初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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翔君メイン回。2期に上がったからこの頃から強くなった描写が出たと思うので書いていい頃だと思い彼メイン回です。


翔の試練

 アカデミアの数ある教室の一つで僕、丸藤翔は先生に授業後に呼び止められて一人、何か悪いことはしただろうかと内心ビクビク不安を持ちながらと教室に残っていた。

 

 十代のアニキやコナミ君たちはそんな僕を置いてさっさと寮へと帰って行ってしまっている。呼び止められたの僕だけだからと言って、友達なんだからせめて廊下で待っていてほしかった。

 

 教室の奥に設置された黒板の前に置かれた教壇の横でそんな僕の様子に苦笑しながら先生は言った。その声は努めて事務的で感情のこもらないものではあったが、その雰囲気から喜ばしい内容なのだと、直感的に感じた。

 

「丸藤翔君、君にラーイエローへの昇格の話が持ち上がっている。君にその意思があるのなら試験を受けれるが、どうするかね」と。

 

 僕は一瞬、先生が何を言っているのかを理解できなかった。

 それから一拍置いて先生の言葉の内容に理解が追い付いて「ええええええ!!? 僕が昇格っすかぁああ!!?」と、自分でも信じられない程の声量を発して先生にたいして叫んだのだった。

 

 それからぽわぽわとまるで酔っ払いのようなまるで現実味を感じない頭で寮の自室まで戻ってきた。部屋に戻ってきた時、日はもう沈み空にはまん丸い月が昇っていた。黄金に輝くその天体は僕の気持ちと合わさってこの幸運を運んでくれたようにさえ感じていた。

 

 そして部屋の中では僕がアニキと呼んで憧れている十代のアニキと部屋は別だけど同じ寮になってからはしょっちゅうアニキとデュエルしているコナミくんがいた。

 

「よし、俺はフレイム・ウイングマンでお前のクノスペに攻撃だ!」

「それを待っていたよ! この瞬間、異次元トンネルーミラーゲートーを発動! お互いのモンスターを交換してバトルを行う!」

「うぇええ!? がー! しまったー俺の負けかよー!」

 

 2人はいつものようにテーブルに広げたデッキでデュエルをして、勝ったら負けたりを繰り返しているみたいだった。

 

 コナミ君がきてからアニキは本当に毎日のように彼と遊んでおり、少しだけアニキがとられたようにさえ感じて嫉妬のような感情を抱いていたが、昇格の話で浮足立っている今の僕の心にはそのような影を抱くことはなかった。

 しかし、二人を見たからか、あるいは安心できる部屋へと帰ってきたからか、これまで酩酊していた頭に冷静さが戻り、不安が押し寄せてくるのを感じていた。

 

 僕はそんな和気藹々と何の憂いもなくデュエルしている2人がなんだか羨ましくて、昇格の話で興奮とそれに次ぐ不安に襲われている自分に対してそこはかとなく情けなさを感じため息を吐いた。

 

 2人は学園でも屈指の強さを持っている。筆記の面で不安があるため寮の昇格の話は中々やってこないけれど、もしその話が来たならば僕とは違いなんなく試験を乗り越えるだろうと想像するに容易かった。

 

 それだけに、自分の情けなさと気の弱さに自己嫌悪を感じてため息を吐かずにはいられなかったのだ。

 

「おう、帰ったんだな翔。なんだったんだ先生の話って」

「なんだか落ち込んでるね。あんまりいい話じゃなかったのかい」

「アニキ、コナミくん。ううん、話自体はすごくいいものだったんだけど……はあ」

 

 デュエルが終わり、片付けながらこちらを見てくる2人に僕は何度目かのため息をつきながら返した。いい話といいながら落ち込んでいる様子を見せる僕に2人は顔を見合わせて不思議そうな顔を見せて、僕に先生の話が何だったのかを聞いてきた。それに対して僕は少し溜めて、誤魔化すことなく答えた。

 

「実は……僕にラーイエローに昇格しないかって話だったんすよ」

「なにィ!? 翔、お前ラーイエローに上がるのかァ!」

「へー! よかったじゃないか翔君! 君が頑張ってるのを先生たちが認めてくれたってことだね! でも、それならどうしてそんな風に落ち込んでるんだい、十代くんと離れるのが嫌だからとか?」

「アニキと離れるのが嫌ってのもあるけど、寮の昇格のためには試験を受けないといけないんっすよ」

 

 僕の返事にアニキもコナミくんも嬉しそうに笑顔を見せている。だけど、それに対して僕はいい表情で返すことはできなかった。

 

「試験かあ。まあそりゃあ受けないといけないよね。……あーだからそんなに不安そうにしてるんだね」

「いいじゃねえか翔。どんな試験でもお前なら超えれるさ。これまで頑張ってきたんだからよ、自信を持っていいと思うぜ。ところでどんな試験なんだ?」

「うん、だけどその試験ってのがブルー寮の生徒とのデュエルなんだ。それでいい結果を残せたらって話で、それでダメなら昇格は受けれないんだ。ブルー寮の生徒とのデュエルなんて、僕なんかじゃ勝てるわけないし、とても自信なんて持てそうにないんっすよ」

