「えっと…、座る?」
「それより…さっきパピルスが飛び出して行った窓が気になる」
それは確かに、窓の外から出て行くの見たけどあれ普通に心配になるよね。
「あんな風に窓から飛び出すなんて…パピルスの奴…」
「まぁ、流石にあいつも怒る…」
「いつもは着地も完璧に決めるのにッ!」
「「いつも窓から飛び出てるの!?」」
私は知ってたからそこまで驚かなかったけど、最初に見た時はほんとびっくりしたなぁ、しかもこれ日常みたいだし。ここは話題を逸らして。
「ねぇアンダイン、そのピアノは?」
「ん?これか?前にアルフィーの“友達“?がここに来て…ひたすらピアノの上に寝そべってた事があった」
「????ピアノの上に寝そべる?」
「これみよがしにぶどうを1つぶ1つぶ食べながらな」
あ、フリスクが余計に混乱しちゃった。これはピアノじゃなくてあそこに置いてあるでっかい剣について聞けば良かったかも。
「あの男は気に食わない。でもああ言うライフスタイルには憧れる」
「憧れるんだ…」
う〜ん、こればっかしはフリスクに直接見てもらうしかないかもね。なんと言うか。彼は…凄くすっごいから、色んな意味で。
「ん?フリスクちゃんそっちは多分…」
「私の部屋に入りたいのか?残念だったな!オタクは立ち入り禁止だッ!まあ…例外も居るけど…」
あらら、やっぱりダメか〜何だか色々と変わってたからいけるかな?って思ったんだけど。なんだかアンダインの部屋って鎧とか槍とか飾ってそう。そんな感じしない?
フリスクはそのまま流れるようにシンク、そしてさっきの骨が入った引き出しを開けた。
「………」
「…なんだこいつ」
多分、二人とも今は引き出しの中でウィンクする犬を見たんだと思う。どうしてあそこに居たんだろう。
「冷たい料理は好きじゃない。だからアルフィーにあっためるように改造してもらった!」
「それは…中の物は腐らないのか?私の声が聞こえるならそう問いただしてやったのに」
「ホット冷蔵庫だ。世界最高の発明品だぞ!」
それはもう冷蔵庫じゃないよ!
「あ、やっぱりそのデカい剣が気になるの?フリスクちゃんは危ないから触っちゃダメだよ」
「貴様のような軟弱者が持ち上げられるとは思えんがな!…それはそれとして人間はサイテーだが奴らの歴史は…サイコーだ。その巨大な剣も然り!かつて人間は体の10倍にもなる剣を振るった…そうだな?」
「え……」
これどう答えたら良いか困ってるやつだ。こっち見てるし、大丈夫!私があっという間に解決しようじゃないか!
「少なくとも私とフリスクちゃんは知らないかな〜そう言うのって秘密にされてるとかありそうだしね!」
「言われてみればそれもそうか!人間の秘密兵器をそう易々と漏らす筈もない!私が人間だったとしても貴様らには喋らんだろうな!しかし、アルフィーの持っている人間の歴史書は全て読破した!貴様らの巨大な剣の事は全て調査済みだ…エイリアンと戦うバカでかいロボットの事も…超能力を持ったプリンセスたちの事もな…良いか!この私に隠し通せると思ったら大間違いだ!」
うん、超能力だけはありそうだけど。魔法があるんだしそう言う人間が居ても変じゃないよね?私もナイフが硬くなるやつだけなら使えるし……いつかもっとかっこいい魔法を覚えてやる!
「ほら、そろそろこっちにおいで!」
「…うん」
ここも椅子が一つだからフリスクには私の膝の上に座ってもらう事にした。この家には椅子がピアノの分を含めて2つしかないから。
「ラクにしててね?いま飲み物を用意するから」
アンダインはホット冷蔵庫の中からなぜか等間隔で飲み物を置いていく。
「…………炭酸を温めたら不味いだろ。何を考えてるんだあの女」
「はいっ!どれがいい?」
「え?…それじゃあ」
「あ、フリスクちゃん動いちゃ!」
−ッダン!!
「きゃっ!?」
「なっ!?」
「…っ!」
フリスクが私の膝から降りて飲み物を選ぼうとしたらテーブル目掛けて槍が投げつけられて真ん中から真っ二つに割れた。私は身構えたから何とか悲鳴を上げなかったけどやっぱ怖い。そして思ったよりも破壊音が大きくてもっと怖い。気絶しそう。
「貴様!…席を立つな…客は客らしく…大人しく座っておもてなしを受けろ!」
「…っ!」コクコク
「きゃ、客に槍を投げつける奴がどこに居る!?サツキ、やっぱり帰ったら方がいいんじゃないか!?」
た、多分、大丈夫だから安心してキャラ、きっと、うん。
「…えと、飲みたい物を指して教えてくれる?その槍を使ってね!」
「…!」コクコク
フリスクもキャラもアンダインのあれにすっかり怖がってしまい私の裾を握ったり私の後ろに隠れた。なので辛うじて耐えた私が槍を使ってハーブティを選ぶ。
「…ハーブティ?おっけー!ちょっと待ってて」
魔法で出来た槍なのか結構軽いねこれ。
なんてどうでも良い事を考えながら気を紛らわして心を落ち着かせる。
−ポォ〜↓ォオ↑
「お待たせー!出来たよ!」
「あ、ありがと〜」
アンダインが引き攣った笑顔でお茶を置いていくのをきっと私も同じ笑顔で話し掛けてると思う。だっていま口の端がピクついてる感じがするから。
「はい、どーぞ。ヤケドしないように気をつけてね」
「う、うん」
「「「…………」」」
「そこまで熱くはないッ!さっさと飲めッ!」
「わ、私…猫舌なのに〜〜!!」
『ハーブティーを啜った。これは間違いなく熱湯だ!火傷をしそうになったが美味しいお茶だった』
私の心のうちを文字にしなくて良いんだよ?ナレーションさん。
「なかなか美味しいでしょ?お友達にはとっておきのお茶を出さなきゃね!………でも、考えてみるとそのお茶を選ぶなんて不思議だな」
「?」
「“金色の花“のハーブティ…アズゴアのお気に入りなんだ。そう言えばお前らちょっと…アズゴアに似てるかもしれない」
お茶を冷ましながらも、アンダインの話に耳を傾ける。黄金の花って単語でキャラがちょっと身じろぎしたけど、それに気付いたのは私だけだ。
「ダサいとことか!」
「そこか!?」
「んふw!」カチャ!
