「私のターン、ドロー!」
アメリカで偶然にも出会えた風を司る4人目の霊使いウィン。新緑を思わせる鮮やかな髪を後ろにまとめた少女とのデュエルは彼女の先行から始まるようだった。
「私はフィールド魔法 ハーピィの狩場を発動! このカードがある限り、鳥獣族モンスターの攻守は200ポイントアップして、私か君がハーピィモンスターを召喚するたびに魔法・罠を1枚破壊する!」
「ん?」
フィールドには特別大きな変化はなかった。だが、上空、空高くには飛行しながら今か今かと待ちわびている両手が翼を生している女性であるハーピィ・レディが飛んでいた。
ハーピィの狩り場か、霊使いウィンは風属性だからその属性メインのデッキと見ていたけど、ドンピシャ。ただ、ハーピィというのは少しだけ予想外かな?
「私はカードを1枚伏せて手札からハーピィ・レディ1を攻撃表示で召喚。その効果により風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップ! それからハーピィの狩場により私は今伏せたカードを破壊!」
「わざわざ自分のカードを破壊するために伏せたっていうのか?」
《ハーピィ・レディ1》 攻撃力1800 守備力1600
ウィンが今しがた伏せたカードは空で滞空していたハーピィ・レディが勢いよく降りてくることで破壊された。
ハーピィの狩りの効果は強制効果だ。だからハーピィモンスターを召喚したなら必ずカードを1枚破壊しなければならない。カードの発動順序を間違えた…………そんな思考が僕の脳裏をよぎったが、次の一瞬にはそれが計算された行動であったと知った。
「今破壊された私のカードは呪われた棺。その効果はこのカードが破壊されて墓地へ行ったとき、相手はランダムに手札を捨てるか、モンスターを破壊しないといけない。でも、君にはモンスターはいないから」
「僕の手札は捨てられる。そういうことだね」
呪われた棺の効果により彼女の場に現れたエジプトのファラオでも収められてそうな豪奢な棺から黒い手が伸びてきた。それは僕の手札を1枚だけ掴み取り、闇の中へと持って行ってしまった。
「私はこれでターンエンドです!」
「僕のターン、ドロー!!」
何もできない1ターン目に手札を1枚失うことになるとは。子供の様な印象を受ける彼女だけど、意外とデュエルはクレバーな戦い方をするのかもしれないな。
「僕は憑依装着ーヒータを攻撃表示で召喚! バトルだ! ヒータでハーピィ・レディ1を攻撃!!」
ヒータは駄々をこねているウィンに苛立ちをぶつけるように、勢いよく手持ちの杖から炎を噴出させることによってハーピィレディ1を破壊した。
「う~~~ッ! 熱いッ!!」
『反省しやがれこのバカが!』
荒々しい攻撃は火の粉をまき散らしながら後ろにいるウィンにまでダメージを与えて、痛む表情を浮かべる彼女へヒータが りつけているようでもあった。
《ウィン》 残 LP 3950
「さらに僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「バカはないでしょ、バカは…………。ヒータはいつも口が悪いんだから。私のターン、ドロー! 私は手札からハーピィ・レディ2を攻撃表示で召喚! ハーピィが召喚されたことで狩場の効果が発動! 君の伏せカードを破壊!」
「くっ」
《ハーピィ・レディ2》 攻撃力1500 守備力1600
三姉妹であるハーピィ・レディ1の妹だろうか、ウィンの場に召喚された新たなハーピィ・レディにより、再び空から降りてきたハーピィ・レディが僕の伏せカードを破壊した。
「だけど、僕が伏せていたカードはコーリング・マジックだ! このカードが破壊された時、デッキから速攻魔法を選択しフィールドにセットする! 僕は月の書をセットする!」
「無駄だよ。私はさらに万華鏡ー華麗なる分身ーを発動! デッキから『ハーピィ・レディ三姉妹』を攻撃表示で特殊召喚!!」
「なにッ!?」
《ハーピィ・レディ三姉妹》 攻撃力2150 守備力2300
それはまるで万華鏡に写ったハーピィレディ2が分身するように、万華鏡から3体のハーピィ・レディが召喚された。彼女たちは3人で1体のモンスターだ。だから狩場の効果が発動されても破壊されるカードは1枚で済む。
そして、それにより狩場の効果が再発動し、僕が今伏せた月の書は無残にも破壊される運びとなったのだ。
「バトルだよ! 私はハーピィ・レディ三姉妹でヒータを攻撃、それに続いてハーピィ・レディ2でダイレクトアタック!!」
「ぐぅぅあああ!!」
ウィンの場に召喚されたハーピィたちは見事な連携を発揮しながらヒータを、そしてその奥にいる僕を攻撃した。
《コナミ》 残 LP 2200
「私はこれでターンエンドだよ!」
「ぐっ、やっぱりというか。ハーピィデッキの狩場が厄介すぎるな。あれを何とかしないと……僕のターン、ドロー!」
さて、このターンでしておきたいことはハーピィ・レディ三姉妹と狩場を破壊することだが、三姉妹はともかく狩場を破壊するカードは手札にはない。
だけど、可能性はある。それをすることができるかもしれない可能性は!