 

 先生から告げられた試験内容はブルー寮との生徒とのデュエル。誰が選ばれるかはわからないけれど、少なくともブルー寮と言う時点で弱いなんてことはあり得ない。少なくとも僕よりも強いのは確実だろう。

 そんな人と衆人観衆の前でデュエルすることになるなて、恥をかきに行くようなもので、ある程度強くなった自信はあってもとてもとても、今の僕がこの試験を乗り越えられるなんて思えるわけがなかった。

 

 僕は自分の弱さをよく知っている。完璧を体現している実のお兄さんである丸藤亮とは大きく違って調子に乗りやすく、それで何度も敗けたり挫けたりすること山のようだった。

 

 勉強でも実技でもダメダメな自分でも頑張れば強くなれると、お兄さんやアニキに近づくことはできると信じて頑張ってきた。それを評価してくれたんだと思うんすけど、だからっていきなりブルー寮の生徒に勝てるわけない。そんな自信を持つことはできなかった。

 

 アニキもコナミくんも強いから気楽に頑張れと言ってくれるけれど、僕はそんな気楽にはなれないっす。正直、どうせ受かりっこないし、ラーイエローの昇格の話が来たことを断っても間違いではないのかなあと思うんすよね。

 

「そりゃあ可笑しいぜ翔。やってもいねえのに勝てないなんて考えてたら勝てるもんも勝てなくなっちまう。オベリスクブルーの奴は強えかもしれねえけど挑戦する分には損しねえって」

「そうだね、十代くんの言う通りだよ。翔くん、君のその気弱な部分はしょうがないとしてもそれで挑戦することそのものを辞めちゃったら成長することもできずに終わってしまうよ。君はあの丸藤亮さんの弟さんなんだから、その気になればできないなんてことないよ」

「アニキィ……コナミくん……。そうっすかね。こんな僕でもやればできると本気で思うっすか?」

 

 不安が表に上がるように、背中を押してほしくて出た言葉に2人はそれが当然であるように「自信もっていいぜ!」「君ならできるよ」と言ってくれた。

 それが嬉しくて、その一言で本当にやれるような気がしてくる単純な自分に今回だけは感謝した。

 

「うん、僕、やってみるよ。どこまでできるかわからないけれど、やるだけやってみるよ!」

 

 僕は背中を押してくれる2人に応えるために、そして嫉妬や羨望の心を向けるお兄さんに少しでも近づいていくために僕はダメで元々、ラーイエローの昇格試験に挑戦することに決めた。

 不安は十分以上にあるし、とても今の僕が1人で勝てるとも思えない。でも、挑戦するだけならタダだもんね。やってみるっす!

 

「そうと決まれば翔、俺とコナミとデュエルしようぜ! 試験本番までに特訓しておかないとな!」

「え〜〜それアニキがデュエルしたいだけじゃないっすか?」

「いやいや、特訓は無駄にならないよ翔くん。相手が誰かわからない以上、君のデュエリストとしての力を増すのが一番だ」

「うぇえええ!? 本気っすかー!!?」

 

 その晩、僕たちは一晩中デュエルをすることになった。それはありがたいっすけど、一晩中は勘弁してほしかったっす。

 これで試験日までに強くなれるといいんすけどねえ……。

 

 

 

 

 特訓の一夜から幾日か経って今日は僕の昇格試験当日がやってきたっす。当日の天気は晴れ!

 雲の合間から差し込む日差しは暖かく、今日試験を受ける僕に吉兆を届けてくれてるようだった。

 

 僕はそんな太陽に勇気をもらったような気持ちになって気合十分、心は受かってやるぞとやる気に満ちた状態で試験場となる学園のデュエル場にたどり着いた。

 デュエル場の観客席にはまばらに観戦しにきた生徒が座っており、その中には当然のようにアニキやコナミくんがおり、僕に向けて楽しそうに話しながら笑って見ていた。

 

 観客席の中にはアニキたちだけではなく明日香さんや後輩の剣山くんたちも見にきてくれていた。コナミ君の関係で割かし高い頻度でレッド寮に来てくれる愛理さんは珍しく今日はコナミ君の隣ではなく明日香さんと談笑しているようだった。

 

 皆僕を応援してくれている。それを見て、改めて無様なデュエルはできないなと弱気に振れそうになる自分の頬を両手でたたいて喝を入れた。

 

 だけど、一つ気になったのは観客席で僕のデュエルを見守ってくれている知り合いの中に堂本くんがいないのだけが気になった。彼と僕は特別仲がいいと言うわけではないけれど、コナミくん繋がりでそれなりには関係を築いていた。

 

 知り合い以上、友人未満ぐらいだろうか。友人と呼ぶには2人で何かするということはまずないと思っているため未満なんじゃないかなあと考えている。

 そんな少しだけ希薄とも言える関係性だけど、だからと言って見に来ないとも思っていなかったのだ。だから、それを知った時、コテンと顔を横に向けて不思議に感じていた。

 

 そうしてデュエル場に到着して待つこと数分、対面に当たる通路からコツコツと誰かが歩いてくる足音が反響して届いてきた。

 暗闇の通路から照明が照らすデュエル場に入ってきた人物を見た時、僕は大層驚いた。

 

