初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

112 / 246
昔やってたギャルゲ思い出してやろうとしたらパソコン新しくなってるせいか起動しなくて悲しくなったぜ。


小さな先導者

 

 ウィンとのデュエルが終わり、彼女に勝利した僕だが、勝利したことによる満足感を味わうことなく現状の対処に途方に暮れていた。

 デュエルに敗北したウィンは僕の攻撃で倒れたまま地面に寝そべって幼子が思い通りにいかない現実を嫌う時のしぐさのように恥も外聞もなく手足をばたつかせ駄々をこねて泣き叫んでいたからだった。

 

「うあ──ん!! 嫌だよー! もっと遊んでいたいよー!!!」

 

 外見年齢が僕やヒータたちと同じくらい──いや精霊として生きてきた年月も換算すればそれ以上かもしれないが──に見える彼女が手足をばたつかせている様は言葉に詰まる光景であり、どうすればいいかわからなかったのだ。

 強いて言えば、パンツが見えているのでスカートを履いて足をばたつかせるのは女の子として恥じらいがないにも程があるため止めるよう注意すべきなんだろうなあと思いながら、それを告げるのも二重の意味で躊躇われるため、口に出すことはできずにいた。注意した結果、セクハラと思われたくないと言う理由と、男として、美少女の下着が見れるチャンスを逃すのは避けがたいという理由からだ。

 

「……白……か」

 

 とはいえ、いつまでもこうしてまじまじと見ているわけにもいかない。僕はもう少し見ていたいという強い欲求を強引に抑え込み、アウスとヒータに彼女の醜態を止めるように目線を向けて頼んだ。

 

『はあ、ウィン、流石にいい年なんだからいい加減落ち着こうか。負けた以上、あーだこーだと言っても結果は変わらないんだし』

『そうだぜ、ガキじゃあるめーし、みっともねえ姿を見せんじゃねえよ。そこの変態に見られてんぜ』

「う──!! もっと遊んでいたかったのにー!」

 

 泣くのも疲れてきたのか、段々と小さくなっていく声と共にジタバタとさせていた手足の動きもおさまり、小さくなって行った。

 ヒータの変態という言葉に反論しそうになったが、じっと見ていたのも事実のため反論の余地はないなと口をつぐんだ。

 ここで反論しても敗けは見えている。むしろ、変に意識して愛理ちゃんにまで話が行く方が怖い。

 

「ウィン、嫌がる君に対して無理にデュエルしたのはごめんだけど、僕にも譲れないことなんだ。許してとまでは言わないけどさ、世界を救うまでは力を貸してもらえないかな」

「〜〜〜ッ!! あ〜〜!! ここで終わりなんて嫌だよー!!!」

 

 寝転ぶ彼女に屈んで力を貸してもらえるよう頼んだのだが、あまり効果はなさそうだった。むしろ僕が話しかけたせいで歯を食いしばって我慢していた涙が再び溢れ出したようにボロボロと出てきた。

 

 うーん、これはどうしたものかと頭を掻いて悩んでいると、彼女のもつ新緑色のクリスタルが光り出した。それは何度も見た、クリスタルの力が僕に譲渡されようとしている反応だった。

 

「あ……クリスタルが……!」

 

 小さくか細い声で叫んだ悲壮な声がウインの口からこぼれ出る。それはこれまでのアウスやヒータの時と同じようにクリスタルから抽出されるように新緑色の光の球が抜け出てきて当然のように僕のクリスタルへと収まった。

 

「私のクリスタル……色がなくなっちゃった」

 

 涙を目に浮かべながら呆然とウィンは呟いて、そしてこの世界を名残り惜しむように空を見上げながらその姿を光へと変換しながら彼女の持つ「憑依装着ーウィン」のカードの中に引きこもるように入って行った。

 

 僕たちはそれを三者三様の反応をしながら見ていた。僕はどこか哀愁を感じて憐れみながら、アウスは呆れたように、そしてヒータは眉間に皺を寄せて怒りが滲んだ目を向けながら、彼女を見送っていた。

 

『やれやれ、どうにもウィンには困ったものだね』

「うーん、これでよかったのかなあ」

『いいんだよ。口で言ってわかんねえ以上、力づくしかねえんだから。第一大げさなんだよ、死ぬわけじゃあるめえし』

 

 どうにも、嫌がる女の子に無理やりこちらの意思に従わせるみたいなやり方は好きじゃない。アウスやヒータのように面と向かって倒してみやがれと言うように来てくれたらよかったのだけどなあ。

 

 僕は好まない釈然としない終わり方に不満を感じながら、これからのウィンとどう接するべきかと悩んだ。

 こんな形でクリスタルの力を奪ってしまった以上、ギクシャクしてしまうかもしれない。それがどうにも不安だった。

 

