込んだ。
「……どうかした?」
「……あっいえ、その……」
何故だろう。当の喜多さんはどこかよそよそしい雰囲気を纏い始めた。先程までの『キターン』溢れる喜多さんはどこに行ってしまったのだろう。いつもの喜多さんなら口下手な俺の代わりにどんどん話を振ってくれる筈だ。それなのに今日は妙に口を噤んでいるし、何故かもじもじしている。
俺が疑問に思っていると……喜多さんの視線が俺の目では無く、明後日の方向を向いていることに気づく。どうやら、何かが彼女の意識を逸らしてるらしい。
彼女がそこまで気になってるものに俺も興味が出て、彼女の視線を追う。
「あ゛……」
俺の口から呻き声のような、か細い音が漏れる。
喜多さんの視線を追った先にあったのは『布』だった。
より正確に言うのであれば、それは『何らかの衣類の袖』であり、それが俺のリュックの中から飛び出ていた。それはシルエットだけ見るとジャージの袖に似ている。
体育の授業で使うジャージ……では無い。色も素材もまるで違う。では、後藤さんのように
もし、昨日俺のリュックに何らかの衣類が入り込んでいるとしたら、それは俺の衣類では無く──。
……気の所為だろうか。俺はその袖に酷く見覚えがある気がする。それに、嫌な予感が背中にのしかかってきた気もする。その袖の正体を確かめるべく、俺は恐る恐るリュックのファスナーを開いた。
「……」
──そこに入っていたのは廣井さんがいつも着ているスカジャンだった。
廣井さんの家に居る間に何かの拍子でリュックに入ってしまったのだろう。そのスカジャンの袖がリュックから飛び出ている。朝は急いでいたので全く気づかなかった。
だが、この袖を喜多さんに見られてしまうのは不味い。非常に不味い。
「……違う、違うんだよ……喜多さん…………うっ!」
どうにか弁明しようと顔を上げた先に……めちゃくちゃ目を輝かせてる喜多さんが居たので思わず俺の口から悲鳴が漏れそうになる。彼女の背後から『キターン!』という、聞き慣れたものでありながら何時まで経っても何処から流れてるのか分からない正体不明の謎の効果音まで聞こえる。
どうやら喜多さんもスカジャンを見て、これが廣井さんの物であるという結論に至ったらしい。先程は突然の出来事で困惑していたが、今やっと思考が追いついてきて『キターン』が活性化した、というところだろうか。今の彼女の輝く笑顔なら廣井さんの家にいた幽霊でも浄化出来るのではと思ってしまう。
少なくとも後藤さんがこの場に居たら消し飛んでいただろう。比喩ではなく物理的に。群体のようにバラバラになって。
そんな眩しい表情をした喜多さんが今まで聞いたことないくらい甘ったるい声で話し始める。
「遠坂先輩、そういう事だったんですね♡」
それは期待してるような視線であり、仲間を見つけたかのような視線であり、酷く生暖かい視線だった。その様子を見て俺の頬に一筋の冷や汗が垂れた。
「……意味がよく分からないんだけど『そういう事』ってどういうこと?」
「えっ!? わ、私の口から言わせるんですか!? それってセクハラですよ!!」
「一体何を想像してるの??」
頭を抱えそうになるのを、何とか持ち堪える。嘆いてる暇など無いからだ。今の喜多さんは明らかに、何かを勘違いしている。その勘違いを訂正するのが今の最優先事項だろう。
正直、今の喜多さんから積極的に話を聞きたいとは思わないが……ここで問題を放置していたらその後どうなるか分かったものじゃない。
最悪、星歌さんや伊地知に伝わってしまう可能性があるし、それは『良くない』という予感がする。理屈なんて無い、ただの勘だが……今の喜多さんはそう思わせる雰囲気があった。
そうならない為にも彼女が『何を』勘違いしてるのか、完璧に把握し、誤解を解く必要があるだろう。俺は意を決して『キターン』を放ち続ける喜多さんの目を覗き込む。
「……多分誤解してるよ。だから喜多さんが何を想像してるのか教えてくれない?」
「そ、それじゃあ言いますけど……遠坂先輩、廣井さんと同棲とかしちゃってるんですよね!?」
「流石に話が飛躍しすぎてないかなぁ?」
不味い。非常に不味い。
せっかくこの前誤解を解いたばかりだというのに、このままだと誤解をより深めさせてしまう可能性がある。
確かに廣井さんが家に来る頻度は多いが……決して同棲してる訳では無い。来る頻度が多いだけで、彼女の家は別にあるし、俺の家は廣井さんにとって『飲み屋街に近い都合の良い宿泊施設』みたいなものだろう。