「僕はE・HERO ブレイズマンを攻撃表示で召喚! その効果により、デッキから融合を手札に加える! そして融合を発動! 僕は手札のE・HERO ボルテックと場のブレイズマンを融合! E・HERO ノヴァマスターを融合召喚!!」
《E・HERO ノヴァマスター》 攻撃力2600 守備力2100
融合の渦から召喚された赤い鎧を全身に纏った炎を司る属性のHEROだった。赤いマントを翻しながら現れたHEROはこの状況を変える可能性を持つ効果を持っている。
僕はこのモンスターに賭ける!
「バトルだ! 僕はノヴァマスターでハーピィ・レディ三姉妹を攻撃! 爆炎葬送波!!」
「くぅうううッ!!」
《ウィン》 残 LP 3500
ノヴァマスターが両手から発した二つの灼熱の炎が球体状に圧縮されたものがハーピィ・レディ三姉妹を破壊した。
そうすることでノヴァマスターの効果が発動する準備が整った。ノヴァマスターの手から伸びた炎が僕のデッキの一番上のカードを光らせたのだ。
「この瞬間、ノヴァマスターの効果が発動! このモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、カードを1枚ドロー!」
「私のハーピィ・レディを破壊しながらカードを引くなんて…………」
驚くウィンを傍目に僕は引いたカードを見る。それを見た僕は望みのカードをが引けたことに笑みを浮かべ、早速発動させた。
「よし、僕は手札からRーライトジャスティスを発動! 僕の場のE・HERO一体につき魔法・罠を破壊する! 僕はハーピィの狩場を破壊!!」
「私の狩場が!?」
ノヴァマスターが周囲を巻き込むように薄い炎の波を起こした。それは微かな火の粉を起こしながら周囲を焼き尽くし、ハーピィの狩場を破壊した。
そして破壊された狩場によって上空に待機していたハーピィは消え、ウィンのばにいるハーピィ・レディ2も攻守が下がった。
よし、これで安心してカードを伏せることができる。僕はカードを2枚伏せてターンを終了した。
「くぅ~~ッ! 私のターン、ドロー………やったあ! 私は強欲な壺を発動して2枚ドロー!」
狩場を破壊され、ノヴァマスターを前に意気消沈したような様子を見せていた彼女は強欲な壺というある意味で最強と言えるカードを引けたことで気を取り直したように跳び上がりながらカードを発動させた。
「私は浅すぎた墓穴を発動! お互いに墓地からモンスターを1体選んで守備表示でセットする! 私はハーピィ・レディ三姉妹をセット!」
「……僕は憑依装着ーヒータをセットする」
「ヒータを伏せたのね。それじゃあ私はハーピィ・レディ2と三姉妹をリリースしてハーピィズペット竜を守備表示で召喚! カードを1枚伏せてターンエンド!!」
《ハーピィズペット竜》 攻撃力2000 守備力2500
「わざわざリリースしたペット竜を守備表示? 何を考えて、僕のターン、ドロー!」
ハーピィズペット竜か、あのモンスターは確か自軍のハーピィ・レディ1体につき攻守を上げていくモンスターのはず。
それを守備表示で召喚、ノヴァマスターで攻撃した瞬間に今伏せたリバースカードで守備力を上げるつもりなのだろうか。攻撃表示だとあからさますぎるうえに、ステータスが足りないと言う可能性もある故の守備表示。うん、そんなところだろう。
僕が罠と読むことを読んでブラフ。という可能性もあるけど、だとしても最上級モンスターを守備で、と言うのはリスキーにもほどがある。初心者ならともかく彼女は思ったより合理的な戦術をしているみたいだから、ブラフというのはあまり……。
「攻めてみるしか答えは出ないか。僕はノヴァマスターでハーピィズペット竜を攻撃! 爆炎葬送波!!」
「かかった! 私は手札を1枚捨ててヒステリック・パーティーを発動! このカードの効果により私の墓地にいるハーピィ・レディを可能な限り特殊召喚する!!」
「やっぱり罠か!!」
ノヴァマスターが両手に炎を溜めたタイミングで、ウィンの場にいくつもの甲高い女性の声を上げながら3体ものハーピィ・レディが召喚された。
「さらに、召喚されたハーピィ・レディによりハーピィズペット竜の攻守がアップする!!」
《ハーピィ・レディ1》 攻撃力1600 守備力1400
《ハーピィ・レディ2》 攻撃力1600 守備力1400
《ハーピィ・レディ三姉妹》 攻撃力2250 守備力2100
《ハーピィズペット竜》 攻撃力3200 守備力3400
「これは…………!」
ウィンの場にハーピィズペット竜を囲むように3種類のハーピィ・レディが怒涛の勢いで召喚された。
