初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 嫉妬する女の子は可愛い。


きっと君はヒロイン

 愛理(えり)ちゃんとのデュエル後、僕は愛理ちゃんに手を引かれながら会場内から聞こえた歓声が湧く方へ向かっていた。

 

「さっきの、すごい歓声だったね」

「うん。きっと向こうですごいデュエルが行われてるんだと思う」

 

 子供たちの歓声は今も僕たちが向かう先から聞こえてくる。

 

「あっ! あれじゃない? あそこいっぱい集まってる」

 

 愛理ちゃんが指さす方。そこには男の子と女の子が円状にそれぞれ2か所に分かれて集まっていた。

 

「なんだあれ。なんで男の子と女の子で別れて集まってるの?」

「わからないけど…でも円の中でデュエルをしてるのは両方とも同じみたい。見てみましょ?」

 

 僕は両方気にはなるけれど、愛理ちゃんが女の子が集まってる方に向かったので、そちらから見てみることにした。

 

「あれ? 女の子たちの中心でデュエルしてるの三沢君だ」

「友達?」

 

「うん。デュエルの相手は…あの時のお兄さんだ!」

 

 三沢君がデュエルしている相手は僕が会場を見て回って転んだ時にカードを拾うのを手伝ってくれた人だった。

 

「お兄さんってあの長髪の人? わっ、イケメン~。なるほど~女の子が集まるわけね。状況は…三沢君って男の子が押してるみたい」

 

 確かにデュエルは三沢君が有利な状況になっているようだ。

 

 三沢君の場には切り札のマグネット・バルキリオンがいる。ライフポイントもまだ1600ある。

 対してお兄さんの場には伏せカードが一枚。ライフも400と僅かだ。

 

 だけど押しているはずの三沢君の表情が険しい。

 お兄さんの方がずっと余裕のある表情をしている。

 どうしてだ?

 

「どうするんだい、攻撃するのかい?」

「くっ。いずれにせよ手札も伏せカードもない今、俺に攻撃する以外の選択肢などない。バトルだ! マグネット・バルキリオンで攻撃! マグネット・ソード!!!」

 

 三沢君のバルキリオンが剣を振りかぶりながらお兄さんに向かっていく。

 

「ふっ、僕はこの瞬間破壊輪を発動!」

 

 伏せていたカードは破壊輪だったのか!

 モンスターを破壊してお互いにそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける罠カード。

 

 強力なカードだけど、お兄さんも三沢君も残りライフがマグネット・バルキリオンの攻撃力を下回る。

 相打ちだ!

 

「なに!? 相打ち狙いか!」

「それはどうかな?」

 

 お兄さんに向かっていたマグネット・バルキリオンの首に巻かれた破壊輪が爆発し、破壊されたことで生じた煙が三沢君とお兄さんを隠した。

 

「ぐああああ!?」

「三沢君!」

 

 爆発した瞬間、叫び声をあげた三沢君に向かって僕は声を上げた。

 演出が派手なだけで怪我はしてないと思うけど。でも…これで三沢君のライフは…。

 

 煙が晴れた中から二人の姿が現れた。

 ライフは…三沢君のライフがなくなっている。対してお兄さんのライフは…400残っている!?

 

「くっ。勝利はできなかったが相打ちには…!?」

「残念だけど僕のライフは減っていないよ。僕はハネワタの効果を発動していた。ハネワタは手札から捨てることにより僕のライフを効果ダメージから守ってくれる。よってライフが減るのは君だけさ」

 

 お兄さんのデュエルディスクにWINNERの文字が表示される。

 

『キャー!!!』

 

 勝敗が決まった瞬間周囲で観戦していた女の子たちから喜びと感激の声が上がった。

 

 三沢君は口を開けて絶句している。その後、事実を受け入れ納得したように落ち着いた表情でお兄さんと握手をした。

 

「俺の負けか…いや、完敗だな。吹雪さん、デュエルありがとうございます。自分の未熟を知ることができました」

「うんうん。三沢君は随分と頭がいいようだし、もっともっと強くなれるさ。今回は少し僕が上回っただけだよ」

 

 にこやかに笑いながらお兄さんは三沢君に答えている。

 僕はデュエルの最後しか見れなかったから実際どうなのかわからないけど、三沢君が完敗というほどに2人には差があったのだろうか。

 ちょっと信じられないな。

 