というか『家に入っていくのを見た』とかなら兎も角、たかだか袖が入ってただけで、そこまで話が飛躍するのは違和感がある。
恐らく、喜多さんの中で何らかのピースとピースが偶然にも繋がってしまった結果、そのような飛躍の仕方になったのだろう。そんな偶然無くて良いのに。名探偵の推理でもそんな飛躍の仕方しないだろう。
色々言いたいことはあるが……とりあえず今は、この場で誤解を断ち切る為に、開口一番でその勘違いをしっかり否定しておくべきだろう。その次に、どうしてそんな勘違いをしてしまったのか問い質すとしよう。
「……期待させといて悪いけど、喜多さんが想像してるようなことは一切無いからね?」
「大丈夫です! 私、分かってますから♡」
「絶対ッ分かってないよねぇ……!?」
駄目だ。全く聞く耳を持ってくれない。口では分かってるかのように嘯いてるが、実際は俺の言葉など信じてくれてない。
この視線は多分『この前は皆の前だから否定してたけど、実際はそういうことなんですよね? うんうん。私分かってますよ』みたいな感じだろうか。
「ちょっと待って、流石に考えすぎだよ。このスカジャンは確かに廣井さんの私物だけど……本当に偶然入ってしまっただけで別に同棲だとかそういうことをしてるから入った訳じゃないんだ」
全て事実だ。嘘を吐くのは得意では無い。山田達は勿論、知り合って間もない人達にもよく見破られてしまう。たまに信じられる時もあるが……本当にごく稀だ。そんな嘘を進んで吐こうとは思わない。
俺がそう思っていると喜多さんは頬を真っ赤に染めながら、指を突き立ててくる。
「……じゃあ、その首はどう説明するんですか!」
「……首?」
俺の首になにかあるのだろうか。
不思議に思っていると、喜多さんは『ちょっと失礼します!』と言った後に俺の首元をスマホで撮り、俺に見せてくる。その写真に写る俺の首元には、複数の箇所に広がって赤い跡のようなものが浮かんでいた。
「それは……いや、待って、ひょっとして」
俺はそれを直ぐに虫刺されの跡だと気づいたが……何も知らない人間がそれを見れば、誤解されかねないような様相をしていることに今、気づいた。
「
喜多さんが頬を紅らめ、身体をくねくねさせながらそう言ってくる。なんとなく、喜多さんの言いたいことが分かってきた。だが誤解だ。流石の廣井さんも未成年に手を出すことはしない。
喜多さんは興奮冷めやらない様子で言葉を紡ぐ。
「世間では許されない恋……公に肯定するわけにはいかないですもんね♡私、分かってますから! 誰にも言いません!」
俺を見る喜多さんの視線には熱が籠っていた。熱といっても舎弟のような話し方をしてくるクラスメイト達が俺に向けてくるような情念が混じった熱では無い。
これは言ってしまえばもっと他人事と言うか……誰かの恋バナに熱狂してるような熱だろう。全くの誤解なのに。
「本当に信じて欲しいんだけど……ただの虫刺されだよ」
「やってる人は皆そう言うんですよ!!」
「それなら皆虫刺されだったんだよ、多分……」
この時期だ。虫刺されくらいおかしくない……と思っているが、どうやら喜多さんは納得いってないようだ。
これが俺だけに関わることなら、放っておいても良かったのだが……今回は廣井さんの評判にも関わってしまう。廣井さんを『未成年に手を出したベーシスト』にする訳にもいかないので彼女の為にも、ここはしっかり反論しておこう。
「ちょっと待ってよ、幾ら廣井さんがちゃらんぽらんだからって流石に未成年に手を出すようなことはしないよ。常に酔っ払ってて、昨日の記憶が酒のせいで消えてたり、ほぼ他人だった俺の家にホイホイ入っていくような人だけど」
「なんで急に怪しいところ全部言ったんですか!? 自白してます!?」
「あ、あれ……? 反論のつもりだったんだけど……」
前にも似たようなやり取りをした気がする。どうやら俺が廣井さんを擁護しようとすると尽く逆効果になってしまうようだ。今のうちに面会の手続き方法を調べといた方が良いかもしれない。拘置所って差し入れとか出来るのだろうか。
俺がそんな風に思っていると、喜多さんが俺の顔を覗き込んでくる。その表情は何時になく真剣だ。
「それなら廣井さんと何もやましい事をしてないって言いきれますか?」
「そ、それは勿論……」
そのあまりにも真剣そうな表情に気圧されながらも、後に続く言葉を言おうとして……ふと、昨日の廣井さんとの抱擁を思い出す。
──あの時の感触を、匂いを、体温を。視覚以外の手段で彼女を認識したあの時間を思い出す。あれは今すぐ逃げ出したくなるほどの羞恥が伴ったものだったが……それと同時に、確かな心地良さが付随していた。