どうしよう、キャラの反応が新鮮過ぎて笑っちゃいそう。
「私、子供の頃は喧嘩っぱやくてさ」
「…今もだろ」
「キャラ、最後まで話を聞こ?ね?」
「……はぁ、お前がそう言うならしばらく静かにしているよ」
キャラ的には納得がいかないのかもしれないけど大事な事だから、ふぅ〜何とか落ち着いてきた。やっぱハーブティは良いねぇ〜
「腕っぷしを証明したくてアズコアと戦おうとしたんだ。ま、戦いにすらならなかったんだけど…私の攻撃…一発も当たらなかったよ。それどころか反撃すらしてこなかった。あんなに恥ずかしい思いをした事はないよ」
彼女は悔しそうに目を閉じて、今度はちょっと怪訝そうな目をして続きを話し出した。
「アズゴアは私に謝って訳わかんないこと言った。「キミは私を倒す方法を知りたいかい?」って、「知りたい」って言ったらそれから毎日特訓してくれてさ。ある日、特訓中にさ私ついにアズゴアをノックダウンしたんだ。その瞬間…「ごめんなさい!」…って思った」
「…なんで?王様に、勝てたんだよね?」
フリスクの疑問にアンダインは特に答える事なく苦笑を浮かべる。
「アズゴアはなすっごく嬉しそうに笑ってたんだ…ブッ飛ばされてあんなに嬉しそうにしてるヤツ初めて見たよ。で、アズゴアはそれからもずっと特訓してくれて…遂に私、ロイヤルガードの隊長になったんだ」
「まるでドラマみたいな話だねぇ」
思わず呟いた私の声にアンダインはバンバンと愉快そうにテーブルを叩く。
「クククク!あぁ、まさにアルフィーが見せてくれたアニメみたいな話だ!今では私が下っ端を特訓する係り!…パピルスとかな…でもさ…正直…ちょっとビミョーなんだ…パピルスをロイヤルガードにしちゃって大丈夫かな…ってさ、これ本人には言わないでくれよ!?」
言わないよ。と言うか言えないよ。あんなに頑張ってるんだもん。
「別にさ…アイツが弱すぎるって訳じゃないんだ…」
「寧ろ強いよね。彼…色んな意味でさ」
「あぁ、でも…いかんせん…ピュアで良いヤツ過ぎるんだよな!」
「私とフリスクちゃんを捕まえる筈だったのに、橋から落ちた私たちの事を助けるくらいだもん」
「そんな事をしてたのか!?全く、アイツは…助けようとして自分が落ちたらどうするつもりだったんだ!」
うん、木片が降ってきてパピルス諸共落ちそうになった事は黙ってよう。パピルスに対するお説教内容が増えちゃう。
「そんな調子じゃ、とても戦闘任務は任せられない。碌に戦いもせずニコニコしながら殺されるのがオチだ。実はな…そんな理由もあってあいつに料理を教える事にしたんだ」
「ん?料理?…まさかパピルスのあの個性的な味のパスタは…こいつが?」
あぁ、遂に来ちゃった。あの時間が!
「そうすればその…別の道も開けるかなって。あ…なんかごめん私ばっかり喋っちゃって…お茶が無くなったね。いまお代わり持ってくる」
アンダインがお茶を淹れようと席を立つ途中でその動きがピタっと止まった。
「待てよ…パピルスのお料理レッスンと言えば…まさにいま!レッスンの時間じゃないか!」
「!?」
「パピルスめ…どこへ消えた…」
多分、家でアンダインと友達になれたよ!って報告をニコニコしながら楽しみに待ってるんじゃないかな。
「こうなったら貴様らに代理でレッスンを受けてもらうしかないなッ!!」
アンダインがあの曲と共に台の上に置いてある飲み物の数々を蹴散らすのを私は死んだ魚のような目で見るしかなかった。
「そうだとも!パピルスと私の絆が深まったのは料理のおかげ!と言う事は同じレッスンを貴様らに受けさせれば…貴様らとの絆も計り知れぬ程の深まりを見せるはず!ククク…どうだ恐ろしいか?私と親友になるのが!」
この後起こる惨状が私は心底恐ろしい。
−−−アンダインに頭を鷲掴みされてる間に、どうやってアレを回避しようか私は頭を悩ませた