 そんな僕の不安を悟ったようにヒータが手をヒラヒラと振りながら気にするなと言いたげに僕の横を通り抜けた。

 それを無意識に目で追った僕にアウスが何かに気づいたように黒縁のメガネをキラリと光らせながら話しかけできた。

 

『コナミ、君、僕たちの姿が見えるようになったんだね』

「え?」

 

 僕をまじまじとみているアウスを目にとらえる。短い茶色の髪、黒い縁の四角いメガネ、整った容姿に霊使い随一と言っていい豊満な胸。それはアカデミアの森で出会った霊使いアウスそのものの姿であった。

 

「うおー本当だー!! アウスが見えてるー!?」

『なに!! アタシたちの姿が見えているのか!?』

「ヒ、ヒータだー!!」

 

 先ほどのウィンの喪失により哀愁もどこへ行ったのやら。僕は2人の姿が見えていることに大興奮して声を上げた。

 後ろから聞こえた声に急いで振り向くと、そこにはアウス同様、霊使いのヒータが僕の目に写っていた。赤い長髪、着崩した服、快活な印象を受ける燃えるような紅い瞳。それは見紛うことなきヒータそのものだった。

 

 2人とも精霊体であるためにその体は透き通っており、目を凝らせばその奥の通りが透けて見える状態だったが、それが見えるということは僕が精霊を捉えれるようになったということであった。

 

「うわー本当だ。君たちの姿が見えてるよ!」

『それだけクリスタルの力が強まったということだね。ウィンを入れて基本の4属性の力が収まったんだ。それだけの恩恵を君に与えているということだろう』

 

 なるほどなーとアウスの言葉に頷いて、姿が見えるようになった歓びに浸りたいところであったが、すぐに僕は先ほどカードの中に姿を消したウィンのことが気がかりになり考えた。

 

「君たちが見えるようになったのはそのー嬉しいんだけど。ウィンは大丈夫かな。泣きながらカードの中に入っちゃったけど……」

『心配すんな。一通り泣いたらそのうちひょっこり元通りになって顔出すだろうよ』

『うん、彼女のことは君が気にする必要はない。僕たちの方でなんとかしておくよ。それよりも今はこうして目を見て話せるようになったことを喜ぼう』

「そっか。うん、それじゃあウィンのことは君たちに任せるね」

 

 僕の言葉に頷く2人を見ながら僕は道に落ちているウィンのカードを拾った。そして、クリスタルを天に掲げて喜び叫んだ。

 

「何はともあれ、風のクリスタル、ゲットだぜ!!」

 

 今日はいい日だ。遠い異国に来て美味しいご飯が食べれたうえに偶然にもウィンと出会えた上に探していた新たなクリスタルの力も手に入った。その上、精霊も見えるようになるなんて祝日にしたいくらいだ!

 

『あーそれはいいけどよ。お前こっからどうやって帰るつもりだ? 藤次郎の居場所わかんのか?』

「え?」

 

 光の反射により4つの色をきらめかせるクリスタルを天に掲げて喜び浸っているとそこに水を差すようにヒータの声が僕に届いた。

 周囲を見渡すとどこともしれぬ路地裏。壁にはスプレー缶で描かれたような英語の文字がデカデカと書かれており、ヒータたちにこの場所に案内されるがまま走ってきたためにどのようにしてきたのかさっぱりわからない。

 それに気づくと同時に喜び反転、僕はさーっと血の気が引いて頭を抱えることになった。

 

「ア、アウス、君は帰り道とか覚えてない……よね」

『残念だが、力になれそうにない』

「ですよねー。はは、どうしよう」

 

 乾いた声が僕からこぼれて宙に消えた。続くように脳内を駆け巡る悪い想像。拉致、誘拐、身代金、etc。

 日本と違い、治安の悪さは目に見えているアメリカという国で子供の迷子なんて悪人の格好の的だ。

 僕は駆け巡った悪い想像を振り払うように被りを振って無理に楽天的な声を出した。

 

「ま、まあなんとかなるさ。うん、きっと、たぶん、maybe」

『ほんとかよ。何かあっても知らねえぞ』

『まあとりあえずあまり動かずなんとか藤次郎に連絡を……ん?』

 

 ジト目でこちらをみるヒータに僕は根拠のない言葉の僕。そして建設的な意見を言うアウスは何かを見つけたように通路の先を見ていた。

 疑問の声を上げた彼女に釣られて僕も彼女の視線の先を見た。そこには不思議なネコらしき生物が尻尾を振ってこちらを見ていた。

 

「ネコ……かな?」

『いや、違うね。精霊だよ。見たことはないモンスターだけれど……』

「精霊?」

 

