「ええっと、ヒフミちゃんはテストサボってて、ハナコちゃんとカノンちゃんは露出で、アズサちゃんは暴力事件で捕まってて、コハルちゃんはシンプルおバカで……いや終わってますねこの集団?」
補習授業部の初集合と相成った本館より少し離れた教室。「ま、請け負う私も私なんですけど」と先生はため息を吐く。中々に棘のある言い方ではあるが、先生の言っていることがかなり正論であること、そして何より先生が補習授業部最小であろうコハルと比べて尚10センチ近くは低いであろうことも相まって余り腹は立たない。むしろ、女子校なんかにいたら何してもマスコット的人気を博すタイプではないだろうか。いや、ここが女子校なのだが。
しかし、そんな彼女に唯一キレたのはコハル。「何で私が補習授業なんか受けないといけないの?!」と怒るコハルをヒフミが補習授業部部長として宥める。はあ、ともう一度先生はため息を吐いた。
「クヨクヨしててもどうしようもないじゃないですか。取りあえず少し話しません?どうせ初対面ですし」
「ほら、座ってください」とヒフミ達に座るよう促す先生。いくつかの机をくっつけ、それを囲むように置かれた椅子に俺達は一人ずつ腰掛けていく。若干並べ方が雑なのは先生の性格故だろうか。
「ふふっ♡こうして不良少女と大人が人気のない教室で放課後に集まるなんて、何だか本が薄くなってしまいそうですね」
「控えろ、と言いたいところだが……生憎今は私も水着だ。今だけは口は出さん」
「いやこうしてみると水着二人にガスマスク一人とか中々に珍妙ですねこの集まり……。トリニティって芸人集団だったりします?」
「いえ、そんなことは……」
芸人集団とは。何とも痛快な表現をなされますね、先生。
そうだな。このままではトリニティの誰も彼もが悲喜劇役者に成り果てる。
はい。ですが何より痛快なのは、その悲喜劇の引き金がこのような傍から見れば喜劇としか思えないような面子に握られていることでしょうか。
ああ。だから俺達はその引き金を叩き壊しに来た。違うか?
いえ。仰る通りです。姉様の脚本は余り出来た物ではありませんから。
「何にせよ、取りあえず互いを知らない限りは何にもなりませんね。みんな名前だけでも自己紹介お願いします」
「じゃあヒフミちゃんから」と先生は手のひらで指し示す。この辺り、指で差さないなど礼儀作法のなっているところはあの幼い少女のような形でもしっかり大人なのだと感じさせる。いや、それでも若干の疑いの余地はあるが。
「ええっと、阿慈谷ヒフミです。16才です」
「浦和ハナコ、16才です」
「桐藤カノン、16才」
「白洲アズサ、16才だ」
「し、下江コハル……15才」
「取りあえずありがとうございます」と先生は応え、そしてパラパラとファイルを捲る。
「あー、コハルちゃんだけ1年なのは飛び級狙いでテスト受けちゃったからなんですね」
「そ、そうよ!それに私は正義実現委員会のエリートなの!ちゃんと1年のテスト受ければ楽勝なんだから!」
「そんな上手く行かない気がしなくもないですけど……それと、カノンちゃん」
俺だ。今先生にバレたら困るような情報はそれなりにあるが、おそらく彼女はたどり着いていない。「何か?」というハナコからのアイコンタクトに「NO」と答え、そして先生に応える。いや、俺が応えていた。
「何でしょうか?」
「ふーん、やっぱりホントなんですね。カノンちゃんが二重人格って話」
先生の赤い瞳がこちらを見据えていた。
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