 その人物は観客席にいないと思っていた堂本工事くんその人だったからだった。

 

 彼はオベリスクブルーの生徒が着る青い制服を身にまとい、鋭い眼差しで僕のことを見ていた。

 

「堂本くん……もしかして今日の試験の相手って……」

 

 僕は半ば確信を持ちながら対面まで歩いてきた彼をおずおずと指差して聞いた。

 

「ええ、翔ちゃんが考えている通りよ。今日のあなたの相手はあたし。あなたが昇格試験を受けるって聞いてね。立候補したの、試験の対戦相手にね」

 

 堂本くんはデュエルディスクにデッキを差し込みながら言った。その真面目な顔から知り合いだからと言って手心を加えてくれるとか、そういう甘い考えは捨てた方がいいことをすぐに感じた。

 彼の顔からはいつもの笑みを絶やすことのない柔和な雰囲気が取り払われ、険しい目つきが僕を見定めると言う気持ちをひしひしと伝えてきていた。

 

 彼は2年生に進級して早々にオベリスクブルーに上がっていた。

 元からそれだけの実力と学力を保持していたため、彼の意思次第で上がれる状態だったらしい。そのため、コナミくんがオシリスレッドに降格になるや否やすぐにオベリスクブルーへと上がった。

 

 コナミくん曰く『これであたしがオシリスレッドに降格したらまるでストーカーみたいよねえ。コナミちゃん、あなたが上がってくるのを待つことにするわね!』とのことらしい。

 彼がいつでもオベリスクブルーに上がれたのに留まっていたのは友人のコナミくんがラーイエローにいたからのようだった。

 

 だから、オベリスクブルーへと上がった彼が僕の対戦相手になると言うのは決しておかしな話というわけではないけれど、でも、どうして立候補してまで僕とデュエルをしようとしたんだろうと漠然と頭の片隅で考えていた。

 

「立候補って、どうしてそんなことを……?」

「入学して間もない頃からあなたのことは知っていたのよ、十代ちゃんと知り合う前からね。それはもうどうしてこんな子がアカデミアにって思える様だったから、正直あなたにはそこまで関心も興味も抱いてはいなかったんだけど、今回ラーイエローへの昇格の話が持ち上がったって聞いてね。

 なら、あれからどれだけ成長したのか。オシリスレッドから上がるだけの資格を持っているのかこの目で確認したかったのよ。それで、立候補したってわけ」

 

 堂本くんは僕の疑問に答えるために一息に言い切った。それは僕と言う人間の成長を推し量るためにわざわざ自分の目で確かめにきたと言うことだった。

 彼の言う通り、入学当初の僕は情けない限りのデュエリストだった。もしかしたら今もそうかもしれないけれど、僕はすぐにへこたれる未熟者だった。

 

 あれから一年、どれだけ僕が成長して変われているかはわからない。だけど、一度受けると決めた試験、この場に来た以上もう逃げることはできない。

 あの頃の僕を知っている堂本くんからすれば僕がラーイエローでやっていけるかどうか不信の種が消えずにいるんだと思う。

 

 なら、これはただの試験ではない。未熟な僕を知る彼に僕がデュエリストとしての強さを認めてもらうためのデュエルになると思う。言ってしまえば、友達になるためのデュエルと言い換えれるかもしれない。

 

 そう考えて、僕は顔を引き締めた。

 

「さあて、そろそろ始めましょうか。翔ちゃん、今のあなたの全力を見せてもらうわね」

「ど、堂本くん。うん、僕の全力で頑張ってみせるよ!」

 

 堂本くんはすごく強いデュエリストだ。学園でも最上位に位置するコナミくんたちと張り合うことのできる数少ないデュエリストだ。

 だから、そんなとても強い彼に僕がどこまでやれるかはわからないけれど、アニキの言う通り挑戦することは無駄にはならない。

 

 それに連日特訓してもらった2人にも情けない姿を見せることはできない。特訓の成果をみんなに見せて試験に受かってみせる!

 

 そう意気込んで僕は堂本くんがそうしているようにデュエルディスクにデッキを差し込んで、ディスクを腕に装着した。

 そして横にいる先生に準備ができたことを知らせるために僕は堂本くんと示し合わせたようにサングラスをかけた先生の方を見た。

 

「よろしい、2人とも準備はいいようですね。丸藤くん、一度始まったデュエルは中断できません。デッキの調整は良いですね」

「はい。問題ありません」

 

 先生から確認するように告げられる言葉に力強くうなづいて僕は堂本くんに向き直った。

 

「では、デュエルを始めてください。この結果如何で翔くんの寮の昇格は決まります。2人とも知り合いのようですが手加減のないように、全力でデュエルしてくださいね」

「「はい!!」」

 

 先生からの言葉に僕らは2人で口を揃えて答えた。そして、それなりの数の観客が見守るデュエル場の上で僕の昇格がかかったデュエルが始まった。

 

「「デュエル!!」」

 

 




翔君の口調って「〇〇っす」でよかったよねと思いながら書いてました。
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