 アウスの精霊という言葉に僕はそのネコのようなモンスターを改めてまじまじと眺めた。

 紫の体表、赤い目に額には小さな丸い球がついており、尻尾の先には大きな紅い宝石のような物がついていた。その上、大きな耳は左右二つずつ。それはネコのようなナニカで、似て非なる形状をした存在だった。

 

「なんのモンスターだろ。可愛いモンスターだけど、見たことないモンスターだ」

『キュイ!』

 

 その精霊は一鳴きこちらを見て声を上げると、通路の先へと走り出した。そして立ち止まり、またこちらを見ている。それはまるでついて来いと言っているようだった。

 

『コナミ、追いかけよう。どうやらあの子は僕たちを案内しようとしてくれているみたいだ』

『急ぐぞ、見失うと面倒だ』

 

 アウスとヒータの言葉がわかるのか、再び走り出したそのネコのような精霊を呆然と見送っている僕を急かす様にアウスとヒータが先へ行った。それに遅れないために、僕もまた通路の外へと駆け出した。

 その精霊を追いかけて右から左へ、人通りの少ない道を駆けながら僕たちは話していた。

 

「あの精霊、僕たちをどこに連れて行こうとしているんだろう」

『さてね、どこであれ、ついて行ってみればわかることさ』

『悪意はなさそうだったぜ。たぶんな』

 

 僕たち3人がその精霊を追いかけて少し、太陽が夕暮れ時を示し始めた時間になると、だんだんと人通りが多くなっている道なりに出た。そして、そこも超えて行った先に行くと、僕がウィンを追いかけた場所であるニューヨークの有名な交差点であるタイムズスクエアに辿り着いたのだった。

 

 そこは日が西へ傾いた時間でありながらまるで人が減っていなかった。道を歩く人混みはその先にある光景を遮り、人混みの間を走り去っていった精霊はすぐに見えなくなった。

 

「あっ! …………行っちゃった。お礼を言いたかったんだけどな」

『なに、また会えるさ。あの子がわざわざ君を連れてきたんだからさ』

『それより、アンタはこれからが大変だぜ。ほれ、あそこカンカンだ』

 

 去って行った精霊にお礼を言えなかったことを名残惜しく感じていると、ヒータが指さす方、そこには警官であろう制服を着た男性と一緒に藤次郎さんがこちらを見ているのが見えた。

 

「ああ、これは逃げたくなってきた」

『諦めよう。勝手な行動をした罰だ』

 

 警官と共に歩いてくる藤次郎さんを見て、僕は罪人のような気持ちを感じながら頭を振って通りへと入っていくのだった──。

 

 

 

 

「お帰りルビー。悪かったな頼んじまって」

『キュイ!』

 

 タイムズスクエアのビルの上で、フリルをつけた服を着た少年が立っていた。肩にはコナミを交差点まで導いた精霊が乗っている。

 彼は屋上から階下を見下ろしルビーと呼んだ精霊が案内したコナミを見つめていた。

 

『会わなくていいのかい? あの少年と会うためにこの国に来たんだろう?』

「うーん、すぐに会いに行きたいところだけど、今日のところはやめておくさ、立て込んでそうだしな。それに約束は2日後だ、その時にするぜ」

『もう日が暮れる時間だ。ヨハン、用も終わったことだし早いところホテルに戻ろうではないか』

 

 少年の横に現れた甲羅にエメラルドが生えた老いた亀が少年をヨハンと呼んで帰宅を促していた。

 それを聞いたヨハンは茜色に染まった空を見上げながら伸びをした。

 

「2日後か、待ち遠しいぜ。どんなデュエルをするのかなあ」

『きっとよいデュエルができる。星に選ばれたデュエリストなのだから』

「そうだな。きっと面白いデュエルになるぜ。こいつも待ち望んでるみたいだからな」

 

 ヨハンは腰にぶら下げたデッキケースに手をかけた。そこに入っているカードが輝いてヨハンの言葉に反応を示している。

 カードの反応を楽しんでいる間に下にいたコナミたちはどこかへ歩いて行ったようでヨハンが下に目を戻した時にはいなくなっていた。

 

「あ、いなくなっちまったか。しゃーない。俺も帰るか」

『彼のことも重要だが、ヨハンも時間が迫っているんだ。余裕張るのも大概にしておくことだ』

 

 いつの間にか4本の足で立っていたペガサスの姿をした精霊が透き通るような男性の声でヨハンを嗜めていた。それに苦笑で返しながらヨハンはビルの外へと続いている階段へと歩いて行くのだった。

 

 

 




ヨハンのキャラ性を表現できる自信がないぜッ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。