桐藤カノンは二重人格である。   作:あるふぁせんとーり

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第一次特別試験

「はい、じゃあ50分で解いてください。終わったら寝てて良いので」

 

 そう言って先生は私達にプリントを配ると、前の方の座席を180度回してそのまま席に着きました。そして彼女は慣れた手つきでパソコンを開き、タイマー機能をオンにしてその画面を私たちの方へ向けました。

 

「よーい、スタート」

 

 彼女の言葉とともに教室にはシャーペンを走らせる音が響きます。この音を耳にする度にコンセントにシャー芯を捩じ込んで爆発させたいという陳腐な欲求に駆られるというのはさておき、座学というのは私の庭ではありません。私は問題をおもむろに、一瞥するとその目を閉じました。

 

どうですか?難易度等は。

 

所感だが、この程度なら20分は掛からん。だがこの程度の難易度で放置はしないだろうな。

 

であれば姉様は「そのような」妨害もしてくると?

 

その可能性は否定できん。それどころか十二分だ。

 

承知しました。では今回の試験は……。

 

代われ。責任持って「0」を取る。

 

 そのようにして、身体の命令系統が切り替わりました。脳という演算装置は共有していますから、情報として何をしているかは理解できるのですが、個人としては理解が追いつかない、そんな感情を抱いてしまうほどに、露骨なほどの違和感とずれを纏ったまま鮮やかに解答欄は埋められました。そして残り時間34分ほどを残して、私は机に突っ伏して目を閉じました。

 

◇◇◇

 

 試験を終えた補習授業部がおやつを食べにカフェテリアに行っている最中、先生は教室の片隅で回収した試験の採点をしていた。5科目各20点の計100点。なるほど、楽だし簡単。中3の学年末の序盤程度でしょうか、と彼女は赤インクの入った万年筆を動かしながら思考する。

 そして採点の終わった答案用紙をもう一度振り返り、「ああ、案の定」と先生は小さく呟いた。合格点の60という跨ぐに等しいハードルを超えているのはヒフミのみ。アズサとコハルはまともに解けていない。そして露骨な空白と解答欄間違いを重ねているハナコとカノン。これは三回戦ですかね、と彼女はため息を吐いた。

 

「まあ、知ってましたけど」

 

 ぐぐっと背伸びして、ポケットからタバコの箱を取り出す先生。あ、禁煙でした、と慌てて思い出すと、彼女は窓を開け、その小さい身体で乗り越えて外に出る。そして先生は校舎の壁に寄りかかってタバコを吹かし始めた。「帰りにでも買い足しましょうか」と残り三本の箱からもう一本取り出しながら彼女は考えた。

 

◇◇◇

 

「じゃ、テスト返します」

 

 カフェテリアから戻って来たヒフミ達に先生は告げた。「は、早いですね?」というヒフミの言葉に「待たせてメリットあります?逆に」と彼女は首を傾げ、そして一人一人に採点済みの答案用紙を回す。そして回し終えると、彼女は結論から伝えた。

 

「合格者はヒフミちゃんだけです」

「?!」

 

 「あんなに簡単なテストだったのにですか?!」とヒフミは慌てて振り返る。惜しくも無いのに「惜しかった」と悔しそうに答えるアズサ、「これは何かの間違いで……!」と答案用紙をくしゃくしゃにしながら顔を赤くするコハル、「手が滑ってしまいまして」「少々迂闊でした」と記入ミスの山の様な答案用紙を持って答えるハナコとカノン。

 

「……ほ、本当に大丈夫でしょうか……?」

「取り敢えず今日は解散です。さっさと帰って復習して下さい。……あ、そうそう」

 

 思い出したように呟いた先生。そしてハナコとカノンを指差して、先生は言った。

 

「二人は残って下さい。話したいことがあるので」




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