初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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お待たせしました! 2期始まります! オリキャラも何人か増えますッ!


2期
新学期、アカデミアの新年生!!


 デュエルアカデミア、デュエリストの育成を目的として孤島に建てられた学園。その学園に今年入学すべく多くの新入生を乗せた大きな船が抗う波を切り分けて向かっていた。

 

 その巨大な客船の船首に俺──佐藤道長(さとうみちなが)は万が一にも落ちることのないように手すりに掴まって立っていた。波を切り分けて進む船の上は潮風が吹き進み気持ちがよく、俺は目的地であるデュエルアカデミアが見えないかと今か今かと待ち望んでいた。

 

 その俺に背後から話しかける女性が現れた。それは俺と同じ、今年からデュエルアカデミアに入学する同級生の「永元春香(ながもとはるか)」であった。地毛である茶髪を金髪に染め、両耳にはピアスをつけた一見して素行の悪そうな彼女に俺は少しだけ目を向けて、また正面に顔を戻した。

 

「ずーっとそこにいるけど、そこから何か見えるわけ?」

「いや、何も見えないよ。変わらない海と時々鳥が飛んでいるのが見えるだけかな」

「ふーん、何が面白いのやら。昔っから変わってるわねアンタは」

 

 俺の返答に春香はつまらなそうにそっけなく言い放ち、俺の隣に立った。彼女は俺の同意を得ることなく波を切る船の振動に体を持って行かれないように俺に掴まりその体を支えていた。

 

 潮風で吹きすさぶ黄金を思わせるような煌びやかに金色に染め上げた髪を押さえながら、彼女は呟いた。

 

「髪がべたつくわね、ヘリで来たらよかったわアタシ」

「ならヘリでくればよかったじゃないか、選べたんだから…………なんで船で来たんだよ」

 

 春香は俺の質問に答えるのに少しばかり窮したように視線を海の先に固定しながらそっけなく言った。

 

「なんでもいいでしょ、それよりアンタこそ、いい加減その変な仮面外したらどうなわけ。このデッキに人が少ないのアンタのせいって気づいてる?」

「なに、そうなのか? それは悪いことをしたな。しかし、これは俺の幸運のアイテムなんだ。今更だし、もう少しつけておくよ」

 

 俺は顔につけている仮面をなぞりながら言った。仮面は俺の愛用品であり、必需品だ。今つけている笑顔が描かれた仮面は今の俺の心境を表している物である。しかし、春香の言ったことを確かめるように周囲を見ると、たしかに人は少なかった。

 いないことはなかったが、それは不自然に俺から離れており、春香の言うように仮面をつけて顔を隠している俺を不審に感じ近づかないようにしているのかもしれない。

 

 遠巻きからこちらを見る彼らからは不審者のそれを見る視線と、なぜかその不審者のような風体をした俺に対して親し気にしている春香に疑問が混じった視線を向けていた。いや、どちらかと言えば、春香に対して何がしか俺が不審なことをしないかと怪しむ視線か…………。

 

 春香は可愛い。元の容姿は普通らしいが、化粧をしたその容姿は努力をしたらしく相当な腕前であり、中学校でもその学年で上から数えた方が早い容姿と男女分け隔てなく親し気に接する性格からそれなりにモテていた。

 同級生の中では素行の悪そうな見た目からギャルと表現するやつもいたか、ともかく明るく、言葉遣いがちとキツイところもあったが人気な女であった。

 

 今も化粧はしており、それを知らない人物から見ると彼女は相当な美少女に見えているのだろう。仮面をかぶり素性を隠しているようにも見える俺に対して嫉妬のような視線を向ける者もいる。

 

 彼女と俺は尊敬している先輩は違えど、その先輩同士の関係から中学からそれなりに親しくしていた。自分の体を支えるために俺に対して掴まっているのも俺と彼女が見知った仲であり、ある程度の信用を築いているためだと思う。決して、彼女が誰彼構わず触れるようなふしだらな女性だからではない。

 

 俺は周囲を見渡し、少しばかりばつの悪い気分になったため、気分を変えるべくズボンのポケットから携帯を取り出し、お気に入りの動画を再生した。それは二人のデュエリストがデュエルをしている動画であった。

