桐藤カノンは二重人格である。   作:あるふぁせんとーり

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エデン条約:補習授業部
開幕


「セイアと連絡がつかない?」

 

 ハナコからそんな相談があったのは進級式を終え、フィリウス派閥秘書長の任命式も終え、新学年にも何となく慣れてきた4月下旬頃だった。昼時を過ぎて人の少なくなってきたカフェテリアで気まぐれにマスカットティーを啜る。

 

「はい、カノンちゃんは何か知ってませんか?」

「……いや、分からん。秘書長とはいえ私はフィリウスだ、あまりサンクトゥスのことはな」

「そう、ですか……」

 

 俺の答えにハナコはやるせなくため息を吐く。当然だ。権力やらにうんざりして数ヶ月前からティーパーティー、そしてシスターフッドから距離を取っているハナコが未だ付き合いを持つ数少ないティーパーティー関係者。余程セイアに彼女が信頼を置いていたのは間違いない。無力さ故に僅かに拳を握った。

 

……何か分かるか?

 

いえ、セイアのこと、と言われましても確かに先日のホストの任命式の場では確認出来た、としか。

 

……だろうな。だが少し引っかかる。

 

「そういえば、近頃ナギサも体調を崩しがちでな。ミカもそうだ。ここ数日は会えて無い」

「……なら、もしかして……?」

「……あ、カノンさん!」

 

 首を傾げたハナコの結論を待っていた俺の下に一人の少女が駆け寄ってくる。

 

「セリナ?」

「セリナちゃん……!」

 

 彼女の名前は鷲見セリナ。救護ヤクザこと救護騎士団の団員。去年のクラスメイトではあったが、そんな付き合いのある生徒ではない。なんで、と口を開こうとしたが彼女の焦った様子で俺はそれを留めた。

 

「団長どこに行ったか知りませんか?」

「ミネ団長?」

「はい、昨日から連絡が取れて無くて……」

 

 その言葉に俺はハナコと顔を見合わせた。救護騎士団の新たな団長、蒼森ミネ。救護騎士団が救護ヤクザと言われる原因の九割九分であり、救護を武力を以て為す或る意味の天才である。その実力は「ミネが壊して救護騎士団が治す」とさえ言われるほど。

 そして、これにより少なくとも百合園セイア、桐藤ナギサ、聖園ミカ、蒼森ミネ……トリニティ総合学園の上位たる四人の生徒に同様に異変が訪れていることが確定した。おそらく、偶然ではない。「分からない」とセリナに断ってから、俺達はカフェテリアを離れて調査に乗り出した。

 


 

 そして数日たった休日。俺達はトリニティそばのカフェで待ち合わせていた。

 

「どうだった?」

「間違いありません、シスターフッドの諜報も少し活発に動いています。ですが……」

「そこまで、か」

 

どうだ?

 

想定の範囲内ですが……それなりに大きい事態と見ても良いかもしれません。

 

だな。論理パズルやらウミガメのスープでもかなりの難問を作れる状況だ。

 

「ティーパーティーの方はどうでしたか?」

「パテル、サンクトゥスにも探りは入れたが……駄目だな、ロクな情報が出てこない。だが、一つ分かったことがある」

「……はい。私達が全力を上げて見つからない、つまり「現在の私達の手に入れられる情報では足りない」、ということかと」

「だな。失礼、会計頼む」

 

 そして俺はレシートを丸めながら言った。

 

「これが終わるまで、退学はお預けだな」

 

 彼女は目を見開いた。




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