『ゼロのルイズ』は、爆煙の中からようやく姿を現したそれを見たとき、 自らの期待が穴の開いた風船のように急激にしぼんでいくのを感じとった。
煙を体に纏わせながら現れたそれは、爆発によって出来てしまったクレーターの中心にいた。
彼女にとってぶっちゃけ、強くて美しくて逞しい使い魔が現れてくれるならどうでもいいのだ。
ルイズが頭を抱えた問題は、現れた『コレら』がどこからどー見てもただの平民と三角形の被り物をしている良くわからない奴だと言う事。
ただ、それだけだった。
勉学に励んでいたから、過去の歴史などは詳しいつもりだ。
しかし、今回の問題はその知識の引き出しをいくら開けようとも、 どこにも答えが見当たらない、見当たるわけがなかった。
なにせ、貴族がどうこうを除いても、 人間を召喚した事例など、どこの国の書物にも載っていないことだ。
この事実は、少なからずここにいる者たちの心を揺さぶっていた。
周りを囲む同学年の者たちはおろか、年を重ね、さまざまな体験を経験してきた教師コルベールでさえも、 一時ほど息を忘れ、茫然とした顔で目の前に起きた予想外の事実を眺めていたほどだ。
しかし、当たり前かもしれないが、この場にいる者たちの中で最も早く現実を対処しようと覚醒したのは彼だった。
伊達に年をとっているだけのことはある。
「ミス・ヴァリエール」
「!」
急に名前を呼ばれ、ルイズは体をびくりと跳ねさせた。
それからあわてた様子で首を回すと、背後にいるコルベールへと向き直した。
やや放心した目から、コルベールはおそらく彼女も事態に対応すべく、 “彼女なり”に冷静になろうとしていたのだろうことがわかった。
ルイズは、自分以上に冷静に事態を見るコルベールに安堵したのか、助けを求めるような目をして訴えた。
「ミスタ・コルベール・・・お願いです。もう一度・・・もう一度召喚の許しを・・・」
あわてた様子にしてはやけに落ち着いた声なのは、やはりルイズも事態に対して冷静になろうと 四苦八苦しながらも感情をコントロールしていたに違いない。
訴える目は純粋だった。
純粋に、悔しさや怒りが光を帯びて映え渡っている。
コルベールは本心を言えば「イエス、わかりました」と言ってやりたかった。
が、しかし掟は掟、守らねばならないルールなのだ。
彼は心を鬼にして、出来るだけ優しくルイズに言った。
「残念ですが、それはできません」
コルベールの短い台詞を聞いたルイズは、硬く口を閉ざしてそれ以上何も言わなかった。
解っていたから。伝統と神聖さが重要視されるこの儀式がやり直せないことなど、知識としてとっくに理解していた。
ルイズからしてみれば、藁にもしがみつく思いで『それでももしかしたら』というわずかな可能性に賭け、言ってみただけなのだ。
だからなのか、否定の言葉を聴いたとき、思っていたよりショックは大きくなかった。
コルベールの口調がいやに優しかったのも、恐らくは理由の一つだと思える。
ルイズは覚悟を決めたように小さな拳を握り締め、踵を返してそいつらへ向かった。
レッドピラミッドシング。
それが自分の名前である。
いつ、どこで、誰が呼んだのかわからないが、それが自分の名前である。
そんなことより、ここはどこだ。
今まで、灰しか降らなかった空は快晴。
枯れていた草木は青々と茂ってる。
周りに人間が大勢いる気配がする。
すると向こうから1人の人間がやってきた。
そいつは、俺の傍らにいた人間に近づき何かいっている。
片方は、何かいってもう片方の奴にキスをした。
その直後、キスをされた奴が手を押さえて苦しみ出した。
何が起きたか分からず戸惑っていると、今度は俺の三角頭にキスをした。
すると、急に頭が痛くなってきて今までの記憶が過る。
アレッサがこの地を去ったこと・・
アレッサの守護者であること・・・・
アレッサの処刑者であること・・・・・・
あの母親のこと・・・・・・・・
町のこと・・・・・・・・・・
アレッサが俺を作り上げたこと・・・・・・・・・・
だが、だんだんと記憶があやふやになってきた。
俺はなんなんだ?
わからない・・・
わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・
そこで、俺の意識は途絶えた。
三角様の持っている巨大な刃物ってなんだろう?