 

「あんたまた見てるわけ。よくそんなに見て飽きないわね」

「飽きなんてしないさ。憧れのコナミ先輩のデュエルなんだから、春香だって好きだろ愛理先輩が……」

「そりゃあそうだけど、そんな何度もは見ないわよ。せいぜい数回見れば満足するわ」

 

 呆れたように俺の携帯に映されている動画を覗き込む春香に俺は2人で見やすいように携帯の位置を調整した。

 そこには中学生時代からよく知る先輩方の姿が写されていた。

 

『デュエルアカデミアの新星! 星に選ばれしデュエリスト!!』

 

 そのように銘打って数ヶ月前に投稿された動画を俺は夢中で見ていた。その動画には俺が中学生時代にお世話になり、尊敬と憧れの対象として意識している一つ上のコナミ先輩が、学園一可愛いと評判で学校の男子の憧れの的であった水無月愛理先輩と仲良くデュエルしている姿だった。

 

 その動画を受験勉強の傍ら、俺は何度も見ていた。その動画ではラーイエロー証である黄色い制服を身に纏った先輩が見たことも聞いたこともないプラネットモンスターなるモンスターを召喚し、勝利する映像が映っていた。

 

 デュエルはコナミ先輩の召喚するプラネットモンスターに対して愛理先輩の少しばかり大げさにも感じるリアクションをしながら進み、最後には3体の大型モンスターであるプラネットモンスターが揃うことで佳境を迎えてコナミ先輩の勝利する映像で終わっていた。

 世界で1枚しか存在しないと紹介され、全10種の内、半数近くをコナミ先輩が縁あって所有しているらしく、それはカードに選ばれたからだと紹介されていた。

 

 俺は中学時代にはお目にかかることがなかったそのプラネットモンスターたちに興奮し、エースであったガガギゴはどこに行ったんだろうと疑問に感じながらも何度も見直していた。それが受験勉強のストレスに対する発散と先輩とまたデュエルしたいとの思いを高ぶらせモチベーションの増加に貢献してくれていた。

 

「この動画だと先輩はまだラーイエローだけど、きっと今頃はオベリスクブルーに入ってるんだろうなあ。俺も頑張ってそこを目指さないと。新入生は全員がラーイエローか、成績が悪ければオシリスレッドらしいし」

「あんたにゃ無理よ。オシリスレッドが妥当でしょ。その点、あたしはオベリスクブルーだし、超豪華って聞くから楽しみだわー!」

「おいこら、オシリスレッドなんて落ちこぼれが入るところだろうが! 冗談じゃない、中途入学する以上ラーイエローなのは仕方ないとして、女子だけオベリスクブルー確定ってのはズルいよなあ」

 

 豪華と聞くオベリスクブルー寮にどのようなイメージを働かせているのか、春香はうっとりとした表情でこの先にある学園生活に思いを馳せていた。

 俺はそんな彼女に辟易とした感情を向けながら、船が進む先へと顔を向けた。そこには微かであるが、目的地である孤島が地平線の先に少しづつ大きく見えていた。

 

「──あれが、デュエルアカデミア!!」

「………アタシたちが3年間世話になる学園。本当に孤島に建っているのね。やって行けるのかしらアタシたち………」

 

 興奮したように叫んだ俺に対して、春香は俺に掴まる手に力を込めながら不安そうに言い放った。特別意識しているわけではないが、彼女のその手の上から俺は自分の手を重ねて彼女の緊張を解こうとしていた。

 そして、俺は近づいていく島の影をもっとよく見ようともう片方の空いている手で仮面を外してそれを見た。吹き付ける潮風が顔を撫で、周囲の海が反射して島を輝かせているのが見えた。

 

 鳥が一羽俺たちの頭上を通過して島の彼方へと遠のいて行った。それは俺の、この船に乗る俺たち全ての新入生を祝福しているようにさえ感じた。

 

 俺はそれを感じ、これから始まる3年間というかけがえのない学生生活に期待を膨らませ胸を高ぶらせ続けるのだった──

 

 

 

 