 三沢君とお兄さんの話が終わったのだろう。

 三沢君が女の子たちの輪から抜けてきた。

 

「惜しかったね三沢君」

「コナミか…いや、惜しくなどない。完全に手加減されていた。終始遊ばれていたようにすら感じたな。完敗だったよ」

 

 話しかけてきた僕に気づいた三沢君が苦笑しながらもやはり完敗であったという。

 だったらどれほど強いんだろうか。あのお兄さんは…。

 1度デュエルしてみたいけど…女の子たちに囲まれててとても申し込めそうにないな。

 

「ところでコナミ、話は変わるが、そちらは?」

「あっごめん。紹介するよ。この娘は愛理ちゃん。さっきデュエルしたんだ」

 

「よろしくね。三沢君」

「ああ、よろしく愛理君」

 

「しかしコナミ…俺がデュエルをしている間に随分と仲のいい女の子ができたんだな」

「え?」

 

 三沢君が僕と愛理ちゃんを見た後、笑みを浮かべながら僕たちの繋いでいる手を見て言った。

 

「コナミ、お前意外と手が早かったんだな。驚いたぞ」

「いやっ、ちがっ。そういんじゃないよ!?」

 

 僕は慌てて愛理ちゃんと繋いでいる手を離して誤解を解こうとした。

 別に僕、手が早いとか、そういう恥ずかしいことはしてないから!

 

「違うんだ! なんて言うか歓声が聞こえて彼女に引っ張られてそのまま観戦してたから。そういうんじゃないからね!」

「コナミ君! 事実だけどそんなに必死に否定することないじゃない!」

 

 僕が三沢君に勘違いを解こうとしていると、愛理ちゃんが腰に両手を当てながら私怒ってますとアピールしてきた。

 えええ!? 愛理ちゃんが何で怒ってるのさ!?

 

「わかったわかった。…まあコナミ、お前にそんな積極性があるとも思えないしな。それはいいとしてだ」

「なんか気になる言い方だけど…なに?」

「あっちの男子が集まってる方、あっちではコウキがデュエルしているんだ。たぶんもう終わっていると思うが」

 

 三沢君が男の子が集まっている方を見ながらコウキを探している。

 

「あ、そうなんだ。勝ってるといいけど…」

「それはどうだろう。君たちのお友達のコウキ君とデュエルしているのは僕の妹の明日香だ」

「あっ、お兄さん」

 

 女の子たちの相手をしていたお兄さんがいつの間にか僕たちのそばに立っていた。

 

「お兄さん? …ああ、そういえば自己紹介をしていなかったね。僕は天上院吹雪。5年生だ」

「僕は粉眠、3年生です。コナミって呼ばれています」

「私は水無月(みなづき)愛理(えり)、同じく3年生です」

 

 僕と愛理ちゃんは吹雪さんに自己紹介をしながら明日香ちゃんという妹さんがいるらしい男子たちが集まる方へ向かうことにした。

 

「あ、ていうか僕たち同い年だったんだね」

「うん。そう言えば私たち名前しか言ってなかったね」

 

 愛理ちゃんは僕たちが名前しか知らなかったことが可笑しいのか笑いながら後でもっとお話しましょと約束した。

 

「もっと色々話したいからあとで連絡先教えてね。大会終わったらさよならっていうのはちょっと寂しいから」

「わかった。あとで交換しよう」

 

「おっ! コナミ、どうやらコウキは敗けたらしいぞ。ほら、あそこで悔しがってる」

「うわぁ~」

 

 コウキは両手を地面につけて項垂れている。

 よほど酷い負け方でもしたんだろうか。

 普段なら負けてもあそこまではならないんだけど。

 

「コウキ、大丈夫?」

「そんなに落ち込むなんてお前らしくもない。どうした?」

 

「コナミ、三沢。実は明日香ちゃんに再戦を申し込まれてかっこいいところ見せようとしたんだが、ボコボコにやられてな。この様だ」

「明日香ちゃんって吹雪さんの…」

 

「そっ僕の妹だね。落ち込んでるコウキ君のことは友達である君たちに任せるよ。僕は明日香のことを見てくる。どうやら男の子たちに囲まれて助けを求めてるみたいだから」

 

 そういうと吹雪さんは男の子たちから矢継ぎ早に話しかけられて困ったように吹雪さんの方を見ている明日香ちゃんのところへ向かった。

 