これがウィンの狙いだったか。ハーピィズペット竜を囮に、ノヴァマスターの攻撃を誘発。攻撃表示で止まるノヴァマスターを自分のターンで破壊する。
ハーピィ・レディ……1体ごとの攻守や能力は決して強くはないが、専用罠による連続召喚や能力の補助で強力な力を発揮する。
目の前で満面の笑みを浮かべて喜ぶウィンに、僕は少しまずいなと額に汗をかかずにはいられなかった。
「くっ、僕はならノヴァマスターの攻撃取り止める。そしてターンエンドだ」
「へへ、これで私の勝ちは決まったも同然だね! 私のターンドロー!」
こうなるなら罠を考慮してヒータを守備にしておいたのは失策だったかもしれない。全ては後の祭りだけど、攻撃表示にしておけばハーピィ・レディを1体でも削ることはできた。
特にハーピィ・レディ1は彼女のメインとなる風属性全員の攻撃力を上げるパンプ効果がある。このモンスターだけでも倒すべきだったな。
「キャーッ! 今日の私ってやっぱりついてる!! こんなに恵まれた手札が来たのなんて初めて!!」
苦い顔を見せる僕とは対称的によほどいい手札が引けたのだろう。ウィンが飛び跳ねながら大喜びしている。
その顔には勝利が見えた者特有の笑みが浮かんでいた。
「私は手札からトライアングル・X・スパークを発動! 私のハーピィ・レディ・三姉妹の攻撃力は2700になって、このターン中君は罠カードを発動できず、無効化される!!」
「なにっ、2700!?」
「へへへ、これで終わりだね! 私はハーピィズペット竜でノヴァマスターを攻撃! ハーピィズ・フレア!!」
勝利を確信したウィンの号令を受けたハーピィズペット竜がの大口に炎を溜め込み今にも発射されんとしていた。それに対して、僕もまたこの攻撃に対するカードを発動させた。
「僕はこの瞬間、融合解除を発動! ノヴァマスターを素材となったブレイズマンとボルテックに融合解除、守備表示で特殊召喚する!!」
「えぇっ!?」
ハーピィズペット竜の吐き出す炎により破壊を免れない状態だったノヴァマスターはその体を二つに分離するように別れ、僕の守りを固めた。
「そしてこの瞬間、ブレイズマンの効果が発動! このモンスターが召喚・特殊召喚された場合、デッキから融合を持ってこれる!」
「だけど、ハーピィズペット竜の攻撃は止まらないよ! 私はブレイズマンを破壊する!!」
「ぐっ」
守りを固めた僕の場を見て、驚いた様子を見せたウィンだったが、すぐに持ち直し攻撃を再開した。
「まだまだ行くよ! ハーピィ・レディ2でボルテックを攻撃! ハーピィ・レディ1でヒータを攻撃!」
次々と破壊されていく僕のモンスターたち。そして、とうとう僕のモンスターはいなくなり、残すは僕のライフを500だけ超えているハーピィ・レディ三姉妹だけが残っていた。
「んふー。これで私の勝ちは決まり、これからは付きまとわないでね、勇者くん!」
「…………」
僕は勝ち誇り満足気に胸を張るウィンに何も返さない。ただ今は、攻撃してくるタイミングを待つだけだった。
「落ち込んじゃった? ふふ、それじゃあ…………ハーピィ・レディ三姉妹でダイレクトアタック! トライアングル・X・スパーク!!」
三角形を描くように陣取った三姉妹は連結するように電流を流し、その中心からXを描いた線上の光線を僕へと放ってきた。
それが通れば僕のライフは塵芥のごとく消えてなくなるだろう。だから、僕は何としてもこの攻撃を止めて起死回生の策を取らねばならなかった。
だから僕は迫りくる極光の光線を見ながら、奇跡的に墓地に送られていたカードの効果を発動させた。
「いや、まだ終わらない!! 僕は墓地にいるネクロガードナーを除外することでその攻撃を無効にする!!」
「ええっ!!?」
僕に迫った極太の光線は直前で彼女たちの背後に現れたネクロガードナーが陣形を崩すことで逸らし、光線は僕から逸れて無効となった。
「~~~ッ! いつの間にそんなカードを、もう倒されてよ! 私はこれでターンエンド!!」
「ふぅ、今のは危なかった。特に罠を封じられるとは思わなかったよ。僕のターン、ドロー!!」
地団駄を踏んで怒りをあらわにするウィンを横目に僕はデッキからカードを引いた。今の攻撃、1ターン目に手札から捨てさせられたネクロガードナーがいなかったらどうなっていたことか。運も実力の内と言うけれど、こんな綱渡りあまりしたくはないな。
僕の場にはモンスターはなく、ウィンの場には最上級モンスター含めて4体。厳しい状況だ。次のターンを回して守り切れる自信はない。
だからこのターンで決める。それが勝利への到達点だ!!
