目が覚めたらそこは地下世界だったとさ   作:CoCoチキ

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五十二話 アンダインの〜ぬあああああ!クッキング!

 

 「ではまず!ソースから!」

 「人って、空中でも垂直になれるものなんだね」

 「サツキ、どうしたの?」

 

 どうにか回避出来ないか色々と思考を巡らせてみたけど、これはダメかもしれない。勢いが!勢いが強過ぎて!

 

 「この野菜どもを貴様の宿敵と思え!拳で殴り原型が無くなるまでグチャグチャに潰せ!」

 「え、ちょ、待って!せめて包丁で細かく刻んでボウルに…!」

 「えっと…えい!」

 

 『フリスクが力の限り殴りトマトがコテっとコケた』

 

 フリスクちゃん?キミもしかして誰か殴りたい人でも居た?いや、そうじゃないよね。殴れって言われたからとりあえず殴っただけだよね。そんな顔してるし、

 

 「良いぞ!その調子だ!三人で力を合わせ新鮮な野菜に立ち向かうぞ!良し!私にもやらせろ!ぬあああああ!」

 

 −ズバン!

 

 「あぶな!」

 

 私はフリスクの頭を抑えて屈んだ。ひょっこりと台から顔を出すとまな板と壁は大惨事。ヘタもとってないじゃん。

 

 「…後でかき集めてボウルに入れよう」

 「最初っから入れようよ!!」

 「細かい事は気にするな!次だ!」

 

 −ダン!

 

 細かいかな!?私の言ってる事って細かいかな!?

 

 「……パスタを茹でるぞ!本来なら自家製生麺が最強だが…私はいつも店で買ってきた物を使うッ!その方がコスパは最強だからだッ!」

 「確かに…コスパは良いな」

 

 「ぬああああああああああああ!!」

 

 「あー…とりあえずスパゲティを鍋に入れて」

 

 …箱には沸騰させてから中火で五分茹でるって書いてるんだけど…。これ沸騰させなくて良いの?

 

 「ええい!」

 「フリスクちゃん???」

 

 『フリスクはパスタを鍋の中に力いっぱい投げ入れた…箱ごと全部!あなたは困惑で満たされた』

 

 ここぞとばかりに活躍しなくて良いよナレーションさん!それよりフリスク、キミ結構楽しくなっちゃってるよね?このノリが。

 

 「良いぞ良いぞ!やるじゃないか!良し!次は茹でながら混ぜる!ここでのポイントは混ぜれば混ぜるほど…美味しくなるということだッ!」

 「違う違う違う違う!箱ごと混ぜても美味しくならないって!」

 「よし!やってみろ!」

 「うん!」

 「お願いだから私の話を聞いてよぉ!」

 

 キャラが不憫そうな顔を私に向けるのを無視して私は必死に二人のトンデモクッキングを止めようとした。

 

 「えい!えい!」

 「もっと速く!」

 「そりゃそりゃ!」

 「もっと速く!」

 「あれ!?二人とも私のこと見えてるよね!?お〜い!!」

 

 火の点いてないって言うかそもそも箱ごと混ぜても美味しくならないんだってば!箱の裏に書かれてる文字見ようよ!って言うか見てよ!

 

 「もっとだッ!」

 「うん!!」

 「うんじゃありません!」

 「あ、今の凄くトリエルぽかったぞサツキ」

 

 キャラも空中でぼーっと見てるんじゃなくてフリスク止めるの手伝ってよ!私一人じゃ勢い凄すぎて止められないんだよぉ!

 

 「がああ!もういいッ!私がやる!」

 「え、“私がやる“ってまさか…」

 

 鍋の上に彼女の槍が現れて鍋ごと箱パスタを円を描くように滅多刺しにした。これにはフリスクも普段閉じてるように見える目をギョッと見開いて飛び退いた。

 

 「ククククク!鍋を混ぜる時はこれぐらい勢いがなくてはな…よし次が最後の工程だ…」

 

 あぁ、 ここまで来たらもうダメだ。母さん…父さん、兄さん、私、出来る限り頑張ったけど無理だったよ。この二人が一度暴走すれば止められないって事が分かったから。

 