 新入生を乗せた船がアカデミアへと向かい、近づいていく中で、孤島の端の端、そのまた端に建てられたくたびれた寮に僕は不貞腐れた様子で海を眺めていた。

 

 2年生へと進級した僕ことコナミは十代君と共に学園の落ちこぼれが入る寮と呼ばれるオシリスレッド寮に配属されたことに納得できず、いまだに不満を消化しきれずにいたのだ。

 

 地平線の先に見えていた船はもう間もなく船着き場に到着し、そこに乗っているであろう新入生たちが期待と不安を胸に上陸するだろう。

 

 そこにはもしかしたら中学時代の自分の知り合いがいるかもしれない。僕の知る限りでは、佐藤君が入学してくるのではないだろうか。そうでなくとも、僕は愛理ちゃんの父親の藤次郎さんとの関係で僕のデッキのエースであるプラネットモンスターの紹介の動画の関係でそれなりには有名である自信がある。なんせ再生回数が凄いことになっていたからだ。

 

 そんな自分が今や落ちこぼれが入るとされるオシリスレッドにいると知られたら、恥ずかしくてとても顔を合わせられる自信がなかった。

 

「なあ、なっちまったもんは仕方ないだろ。そんないつまでも落ち込んでないでよ、新入生の顔でも見に行こうぜコナミ」

 

 そうして忸怩たる思いを抱えて憮然とした表情を浮かべていた僕の隣で明るく僕を誘う茶髪の少年は名を遊城十代という。僕と同じオシリスレッド寮の同級生で友人であり、そしてライバルであった。

 

 彼は1年時からオシリスレッドの落ちこぼれとして見られていたが、天性の高い実力とこの島で起こった事件を解決に導いてきたことで、彼自身の希望もあってオシリスレッドに在留してはいるが、この学園きっての実力者として見られていた。

 

 もちろん、彼のライバルである僕も敗けてはいない。世界に一枚しかないプラネットシリーズと言う惑星の名を持つカードを主力とし、十代君と勝っては敗けてを繰り返す。自他ともに認める対等のライバルであった。

 

 そんな僕らだが、今この時の心境としては真反対をいっていた。十代君は1年時からそう見られていたからか、いや、元からの性格であろうが自分が落ちこぼれと見られることにまるで頓着しておらずただ只管に自らの心の期待と好奇心に身をゆだねていた。

 

 対する僕は、知り合いからの評価に対して、著しく恥を感じることに恐れ、そしてどうしようもないと言う事実に只管に心を殺す方法を模索していた。有り体に言えば逃げる方法を探していた。

 

「はぁー。こりゃどうしようもねえな。翔! 俺たちだけで一緒に新入生を見に行こうぜ! コナミ、お前も気になったら来いよ。一緒に歓迎デュエルで出迎えてやろうぜ!」

 

 そんな僕にしびれを切らしたのか、十代君は友人の翔君を誘って二人で船着き場の方へと駆け出して行った。薄い水色の髪をして丸眼鏡をかけた翔君もまたオシリスレッドの住人の一人であり、彼がアニキと呼称する──血縁関係はない──十代君の影響か最近、少しづつではあるが、実力を増していっている人物だった。

 僕はそんな二人の後姿を眺めながらなんであの二人はあんなに無頓着でいられるのだろうと不思議でならなかった。

 

 或いは、僕が気にし過ぎなだけかもしれないが、恥と言う概念を受け入れるにはデュエルで敗北するのと同じくらいの心の頑強さを用意する必要がある。そして僕には、敗北はともかく、恥を受け入れる用意がまだできていなかったのだ。それゆえに、このようなところでうじうじと情けなく引きこもっていたのだ。

 

 そうしてしばらくした頃だろうか。海から流れてくる潮風に身をゆだねすべてを忘れて心穏やかにしていると、レッド寮へと続く丘の向こうから、こちらへと歩いてくる人影が見えた。

 それは去年僕が着ていたラーイエローの黄色い制服を着て、腰には悲しみの涙を流しているような模様が描かれた仮面をつけた男子であった。

 