「僕は手札からEーエマージェンシーコールを発動! デッキからE・HEROを1体を手札に加える。僕はE・HERO エアーマンを手札に、そして召喚して効果発動! デッキからHEROを手札に加える。僕はE・HERO クノスペを手札に加える!」
これで、僕の場と手札にHEROが2体揃った。あとはブレイズマンの効果で持ってきた融合で召喚するだけだ。
この先の展開も考えてここで使うべきなのは…………。
「僕は融合を発動! エアーマンとクノスペを融合、E・HERO
《E・HERO
そのHEROが召喚された時、偶然か必然か、僕とウィンの間を膨大な突風が吹き抜けた。風を司るHEROの登場を待ちわびていたかのような風であった。
「Great TRRNADOの召喚時、相手モンスター全ての攻撃力・守備力は半分になる!」
「ええっ! 半分!!?」
「吹き荒れろッ! タウン・バースト!!」
Great TRRNADOを中心に竜巻が巻き起こり、ウィンのハーピィ・レディたちを纏めて巻き込んでその攻守を下げた。
奇声を上げて突風に耐えるウィンやハーピィたちを尻目に開けた勝利への道筋に僕は眼光を強くした。
「畳みかける! 僕は墓地のヒータ、ブレイズマン、ノヴァマスターを除外することで手札からThe blazing MARSを特殊召喚!!」
《The blazing MARS》 攻撃力2600 守備力2200
突風の風を巻き込むように炎が風に乗って巻き起こり、炎の竜巻を引き起こした。炎の風が止んだとき、その中心から燃え上がる炎を地面に流しながらMARSが現れていた。
場にモンスターを出しておかなくても簡単に召喚できるMARSはやはり強いなと思いながら、上級モンスターの連続召喚に僕は驚き慄いているウィンにデュエルを終わらせるための攻撃を仕掛けた。
「バトルだ! 僕はGreat TORNADOでハーピィズペット竜を攻撃! スーパーセル!!」
「──ッッ!?」
《ウィン》 残 LP 2000
TORNADOが身につけている黒いマントを翻しながらその腕から放った黒い竜巻、それは真っ直ぐに縦ではなく横向きに巨大な赤き首長竜であるハーピィズペット竜へと突き進みその巨体を巻き込みながら天高く吹き飛ばした。
巨体は錐もみしながら上空へと跳び上がった後、光の粉を振りまきながら消えていった。
「つづけ! MARSでハーピィ・レディ2を攻撃!
「キャァアアッ!!」
《ウィン》 残 LP 200
MARSの下半身部分にあたる巨大な竜の咢がじりじりと開き、喉奥から溜め込まれた灼熱の炎が勢いよく吐き出された。
炎はハーピィ・レディ2を焼き尽くし、燃やし尽くした先には羽根一つとして残ることはなかった。
「う~~~ッ! ぐぅっ、まだライフは残っているわ。ハーピィズペット竜はやられちゃったけど、次のターンで今度こそ決めてあげるんだから!」
倒れた体に力を込めて立ち上がりながら気勢を吐いて立ち上がるウィンに僕もまた強く言い放ち勝負の決め手を選択した。
「次のターンなんて渡さない! 僕はMARSの効果を発動! 自軍のモンスターを生贄に捧げるたびに相手に500ポイントのダメージを与える! 僕はE・HERO Great TORNADOを墓地へ送る!!」
「ええっ! それじゃあ!?」
「そうだ、僕の勝ちだ!
1度攻撃を終えたMARSの口が再び開く。1度炎を吐き出した口内にTORNADOが風を纏いながら吸い込まれることで爆発的に炎はその熱を上げ、その勢いに乗る形でウィンへと吐き出した。
「キャァアアアアッ!!?」
《ウィン》 残 LP 0
ヒステリック・パーティー発動した時、ノヴァマスターで他のハーピィ攻撃したらよくねと書き終わった後に思ったけど、プレミとして扱うことにしました。書き直すのがあまりにも億劫だったから仕方ない。