 「強火でグラグラ茹でるッ!」

 「最近のお鍋ってこんなにデコボコしてても料理作れるんだね。サツキ」

 「出来ないからね?もうちょっと早く私の話を聞いて欲しかったな〜」

 「喋ってないでコンロの火に己の情熱を投影しろッ!」

 

 私は今真っ白に燃え尽きてるからコンロの火に投影したらガス欠を起こすだろうね〜。

 

 「夢と希望をアツく燃え盛る炎に変えろッ!準備は良いか?全力で掛かれッ!」

 「なんかよく分からないけど回すよ!決意を乗せて!」

 「そんな事に決意を乗せなくていいから!」

 「あ…サツキ、ちょっと背伸びしないと届かないから肩車して」

 「……しょうがないな〜」

 「なんだかんだでやっぱりフリスクに甘いよなお前」

 

 否定できないのが…う〜ん。私って甘いのかな〜人には出来るだけ優しくしようって決めてるだけなんだけど。

 

 「まだまだぁッ!」

 「ん?……あ」

 「おい、サツキ、今の『あ』はなんだ今の『あ』は…」

 「もっとだあああッ!」

 

 気が付いたら隣でボーボー燃えてる火が天井まで高く燃え広がり嫌な黒煙を吹き出し始める。

 

 「ん?ちょっと待て…」

 

 アンダインが何かおかしい事に気付いてフリスクを止めるも時すでに遅し。火は一瞬で家中に燃え広がった。

 

 「け……ま〜そうなるよね〜」

 「あー…あははは…パピルスの料理が上手くならないのもムリないな…」

 「ドンマイ、サツキ…お前はよくやったよ」

 

 ありがとキャラ。

 

 「次は何する?交換日記?お揃いのアクセ作り?」

 「「「……」」」

 「…はあ…もう…やめだ…」

 

 痛いくらいの沈黙の後、アンダインが深々とため息を吐いてそう言う。

 

 「認めよう。私は失態を演じた。人間共よ。貴様らに私を好きになるように強いる事は出来ない。そりが合わぬ者とはどうやっても上手くいかないものだ」

 「それは分かる気がする。私にも仲良く出来ない相手って居るし」

 「あぁ、貴様らと私が水と油ならそれは仕方のないこと…友達になれないのなら……それでいい」

 「アンダイン……」

 

 フリスクが悲しそうにアンダインを見つめる。無茶苦茶な料理教室を通してこの子はアンダインと仲良くなりたいって思ったみたいだね。大丈夫、キミは仲良くなれるよ。

 

 「何故なら…友達でなければ…なんの気兼ねもなく貴様を始末出来るからなッ!」

 「…え?」

 

 世界が暗転する。

 

 「私の負けだ…見ての通り家は炎に包まれ貴様らとも友達になれなかった。こうなったら…貴様らが客人だろうと構いはしないここで決着を着けさせてもらう!今度こそ全力で勝負だッ!プライドを踏み躙られこのまま引き下がれるものか!貴様も持てる全てを振るい掛かってくるが良い!」

 

 『アンダインはこちらの先制攻撃を待っている………だが、分かっているだろう?』

 

 思いっきり語りかけて来てる!?もう完全に私に喋りかけてないかなこのメッセージボックス!

 

 「で、でも…」

 「フリスクちゃん…大丈夫だよ。いつもみたいにすれば良いんだ」

 「…わ、分かった」

 

 そうそう、ここでは全力で攻撃するフリをすれば。

 

 『ぶんせき』『武器を手放す』

 

 ンン?なんか私のだけ変だゾ?攻撃するフリじゃ無くて武器を手放す?まぁ…いっか。

 

 『あなたは武器を手放した』

 

 フリスクは全力で殴るフリをしてアンダインに1ダメージを与えた。そしたらアンダインはありえないと言わんばかりの顔で私たちを見る。

 

 「なんだと…?それが貴様の全力か…?もう一人の人間に至っては……武器を持った敵を前に…自ら武器を手放すと…?………貴様らは持てる力を振り絞っても私を傷付ける意思すら持てないと言うのか…」

 「アンダインの言う通り、私は軟弱な奴さ。武器を持った所で逃げるのだけで精一杯なんだもの」

 