「元気出しなよ。まだ大会の途中なんだし、大会で勝ちまくってかっこいいところを見せてあげればいいじゃないか」

「…そうか…そうかな…そうだな! なんどやられても最後に勝てばいいんだもんな」

 

「落ち込みやすいが立ち直るのも早いのがコウキのいいところだ」

「ふーん。なるほど、つまりコウキ君は単純な子ってことね三沢君」

「ああ。良くも悪くもわかりやすい奴だ」

 

 後ろで三沢君と愛理ちゃんがコウキについて話しているのが聞こえる。

 

「よっし、元気も出たしデュエルしに行くか!…ところでさっきからいるお前誰だよ」

 

 今気づいたのか、立ち直ったコウキが愛理ちゃんの方を向いて話しかけてきた。

 

「私は水無月愛理。さっきコナミ君とデュエルしてね。友達になったの」

「ふーん、まあいっか。よろしくな!」

 

 怪訝な表情を浮かべながらコウキは愛理ちゃんを見て、そんなことどうでもいいとばかりに新しいデュエルの相手を探しに走っていった。

 

ー俺とデュエルしろおぉおおーーー!!

 

「いやあ、元気だねえコウキ君は」

「あっ吹雪さん。明日香ちゃんは大丈夫でしたか?」

 

 コウキが走り去っていった後、僕たちの後ろから吹雪さんが話しかけてきた。

 

「うん。大丈夫だよ。ほらあそこ、男の子たちが列に並んでるだろ?」

 

 吹雪さんが指さす方、そこには男の子たちが列となり順番にデュエルをしている。

 

「埒が明かなかったから明日香が「いやっ」て言うまでは順番にデュエルすることになったんだ」

「うわぁ、一人の女の子に男の子が群がってる」

 

 愛理ちゃんはその光景を見てちょっと引いてるみたいだ。

 でもまあ明日香ちゃんとデュエルしたい気持ちは…正直わかるなあ。

 ちょっと遠くからでもすごく可愛いのがわかるから。

 

 …あとで僕も並ぼうかな。

 

「コナミ君はあんな一人の女の子に群がるような男の子になっちゃだめだよ?」

「え゛っ」

「ん?」

 

 愛理ちゃんが笑顔で僕を見ている。なんだろう。笑顔なんだけど、心なしかその笑顔が怖い。

 

 三沢君と吹雪さんも不穏な空気を愛理ちゃんが纏っているのがわかるのか冷や汗をかいている。

 

「はははっ、そんなことより吹雪さん! 僕とデュエルしてくれませんか?」

 

 僕は誤魔化すように急いで話を変えるため吹雪さんにデュエルを申し込むことにした。

 

 三沢君が負けるほどの相手、デュエルしてみたい!

 決して話題を逸らすためではない!

 

「う~んデュエルしてあげたい気持ちは山々なんだけど、ごめんね。僕もほら先約が沢山いてね?」

 

 そう言う吹雪さんの後ろには明日香ちゃんの前に並ぶ男の子たちと同じように女の子たちがたくさん並んでいた。

 そしていつまでも僕たちと話しているのが恨めしいのかこちらを、というより愛理ちゃんをにらんでいた。

 

「あっはい。そちらの子たちを優先してあげてください」

「ごめんね。大会が終わったら相手をするからさ」

 

ーは~い。みんな待たせてごめんね! 今からデュエルの相手をしてあげるから並んで並んで~。

 

 吹雪さんは僕にそう言うと女の子たちの相手をするため戻っていった。

 

「じゃあコナミ君。私たちも行きましょ! デュエルの相手探さなきゃ!」

「う、うん。三沢君! また後でね!」

 

 僕は背中を押してくる愛理ちゃんに苦笑しながらも三沢君に別れを告げてデュエルをしてくれる相手を探すのだった。

 

「…なんだろうなこの気持ち。デュエルで敗北した時のような敗北感は…」

 

 後ろから空を見上げながら寂しそうにつぶやく三沢君の声が聞こえた気がした…。

 

 

 




 GXのヒロインは愛が重いのが基本。
 まあ愛理ちゃんがコナミに向けているのはラブじゃなくライクなんだけどね。

 ちなみにこの作品で使われるカードの大半はエラッタ前のカードです。
 仕方ないよね時代的に。
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