それが頭に浮かんだ瞬間、自然と俺の頬は熱くなり、鼓動は加速する。
「…………………………いや、まぁ、うん……別に何も無いよ」
「ほらー! やっぱり昨晩はアッツアッツだったじゃないですか!」
「いや、違う、本当に違うんだ。信じて欲しい」
「そんな顔を真っ赤にして言われても説得力無いですよ」
違う、本当にやっていない。ただタイミング良く……いや、タイミング悪く、あの時の抱擁を思い出してしまっただけで。あの
俺の様子を見て一人、満足そうにした喜多さんは胸を張って宣言する。
「そんなに恥ずかしそうにしなくても大丈夫です! 安心してください誰にも言いませんから!」
「いや、ちが……はぁ。まぁ、言わないなら良いんだけどさ……」
とうとう俺は訂正するのを諦めてしまった。廣井さんには悪いが、喜多さんを納得させるのは俺には出来なかった。まぁ、喜多さんは悪い人では無さそうだし『誰にも言わない』と言った以上、いたずらに噂を広めたりとかはしないだろう。
多分『廣井さんが未成年に手を出すのは世間一般的に見て良くないから』言わないでいてくれるのだと思う。全くの誤解ではあるが、黙っていてくれるならそれで良い。
というか、今は一旦訂正するのを止めただけで、完全に諦めた訳ではない。今は興奮と熱で話を聞いてくれなくても、そのうち落ち着けば話を聞いてくれるようになり、勘違いだと気づいてくれるはずだ。
その時まで本当に誰かに言ったりしないか監視しつつ、少しずつ熱が下がっていくように誘導していくとしよう。
「やっぱり私達はお互いに愛に戦う者同士だったんですね! 恥ずかしがらなくて良いんですよ! ところで、廣井さんのどういうところに惹かれたんですか?」
そうして喜多さんはキラキラならぬ『キタキタ』した顔で質問攻めをし、俺はそれを適当にあしらいながら二人で学校へと歩を進めるのだった。
──余談だが、これをきっかけに『恋愛談義』という名のカフェ巡りに付き合わされることになり、結果的に喜多郁代と仲良くなるのだが……この時の遠坂健治は知る由もないことである。
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「疲れた……」
誰もいない通学路で静かに、吐き出すように呟く。
久しぶりの学校は案の定、面倒で憂鬱で退屈だった。
勿論、このマイナスな感情の原因はクラスメイトであり、決して喜多さんは関係無い。まぁ、俺と廣井さんの関係を変に勘違いされたのは……困る困らないで言ったら困るのだが。
それでもマイナスな感情を抱くほどでは無い。問題はクラスメイトだ。教室に着いた瞬間、一方的に、四方八方からクラスメイト達に話しかけられた。
その内容は様々で『ロイン送ったけど見てくれた?』とか『今度どこか遊びに行かない?』とか『バイト最近来てないけど何かあったの?』とかだ。
ちなみにバイト先を聞いてきたクラスメイトとバイト先が一緒という訳でも無ければ、バイト先をクラスメイトに教えたことも無い。それを隠すことなくナチュラルに聞いてくる図々しさに疲労が溜まる。
だが、面倒で憂鬱で退屈だったが……最悪という程でもなかった。昨日よく眠れたからだろうか? それとも……昨日の抱擁によって生み出され、未だ身体に残り続ける心地良さのせいだろうか?
それにしたって今日は比較的話しかけてくるクラスメイトが少なかったような気がするが。
俺がそんなに風に考えていると……スマホの通知の音が鳴る。それはロインの通知音であり、加えて俺が音付きでロインの通知が来るように設定してるのは一人だけだ。
「……廣井さん?」
彼女のロインを読んで……思わず固まった。
それは一目見ただけで異常だった。まず第一に、驚くほど
だから廣井さんからのロインはまず彼女のメッセージを解読することから始まる。だが、今回はそれが無い。最初からパッと見た感じ間違ってなさそうな文章を送ってきたのだ。
第二に、それは通知欄に収まりきならないくらいの長文だった。
『この度は、私の浅慮な言動で遠坂
そこまで目を通して、途中で読むのを止める。ロインのメッセージで六行くらい続くその文章に、思わず目が点になった。
「……ひ、廣井さんに何があったんだ?」
廣井さんに『遠坂
心配と困惑に突き動かされて俺の身体は自然と廣井さんの元へと向かうのだった。
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