「先輩、探しましたよ。こんなところにいたんですね」

「君は………もしかして佐藤君かい!?」

「ええ、中学校でお世話になった佐藤道長です。いやーお久しぶりです。案内されたラーイエローにいないからてっきりオベリスクブルーにいるのかと思っていたんですが、聞いたらびっくり、オシリスレッドにいると聞いてすっ飛んできましたよ。本当にオシリスレッドの生徒なのかって」

 

 佐藤君は右手を悲しみの仮面に寄せながら僕にそう言った。それは僕が中学時代からよく知っている彼の癖であり、彼の心の表れであった。

 彼は今、悲しんでいた。何を………とは聞くまい。なんとなく察することはできる。彼は僕のことを慕ってくれていたから、そんな僕が赤い制服を着ていることが信じがたく、受け入れがたいことだったのだろう。

 

 僕はあえてそれには触れずに再会できたことそのものを喜ぶべく話を振った。

 

「佐藤君、約束通りアカデミアに入学できたんだね。おめでとう! 本当に嬉しいよ!」

「はい、俺も嬉しいです。お世話になった先輩に会えて………そうだ、春香もこの学園に入学したんですよ。あいつデュエルにはそこまで興味ないと思ってたんですが、どういう風の吹き回しか、突然入ると決めたらしいんですよ。びっくりですよね!」

「へー、春香ちゃんが、あまりそんな印象なかったのにね。愛理ちゃんに懐いてはいたけれど、デュエルにはあまり関心がなかったし、何かあったのかな?」

 

 話題が明るい祝福モードに入ったからだろうか、チラリと彼の指を見ると、反対の腰につけてある笑顔の仮面に左手が寄っていた。その指は優しく、そして滑らかに仮面を撫でていた。

 

「さあ、愛理先輩と会いたかったんじゃないですかね。俺と一緒に先輩方からデュエルを教わっていた時も愛理先輩にばかり絡んでいましたしね」

「はは、そんなこともあったね。しかしそうか、春香ちゃんも入学したのか。なんだか懐かしいよ。当たり前だけど、1年ぶりの再会だしね。今頃は愛理ちゃんに会っているのかな」

「きっとそうだと思いますよ。それより…………」

 

 佐藤君は言葉を切って僕をじろじろと見た。それは何かを確認するような視線であった。

 

「コナミ先輩、本当にオシリスレッドに配属されたんですね。初めに聞いたときは信じられませんでしたが、こうして目の当たりにするとそれが本当だったんだなあとしみじみ感じます」

「う゛っ、あまり突っついてほしくない話題だよそれは…………。僕だって不本意ではあるんだけどね。まあ、仕方なかったってやつだよ」

「はあ、仕方なかったですか。あなたを尊敬している俺としては残念で仕方ありまんよ。尊敬する先輩なら、今頃オベリスクブルーでぶいぶい言わせていると思っていたんですが、現実はオシリスレッドで落ちぶれているんですから」

 

 大きくため息を吐いてこれでもかと残念という気持ちを表現する佐藤君に僕は口元をひくひくとさせながら、彼の気持ちを受け入れた。仕方ないこと、そう、これは仕方ないことなのだと自分に言い聞かせて。

 

「先輩、積もる話もありますが、よければ今からデュエルをしませんか。先輩の卒業式の日にした約束、今果たしましょうよ。こんなことを言うのはなんですが、今の落ちぶれた先輩なら僕でも、いえ、俺でも勝てそうです」

 

 彼は顔に怒りの文様がついた仮面をつけてデェエルディスクを腕につけた。それは約束を果たすのと同時に彼の失望と怒りが籠った挑戦でもあったと思う。

 

「い、言うじゃないか。そこまで言うなら相応の自信はあるんだろうね。あれから1年、君がどれだけ強くなったか見てあげるよ」

「ええ、ずっと負け続けた雪辱。このデュエルで100倍にして返します」

 

 そうして陽光が照らすレッド寮の裏で、僕と今年入学して再開した佐藤君の約束のデュエルが始まった。

 

「「デュエル!!」」

 

 




 更新頻度ですが4日に1話を予定してます。2日に1話はやっぱりしんどい。なので次は5日予定です!
 一応休んでる間に2期の終わりまでの流れは大雑把に考えたので不測の事態がなければ止まらずに書き切れると思います!

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