 誰かを傷付けたら母さんに叱られちゃうし。気持ち良くもないんだもん。ただぽっかりとした虚無感が心の内を占めるだけ。

 

 「……フン…実は私も…お前たちに手荒な事はしたくないんだ。初めはお前たちの偽善に反吐が出たけど…お前が私に浴びせた攻撃は…お前が私の前で見せた意思は…昔私を鍛えてくれたある人に良く似ていたよ」

 

 それは…どうだろう。多分私がこうしてモンスターのみんなを傷付けないにはみんなのことを知ってるからで。もし知らなかったらきっと今みたいな行動は取れなかったと思う。

 

 「お前たちはただの腰抜けじゃないでっかいハートを持った腰抜けだな!」

 「…結局腰抜けなんだ」

 「当然だ!どれだけ私が攻撃をしても避けるばかりだったからな!…あの人と同じだ……」

 

 同じかな…同じだったら嬉しいな。少なくともそれだけアンダインに認められた事になるからさ。

 

 「なあ人間…お前たちとアズゴアは近いうちに戦う事になるだろう…でもな…あの人の事だから…ホントはきっと戦いたくないはずだ。だからお前たちも戦わず話し合ってくれお前たちならきっとあの人を説得して地上に帰してもらえるよ。そのうちまた別の悪い人間が落ちてくるだろうから…そしたらそいつのタマシイを頂くよ」

 

 説得は出来ない…けど出来るだけ全員が納得出来るようにはするつもり。私が居る影響のせいで所々ストーリーに変化が起こってるし。あの人との戦いもどうなるか分からない。

 

 「それでメデタシメデタシだろ?ククク……だけどもし…お前たちがアズゴアを傷付けたりしたら…その時人間共のタマシイでバリアを壊すよ…そしてお前たちをボッコボコにしてやる!それが友情ってもんだろ?」

 「あは♪確かに殴り合って分かる少年漫画みたいな友情もあるよね!」

 「クククク!じゃ…家が燃えちゃう前に逃げようか!」

 「暑いもんね。火傷と熱中症になる前に出よう出よう!」

 

 私はフリスクが火傷しないように抱き上げてからバタバタと全員で出口まで走った。

 

 「はー楽しかったぁ!な?」

 「苦労もあったけど結構楽しかったよ〜」

 「うん、あんなに楽しい料理は初めてだった」

 「料理……アレは料理と言えるのか?」

 

 キャラ、深く考えちゃいけないよ。アレは料理だったんだ。

 

 「また遊ぼうなッ!あーでも私んちにはもう呼べないけど。とりえあえず…パピルスんとこにでもお世話になるかな。私の会いたくなったらスノーフルに来てよ」

 「……冷凍マグロ」

 「失礼だよキャラ!」

 「ん?…気のせいか。それと!なんか困った事があったら…パピルスに電話して。私も一緒に居るからさ!んじゃまたなー!」

 

 アンダインはそのまま言いたい事を言って嵐のように去っていった。これで電話したら十数秒しか経ってないのにパピルスの家に着いてるんだよね。水の上でも走ったのかな。

 

 「…ちょっと気になるから電話掛けてみる」

 「お、早速?」

 

 フリスクが電話をパピルスに掛けると2コール目でパピルスが出た。

 

 『それはアンダインの家だよ今度また…あ…あれ?』

 「パピルス…どうしたの?」

 『ハァ…ハァ…そうッ!それは私の家だッ!!』

 「えっ!?」

 

 …あれ?アンダインが視界に消えてから数秒しか経ってないよね?十数秒じゃ無くて一桁だった!?瞬間移動なの!?

 

 『アンダインッ!どうしてこんなに早く戻ってこられたのッ?』

 『走ったから』

 『ウヒョウ!俺様もいつか、アンダインみたいに強くて汗だくになりたいぞッ!』

 「いやおかしいだろ!スノーフルからここまででどれだけ距離があると思ってる!あの魚がオリンピックに出たら世界ギネスに載るんじゃないか?」

 

 それはほんとにそう。瞬発力が良いってレベルを超えてるよね。

 

 −−−そんなこんなで、結局始まった騒がしくも楽しい料理レッスンはこうして幕を閉じたとさ。ちゃんちゃん!

 

 

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